RTKとGPSの違いとは?これからの高精度位置測位サービスについて

"RTKとGPSの違いとは?これからの高精度位置測位サービスについて"

(2020年9月11日掲載)

カーナビやドローンの自動運転などに使われている位置情報サービスは、今後ますます精度が高まっていくといわれています。位置情報というと真っ先に思い浮かぶのがGPSですが、最近では、より高精度な測定方法である「RTK」を使ったサービスが登場し、注目を集めています。

今回は、RTKの特徴と、RTKとGPSなどの従来の測位技術との違いを確認した上で、RTKによって広がる可能性について考えてみましょう。

人工衛星を用いた測位システムとは

カーナビやスマートフォンの地図アプリを使うと、自分が地球上のどこにいるかという位置情報を知ることができますが、こうしたサービスには人工衛星を用いた「衛星測位システム」が使われています。カーナビやスマートフォンなどの受信機が人工衛星から送信された信号を受信し、それをもとに、受信機と人工衛星との間の距離を測定します。4つの人工衛星と受信機の距離が測定出来ると、それがひとつに交わる点が計算され、今いる位置が分かるのです。

衛星測位システムには、GPS、QZSS(準天頂衛星)、GLONASS、Galileoなどがあり、これらの総称が「GNSS(全球測位衛星システム)」です。

GNSSのなかでも最もなじみがあるのがGPSでしょう。GPSは、もともとアメリカ国防総省が軍事目的で開発した衛星測位システムですが、1990年代からは民間にも普及し始め、現在ではカーナビやスマートフォンアプリなどに広く使われています。

準天頂軌道の衛星が主体となって構成されているQZSS(準天頂衛星)は日本独自の測位衛星で、2010年に初号機が打ち上げられ、2018年からは4機体制で運用されています。通称は「みちびき」で、日本版GPSと呼ばれることもあります。「みちびき」によってGPSを補うことで、より安定した位置情報が得られるようになると期待されています。

RTK測位と従来の測定方法との違い

衛星測位システムを使って位置を測定する方法には、いくつか種類があります。その種類によって精度が異なるため、適した活用分野も異なります。ここでは一般的に広く普及している単独測位と、新たな測定方法として注目されているRTKの特徴と違いを見てみましょう。

従来のGPS(単独測位)の特徴

一般的にGPSと呼ばれる位置情報サービスで使われている測定方法は、単独測位というものです。広く普及している基本的な測定方法で、単独の受信機で4つ以上のGPSやGNSSの衛星から信号を受信して、各衛星からの距離を測定することで、位置を算出します。

GPSによる単独測位は、飛行機や船舶が位置を知るために用いられるほか、自動車に搭載されたナビシステム、スマートフォンの地図アプリの歩行ナビ、キッズ向け携帯電話の見守り機能などのセキュリティサービス、位置情報を公開・共有できるSNSなど、さまざまな用途に活用されています。
ただし、単独の受信機による測定では位置情報に数メートル単位の誤差が生じるという弱点があり、より高精度な位置情報が求められる分野には適していません。

RTK測位の特徴

RTKとは「リアルタイムキネマティック(Real Time Kinematic)」の省略形で、「相対測位」と呼ばれる測定方法のひとつです。固定局と移動局の2つの受信機で4つ以上の衛星から信号を受信する技術で、2つの受信機の間で情報をやりとりしてズレを補正することで、単独測位よりも精度の高い位置情報を得ることができます。

RTKでは、多少の誤差は生じるものの、その範囲をわずか数センチメートル以内に抑えられるのが最大の特徴です。主に、農機や建設機械、ドローンの自動航行など、より正確な位置情報を求められる分野で活用が広がると考えられています。

例えば、設定したルートに沿ってドローンを自動航行させる場合、現状ではGPS(単独測位)を使うのが一般的ですが、誤差が生じてドローンがルートから逸れて別の方向に飛んで行ってしまったり、近隣の建物に衝突したりするリスクもあります。RTKを導入すれば、より正確で安定した低リスクの飛行が可能になるのです。

RTKの利用によって広がる可能性

高精度で位置情報を測定できるRTKは、これまで誤差がネックとなってGPSが普及しなかった分野にも、測位衛星システムを使った位置情報の活用を広げるでしょう。産業のスマート化や新たなサービスの登場にもつながる可能性があります。

例えば農業では、RTKを活用することで、トラクターのような農機の自動運転のほか、ドローンによる農薬散布も可能になります。そのほかにも、建設現場における建設機械の自動運転や、道路や橋梁などの交通インフラにおける監視業務の自動化やインフラ監視用のセンサ、運送業におけるドローンを使った配達業務、プロスポーツ業界におけるトレーニング用のウエアラブル端末などへの活用が考えられています。

また、最近では、MaaS(マース)と呼ばれる次世代交通システムが脚光を浴びています。MaaSとは「Mobility as a Service」の略で、ICTを活用して、電車やバス、タクシー、シェアサイクル、シェアカーといった交通サービスでの移動を継ぎ目なくつなぎ、移動の効率性を高めることを指します。

MaaSが実現すれば、目的地に着くまでにどの交通手段をいくつ使っても、スマートフォンのアプリを使って手配から決済まで一括ですませることができるようになります。日本では現状、MaaSはまだ発展途上のサービスですが、RTKの登場によって実現に一歩近づくことが予想されます。

RTKを用いた高精度衛星測位サービスは、現在、日本国内の複数の企業から提供されています。そのうちのひとつが、ソフトバンクが2019年11月から提供を開始した「ichimill(イチミル)」です。幅広い産業において高精度な測位を可能にする画期的なサービスとして注目を集めています。

高精度測位サービス「ichimill」とは

「ichimill」は、「みちびき」をはじめとするGNSSから信号を受信してRTK測位を行うことで、誤差数センチメートルの高精度な測位を行うサービスです。ソフトバンクは、同サービスを提供するに当たり、全国3,300ヵ所以上に独自の基準点を設置。通信には、ソフトバンクのモバイルネットワークを活用しています。

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全国の幅広いエリアに高密度に基準点があるため、ユーザが基準点を設置する必要がなく、手軽かつ安価にサービスを利用できます。また、ドローンのような受信機が基準点をまたぐほど長い距離を移動する場合でも、自動的に基準点を切り替えながら、高精度で安定した測位を行うことができます。

本来、RTKサービスを利用するには高価なGNSS受信機が必要になりますが、ソフトバンクでは、安価な専用のGNSS受信機を開発。さらには、GNSS受信機がなくてもRTK測位ができるクラウド型サービスの開発も進めています。クラウドRTKが実現すれば、小型のインフラ監視用センサやウエアラブル端末などにもRTK測位を活用しやすくなるでしょう。

「ichimill」は、農機の自動運転とアシスト、ドローンによる建設現場管理、バスの自動運転といった分野での活用が想定されていて、ソフトバンクは、各分野の提携企業とともに実証事業を進めています。従来のRTKサービスより安価で利用しやすい「ichimill」の提供がスタートしたことで、今後、多くの企業にとってRTKがより身近な存在になり、実用化が進むと予想されます。

まとめ:より高度な測位によって、無人化、業務効率化に期待

誤差わずか数センチメートルという高精度の測位を可能にするRTK。最先端の技術であるだけに、導入にかなりのコストがかかるのがネックでしたが、「ichimill」をはじめとする新サービスの登場で、RTK導入へのハードルは徐々に下がりつつあります。高精度なRTK測位を活用して自動運転や無人監視などを実現することで、業務が効率化されコスト削減が見込まれるほか、高所や危険地帯など人が作業するには危険が伴う場所での機器の自動化を担う技術の1つだと期待されています。

GPSやRTKに代表される人工衛星を用いた測位技術は急速に進化しています。変化の速いデジタル時代において価値を生み出し続けるためには、新たな技術を柔軟に取り入れていくことが重要です。測位やIoTなどの最新テクノロジーを自社の業務にどう役立てて行くか、あらためて考えてみませんか。革新を進める過程でソフトバンクのような専門企業の力を借りることも、有用な選択肢のひとつです。

関連サービス

位置測位サービス「ichimill」

ichimill(イチミル)は、準天頂衛星「みちびき」などのGNSSから受信した信号を利用してRTK測位を行うことで、誤差数センチメートルの測位を可能にするサービスです。→詳細はこちら