今やほとんどのスマートフォンのカメラに実装されている「ポートレートモード」。一度触ってみたことはあるけれど、押さなきゃいけないボタンがいっぱいあるし、なんだか難しそう… と、使うのを避けていませんか?
そこで今回は、スマホフォトグラファーの黒田智之さんに、ポートレートモードの基礎知識や、今日から実践できる撮影テクニックなどについて解説いただきます。今まで食わず嫌いをしていたあなたも、ポートレートモードの魅力にハマってしまうかもしれません!
目次
スマホのポートレートモードのいろはを理解しよう!
まずは、スマホカメラで普通に撮った写真と「ポートレートモード」で撮影した写真を見比べてみましょう。
比べてみると、たしかにポートレートモードを使用している方が、モデルが魅力的に見えるかも… その仕組みについて、黒田さんが教えてくれました。
黒田さん 「ポートレートモードは、簡単に言えば『背景をぼかして、被写体を際立たせた写真を撮れる機能』のこと。人物だけでなく、食べ物や建物など、幅広い被写体に応用ができるんです。デジタルカメラで背景をぼかすにはテクニックが必要ですが、ポートレートモードを使えば誰でも簡単に背景をぼかせますよ」
そもそも「ポートレート」って、どういう意味?
ポートレートとは「肖像写真」のことで、人物を被写体とした写真全般を指す言葉。スマホカメラはセンサーもレンズも小さいので、かつては背景をぼかした撮影ができませんでした。それを、デジタル処理によって可能にしたのがポートレートモードです。最近では、人物以外の被写体でも、デジカメのような自然なぼけ味が再現できるようになってきているのだそう!
ポートレートモードの基本的な使い方
続いて、ポートレートモードの基本的な使い方や特徴を iPhone と Google Pixel でチェックしていきましょう。
ポートレートとは切っても切れない言葉、「F値」とは?
F値とは、デジカメのレンズにある「光を取り込む穴」の大きさを数値化したもので、絞り値とも呼ばれます。光がセンサーにあたる明るさを表す指標とも言えます。Fは焦点を表す「focal」に由来しているのだそう。
この光を取り込む穴(F値)が小さいほど背景がぼけ、大きいほど背景がくっきりします。
デジタル処理技術が向上したことで、スマホでもデジカメでF値を調整するような感覚で、背景のぼけ味を調整することができるようになりました。
iPhone
iPhone のポートレートモードは、画面タップで被写体にピントを合わせることができます。また、撮影時にぼかし具合やライティング効果を調整できるのも特徴のひとつです。これらは編集機能を使って、撮影後に調整することも可能です。
Google Pixel
Google Pixel のポートレートモードは、被写体を自動で認識し、それに合わせて背景をぼかしてくれます。被写体にグッと接近すると、背景のぼかしが発動しやすくなります。撮影後に、編集機能でピントを合わせたい位置や、背景のぼかし具合を調整することも可能です。
撮影後にF値を調整してぼかし具合を編集すると、これくらいの違いを出すことができます。
ポートレートモードを生かせるシーン、生かしにくいシーンは?
背景をぼかし、被写体を強調するポートレートモード。ではどんなシーンなら、ポートレートモードの持ち味を生かせるのでしょうか?
黒田さん 「ポートレートモードは、人物や食べ物など、撮影したいテーマがはっきりしている場合に向いています。加えて、背景をぼかすには、被写体と背景の間に一定の距離が必要です」
黒田さん 「一方、遠くの風景を撮影する場合、全てにピントが合ってしまい、ポートレートモードの持ち味が生かされません。また、食べ物や小物を俯瞰(ふかん)で撮影する場合も、被写体同士の遠近差が生まれないので、ポートレートモードは向かないでしょう」
黒田さんのお話をざっくりまとめると、ポートレートモードで奥行き感のあるプロっぽい写真が簡単に撮影できる、ということ! 次ページからはさまざまなシーン別に、ポートレートモードを使った撮影術を、黒田さんに教えていただきます。
お散歩中に撮ってみる。ポートレートモードで心ときめくシーンを撮影するコツ
ポートレートモードの基本を押さえたところで、ここからはシーン別の撮影テクニックを見ていきましょう。まずは「ふらりと散歩中、心ときめく風景に出会ったとき」に、魅力的に被写体を撮影するコツを黒田さんが解説してくれました。
心ときめく風景を撮るコツ① 撮りたいものに近づく
黒田さん 「ぼかしの基本は、手前の被写体と奥の被写体に距離があること。手前の被写体に近づくほど、奥の背景はぼけていきます。このお地蔵さまやお花など、ときめくものを見つけたら、まずは近づいてピントを合わせましょう」
心ときめく風景を撮るコツ② ぼかし具合を調整する
黒田さん 「観光地などで撮影をする時も、ポートレートモードが役立ちます。撮影地を曖昧にしたい、知らない人の顔が写り込まないようにしたいという場合は、背景のぼかしを強めに。逆に、どこで撮った写真か伝えたい場合は、ぼかしを弱めにするといいでしょう」
心ときめく風景を撮るコツ③ 光の向きを考える
黒田さん 「背景をぼかすことからはそれますが、撮影する時は逆光やサイド光(横からの光)で撮るのが鉄則。被写体の前から光が当たった状態=順光だと、自分の影やスマホの影など余計なものが写り込んでしまい、写真の魅力が半減してしまいます」
ポートレートモードを使えば、自分がときめいた物や風景をわかりやすく表現できます。撮りたいものにピントを合わせているうちに、ポートレートモードを活用するテクニックも自然と身につくはず。次ページでは、日常の一コマを魅力的に切り取る撮影テクニックについて解説します。
「ちょっとひといき」ついでに、撮ってみる。ポートレートモードでテーブルフォトをより魅力的に
仕事中にひといきつきたいとき、あるいはカフェでまったりしているとき。特別ではないシーンを「なんかいいな」と写真に収めたくなることはありませんか? 続いては、ポートレートモードを使って、そんな日常のワンシーンを魅力的に切り取る、テーブルフォト(机の上の写真)を撮るコツをチェックしていきましょう。
テーブルフォトは背景でストーリーを伝える
テーブルフォトを撮影するときに、まず気をつけたいのが照明です。照明の真下で撮影すると、自分やスマホの影が入ってしまい、クオリティがいまひとつに。もし、どうしても照明が今ひとつ… という場所の場合は、影の状態を見ながら、照明を横、前にくるように自らが動いて、影が目立たなくなるように工夫してみましょう。
黒田さん 「照明位置がベストであることを確認したら、いよいよ撮影です。テーブルフォトを撮る時は、ヘッドホンやコーヒーカップなど、個性が光るアイテムを被写体にすると、写真がまとまりやすくなります。パソコンや文具を背景にしてぼかせば、『仕事中にちょっとひといき』といったストーリーを、魅力的に演出することができますよ」
黒田さん 「パソコンやノートなど無機質なアイテムも、ポートレートモードで斜めから撮影すると、奥行きを感じる写真に仕上がります」
「簡易レフ板」で光をコントロールしよう
光を操るテクニックとして、「レフ板」を活用するのもアリ! クリップボードに白い紙を挟むと、即席のレフ板が完成します。 逆光になってしまう場所でも、レフ板で反射すればある程度まで明るさを調整できます。
また、紙を黒色に変えると、いい感じの陰影を落とすことも可能。被写体がより立体的に浮き立ちますよ。
ノーマルモードに比べて、印象のやわらかい写真が撮れて、何気ない作業机にも物語をプラスすることのできる、ポートレートモード。最後のページでは、夜景を背景に、人物を魅力的に撮影するテクニックについて紹介します。
スマホだからこそできる。ポートレートモード×ナイトモードの合わせワザ
最後に、ポートレートモードの大本命、人物を撮影するときのコツについてご紹介します。 よりスマホならではの機能を生かした撮影をするため、「夜間の人物撮影」というシーンを黒田さんに考えていただきました。暗いところで人を撮る… 一見難しそうですが、昨今のスマホならお手のもの! ワンランク上の撮影テク、要チェックです。
スマホだからこそ夜でもキレイに撮れる!
黒田さん 「最近のスマホカメラはとても優秀で、明るさが一定以下のところで撮影しようとすると、自動的に『ナイトモード』に切り替わるようになっています。ナイトモードとは、夜間でも写真をきれいに撮影できる機能のこと。このモードを使えば、難しい設定をしなくても、暗いところで被写体をくっきりと、白飛びさせずに写せるんですよ」
夜景を背景にして “玉ぼけ” 効果を狙おう
黒田さん 「イルミネーションなどの夜景をポートレートモードで撮影すると、光が丸くぼやけた “玉ぼけ” 効果を狙えます。被写体の人物が際立つ、魅力的な写真が撮れますよ」
まとめ
今までよくわからなかったポートレートモードも、黒田さんの解説のおかげで「スマホカメラがより楽しくなる機能」に変わったのではないでしょうか。旅行など特別なシーンから、日常の一コマまで、あらゆるシーンがポートレートモードで魅力的に。本記事でご紹介した基本のテクニックを押さえて、ワンランク上の写真を撮ってみてください!
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(掲載日:2024年3月22日)
スマホ写真:黒田智之
その他写真:大崎あゆみ
文:佐藤由衣
編集:エクスライト