タブレットやスマホの操作に使うタッチペン。「使い道がよく分からない」「イラストやゲーム専用のアイテムじゃないの?」という方も少なくないのでは? 実はこのタッチペン、1本持っていると、いろんなことに使えるスグレモノなのです。
そこで今回は、家電製品総合アドバイザーの福田満雄さんに、タッチペンの活用法や自分に合ったタッチペンの選び方について教えていただきました!
持っているとこんなに便利! タッチペンのメリット&活用例6選
まずは、タッチペンの基本的なことから福田さんに聞いてみました。
そもそも、タッチペンとはどのようなアイテムなのでしょうか?
福田さん 「指のかわりにスマホやタブレットを操作できる、ペン型のデバイスですね。スタイラスペンとも呼ばれています」
普通のペンはスマホやタブレットの画面に反応しないのに、タッチペンで操作できるのはどうしてでしょう?
福田さん 「スマホやタブレットのタッチパネルの仕組みを理解しておくと、分かりやすいかと思います。タッチパネルにはいくつか種類がありますが、スマホやタブレットに使われているタッチパネルの多くは『静電容量方式』という方法でつくられています。指でパネルに触れると、人体に流れる静電気に反応してパネル表面の電流が変化し、指が触れた位置をセンサーが検知する仕組みです。
タッチペンは、パネルが人体の静電気に反応するメカニズムを再現したもの。ペン先に電気を通しやすい材質を使い、人体の静電気を伝えて指の代わりに操作するというのが基本の仕組みです」
タッチパネルの仕組みや特徴について、さらに詳しく知りたい方はこちらの記事がおススメです。
タッチペンのメリットにはどのようなものがありますか?
福田さん 「タッチペンにはさまざまなメリットがあります。具体的な活用例とあわせて見ていきましょう。
①文字や絵を細かく書けるので、資料作成や画像加工に活躍
「タッチペンがあると、写真や画像に絵や文字を細かく書き込むことができます。文字と一緒にイラストや図解を描きたいときなど、ビジネス用のメモやプレゼン資料の作成にも便利です。SNSにアップする画像に、手書きの加工をしたいときにもおススメですよ。
タッチペンとタブレットを使ってイラストを描いてみたいという方には、こちらの記事がおススメです。
②タスクやスケジュールの管理を効率化できる
手帳アプリやノートアプリにタッチペンを組み合わせることで、日々のタスク管理やスケジュール管理を効率化できます。例えば、カレンダーの日時変更や、Excelや Google スプレッドシートの操作も、タッチペンを使えばドラッグ&ドロップで簡単に。ToDoリストの作成や整理にも便利です。何かアイデアを思いついたときも、ノートアプリにササッとメモできますよ。iPadとApple Pencilであれば、手書き文字認識機能『スクリブル』を使って、タッチペンで書いた文字をテキスト変換することも可能です。
手帳をデジタル化する方法については、こちらの記事で詳しく解説しています。
③スマホの操作がスムーズになり、指への負担を軽減
スマホの画面は小さいので、狙ったボタンが押しにくかったり、リンクを押し間違えたりすることもありますよね。特に私は指が太いのでタッチミスが多いのですが、タッチペンを使うと押し間違いが減り、スマホの操作が快適になります。スワイプやスクロール、動画の一時停止・早送りといった操作も、指よりもタッチペンのほうがスムーズですよ。
また、フリック入力や長時間のスマホゲームは、結構な負担が手指にかかるので、手首や指が痛む、変形するなど、いわゆる『スマホ指』になってしまうことも。タッチペンを使えば軽い力で操作でき、手や指への負担を軽減できます。
スマホ指を防ぐ正しいスマホの持ち方は、こちらの記事で詳しく紹介しています。
④持ち物をスリム化でき、移動が身軽に
タッチペンとスマホやタブレットがあれば、メモ帳や筆記用具を持ち歩く必要がなくなるので、外出時に手荷物を軽くしたい人にもおススメです。メモアプリなどを使えば、たくさんの筆記用具がなくてもペンの太さや種類、色を豊富に選ぶことができます。また、何回書き直しても、紙のように追加のコストがかからないところも魅力的ですね。
⑤タッチペンとタブレットで、どこでも勉強できる
タッチペンが1本あれば、鉛筆だけでなく、マーカーにカラーペン、消しゴム機能なども事足りるので、タブレットが学習用のノート代わりになります。何度でも書き直せるので、子どもが文字を書く練習にもおススメ。私の子どもも学習用タブレットで勉強するときはタッチペンを使っています。タッチペンを持つと、普段学校で鉛筆を持って学習しているのと同じポーズになるので、勉強モードにスイッチが入りやすいようです。
⑥画面に指紋がつくのを防ぎ、スマホを清潔に保ってくれる
タッチペンを使えば指で直接、画面に触れずにすみ、画面に指紋や皮脂汚れがつきにくいのも大きなポイント。ぬれた手でも使えるタイプのタッチペンを使えば、料理中に手がぬれているけどレシピを確認したい、といった際にもスマホやタブレットを汚さずに使用することが可能です。また、画面を清潔に保つことができるので、共用でスマホやタブレットを使う際にもおススメです」
こんなにあるの?! タッチペンの種類を徹底解説
一口にタッチペンといっても、さまざまな種類があります。各タイプの特徴やメリット・デメリットを解説していただきました。
タッチペンにはどんな種類がありますか?
福田さん 「タッチペンはまず、入力方式や充電の有無によって、大きく3つのタイプに分けられます。
タッチペンは大きく3タイプ
①静電容量方式(充電や電池が不要)
ペン先に電気を通しやすい素材を使い、指先に流れている微弱な静電気をペン先に伝えて操作するタイプです。充電や電池が不要なのでいつでも使える点や、リーズナブルで手軽に使えるのもポイント。一方、ペン先の面積が小さいと指先の電流が伝わりにくいため、ペン先が太くなり、細かい作業には向きません。また、手袋をしていると電流がペン先に伝わりにくく、反応が鈍くなります。
②静電容量方式(充電や電池が必要)
こちらは、ペン先に電気を発生させて操作するタイプ。充電式と乾電池式があります。指の静電気を利用しないので、ペン先を細くすることができ、高機能なものが多いです。注意したいのが電池切れ。私もよくやってしまうのですが、タッチペンを持っていて、使いたいときに使えないことほど悔しいことはないので、気をつけましょうね。
③電磁誘導方式(充電や電池が不要)
磁界を発生させるペンでパネルをタッチすると、パネル側のセンサーが電流を検知して操作できるタイプ。充電や電池が不要で使い勝手が良いうえに、操作の遅延がなく、筆圧やペンの傾きも検知するなど高精度です。ただし、使用するには専用のデバイスが必要です。
一般的に価格は高い順から③→②→①となります。この3タイプの他に、独自技術で作られた高性能なApple Pencilなどがあります。
さらに、ペン先の素材や付加機能も複数あり、選ぶときのポイントになりますよ。
ペン先の素材
- シリコンゴム
柔らかく弾力性のある素材で、画面を傷つけにくいです。安価で入手しやすいのも良いところ。丸くて太いので、字を書くなど細かい作業には不向きですが、タッチやスクロール操作には適しています。
- 繊維
ペン先の滑りが良く、なめらかな操作感です。繊維を編んだ球状と筆状があり、筆タイプは本物の筆のように、とめ、はねなども反映するため、イラストを描くのに向いています。
- ディスク
ペン先に透明な円盤が付いているタイプです。ペン先が透明なので、タッチしたポイントを見やすいのが一番の特長。正確な位置をタッチしたり、細かい文字を書いたりするのが得意です。
- 樹脂
ペン先が細いタイプが多く、タッチポイントを見やすいので正確な操作が可能です。細い線を書けるので、細かい文字や精緻なイラストを描くのに適しています。
続いて、あると便利な付加機能もチェックしてみましょう。
タッチペンの付加機能
- 筆圧感知
タッチペンを画面に当てる強さによって、線の太さを変えることができます。表現の幅が広がるので、文字やイラストにこだわるなら必須の機能です。
- パームリジェクション(誤作動防止)
タッチペン使用中は、ペン先のみに反応する機能。手が画面に触れて誤作動が起きるのを防いでくれます。文字やイラストを描くとき、長時間ネットサーフィンをするときなども、画面に手をつけたままタッチペンを使えて快適です」
種類が多すぎて迷う人必見! タッチペン選びのポイント
多種多様なタッチペン。価格も、100円ショップで買えるものから1万円以上するものまで幅広くあるそう。一体どのように選べばよいのか、福田さんに教えていただきました。
福田さん 「高機能なものは当然、高価になりますが、本格的なイラストを描きたいなどのこだわりがなければ、中間価格帯のモデルや、用途によっては安価なもので十分な場合もあります。まずは何に使いたいかを考えてから、予算とのバランスで決めるといいでしょう」
各タイプの特徴と、おススメの用途を表にまとめてみました。購入に迷った際は参考にしてみてください。
タッチペンの種類 | 特徴 | おススメの用途 |
---|---|---|
静電容量方式(充電や電池が不要) | 充電不要で手軽、低価格 | お試し用、持ち運び用 |
静電容量方式(充電や電池が必要) | 高機能なものが多い、充電式と電池式がある | 細かい作業 |
電磁誘導方式(充電や電池が不要) | 高精度、筆圧や傾きも検知、使用には専用デバイスが必要 | 精緻なイラストの制作などプロ向き |
ペン先の素材 | 特徴 | おススメの用途 |
---|---|---|
シリコンゴム | 低価格、柔らかく画面を傷つけにくい | タッチやスクロールなどの一般的な操作 |
繊維 | なめらかな操作感、筆タイプは実際の筆のような描き心地 | 素早い操作が必要なゲーム、簡単なイラストや文字を書く |
ディスク | 手元が見やすく、正確なタッチがしやすい、タッチした際に安定感がある | ゲームなど正確なタッチが必要な作業 |
樹脂 | ペン先が細いため細かな操作がしやすい | 精緻なイラストや細い文字を書く |
タッチペンの付加機能 | 特徴 | おススメの用途 |
---|---|---|
筆圧感知 | 筆圧によって線の太さが変化するため、表現の幅が広がる | 文字やイラストのクオリティにこだわりたい |
パームリジェクション | 手のひらなどペン先以外が画面に当たっても反応しないため、誤操作を防止できる | 長時間の使用、イラストや文字を書く |
このほか、外出時にタッチペンを携帯したい人には、ペン先を保護するノック機能やクリップがついているタイプや、紛失防止にストラップ付きやストラップホール付きのタイプもおススメです。
なお、タッチペンを購入する際の注意点として、中古品は避けたほうが無難です。バッテリーがどれだけ消耗しているか分からないので、買ってからガッカリすることも少なくありません。また、実際に持ってみて、長さや重さ、太さなど、手に馴染(なじ)むものを選ぶのもポイントです」
タッチペンあるあるQ&A
最後に、タッチペンを使う際のよくある疑問点を福田さんに聞いてみました。
- Q. ペンの反応が悪いときはどうしたらいい?
A:タッチペンの電池残量を確認し、少なくなっていたら充電や電池交換をしてみましょう。ペン先や画面が汚れていないかも確認し、汚れていたらきれいにしましょう。それでも反応が悪いときは購入先の店舗やメーカーに確認してみてください。 - Q. ペン先を交換するタイミングは?
A:先端が欠ける、ゴムがひび割れるなど見た目の変化や、引っ掛かりやすくなるなど使用感に変化が生じたら交換期です。交換期を過ぎても使い続けると、画面を傷つける原因に。ペン先は消耗品であることを忘れずに、普段から状態を確認しながら使いましょう。 - Q. タッチペンとあわせて使うと便利なアイテムは?
A:保護シートを貼ることで画面に傷がつくのを防ぐことができます。また、イラストを描きたい人には、紙のような書き心地を再現できるフィルムがあるので、それを画面に貼るのがおススメ。ガラスフィルムを貼る場合は、ガラスフィルム対応のタッチペンを選びましょう。
また、スマホを手に持ってタッチペン入力をする場合、スマホを落とさないように強い力でスマホを握らなければなりません。スマホリングや、スマホやタブレット用のスタンドがあれば、手軽に安定した使用ができ、落下防止にもなります。
- Q. 対応機種の確認方法は?
A:店頭で確認するか、メーカーのウェブサイトで確認しましょう。 - Q. ゲーム機で使っているペンをタブレットやスマホにも使える?
A:ゲーム機のパネルは圧力に反応する「感圧式」、スマホやタブレットのパネルは静電気に反応する「静電容量方式」です。仕組みが異なるため、ゲーム機用のペンを使うことはできません。
価格も機能も、さまざまなタッチペンが登場している昨今。1本あると、スマホやタブレットの可能性がさらに広がります。購入を検討されている方や、用途がいまいち分からないという方は、ぜひこの記事を参考にしてみてくださいね。
(掲載日:2024年3月25日)
文:勝部美和子
編集:エクスライト