
画像生成AIとは、テキストや既存の画像をもとに、AIが新たな画像を生成してくれるツールのこと。SNSなどで画像生成AIで作られた画像を見た人も多いのではないでしょうか。最近では、広告や商品パッケージなど、ビジネスシーンでも活用が広がっています。今回は、急速に進化・普及している画像生成AIの基礎知識から、実践的な活用のポイントまでを、一般社団法人AICX協会代表理事 小澤健祐さんにうかがいました。
目次
画像生成AIで “理想の1枚” を作るポイントは「発想力」
画像生成AIに興味はあるけれど、難しそうで手を出しにくいという人も多いはず。まずは、画像生成AIがどのようなツールで、どんなふうに活用できるのか、小澤さんに教えていただきました。
はじめに、画像生成AIとはどのようなツールなのか教えてください。
小澤さん 「画像生成AIとは、テキストなどの情報をもとに、新しい画像を自動で生成するAIツールです。例えば、『猫が魚をくわえて歩いているイラスト』などと入力すると、その内容に合った画像を生成してくれます。実は、文章生成AIよりも早い段階で一般向けツールが登場していて、2022年が画像生成AI元年と言われています」
画像生成AIを活用するメリットはどの点にあるのでしょうか?
小澤さん 「メリットとして以下のようなことが挙げられます。
- 画像作成の作業を効率化できる
- 撮影や手描きでは難しい画像が簡単に作れる
- 現実には起こり得ない風景や世界観の画像が作れる
- ターゲットに合わせて、登場人物などの年齢や国籍、スタイルなどをカスタマイズできる
また、すでにある画像を編集・変換できる点も画像生成AIのメリットです。例えば、写真をアニメ風にしたり、背景だけ変えたりすることも可能です」
プロ並みの画像を簡単に生成できるということですか?
小澤さん 「一概にイエスともノーとも言えません。絵が上手な人は、画力だけでなく、頭の中に明確な世界観を持っているものです。つまり、絵を描くという行為には、大きく以下の2つのスキルが必要です。
- 頭の中で世界観やコンセプトを思い描く力
- それを視覚的に表現する力
現在の画像生成AIが担っているのは、②の「視覚的に表現する力」の部分。「描く」ことはできても、「何を描くか」という発想の源までをAIに任せることはできません。作りたい画像のコンセプトが曖昧なままでは、たとえ画像生成AIを使っても、思い通りの1枚にはなかなかたどり着けないでしょう。
描きたい世界観を頭の中でどれだけ鮮明にイメージできるか。それが画像生成を使う上で、最も大事なポイントなのではないかと思います」
抽象的な概念も簡単にビジュアル化! 画像生成AIにできること
主にどんな機能があるのでしょうか。
小澤さん 「画像生成AIには、さまざまな便利な機能が備わっています。まず、ユーザーが指示したイメージにもとづいて、新しい画像やイラストを生成する機能。これが最もよく使われている代表的な機能ですね。
また、先ほどお伝えしたように、既存の画像を加工することもできます。例えば、画像内の特定の要素を消す、別のものに置き換える、といった編集が可能です。さらに、画像の背景を自然に広げる拡張機能もあります。例えば、狭いスペースで撮った写真の背景を広げて、まるで広い空間で撮影したかのように見せたりとか。こうした機能をうまく組み合わせることで、イメージに合った画像を自在に作り上げることができます」
ビジネスシーンや日常生活で、どのように活用されているのでしょうか。
小澤さん 「活用シーンは非常に幅広く、インターネット上の情報をもとにしたあらゆるビジュアル作成に使われています。具体的な活用例としては、以下のようなことが挙げられます。
<ビジネスシーン>
- SNSコンテンツや広告ビジュアル・ロゴ、背景素材、Webデザイン用画像
- 教材やデータビジュアライゼーション用画像
- キャラクターやイラスト、ストーリーボード
- パッケージデザインやプロトタイプイメージ
<日常シーン>
- デジタルアート制作
- 年賀状やメッセージカード
- LINEスタンプなどのイラスト作成
- 写真の加工
私が監修をしているメディアでも、サムネイルや背景画像をすべて画像生成AIで作成しています。画像生成AIは、例えば『AIロボットの可能性』のように、写真やイラストでは表現が難しい抽象的な概念を、うまくビジュアル化する作業に非常に向いています」
設計図を描くように指示をする。画像生成AIの選び方と使いこなすヒント
ここからは、画像生成AIツールの基本的な使い方や、代表的な画像生成ツールを比較し、それぞれの特徴や適した用途もご紹介します。自分に合ったツールを見つけて、画像生成AIを上手に活用していきましょう!
ツール選びが成功のカギ! 代表的なツールの特徴をチェック
画像生成AIを初めて使う方がツールを選ぶ際に、チェックすべきポイントは何でしょうか?
小澤さん 「以下の5つのポイントを確認し、用途に合うツールを探してみてください」
- 目的に合った画像の生成が可能か
- 直感的に操作できるか
- 使用言語
- 料金
- 商用利用の可否
代表的な画像生成AIは、どんなものがありますか?
小澤さん 「現在、さまざまな画像生成AIが登場しています。今回は代表的なツールを5つピックアップしました。それぞれの特徴についても簡単にご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください」
| サービス名 (提供企業) |
特徴 |
|---|---|
| DALL·E 3 (ChatGPT/Microsoft) |
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| Midjourney (Midjourney) |
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| Stable Diffusion (Stability AI) |
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| ImageFX (Google) |
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| Adobe Firefly (Adobe) |
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ほかに、小澤さんのおススメのツールはありますか?
小澤さん 「上記以外でしたら、CanvaAIもおススメです。デザインツールのCanvaに統合された画像生成AI機能で、初心者でも直感的に操作できます。SNS投稿や資料作成など、実用的なデザイン用途に強く、生成した画像をそのままテンプレートに組み込める利便性の高さも特徴です」
画像生成AIの基本的な使い方
初めて使う方に向けて、基本的な使い方を教えてください。
小澤さん 「画像生成AIを活用する流れは以下の通りです。
- 目的を明確化する
どんな画像が必要かどのように使いたいのかを明確にしましょう。 - 目的に合ったツールを選ぶ
それぞれの画像生成AIツールの特徴から、自分の目的に合ったものを選びます。今回は手軽に使えるDALL·E 3(ChatGPT)で試してみましょう。 - 画像生成AIに指示を出す
プロンプト(テキスト指示)を入力して画像を生成します。「画像生成AIを解説する記事用のイラストを描いて」と入力すると、かわいいロボットの画像ができました。
- 生成した画像を編集する
必要に応じて調整を行い、画像を仕上げます。例えば「山の絵を犬の画像にして」と入力すると、以下のようなイラストに。
例えば「山の絵を犬の画像にして」と入力すると、こんなイラストに

犬だけ選択して「白い犬にして」と入力してみると…

白い犬の絵になりました! こんなふうに調整を繰り返して、理想の1枚を作り上げていってくださいね」

英語で指示した方がうまくいく? 思い通りの画像を生成するためのコツ
理想の画像を生成するためのコツについて教えてください。
小澤さん 「頭の中で思い描いた通りのアウトプットを得るためには、いくつかのポイントがあります。
- 最初に完成イメージをしっかり思い描く
なんとなく入力すると、AIも曖昧な結果を返してしまいがちです - プロンプトには基本的な要素をすべて盛り込む
被写体、視点や構図、画風、描写のトーンなどを明確にしておきましょう - プロンプト作成にChatGPTのような文章生成AIを活用する
イメージを言葉にするのが難しいときのサポートに便利です
画像全体をレイヤー構造のように考えるといいですね。例えば、『背景にビルが立ち並んでいて、道路がまっすぐ伸びていて、手前に主役のキャラクターがいる』というように、背景・中景・前景を分けて、頭の中で設計図を描くように構成していくと、イメージに近い仕上がりになりやすいです。
また、強調したい条件や制限したい要素を明確に指示することも大切。ネガティブプロンプト(含めたくない要素)の活用も効果的ですね。
さらに、画像生成AIは主に英語圏で開発されているため、英語で指示を出す方が望む結果を得やすい場合もあります。そのため、ChatGPTなどの文章生成AIツールを使って翻訳してから入力する人も少なくありません。
画像生成AIの難しさには、国ごとの文化背景の違いもあります。例えば『あいさつをしている人々』というシーンを思い浮かべるとき、日本では握手をしている光景を想像する一方で、ある国ではハグをしているシーンを思い浮かべるかもしれません。このように、文化的な違いも考慮しながら指示を出すことが大切です」
画像生成AIを使う際の注意点
ビジネスシーンや日常シーンに浸透しつつある画像生成AI。ここからは、画像生成AIを使う際、そして生成された画像を見る際に気をつけたいポイントについて教えていただきます。
ビジネスシーンや日常生活で画像生成AIを使用する際の注意点を教えてください。
小澤さん 「注意点は3つあり、1つ目は著作権やライセンスの確認です。他人の権利を侵害するような利用は避ける必要があるということですね。文化庁のガイドラインでは、特定のキャラクターなどの商標をプロンプトに含めることや、意図的に既存のキャラクターに酷似させる表現は禁止されています。
2つ目は商用利用の確認をすること。ツールによっては商用利用が制限されているものもあるため、事前に利用規約をしっかり確認しておくことが重要です。
3つ目は生成された情報の正確性をチェックすること。画像生成AIは、大量の学習データをもとに出力を行いますが、意図しない表現や誤情報が含まれていることもあります。
画像生成AIを使う際は、フリーランスのデザイナーに依頼するような感覚で、リテラシーを持って指示を出すことが求められます」
画像生成AIの進化は目覚ましく、リアルな画像が作れるようになってきています。AIで作られた画像を見分ける方法はあるのでしょうか?
小澤さん 「正直なところ、すごく難しいんですよね。被写体のピントや影の形などで判断できる場合もありますが、基本的には見分けるコツはないと考えた方がいいかもしれません。ウォーターマーク(透かし)を埋め込むといった技術もありますが、すべてのAIやプラットフォームがそれに対応しているわけではなく、完全な対策とは言えません。現状では、画像をむやみに信じ込まず、情報の真偽を確認するファクトチェックを心がけるなど、個人のリテラシーを高めるしかないと思っています」
AIリテラシーの高め方については、こちらの記事をご覧ください。
まだまだ成長中の画像生成AI。今後どのように進化する?
画像生成AIは、今後どのように進化していくのでしょうか。
小澤さん 「現時点での画像生成AIは、一般的な名詞(例えばリンゴや犬)には対応できますが、固有名詞や特定の現実世界の事象(例えば、渋谷のスクランブル交差点や東京メトロの丸の内線)を正確に描くことはまだできません。ただ、今後は技術の進歩によって、画像の画質や生成できる対象も向上していくことが期待されています」
画像生成AIを使って、誰でも簡単に魅力的な画像を作れる時代が来ています。一方、AIを使う際には、生成された画像が本当に正確かどうかチェックすることも大切です。使い方を工夫しながら、楽しく・賢く画像生成AIを活用していきたいですね。

(掲載日:2025年8月7日)
文:東谷好依
編集:エクスライト






