
私たちは毎日たくさんの「音」に囲まれて暮らしていますよね。家族や友だちとの会話やスマホの通知音、電車が走る音、カフェのBGMなど、音の大きさも高さも種類はさまざまです。このようなふだん何気なく聞いている「音」は、なぜ大きく聞こえたり、高さが変わったりして聞こえるのでしょうか?
目に見えない「音」をスマホで “見える化” してみましょう。
目次
音の正体は、空気の振動(=音波)
音は、空気の振動によって生まれる「音波」と呼ばれる波の一種です。例えば、「パンッ」と手をたたいたときの音は、手をたたいたことによって発生した空気の振動が、波のように広がって耳の鼓膜に届き、それを「音」として感じています。この空気の振動の違いによって、音の聞こえ方が変わってくるのです。

スマホアプリで「音」を計測してみよう
「音」を計測するのに必要なのは、スマートフォンと計測用のアプリだけ。アプリは、今回の計測では、音の周波数や音量をリアルタイムで測定・表示できる無料アプリ「音程チェッカー」と「騒音メーター」を使用してみます。
- ※
- ※
スマホ端末や周囲の騒音環境によって、計測値に差が出る場合があります。
どんな音を計測するか考えてみよう
計測する前に、どんな音を調べるかを決めておきましょう。音の大きさの違いだけでなく、楽器の音階による違いも調べてみると面白いかもしれません。
| テーマ | 調べたいこと |
|---|---|
| 家族の声 | 家族の声の高さの違い |
| 家の中の音 | 掃除機の音やドアの開閉音 |
| 動物の鳴き声 | 犬と猫の違い |
| 街の音 | 道路や電車の音の大きさ |
| 楽器の音 | 音階や楽器の種類による違い |
測定スタート! まずは街の音から測ってみよう
早速アプリをインストールしたら、計測に出掛けてみましょう。今回は、電車の高架橋の近くや交通量の多い交差点における音の大きさの違いを調べてみます。
安全に・楽しく測定しよう! 街中で音を測るときの注意事項
街の中での測定は、交通や通行人など周囲の状況や安全への配慮が必要です。
- 必ず立ち止まって測定(歩きスマホ禁止)
- 車や人の通行を妨げない場所で測定
- 子どもは保護者と一緒に行動
交通量の多い交差点。音の大きさはどう違う?
まず行ってみたのは、交通量の多い交差点。車が通り過ぎていくたびに、走行音がかなり聞こえてきます。(人通りの少ない?)細い路地と比べると、交通量の多い交差点ではどれぐらい音が大きいのでしょうか?

人通りの少ない路地

交通量の多い交差点
交差点での計測結果は約82dB(幅を持たせる方が自然な感じがする)。60dBを下回ることがある人通りの少ない路地と比べると、かなり大きな音が発生していることが分かります。環境によって、音の大きさに違いがあることが分かりますね。
| 測定場所 | 音の大きさ |
|---|---|
| 路地 | 63dB |
| 交差点 | 82dB |
電車が通過する音はどのぐらい大きい?
駅のホームや踏切などで電車が通過するとき、隣の人との会話がかき消されて聞こえなくなるほどの大きい騒音ですよね。一体どのくらいの大きさの音なのでしょうか?

電車が通っているときと通っていないときの音の大きさの違いを調べてみると、このような違いがありました。測定した場所は交通量も多い場所だったため、電車が通っていないときでも78 dB(デシベル)と、比較的音は大きめ。これが、電車が通過しているときには、85dBにまで上昇しました。
| 測定場所 | 音の大きさ |
|---|---|
| 電車が通ってないとき | 78dB |
| 電車が通ったとき | 85dB |
空気の振動の強さ(=音圧)で、音の大きさが変わる
音の大きさは、空気がどれくらい強く震えているか、つまり「音圧」で決まります。この大きさを表す単位が、先ほどから計測結果に出ている「デシベル(dB)」です。人間の耳が聞き取れる最小の音圧を0dBとし、それに対する相対的な大きさを表しており、音が大きくなるほど空気が大きく震えdBも大きくなります。10dB増えるごとに、体感的には約2倍の音量に感じると言われています。
音の大きさの目安(例)
| 音の大きさ(dB) | 音の例 |
|---|---|
| 10〜20dB | 時計の秒針の音 |
| 約30dB | ささやき声 |
| 約60dB | 普通の会話の声 |
| 約70〜80dB | 掃除機・ドライヤーなど |
| 約85〜90dB | 車の通る道路 |
| 約90〜100dB | 電車のホーム |
| 約100〜120dB | コンサート会場 |
| 約120〜140dB | 飛行機のエンジン近く |
- ※
音源との距離や環境によって数値は変動します。
また、振動はその発生源から距離が離れるほど小さくなっていきます。これと同じように、音源から距離が離れるほど、音の大きさも小さくなります。音源からの距離を変えて測定してみると、音の広がり方をより詳しく観察できるかもしれませんね。
なぜ音が高く聞こえたり、低く聞こえたりするの?
横断歩道の中には、視覚障がいを持つ方を誘導するための誘導音が備えられているものもありますよね。

この誘導音の大きさを測ってみると60〜70dBという結果に。視覚障がいを持つ方が安全に横断できるよう、やや大きめな音量ではありますが、先ほどの交差点のように交通量が多い場所では80dB前後の騒音が発生することもあるため、かき消されてしまうような大きさです。それでも誘導音がよく聞こえるのはなぜでしょうか?
空気の振動の速さ(=周波数)で、音の高さが変わる
高い音と低い音の違いは、時間あたりの空気が振動する回数によって決まります。1秒間に何回振動するかを示す数値のことを周波数と呼び、ヘルツ(Hz)という単位で表されます。

周波数が高い音は、音量が小さくても人間の耳に届きやすい特性があります。小鳥のさえずりや電子音、アラーム音が聞こえやすいのはこのためです。逆に周波数が低い音はこもったように聞こえることがありますが、空気中で減衰しにくく壁や床を通り抜けて広がりやすいため、遠くでも音が聞こえることがあります。遠くの花火大会の音が聞こえるのは、これが理由です。
周波数の例
| 周波数の目安 | 音の種類 |
|---|---|
| 60〜200Hz | 太鼓の音 |
| 130〜300Hz | 船の汽笛 |
| 165〜255Hz | 女性の声 |
| 400〜600Hz | 赤ちゃんの泣き声 (瞬間的に1,000Hz以上) |
| 1,000〜8,000Hz | 鳥のさえずり |
| 800〜3,000Hz | 携帯電話の着信音 |
| 17,000〜20,000Hz | モスキート音 |
- ※
数値は目安です。録音条件や音源によって変わる場合があります。
先ほどの横断歩道の誘導音がなぜ聞こえやすいのでしょうか。それは、交差点の音よりも通りやすい高い音になっているからなんです。車の走行音の一つ「ロードノイズ」は、タイヤと路面の摩擦によって発生する音で、一般的に50~500Hzとされています。これに比べ、信号機の種類にもよりますが、人が聴き取りやすい中〜高音域である1kHz前後と高い周波数の音が流れています。また、横断方向を判別できるように周波数や音を変更するなど、耳に届きやすい工夫がされています。
水の入ったグラスと空のグラスを指で弾いた時に音の違いがでる理由は?
音の高さは振動の速さによって決まります。グラスを指ではじくと音が聞こえるのは、ガラスが振動し、その振動が空気を伝わって音として聞こえるからです。ちなみに、水が入ったグラスと空のグラスでは、はじくと音の高さが変わるんです。
この違いは、水によってガラスの振動の速さが変わっているからなんです。
水が入ったグラスは、振動するガラスに入っている水も一緒に動こうとするため、ガラスに重さが加わった状態になります。この質量の増加によって振動全体の動きが鈍くなり、ガラスは速く振動しにくくなります。 さらに、水は液体としてガラスの動きに抵抗を与えるため、振動エネルギーが吸収され、ガラスの振動がより抑えられます。
これらの影響が重なり、水が入ったグラスは空のグラスに比べてより低い音が出るんです。
音階(ドレミファソラシド)で周波数はどう変わる?
音の高さが周波数で決まるのだとしたら、ドレミファソラシドの音階で、周波数はどのように変わっているのでしょうか? ピアノやリコーダーで、音階による周波数の違いを調べてみました。
ピアノの中程度の音域で計測した結果がこちらです。

ピアノ
| 音階 | ド | レ | ミ | ファ | ソ | ラ | シ | ド |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 周波数 | 256 Hz |
293 Hz |
330 Hz |
344 Hz |
388 Hz |
432 Hz |
491 Hz |
513 Hz |
| 音階 | ド | レ | ミ | ファ |
|---|---|---|---|---|
| 周波数 | 256Hz | 293Hz | 330Hz | 344Hz |
| 音階 | ソ | ラ | シ | ド |
| 周波数 | 388Hz | 432Hz | 491Hz | 513Hz |
音階が高くなるにつれて周波数も大きくなっていることが、数値で見てとることができますね。ピアノの調律師もチューナーなどを使って、「A(ラ)」の音を基準音として、440Hzや442Hzに合わせることが多いそうですよ。

リコーダーで測定してみると、最も高い「ド」が1,069Hzを記録しました。ピアノで測定した数値と比べて高い音が出ていることが分かりますね。
なぜ音が大きくなったり高くなったりするのか、音の性質には“ルール”があることがお分かりいただけたのではないでしょうか。目に見えない音も、このような方法により目で見ることが可能になります。世の中には他にもさまざまな音があります。
このように音を調べてみると、新たな気づきがあるかもしれませんね。ぜひ皆さんも身の回りの音の世界を探究してみてください。
(掲載日:2025年8月7日)
文:ソフトバンクニュース編集部




