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ビジネスパーソンであれば、自身のキャリアについて興味がない、考えたことがない、という人はいないだろう。しかし、平成29年に行われた経済産業省の調査によると、自分のキャリアやスキルについて、棚卸ししたことがあるという人は3割程度しかいない。
つまり、ビジネスパーソンにとって「キャリア」とは、興味深い事柄ではあるものの、具体的に何をしたらいいのか分からないが故に、考え始めてみても結論がでない悩ましい問題のようだ。
ソフトバンクではこの難問に対して、レゴ®シリアスプレイ®(LEGO® SERIOUS PLAY®)というメソッドを通し、ブロックを用いながら自身のキャリアや明日からのアクションプランを考えるワークショップを提供している。
レゴ® シリアスプレイ®とは、2000年代の初めにレゴ社がマサチューセッツ工科大学(MIT)と共同で開発した、企業経営や戦略構築を目的とする教育プログラムのメソッドである。
ソフトバンクでは、このレゴ® シリアスプレイ®が抽象的なモノごとを形にして考えることができる点に着目。社内での活用のみならず、働き方改革を考えるワークショップとして提供している。
それでは実際のワークショップの流れと参加者の反応はどうなのだろうか。ソフトバンク社内で実施されたワークショップを覗いてみた。
今回のワークショップは3時間で9つのワークに取り組む構成で、参加者はソフトバンクの社員5名。部署、年齢、性別もバラバラだが、全員の意見を共有できることがレゴ® シリアスプレイ®のワークショップの特長の一つだ。キャリアに対する考え方・重要視するポイントも異なる5名の、コラボレーションの結果とは---
まずはレゴブロックを触ることに慣れるため、自己紹介を兼ねた簡単なワークを体験。次に「悪夢のような職場をブロックで作ってください」という課題が出された。3分間で作品を作り、次の1分間で他の参加者へ説明。さらに次の1分間で他の参加者がその作品について作成者へ質問をする。
レゴ® シリアスプレイ®のワークショップに初めて参加した社員は「作るのが苦手なので短時間で考えて作るのに必死だった」と語る。普段触れる機会のないレゴブロックを使い、「キャリア」や「職場」という抽象的な課題を短時間で作り上げるということは、想像以上に集中力を要するようだ。
ある参加者は、自身に見立てたブロックを中心に置き、その周りを塀のように赤色のブロックで囲んだ作品を製作した。「周囲の塀に赤色を選んだ理由は何ですか?」の問いに対し、赤は自分の嫌いな色だという。
自分が集中しているときに作業を中断させられることにストレスを感じるという参加者は、さまざまな方向から自分へ質問が飛んでくる様子をブロックで表現し、人に監視されている、一方的にとやかく言われる状況が悪夢のような職場に感じる、と説明。
他の参加者も、細長くブロックを積み上げ、その上に人形の体のみを取り付けることで「不安定な状態」を表現したり、人形の頭をつけなかったことで「心を失っている状態」を表現するなど人それぞれだった。
それぞれが考える「悪夢のような職場」の作成と共有が終わったあとに、作品をテーブルに置いたまま、ひとつずつ隣の席へ移動し自分の前に隣の参加者が作った作品が置かれている状況に。
その状態で、次の課題「目の前に置かれた作品が、最高の職場になるようなストーリーを作って共有してください」が出された。他の参加者が「悪夢のような職場」だと思い作ったものを、今度は「最高の職場である」と説明しなくてはならない。
嫌いな赤色の塀を、自身が落ち着かない環境として表現した参加者の作品は、赤は情熱の色であり、仕事へのモチベーションを高める環境、とのストーリーが展開された。
また、作業中の他者からの干渉をストレスに感じていた参加者の作品は、監視ではなく、見守り・評価してくれていることの表れや、干渉者が分からないことを、この人に聞けば解決してくれる、という「信頼」を表現している、というストーリーに書き換えられた。他の参加者のストーリーを受けて、この作品を製作した参加者は、「横やりを鬱陶しく感じる→人から頼られている、という解釈は自分になかった視点だった。そういった風に考えていくと、また変わるのではないかと思った」と語った。
レゴ® シリアスプレイ®の特長のひとつは、手を動かすことだ。
本ワークショップでも、ファシリテーターが「手は外に出ている脳です。人の手の神経細胞は、脳細胞の70~80%に接続しているので“手”の力を信じて、考える前に、まずは手を動かしましょう!無意識のうちに作品に“あなた”が投影されます」と語ったのが印象的だった。
参加者の一人は、ワークショップを通してこの言葉を体感したと言う。「『手は脳です。』まさにその通りだと思った。何の気なしに配置や色遣いを選んだつもりが、よくよく考えるとちょっとブロックの形や色を変えたいなという意識が働き、手が動いていたと思う箇所があり、腹落ちしました」
今年度の新入社員という参加者は「『3年後のキャリアをレゴブロックで表現してください』という課題を与えられ、そこを考えさせてくれるワークショップではないのか」と、戸惑いも感じたという。3分間急ピッチで作るため、とりあえずパーツを探していると、パーツからこれは自分のこの感覚に合うな、という感情が生まれてきたという。また、パーツに自分の感情を当てはめていくところもあったという。戸惑いつつも、「頭が働かなかったら手を動かす」というアドバイスに従ったところ、3年後のキャリアが目の前で形となって表れた。
デザインシンキングのワークショップでは、自分のアイディアを文字化し、付箋やホワイトボードに書き込むことがある。頭の中で考えをまとめて文字を書くよりも、先に手でブロックに触れるほうが、考えていることを本当に伝えやすいのだろうか?その問いに対して、今回の参加者の回答は下記の通りだ。
ビジネスシーンでは、まず頭の中で思考し、意志や考えをまとめ、文字や発言などでアウトプットすることが多いだろう。しかし、頭の中で考えたことをいざ言葉にしようとするとき、うまく説明ができない、という経験は誰しもあるはずだ。「頭の中のアイディア」というカタチのないものを形にできる。しかも潜在意識も顕在化してくれる。それがレゴ® シリアスプレイ®だ。
「キャリア」とは、すぐに答えの出ないテーマだ。自身のキャリアや明日からのアクションプランを考えるきっかけとして、本ワークショップの開催を検討してみてはどうだろうか。
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