企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する上で必要なものとは?

2020年2月26日掲載

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さまざまな業種の企業で、デジタルトランスフォーメーション(DX:以下DX)が進み始めています。DXとはどんなもので、企業がそれを推進していくためには何が必要なのでしょうか。実現に向けて解決すべき課題も含めて、考えてみましょう。

目次

DXとは、企業が勝ち残るための変革のこと

今、あらゆる分野で、デジタル技術を駆使した新たなビジネスモデルが生まれ、既存の産業を揺るがすデジタル・ディスラプションと呼ばれる現象が次々と起こっています。ビジネス環境が大きく変わる中で各企業に求められているのが、DXです。

経済産業省の「デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するためのガイドライン」では、DXを、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義しています。

もう少し分かりやすくいえば、DXとは、デジタル化の波が押し寄せる社会で、企業が競争力を維持して生き残るためのデジタル技術を活用した大変革と言えるでしょう。

今後も私たちの社会は、ますますデジタル化していきます。高度なデジタル化が進んだ将来の市場においても企業が勝ち残ろうと考えるなら、DXを実現させて最先端のデジタル技術を取り入れ、時代のニーズに合う製品やサービス、ビジネスモデルなどの新しい価値を生み出し続ける必要があるのです。

IT化からDXヘ デジタル化の流れ

IT化」に関しては、これまでも多くの企業が取り組んできました。紙にプリントして郵送していた書類をPDFファイル化してメールで送信したり、紙で保管していた契約書や図面などをデータにして社内で一括管理したりと、多くのアナログなデータがデジタル化されたことで、ビジネススタイルは大きく変わり、企業の業務は効率化されました。

IT化を支えてきたのが、在庫管理システム、会計システムなどの基幹システムや、PC、メールといった技術(ツール)です。

といっても今までのIT化では、アナログなデータを部分的にデジタル化していたにすぎません。近年発展しているデジタル技術のおかげで、データをよりビジネスに適した形に高度にデジタル化することが可能になっています。そんな最先端のデジタル技術を使った変革が、DXです。

DXを支えるデジタル技術の中でも、中心的な役割を担うのが、人間にしかできなかった知的行動の一部をコンピュータで再現する「人工知能(AI)」や、車や家電などのモノをインターネットに接続し、情報を収集・分析することで新たなサービスを生み出す「IoT(Internet of Things:モノのインターネット)」です。

DXが実現すれば、業務はさらに効率化するでしょう。新しい製品やサービス、ビジネスモデルの創出が可能になり、競争力や生産性も高まると予想されます。

DX推進に必要なもの

企業がDXに取り組む場合、通常は既存の基幹システムのままでは対応できないため、システムを大幅に見直すか新しく構築することが前提となります。あわせて、DX推進に特化した専門組織の設置も必要でしょう。

というのも、独立行政法人 情報処理推進機構が2019年に発表した報告書「デジタル・トランスフォーメーション推進人材の機能と役割のあり方に関する調査」によると、専門組織を特に設置しなかった企業よりも設置した企業の方が、DX推進において、より高いレベルの成果を上げていることが分かっているためです。

なお、同調査では、最も高いレベルの成果を上げたのは、DX推進専門組織を設置した上で、さらに情報システム部門が関わったケースだったという結果も出ています。専門組織と情報システム部門とが一丸となってDXに取り組むことが、成功のカギとなりそうです。

また、DX推進を担う専門的なスキルと知識を持った人材も不可欠です。

具体的には、推進のリーダー役となる「プロデューサー」、新規事業を企画立案する「ビジネスデザイナー」、システムを設計する「アーキテクト」、大規模なデータを扱い、分析する「データサイエンティスト」、人工知能(AI)を開発する「AIエンジニア」、ユーザ向けに使いやすいシステムをデザインする「UXデザイナー」、システムの構築や保守・運用などを担う「プログラマ」「エンジニア」といった職種が必要になります。

DXを推進する上での課題

ただし現状では、多くの企業がDXの重要性を理解しつつも、推進を阻むさまざまな課題を抱えており、なかなか変革を進めることができていません。次に、日本の企業がDXを推進する上で直面しがちな課題を挙げます。

既存システム

多くの企業において、既存のITシステムは老朽化していて、新たな事業戦略には適さなくなってきています。
繰り返し拡張し続けた結果、システムが複雑化しているケース、構築した担当者が退職してしまったために内容がブラックボックス化しているケースも少なくありません。また、長期間、事業部門ごとに異なるシステムを使ってきたために、企業全体でのデータ管理や連携ができなくなっているというケースもあります。
いずれのケースでも、既存システムがDXの推進を阻む要因になります。

資金

企業によっては、資金不足がDX推進を阻む壁になっています。DXを進めるには、既存システムの刷新が欠かせませんが、それにかかるコストが大きすぎて刷新に踏み出せないケースのほか、老朽化した既存システムの維持費が大きな負担となっているケースもあります。

経済産業省が2018年に発表した「DXレポート~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~」によると、日本企業のIT関連予算の8割は、現行ビジネスの維持・運営に当てられているといいます。ここからは、多くの企業が、新たな価値を生み出すようなIT戦略に十分に資金をかけられていないという実情が読み取れます。

人材不足

人材不足も深刻な課題です。DX推進には、先述の通り、顧客のニーズに合うサービスや事業を企画できるビジネスデザイナーや、最新のデジタル技術に精通したエンジニアなど、専門性の高い人材が不可欠です。しかし多くの企業では、そのような人材を育成できていない上に、社外から確保するのも難しいという状況です。

社内の意識

既存システム、資金、人材といった物理的な課題のほかに、デジタル化が進む将来への危機感が社内に浸透しない、組織の変革に対する社内の抵抗感が強いという社内文化・意識の問題も、多くの企業でネックになっているようです。

まとめ

DXを進めていくには、上記のような課題に対して、どのような対策がとれるか、また解決できる見込みはあるのか確認することが必要です。自社の現実を的確に把握した上で戦略を立てることが成功への近道といえます。

社内の意識については短期間で一気に変えることはできませんが、第一歩は、経営者自身が、将来への強い危機感と、たとえ困難でも改革を進めるという固い意志を持つことです。その上で情報共有や社員教育を行いながら、従来の慣習や業務のやり方を見直すなど、地道に組織改革に努める必要があるでしょう。

実際にDXを推進し、成果を実感している企業の中には、他社と連携している企業も少なくありません。自社に技術や人材が不足している場合は、DX専門の組織を持つソフトバンクのような企業と新規事業を共創していく道もあります。ソフトバンクでは法人向け事業戦略を打ち出すためにIoT、5G、AIといった専門知識を持つ部門を作り、DXへの取り組みをサポートすることにいち早く動いています。こうした専門企業のアイデアと技術力を活用するのも選択肢のひとつとして検討してみましょう。

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