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2021年3月15日掲載
アリババグループの物流業務を担当する菜鳥網絡科技有限公司(ツァイニャオネットワーク、Cainiao Smart Logistics Network、以下、菜鳥)は、自らを「インターネット・テクノロジー・カンパニー」と位置付けています。物流ネットワークのプラットフォームサービスに専念しており、アリババグループの更なる発展の一役を期待されている存在です。
菜鳥は「中国全土24時間、全世界72時間の配送」を目指し、「中国物流産業のデジタルトランスフォーメーション」(Digital Transformation of the Logistics Industry)を実現するため、コンシューマー・ショップオーナー・物流パートナーに向けて様々な物流・サプライチェーンサービスを提供しています。今回は、菜鳥のサービスを支えるテクノロジーを解説しましょう。
菜鳥のデジタル物流・サプライチェーンシステムは、輸送・在庫・宅配・ファイナンシング・セールスなどを包括的に一体化したシステムです。
倉庫プランニング、需要予測、在庫最適化、商品スケジューリング、プロモーション連動などのデータ分析や人工知能技術を生かし、スマートチェーンを実現しようとしています。
アリババグループのリソースを活用し、物流・宅配業者、ショップオーナーに向けて柔軟な物流・サプライチェーンと商流リソースを提供することにより、ダブルイレブンなどに代表される大型ECイベントへの対応も可能にします。
菜鳥は中国国内だけでなく、グローバルにも物流ネットワークを構築しています。クアラルンプール、バンコク、ドバイ、モスクワ、レーヨンなどの大型物流拠点「eHUB」をベースに、ファーストマイルからラストマイル、トラック輸送、倉庫管理、通関手続き、現地配達にわたるエンドツーエンドの物流・サプライチェーンサービスを提供しているのです。
たとえばマレーシア、インドネシアなど東南アジアでは、LGF (Lazada Global Fulfillment)サービスを提供しています。中国と同じく、ショップオーナー・物流会社・配達会社・倉庫会社・コンシューマーなどがこのシステムで繋がり、またユニークなデジタルIDが付けられた荷物が、購買・物流・配達の一連のプロセス内で認識・管理されます。
その結果、いつでもどこでもリアルタイムに荷物の搬送・配達状況を確認することが可能となりました。日本にも今現在、東京・大阪・横浜・神戸などに物流拠点が設けられています。
菜鳥はコンシューマー・ショップオーナー・物流パートナーに向けて、物流・サプライチェーンに関するクラウドサービス及びソリューションを提供しています。
クラウドサービスの提供内容は、通信サービス・データサービス・地図サービス・ロジスティクアルゴリズム・IoTサービスなどです。ソリューションの提供内容は、宅配ソリューション・輸送ソリューション・倉庫ソリューション・ショップオーナー向けソリューション・生鮮・冷凍食品向けソリューションなどになります。
菜鳥の物流・サプライチェーンシステムの要となるのが、IoTデジタルシステムです。さらにその中核を担うのが、「CAINIAO LEMO」と呼ばれる物流情報を効率的に収集・連動するPDA(Personal Digital Assistant)デバイスとなります。
CAINIAO LEMOは、Bluetooth AoA(Angle of Arrival)技術と菜鳥のデジタル・スペース・マネジメント・システムを利用しています。
オンラインとオフラインのデータをリアルタイムで融合することで、倉庫や物流センターの作業員の作業効率の大幅に向上しました。CAINIAO LEMOを通じて作業員のタスクが自動的に配分され、振動や光などの案内により、作業員は、荷物のピッキングや商品の補充などが簡単に行えます。
CAINIAO LEMOには、菜鳥が自社研究開発できた軽量型IoTオペレーティングシステム「CAINIAO LEMO OS =CNThings」も搭載されています。
CNThingsは、クラウド・エッジ・デバイスを一体化したIoTインフラを目指して構築されたものです。倉庫や物流センターで利用する各種デバイスと菜鳥のデジタル物流・サプライチェーンシステムとの繋がりをサポートすることで、物流PDAのパフォーマンスを最大限に引き出せます。
また、自社のデジタル・スペース・マネジメント・システムにデジタルツイン(Digital Twin)技術を利用しています。倉庫や物流センターのスペース、貨物棚、貨物や設備などの情報をリアルタイムに収集し、デジタル空間上に物理空間を再現しているのです。
作業員がCAINIAO LEMOを持って顔認識で物理空間に入ると、システムが自動的にPDAチップを検知し、作業タスクを配分します。またアクーストオプトエレクトロニクス(Acousto-optoelectronic)技術で対象貨物を自動的に認識したり、WMSシステムに自動的に登録したりすることによって、作業員の作業負荷を大幅に低減できるのです。
ショップオーナー向けのデジタル・サプライチェーン・センターである菜鳥のDSCC(Digital Supply Chain Center)は、ショップオーナーの物流・サプライチェーンのマネジメントを支援します。市場需要の予測、在庫状況の健康診断、物流・宅配の監視と追跡、消費者体験の提供などの場面において、異常検知・データ分析・意思決定支援などを含めたワンストップサービスの提供を可能にしました。
DSCCを利用すれば、フルサプライチェーンにわたるオンラインデータとオフラインデータの融合、商流と物流の融合、及びサプライチェーンの総合的な効率アップを実現することができます。
スマホなどのモバイル端末で、いつでもどこでも自社のサプライチェーンの状況を確認することができるので、ショップオーナーにとって非常に重要なビジネスツールとなるでしょう。
菜鳥は、物流・サプライチェーンシステムを提供するプラットフォーム型ビジネスモデルを取っています。このビジネスモデルの成否は、最終的に菜鳥が提供するプラットフォームのコストパフォーマンスの高さがポイントとなります。
最先端のテクノロジーを生かし、利用者のビジネスを強力に支える競争力のあるものでなければなりません。そういった意味では、今は必ずしも成功したとは言い切れません。
熾烈な競争の中で持続的に進化し、勝ち続ける必要があります。今後、菜鳥はどこまで成長できるのでしょうか。その動向を引き続き注視したいと思います。
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