【2021年版】事例に見るIoTの最新情報

2021年3月17日掲載

【2021年最新版】事例に見るIoTの最新情報

最近、身近でIoTの活用シーンを見かけることが多くなってきました。今後、どのように活用が広がり、何を実現していけるようになるのでしょうか。「モノ」がインターネットに接続できるようになったことで、その場にいなくても遠隔で現場の状況を確認できるようになりました。例えば、時間貸し駐車場の場合、利用者は離れた場所からスマートフォンやPCを使って駐車場の空き状況をリアルタイムに確認できます。
また、IoTを活用した自動運転農機や農薬散布用のドローンを活用したスマート農業にも注目が集まっており、市場投入に向けた取り組みが始まっています。このようにさまざまな場面でIoTが活用されることによって、これまで人が行っていた作業を、自動運転の機械に任せることができ、作業負担が軽減するようになりました。さらに、農地データを収集することで、目視では管理しきれないところまで確認でき、品質や収穫量の向上にもつながります。本稿では、IoTの最新の活用動向を探りながら、さまざまな分野での活用事例をひもとき、今後の可能性を考えていきます。

目次

IoTとは

急速に普及が進むIoT(Internet of Things:モノのインターネット)。PCやスマートフォンの普及、通信技術の進化によって、モノがインターネットに接続され、情報をやり取りできるようになりました。例えば、住宅、車、家電製品、電子機器、ロボットなどがインターネットに接続され、それらから得られたデータを分析・活用する仕組みがIoTです。

IoTは、4つの要素「モノ、センサ、通信ネットワーク、情報を処理するアプリケーション」で成り立っています。

例えば車、家電、農機、時計、トイレ、ベッド、工場内の機器、ロボットといったモノにセンサを取り付けて、モノの位置情報・状態・周辺の気温や湿度など、さまざまな種類の情報を取得します。

センサが取得した情報は、ネットワークを通じて送信されます。アプリケーションを使って情報を可視化・分析し、より使いやすい情報へと処理した結果、必要なデータをビジネスに生かすことや、遠隔地からモノの制御を行うことが可能になります。

IoTの最新動向

近年IoTの導入が進められている理由のひとつに、新たな生活様式への移行が挙げられます。新型コロナウイルス感染症の感染防止策の一環として、テレワークの導入や3密(密閉・密集・密接)の回避が進められており、これまでとは違った生活様式が求められています。この生活様式の変化に対応するため、IoTの活用も促進されたと言えるでしょう。また湿度・温度・二酸化炭素濃度・人感などの各種センサを備えた室内など、さまざまな領域でIoTが活用されるようになりました。

こうしたIoTを可能にする最新の技術についても見ておきましょう。

新たなデジタル基盤としての5G

総務省の「令和2年 情報通信に関する現状報告」では、新型コロナウイルス感染症の流行をきっかけとして、ICTは生活・経済活動の維持に不可欠な技術であることを強く認識することになり、デジタル化はさらに加速度的に進むと予測しています。さらに、個人、産業、社会のあらゆるレベルにおいて、新たな価値の創造へとつながると社会の動きを分析しています。そして、5G(第5世代移動通信システム)をはじめとするデジタル基盤やIoT、ビッグデータ、AIといったデジタル技術の活用が重要になることに触れています。

5Gは、高速・大容量、低遅延の通信です。多数同時接続も可能とするので、IoT時代の基盤として社会的インパクトをもたらすものとして5Gは欠かせないと言えるでしょう。例えば、災害の状況を把握するためにドローンを飛ばして、現地のリアルタイムの状況を映像で確認し、救助計画や以後の防災計画に活用することができます。ドローン以外にも、精緻な操作がリアルタイムで行えるようになることで遠隔手術の可能性が広がり、医療の地域格差解消につながると期待されています。

業種ごとの取り組み状況と市場の拡大

総務省の「令和元年版 情報通信白書」によると、日本のIoT導入状況は、全体では23.1%。IoTを利用する側の企業に限れば20.6%が活用しています。活用目的として「業務効率の向上(従業員の負担軽減)が最も多く挙げられています。

続いてIoTの市場の変化を見ておきましょう。総務省の「令和2年版 情報通信白書」では、世界でIoT・AI・5Gの商用開始等に伴いIoTデバイス数は産業用途やコンシューマ向けで大きく増加すると予測を示しています。日本においてもこの動きは同様であると考えられます。

その他、社会の動向から考えると製造業、農業、医療などはIoT活用で喫緊の課題解消、業務改善、働き方改革への取り組み推進といった視点で期待が高まっています。

製造業におけるIoT

働き方改革、業務の効率化、データを活用した新規サービスの開発など、さまざまな可能性を実現する取り組みが進められています。例えば、工場での製造工程の見直しや設備管理の効率化、安全性の向上を図るために、IoTを積極的に取り入れる動きが見られます。製造工程においては、設備の稼働率を向上させるために、IoTによって故障の早期発見・対応やメンテナンス時期の検知を行い良好な稼働状態を保っています。また、製造工程を自動化することで稼働時間を柔軟に設定することができます。さらにIoTを導入した製品を顧客に提供することで、データを収集し、製品のメンテナンスサービスや故障への対応といったサービスを充実させることも可能になります。このようなIoTの活用によって、働き方改革や業務効率化だけでなく、顧客満足度を高めるための営業の充実化にもつながるのです。

農業におけるIoT

日本の農業が抱える深刻な問題は後継者不足、労働者不足です。農業従事者の不足は、少子高齢化の中で問題解決が難しい状況です。最近は新規就農者の数は、微増あるいはやや減少を繰り返す状況であり、49歳以下の就農希望者の割合も増えていないため、農業技術を継承していくのが難しいと言われています。理由として考えられるのが、農業技術習得までに時間がかかることです。気象・天候、土の状態といった複雑に絡み合った要素を、長年培われた経験によって判断して作物を育てることが多いため、すぐに熟練者のように十分な生産量が確保できず、継続できなくなり離職する人が多いのです。そこで期待されているのがIoT、ビッグデータを活用したスマート農業です。農場で取得したデータを可視化することで作物の管理を行い、熟練者のノウハウを見える化することで農業技術の標準化を図ります。また、トラクターのような農機を自動走行させて少人数でも大規模な生産につなげることができます。こうした、誰でも参入しやすい農業を実現するのがIoTの活用だと期待されているのです。

医療・介護におけるIoT

深刻な人手不足が慢性的となっている医療・介護の現場においても、IoTの活用は大きな注目を集めています。例えば、介護施設において要介護者が利用しているベッドや室内にIoTを導入することで、介護職員が離れていても離床管理や室内の環境把握が可能です。こうした活用は、夜間で介護職員が少ない状況においても適切な介護を提供することにつながります。さらに、ウェアラブルデバイスを要介護者や患者が着用することで、体温や脈拍といった生体データをリアルタイムに把握することも可能となるため、体調変化を早期に察知できることが期待されています。

海外の状況

前出の「令和2年 情報通信に関する現状報告」では、5Gの普及によってコンテンツの大容量化やIoTデバイスの普及は加速するとしています。しかし、アメリカやドイツの企業のデジタルデータ活用と比べると、日本は「活用している」「検討中である」とする企業はまだ少ないと言えます。

2020年7月に国際連合が発表した「世界電子政府ランキング2020」において、日本は電子政府先進国にランクインしています。しかし、2018年のランクは10位だったのに対し、2020年の今回は14位。

このランキングはオンラインサービス、人的資本、通信インフラの3分野で、電子政府発展度指標を算出した結果です。日本は人的資本や通信インフラについては前回より順位を上げましたが、一方でオンラインサービスでは順位を下げました。

新しい時代における生活やビジネスの在り方に対応すべく、日本でも「経済財政運営と改革の基本方針2020」(内閣府)の中に、「デジタル・ガバメント実行計画の見直し及び施策の実現の加速化」「社会全体のDX実装の加速化」「テレワークの定着」「書面・押印・対面主義からの脱却」などの項目が盛り込まれています。

最新事例

では、IoT活用の最新事例を見ておきましょう。

建設現場の未来を創造する「スマートコンストラクション」

参考:https://smartconstruction.komatsu/index.html

株式会社小松製作所では、労働力不足やオペレータの高齢化、その他多くの現場の課題を解決し、未来の建設現場を創造するためのソリューションとして、「スマートコンストラクション」を提供しています。スマートコンストラクションとは、建設プロセスにおける全てのモノをICTで接続することによって、測量から検査までの現場における全ての作業を可視化して、安全な労働環境と高い生産性を実現するスマートな現場の創造を目指すためのソリューションです。

具体的にスマートコンストラクション導入によって期待されるのは、「安全な施工の実現」「労働力不足の解消」「生産性の向上」“i-Constructionへの準拠”です。

従来の施工においては、技術者が現地に赴き、測量をした上で、設計図をもとに施工土量を算出し、設計図に合わせた丁張を行ってから、施工に取りかかることが必要でした。全工程をそれぞれの技術者が現地で作業するため、天候や現場環境によっては危険を伴う可能性もありました。「スマートコンストラクション」を導入し、全工程の情報と3次元データを一元管理することで、例えば、現地にドローンを飛ばして入手した測量データを分析して設計・施工計画を立て、現場ではICT建機によって施工を実施することが可能です。また、3次元計測データと3次元設計データを活用して、効率的で効果的な検査を実施することもできます。こうした環境が実現されれば、技術が標準化され、労働力不足の解消につながると期待されます。

農機×ICT「スマート農業」

参考:https://www.kubota.co.jp/innovation/smartagri/index.html

株式会社クボタは、利益の高い農業経営を可能にするソリューションを開発し、提供しています。

超省力、大規模生産を実現するために、GPS自動走行システムを導入して、農業機械の夜間走行、複数走行、自動走行を可能にします。人が行っていた作業能力の限界が打破され、生産性の向上が期待されています。

また、作物に最適な栽培法を選択することで、多収穫、高品質を実現。作物にはそれぞれに適した環境や栽培方法があります。そうしたデータをセンシング技術や過去のデータから分析して導き出し、作物のポテンシャルを最大限に引き出す栽培を可能にします。

さらに実現を目指すのは、長年の経験によって行われてきた農作業をデータ化し、農業ノウハウを可視化することで誰でもが就農しやすい環境です。

このように「農機自動化による超省力化」「データ活用による精密化」を主軸に、スマート農業の実現に向けた取り組みが進んでいます。

施工現場の状況を遠隔管理できる「スマートコントロールセンター」

大和ハウス工業株式会社と日本電気株式会社は、施工現場における現場監督者や作業員の業務効率や安全性を向上させるための遠隔管理実証実験を2020年10月1日から開始。この実験では全国10ヵ所にある事業所に、遠隔管理をする「スマートコントロールセンター」を設置。多くの施工現場を見守る心臓部として、複数の施工現場の状況や作業員のデータを、AIを用いて分析、管理を行っています。

仕組みとしては、まず、戸建て住宅の施工現場に設置されたカメラやセンサなどからデータを収集。複数の施工現場から、現場の映像や作業員データといったさまざまなデータが集められます。この時に使用するカメラは定点観測用には固定カメラを、特定の場所を一時的に確認したい場合はウェアラブルカメラを使用します。

集められたデータはセンターで一元管理され、施工現場の状況を把握した上での遠隔によるサポートに活用。各センターでは常時5つの現場を管理しています。

また、各現場の情報は現場監督者、作業員が端末を通じて共有することができるので、コミュニケーションを取りながら作業効率の向上を図ることも可能です。

さらに、この実証実験においては、AI技術による現場映像の分析や作業進捗状況といったデータベースを構築し、工業部の部材生産や物流との連携の最適化を目指しています。

大和ハウス工業は2021年4月以降、遠隔管理の対象を戸建て住宅から大きな現場へと拡大し、現場監督者の作業効率向上を進める予定です。またNECは2021年度中に一般の現場でも施工管理のテレワーク化の実現を図ります。

新しい介護の在り方「お世話する」から「自立支援」へ

参考:https://wisdom.nec.com/ja/feature/healthcare/2020112001/index.html

介護現場の軸足は自立支援・重度化防止へと変わり、要介護者の自立に向けた取り組みが求められています。一方で、人手不足が慢性化する現場では、自立支援に必要な専門家の確保が容易ではありません。そうした中、日本電気株式会社は「リモート機能訓練支援サービス」の開発を進めてきました。このサービスはデイサービスの利用者を対象としたもので、理学療法士や作業療法士といった専門職員がリモートで個別機能訓練をサポートするためのクラウドサービスです。

開発にあたっては、100人以上の理学療法士や介護事業者からの意見を収集。遠隔で正確に、的確な要介護者の把握ができるかどうかを繰り返し検証・実験しました。

このリモート機能訓練支援サービスの概要は、まずデイサービスで要介護者の希望や要介護度、日常生活動作などを登録し、歩行動画を撮影します。その映像とその他の情報をあわせたデータを、NECと提携している理学療法士が評価レポートを作成し、要介護者ごとの生活目標や身体目標といった運動プログラムを考え、デイサービスに提供します。デイサービスでは提供されたプログラムを活用して、要介護者の支援を実行。また、要介護者は機能訓練指導員のもと、端末を利用して推奨される運動の動画を見ながら、実際に運動を行うことになります。

こうした医療・介護業界とNECとの共創によって形になった「リモート機能訓練支援サービス」は2020年3月から提供がスタートしています。

小型低速ロボットで住宅街向け配送サービス

参考:https://news.panasonic.com/jp/press/data/2020/12/jn201207-2/jn201207-2.html

パナソニック株式会社は2020年11月から神奈川県藤沢市のFujisawaサスティナブル・スマートタウンにおいて、小型低速ロボットを使った住宅街向け配送サービスの実証実験として公道での走行検証を行い、2021年2月から実証サービスの提供と検証を実施。人とモビリティの共存するコミュニティづくりへの貢献を目指しています。

Fujisawaサスティナブル・スマートタウンというのは、パナソニック工場跡地で実施されているパナソニックをはじめとした18団体と藤沢市が参画するまちづくりプロジェクトです。2,000人ほどが実際に暮らすスマートタウンとして、持続可能なまちづくりに取り組みながら、社会や地域の課題を解決することを目指しています。

今回の実証実験の概要は、まず自動走行ロボット公道走行実証を行うため、管制センターと自動走行ロボットを公衆インターネットで接続し、オペレータがロボット周囲の状況を把握・監視。自律走行するロボットが自力で障害物回避することが難しい状況である場合は、遠隔操作に切り替えて走行することを実証するというものでした。

2021年2~3月に配送サービスが開始されました。ロボットを利用した配送サービスによって省人化、非対面での荷物の受け渡し、ロボットと遠隔管制センター間での対話機能によるコミュニケーションを検証します。

社会が抱える課題解決への取り組む視点でもIoTが有効

IoTは、生活の中で身近な存在となりました。さまざまな領域での導入が進むことで、時間や場所によって制約されていた活動が可能となり、社会が抱えている労働力不足や高齢化といった課題への取り組みも進むでしょう。こうした変革は生活様式や働き方への変化をもたらします。例えば、IoTがさらに一般的なものになると、私たちがモノを利用することで、利用者の購買履歴や運動履歴、健康状態が行動データとして収集・解析され、その人に最適な情報やサービスが提供されるようになると期待できます。また、病気の早期発見も今以上に可能になるかもしれません。そうなれば健康寿命を延ばすことができ、高齢者でも活き活きと自分の能力に応じた仕事を継続することも考えられます。企業にとっては人材不足の課題が解消できる可能性が高まるでしょう。

こうした進展を実現するために、IoTを導入する企業がそれぞれに自社内で環境を整える必要が出てきます。しかし、社会の動向、世界的なレベルへの対応など、将来的な見通しや対応力の確保、それに伴う人材の確保といった点を考えると、ICT化、IoT導入を検討した段階で、ノウハウと多くの事例、専門的な知識と技術力を持った専門企業との連携やアドバイスの活用が、最も効果的な選択肢だと言えそうです。多くのソリューションを提供し、専門性の高いサポート体制のあるソフトバンクとの連携、相談などはIoT導入を成功させる近道だと言えるでしょう。

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