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2021年10月28日掲載
2021年9月に、世界経済フォーラム(WEF, World Economic Forum)により、世界で新たに21の「ライトハウス(Lighthouse、灯台)工場」が追加されました。これにより累計で90工場が認定されたことになります。
今回はその中から中国大手の建機メーカー「三一重工(SANY Heavy Industry)」のライトハウス工場を紹介します。
今回新たに認定された21工場のうち、10工場は中国国内の工場です。これで中国国内にある認定工場は合計で31工場となり、全体の約3分の1を占めることになりました。
三一重工は、中国最大の建機メーカー「三一グループ(SANY Group)」の子会社として1994年に創設されました。主に油圧ショベル、コンクリート機械、掘削機、クレーンなどの建機を製造しています。中国国内では長沙、北京、上海、瀋陽、昆山、珠海、ウルムチなどにビジネスを展開しており、海外ではアメリカ、ドイツ、インド、ブラジルなどにも進出しています。
三一重工は今年5月に公開された世界的な経済誌『フォーブス(Forbes)』が発表した世界トップの公開企業2,000社を順位づけしたランキング「Global 2000」の2021年版では468位にランクインするなど、世界建機業界の主要プレイヤーとして注目を集めています。
2021年9月に三一重工の北京工場は、重工業として世界で初めてライトハウス工場に認定されました。この工場は杭打ち機を生産する工場であり、世界最大の杭打ち機の製造基地でもあります。
今回の認定は、WEFから「多品種・小ロットの建機市場における需要の高まりや複雑化の増加に直面している三一重工は、高度なヒューマン・マシン・コラボレーション、自動化、人工知能、モノのインターネットなどのテクノロジーを駆使することにより、労働生産性を85%向上し、生産サイクルを30日から7日に短縮した」と評価されています。
この工場は、北京郊外に位置しており、敷地面積は40,000平方メートル。フレキシブルマニュファクチャリング方式を採用し、三一重工の主力製品回転式掘削リグなどを生産しています。工場には、5G、クラウドコンピューティング、人工知能などの技術を幅広く利用しています。
三一重工は、デジタルトランスフォーメーション(DX)の一環として2018年に北京工場の建設を計画しました。また、北京工場を建設するために、三一グループの以下のリソースを生かしました。
北京工場で生産する杭打ち機械は非常に頑丈な装置であり、製品のサイズが大きく、重いという特徴があります。たとえば、170種類のドリルパイプの中には、長さ27メートル、重さ8トンという大型の製品もあります。
この工場は柔軟で小回りの効く生産センターである8ヵ所のフレキシブル・マニュファクチャリング・センター、16本のスマート生産ライン、そして375台のコネクティッドデバイスを持っています。2018年から本格的に生産の自動化、デジタル化、インテリジェンス化を進め、インダストリアル・インターネット、人工知能、モノのインターネットなどの技術を利用・融合し、大きな変貌を遂げました。
北京工場はシステムの観点から見ると、主に6つのシステムにより構成されています。
三一グループ全体としては、2025年までに、売り上げ「3,000億人民元(約5兆円)、工場作業員3,000人、エンジニア30,000人」と言った「三つの3」の目標を掲げており、バッテリー・電子制御・電気駆動装置の研究開発を進める電化、生産のフルプロセスの高度な管理を目指すデジタル化、人工知能・AR・IoT技術を駆使したスマート化といったDXの方向性を確立できています。
三一重工は三一グループの中核企業として最も先端的なテクノロジーに取り組んだ結果、北京工場がライトハウス工場に認定されました。これをきっかけに、以下のようなグループ全体のさらなるDX化が計画されています。
このほか、三一重工は、ハイアール(Haier)、美的集団(Midea)、フォックスコン(Foxconn)などと同じく、自社のライトハウス工場のベストプラクティスをほかの会社にも提供するサービスを展開しています。
三一重工は、北京工場の建設をあくまでもDX推進の一環として捉えています。三一重工にとっては、グローバル的に自社の競争力を高めるには、より高度なDXレベルが求められており、まだ長い道のりがあると言えるでしょう。
・世界経済フォーラム報告書(PDF)
「Unlocking Sustainability through Fourth Industrial Revolution Technologies」
・三一重工Webサイト
・三一重工プレスリリース
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