ドローンのレベル4飛行解禁。「目視外飛行」のために押さえておくべきポイント

2023年1月17日掲載

解禁されたドローンのレベル4飛行。「目視外飛行」のために押さえておくべきポイント

空撮や測量、農薬散布などあらゆる分野で活用されているドローン。これまでは有人地帯(第三者上空)や目視外、夜間などの飛行方法などについては航空法によって制限されていましたが、2022年12月より規制が緩和され、いわゆるレベル4飛行が開始されました。本記事ではレベル4飛行によって何が可能になるのか、あわせて必要な要件について解説します。

※正しくは「無人航空機」とされる、ドローンのようなマルチコプターをはじめとした回転翼、固定翼など全ての「無人航空機」が航空法の対象となります。本ブログでは便宜上、ドローンと記載しています。

目次

レベル4飛行とは何か

ドローンの社会実装に向けて経済産業省が出した「小型無人機の利活用と技術開発のロードマップ」の中で、飛行するエリアや飛行方法などに応じてレベル分けが行われました。それがドローンの飛行レベルと呼ばれるものです。

 

<ドローンの飛行レベル>

ドローンの飛行レベルの区分

「レベル4⾶⾏の実現、さらにその先へ」をもとに加工して作成
(国土交通省:https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/drone_platform/pdf/20220721kouen.pdf

  • レベル1:目視可能な範囲で操縦者が送信機などで手動操作を行う
  • レベル2:離着陸の場所や飛行ルート・速度などを事前にプログラムさせ、目視可能な範囲で自動飛行させる
  • レベル3:山間部や河川など第三者が立ち入る可能性の低い場所にて、補助者の配置なしで目視できない範囲を自動飛行させる
  • レベル4:住宅やビルなど人口が集中しているエリアなどにて、補助者の配置なしで目視できない範囲を自動飛行させる

これまではレベル3までの飛行が認められており、有人地帯での目視外飛行はできませんでしたが、2022年12月5日に改正航空法が施行され、レベル4での飛行が可能となりました。これから徐々にレベル4環境下での実証実験が行われていくことになります。

レベル4飛行で実現できること

レベル4飛行が可能になった中、「空」の活用を通じて、産業・経済・社会に大きな変革をもたらすことができると期待されています。具体的な例を挙げてみます。

都市部の物流

レベル4解禁により、一番大きく変化するといわれているのが物流です。

物流業界では「配達の非効率」「交通渋滞」「労働力不足」といった課題を抱えており、ドローンの活用が進むことで、配達時間の縮小やガソリンなどの燃料費削減など多くのメリットが享受できます。

一方で物流分野は、ほかの産業と比べて広範囲・長距離でのドローンの飛行が想定されているため、私たちの頭上をドローンが飛び交うようになるにはまだ超えるべきハードルが多いのが現状です。これからレベル4環境下での実証実験が重ねられていくものと見込まれます。

災害時の救助活動や救援物資輸送など

交通遮断や二次災害など、災害時にはあらゆる要因で物資の輸送や医療の提供ができない状況が想定されます。無人飛行を行うドローンなら、安全性を担保しながら現場の被害状況を確認したり、物資を避難所に届けるといった活動ができます。

ソフトバンクでは防災課題に直面する自治体と協力し、ドローンでの物資輸送の実証実験を行いました。詳しい内容は以下の記事リンクをご覧ください。

避難所に空から「温かいごはん」が届く!?和歌山県すさみ町の地域課題をドローンと高精度測位サービスが解決

都市部のインフラ点検

建設分野においても、労働力不足やインフラの老朽化という課題を抱えており、ドローン点検の活用が進んでいます。高所や橋梁など危険な点検場所でも、ドローンなら安全かつ短時間で作業を終わらせることができます。これまでは第三者の立ち入り制限など、必要な対策を講じなければ人口集中区域でのドローン点検は行えませんでした。しかし、レベル4飛行が可能になったことで工程が簡略化され、よりドローン点検が身近になっていくと思われます。

▶建設業向け:【総解説】ドローン点検の強みと活用事例

レベル4飛行で必要な要件

実際にレベル4飛行を行うために必要な要件を確認していきます。安全性を担保するための制度が設けられ、ドローンの「機体」「操縦者」「運航ルール」の観点で要件が設定されています。

また、前提として航空法で規制対象となるドローンは、バッテリーを含む重量が100g以上の機体、また特定飛行を行う場合に以下要件を遵守する必要があります。

※特定飛行:一定の空域(空港周辺、高度150m以上、人口密集地域上空)、一定の飛行方法(夜間飛行、目視外飛行など)を行う飛行のこと

2022年12月の航空法改正前後で制度を整理

必要な要件である「①機体登録」「②機体認証」「③操縦ライセンス」「④運航ルール」に対応することで、それぞれの飛行パターンでドローンの利用が可能となります。今回の改正では許可や承認といった手続きの簡略化も盛り込まれています。

航空法改正前後で制度を整理

「レベル4⾶⾏の実現、さらにその先へ」をもとに加工して作成
(国土交通省:https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/drone_platform/pdf/20220721kouen.pdf) 

※1 飛行パターンの詳細については国土交通省のページをご確認ください。
※2 運航管理方法などを確認
※3 一部の飛行類型では飛行ごとの許可・承認が必要。機体認証・操縦ライセンスを取得せずに、飛行ごとの許可承認を得て飛行することも可能。飛行経路下への第三者の立ち入り管理などを実施
※4 機体重量が100g以上の場合は、①機体登録を行う必要あり

 

①機体登録制度

2022年6月20日施行済みの制度で、機体の所有者把握を目的としています。本制度はレベル4はもちろんのこと、レベル4未満の飛行レベルでも対応が必要です。つまり、100g以上の重量を持つドローンを屋外で飛行させる場合には、原則として国土交通大臣の登録を受ける必要があります。

またリモートIDと呼ばれるドローンを識別する登録記号が付与されます。リモートIDを機体へ物理的に表示し、識別情報を電波で遠隔発信するリモートID機能を機体に備え付けることが義務付けられています。

関連リンク:無人航空機登録ポータルサイト

 

②機体認証制度

ドローンの設計・製造過程・機体の現時点の状況が安全基準に適合しているか検査し、安全性を担保するための認証制度です。

機体認証には運航状況のリスクに応じて「第一種型式認証・第一種機体認証」(以下、第一種)と「第二種型式認証・第二種機体認証」の2つがあり、レベル4飛行のためには、より厳格な検査が行われる「第一種」に認証される必要があります。

この認証申請はドローンメーカ側が申請する「型式認証」とドローン使用者側が申請する「機体認証」に種別が分かれており、「型式認証」済みの機体に関する「機体認証」が申請された場合には検査の全部または一部が省略される仕組みになっています。

2022年12月の改正以降、メーカからの認証申請が始まり、順次認証手続きが進められています。

 

③ドローン操縦者の技能証明(ライセンス)制度

国家資格としてドローンの操縦者の技能証明を行う制度が創設されました。

技能証明は「一等無人航空機操縦士」と「二等無人航空機操縦士」の2つに区分され、機体の種類や飛行方法によっていずれかの技能証明が必要になります。有効期間は3年間です。
レベル4飛行では第三者の立入管理措置が免除される必要があるため、「一等無人航空機操縦士」の取得が必須となります。
実際にレベル4飛行を行う際には、技能証明書を携帯することが義務付けられています。

 

④運航ルール

レベル4飛行に限らず、いずれの飛行レベルにも求める共通ルールが創設されました。またレベル4飛行は個別の運航管理体制についても国に報告する義務があります。

<共通ルール>

  • 飛行計画の通報:飛行の日時・経路・高度などを通報し、他ドローンとの飛行計画と重複を防ぐ
  • 飛行日誌の作成:飛行場所・時間・整備状況などを記載した日誌を備える
  • 事故報告の義務:人の死傷、物損事故、航空機との衝突など事故や重大インシデントが発生した場合、発生日時、場所、事案の概要の報告を国に行う
  • 負傷者の救護義務:負傷者の救護や警察・消防などへの連絡など必要な措置を行う

<レベル4において>

共通ルールのような基本的な安全対策に加えて、計画している運航方法に応じたリスク評価を行います。その評価結果に基づくリスク軽減策(例:飛行経路の見直し)を盛り込んだ飛行マニュアルを作成・遵守する必要があります。

関連リンク:無人航空機レベル4飛行ポータルサイト

 

以上の通り、レベル4飛行を実現するには、有人地帯の飛行であるがゆえに慎重な安全対策が求められ、厳格な要件をクリアする必要があります。

 

レベル4飛行の実用化に向けて

レベル4飛行の要件に見られるように、ドローン飛行の安全性がより重視されています。万が一点検中に壁や送電線を損傷させたり、近隣住民に危険を及ぼすようなことがあってはいけません。

その際に欠かせない技術として注目されているのが、位置測位の技術です。多くのドローンに搭載されているGPSでの位置測位では、位置情報の誤差が大きく実用化には向きません。現在はRTK※と呼ばれる、より高精度に位置測位が可能になる技術を搭載したドローンが開発されています。レベル4飛行を行うほとんどの機体に、このRTKによる自動航行のシステムが実装されるでしょう。

※RTK:リアルタイムキネマティック(Real Time Kinematic)と呼ばれる位置測位の方法の一つで、位置情報の誤差をわずか数センチメートルまで抑えられる特長があります。

RTKとGPSの違いとは?これからの高精度測位サービスについて

 

今後産業用ドローンの選択肢が増え、業務への活用がより現実味を帯びてきたと感じた方も多いと思います。自社の業務にドローンの活用によって解決できる課題があるならば、ドローンを取り入れることを検討してみるよいタイミングかもしれません。

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