【ステップ別解説】10月に迫る 消費税インボイス制度への対応準備

2023年7月5日更新

【ステップ別解説】10月に迫る 消費税インボイス制度への対応準備

消費税法改正により、2023年10月からいよいよスタートする「インボイス制度」。多くの事業者が請求書や領収書といった書類の扱いやシステム運用の見直しに追われています。制度開始に向けて法対応を漏れなく行うためのポイントをステップ別に整理しましたので、ぜひ自社の対応状況と照らし合わせて、事前準備をしていきましょう。

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【誤った情報の提供についてのお詫び】

記事中の記載につきまして一部誤りがあることが判明いたしました。該当部分を修正するとともにお詫びいたします。

また、今後はこのような事態が起こらぬよう、より一層の注意を払って情報収集・確認を行い、正確な情報をご提供できるように努めてまいります。読者の皆さまにはご迷惑をお掛けしてしまったことを心よりお詫び申し上げます。

 

目次

消費税のインボイス制度とは?

どういう制度なのか

インボイス制度が始まると、仕入税額控除※1 の適用を受けるためには、原則として売手が買手に対して発行する適格請求書(インボイス)の保存が必要となります。インボイスの発行は課税事業者のみが行えます。
正確な税率(8%か10%)や消費税額など法令で定められた内容がインボイスに記載されていないと、仕入税額控除を受けることができません。

※1 課税事業者が納税すべき消費税納税額を計算する際、「売り上げにかかる消費税」から「仕入れにかかる消費税」を差し引くことで、消費税が二重三重に課されることがないようにする仕組み。

 

<仕入税額控除の仕組み>

仕入税額控除の仕組み

対応しないとどうなるのか?

以下の通り、事業者のパターンによって影響が異なります。

◆自社が課税事業者の場合

自社が「買手」の立場なら、仕入れ先からインボイスの発行をしてもらえないと自社での仕入税額控除ができません。仕入れや経費として自社が支払った消費税を差し引くことができず、自社の納税負担額が増えることになります。ただし、仕入れ先が免税事業者でインボイスの発行がしてもらえない場合は、制度開始後6年間は経過措置※2 を利用することで一定割合の仕入税額控除が行えます。

※2 出典:国税庁「経過措置(免税事業者からの仕入れに係る経過措置)」

仕入れ先が免税事業者でインボイスの発行がしてもらえない場合は、制度開始後6年間は経過措置が利用可能

出典:国税庁「令和3年2月の消費税経理通達の改正の趣旨」をもとに作成

また自社が「売手」の立場で課税事業者であっても、発行する請求書や領収書がインボイスの記載事項を満たしていない場合、取引先は仕入税額控除を行うことができません。取引先の納税負担額が増えてしまい、取引が見直される可能性も考えられます。

 

◆自社が免税事業者の場合

免税事業者はインボイスの発行ができないため、取引先は仕入税額控除を行えません。インボイスの発行をしない課税事業者の場合と同じ状況です。取引先の納税負担額が増えてしまい、取引が見直される可能性も考えられます。

 

▶関連資料はこちら:税理士監修_インボイス制度対応に向けたポイント

4つのステップでインボイス制度対応状況を確認

制度開始に向けて、具体的にどのような準備が必要になるのでしょうか?4つのステップにまとめてみました。

4つのステップ詳細とインボイス制度対策ソリューションを紹介した資料を見てみる

ステップ1:自社のインボイス発行事業者登録の申請

登録申請の方法

インボイス発行事業者となるために、納税地を所轄する税務署長に適格請求書発行事業者の登録申請書を提出する必要があります。

提出方法は「e-Taxによる電子申請」「書面による郵送申請」のいずれかになります。郵送の場合に使用する「適格請求書発行事業者の登録申請用紙」は、国税庁のWebサイトよりダウンロードができます。

登録申請の流れ

登録申請を行うと、税務署による審査を経て適格請求書発行事業者登録簿に登録され、その旨の公表と通知が行われます。通知方法は電子通知(e-Taxでの提出時に希望した場合)か書面で登録通知書が送付されます。

適格請求書発行事業者の登録申請の流れ

登録スケジュール

当初、2023年10月1日より登録を受けたい場合は、原則として2023年3月31日までに申請が必要とされていましたが、2022年12月の閣議決定により、2023年9月30日までに申請された場合は、2023年10月1日を登録開始日とできると発表されました。
しかし、登録申請から登録通知まで数週間の期間を要するため、早めに申請を行いましょう。

(参考)登録申請書の処理期間(2023年2月20日時点)※

    e-Tax提出:約3週間

    書面提出  :約2ヵ月

※出典:国税庁「申請手続」

ステップ2:取引先のインボイス発行事業者登録の状況

インボイス制度では、自社だけでなく取引先がインボイスへの対応を行っているかどうかで、納税負担額がかわってきます。そのため取引先ごとにインボイス発行の状況を確認する必要があります。
登録状況は、国税庁の適格請求書発行事業者公表サイトで確認できます。

適格請求書発行事業者公表サイトでの検索方法

ステップ3:請求書フォーマットのチェック

インボイスに記載しなければいけない項目

インボイスには、以下の8つの項目が記載されている必要があります。従来の区分記載請求書に加え、「⑦税率ごとの消費税額及び適用税率」「⑧登録番号」の記載があればインボイスとすることができます。

インボイスに記載しなければならない8項目

※3 取引相手が不特定多数となる場合は、交付を受ける者の氏名または名称は省略可能です(適格簡易請求書)

自社のフォーマットチェック

インボイスとする書類は請求書に限りません。課税取引において税率・税額を伝える手段は全て適格請求書の対象となります。そのため、領収書や納品書などもインボイスの対象になりうるため、どの書類をインボイスとするかを決め、該当書類のフォーマットの見直しを行いましょう。

また、インボイスに記載する消費税額の計算ルールも見直す必要があります。消費税額の計算においては1円未満の端数が発生することがあり、インボイス制度ではこの端数の処理方法についてもルールが設けられています。
これまでは商品やサービスの明細ごとに消費税の端数処理が認められていましたが、インボイス制度開始後は一つのインボイスにつき税率ごとに合計した対価の額に税率を乗じて消費税を算出する必要があります。そのため、既存フォーマットの端数処理方法の変更も検討しなければなりません。

取引先のフォーマットチェック

取引先が発行する書類のうち、どれがインボイスとなるかの確認が必要になります。受け取った書類がいずれもインボイスの要件に満たない場合は、仕入税額控除の対象外となるため、記載漏れがないかのチェックが重要となります。取引先によって請求書のレイアウトはバラバラです。そのためインボイスか否かの確認工数は増大するため、負担を少なくするクラウド受発注ソフトなどのツールを用いた運用を検討すると良いでしょう。

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ステップ4:インボイス制度に適した「記帳」「保存」手段の検討

経過措置を利用する場合は記帳パターン増大

免税事業者との取引において経過措置を利用する場合は、その措置の適用を受ける旨を記載した帳簿の保存が必要となります。経過措置は3年ごとに控除される割合が変更となるため、その場合の税区分を含めると記帳パターンは3倍に膨れ上がり、管理も煩雑になります。

インボイス制度開始後に経過措置を利用した場合、税区分を含めると記帳パターンが3倍に増える 8割控除や5割控除の特例を受ける旨を税区分を用いて表現した場合の図となります。税区分を用いない手法の場合でも記帳パターンに変化はございません。

保存対象のインボイスは多く、保存期間は約7年間※4 と長期間

インボイス制度が始まると、仕入税額控除の適用を受けるためには、一定事項を記載した帳簿とインボイスの保存が必要となります。
これまでの消費税法では、取引金額が税込み3万円未満であれば請求書などの保存は不要となっており、帳簿への記載のみで仕入税額控除が可能でした。しかしインボイス制度下では、3万円未満でも一部例外※5 を除き請求書などの保存が必要になり、保存しなければならない請求書や領収書などの量が増えます。インボイスの保存期間は約7年間となっているため、物理的に紙で保存をするのは難しくなります。
社内の経費精算などで使用する領収書やレシートもインボイス制度の対象です。従業員が多いほど、原本の回収やそれらをファイリングして7年間も保存することはハードルが高いと言えるでしょう。
さらに、2024年1月からは電子帳簿保存法による電子取引データの書面保存が禁止※6となることから、電子保存への対応検討は急務となっています。

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※4 令和5年10月1日施行消費税法施行令50条「当該請求書等についてはその受領した日の属する課税期間の末日の翌日から二月を経過した日から七年間」
※5 公共交通機関であるバス・鉄道による旅客の運送、卸売市場で行う生鮮食料品などの譲渡、自動販売機など、いずれも3万円未満の取引の場合。
※6  2023年度の税制改正大綱により、2024年以降も一定の条件下で電子取引の出力書面(紙)の保存が可能。

紙とデータの二重管理を防ぎ、業務工数を下げるシステムの検討が必要

記帳パターンの増大と保存の手間を考えれば、これらを手書きや紙で対応していては業務が煩雑になることが予測できます。また部分的に電子化してしまうことで、紙とデータ両方の運用が残ってしまい、それぞれのルール設定や社内周知・システム対応など工数がさらに増えることになります。
インボイス制度や電子帳簿保存法に対応したシステムの導入を検討し、あわせてアナログな工程(紙への印刷・承認のための捺印など)を挟まない業務フローを検討していきましょう。

インボイス制度への対応を着実に進めるために

これまで説明した4つのステップそれぞれに、経理業務の負荷が増えてしまう要素が存在します。「インボイスであるかどうかの判断」「正しいインボイスが発行できるか」「受け取ったインボイスの仕訳」などを人力で対応するには限界があります。
そこでおススメなのがクラウド会計ソフトの「freee会計」です。記帳や経費精算など日々の経理業務の効率化はもちろん、インボイス制度・電子帳簿保存法へも完全対応しています。また、「freee会計」のアカウントがあれば、取引先の登録番号やインボイス対応有無の確認作業も可能な「freeeインボイス取引管理」のサービスも利用できます。取引先のインボイス登録状況が一覧で可視化できるので、非常に便利です。

また、インボイス制度への対応においてはIT導入補助金を活用することも可能です。2023年度のIT導入補助金は前年度よりも補助額の幅が広がり、下限金額の引き下げや撤廃など企業間取引を強力に推進する内容になる予定です。「freee会計」のご検討にあわせてソフトバンクまでご相談ください。

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