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人流とは「人の流れ」を意味する言葉で、人がいつ、どこからどこへ移動したのか、どこにどれくらいの時間滞在したのか、どのような交通機関で移動したのかといった人の動きを指す言葉です。
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人流を可視化した統計データである人流データは、スマートフォンのGPSや基地局から得られた位置情報や、公共交通機関の乗降者データなどさまざまな方法で集められており、近年では交通や観光、都市開発など多くの分野で活用が進められています。総務省は「人の移動データ分析は、様々な地域課題を解決するポテンシャルのあるテクノロジーである」と公開資料でも言及しており、人流データの活用には官民問わず熱い視線が向けられています。
本稿では、人流データの活用事例を多数紹介し、日本の地方自治体や民間企業が人流データを活用してどのような課題を解決したのかに迫ります。
ソフトバンクの人流データに関するサービス)
人流データは都市計画や防災計画でも活用されています。北海道札幌市では、官民データを協調利用するためのデータ連携基盤として2017年に「札幌市ICT活用プラットフォーム (DATA-SMART CITY SAPPORO)」を構築し、さまざまなデータの蓄積と活用を開始しており、その一部として人流データの活用も進んでいます。
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札幌市では人流データの活用の一環として、「観光」「雪対策」「健康」の3分野の課題解決に向けた実証事業を行いました。
例えば「観光」分野では、外国人観光客が使う観光情報提供アプリのGPS情報から集められた人流データを、消費促進や周遊促進に役立てています。観光客の人流データと購買データをAIがクロス分析して需要を予測し、道内の宿泊施設に最適な宿泊料金を提示したり、観光客に向けて近隣の店舗をお勧めして誘客したり、といったサービスを提供し、札幌市のインバウンド観光の強化に役立てようとしました。
残念ながら、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて2020年以降は札幌市の外国人観光客数が大幅減少してしまい、狙いどおりの結果を得るには至りませんでしたが、全国に先立つ行政の事業の事例だったと言えるでしょう。
参考リンク)
【観光】人流×購買データを活用したインバウンド向け消費促進/周遊促進サービス
「雪対策」では、冬季の道路除雪に人流データを活用しています。ごみ収集車やバス、タクシーなどに搭載されたGPSやドライブレコーダー、加速度センサーなどからデータを収集し、人流が多く渋滞が発生しやすい区間を重点的に除雪することで、効率的な除雪作業を実現する「スマート除排雪サービス」を提供しています。
参考リンク)
【雪対策】冬季プローブカーデータの収集・提供およびスマート除排雪サービス
さらに札幌市では、行政として全国で初めて行政や企業が持つデータを取引できる「さっぽろ圏データ取引市場」を開設しました。札幌駅前にある地下歩行空間の人流データなど、さまざまなデータを無償、有償で取引ができ、近隣店舗の販売計画の効率化などに活用が可能となっています。札幌市ではこうした取組を通じ、「有償データを含む官民データの地産解消」への実現をサポートしています。
札幌市同様、千葉県柏市の柏の葉スマートシティでも都市計画やイベント企画における人流データの活用は進んでいます。柏の葉スマートシティは柏の葉キャンパス駅から2km圏内に大学や病院、商業施設等が立地するよう都市計画が作られており、駅周辺エリアに集まるデータを公民学連携で活用して地域を運営するSmart Compact Cityを目指しています。
参考リンク)
柏の葉キャンパス地区とまちづくりのコンセプト | 国土交通省
このコンセプトは「モビリティ」「エネルギー」「パブリックスペース」「ウェルネス」の4つのテーマから取り組みが進められており、これらの多くのテーマで人流データの活用が進められています。例えば、柏の葉キャンパス駅周辺街区では29台のAIカメラを設置することで、人流データの取得・分析を行うだけでなく、リアルタイム画像分析による防犯や見守り強化も実現されています。このAIカメラによる人流データを含む街のデータは、パーソナルデータの流通プラットフォーム「Dot to Dot」を通して安全に大学や研究機関、事業者と連携し、街づくりやイベント企画、健康な暮らしのサポートなどにも生かされています。
参考リンク)
「Dot to Dot」柏の葉スマートシティにて活用開始 | 三井不動産
また、人流データを柏の葉エリアエネルギー管理システムと連携させることにより、人の移動にあわせた空調や照明制御を街の区画を超えて行っています。結果、CO2の削減やエネルギー情報の見える化が達成され、地域エネルギーの効率的な活用が広がっています。
人流データは観光活性化のためにも活用されています。神奈川県横浜市みなとみらい地区では産官学⺠が連携し、人流データを活用した観光活性化プロジェクトが推進されています。みなとみらい地区は横浜中華街や横浜ランドマークタワーと並び、横浜・川崎エリアの中でも人流が多い観光資源の筆頭であり、この地域の周遊データを分析することは観光客のニーズをつかみ地域の観光産業を盛り上げるために有効だと考えられます。
たとえば、みなとみらい地区には大規模な音楽イベントが多いにも関わらず、イベントの観客を地域の消費に生かせていない点も課題となっていました。神奈川大学は人流データの分析からイベント終了後に観客がすぐに帰宅してしまうことを確認し、イベントチケットに地域で利用できる割引券機能を付与したり、アーティストのポスターを街頭に掲示することでファンの回遊を促進したり、といった消費向上に向けたアイディアを取りまとめています。今後は人流データを活用した戦略的なプロモーションの実施などを検討していきたいとしています。
さらに、みなとみらい地区では人流データを活用した近郊からの観光客の周遊強化施策の検討も行っています。国土交通省が主催した人流データを活用したビジネスモデル検討のイベントでは、コロナ禍の人流データ解析から、遠方からの観光客は大きく落ち込んだ一方、近郊からの観光客は減少幅が小さいことや、20代女性の来訪が多いことが提示され、みなとみらい地区と横浜中華街を周遊させるためのアイディアも提示されています。
このほかにも人流データを活用した多くの取り組みが横浜市では進められており、人流データの活用事例として注目を集めています。
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人流データは公共交通機関の計画にも活用されています。東京都八王子市の西東京バス株式会社では、人流データを活用して新路線の開業や運行ダイヤの最適化を進めています。西東京バスは郊外と都心を結ぶ高速バスなどを運行していましたが、人口減少に伴う利用客の減少を見据えて次の事業の柱となる新路線の開拓が急務となっていました。しかし、どこからどこへ、何時頃に人が移動しているのかというデータは自社の交通系ICカードの乗降者履歴しか保有していなかったため、新路線の計画立案は最終的には経験と勘に頼っていました。
そこで西東京バスは外部の人流データを活用し、地域の人々の動きをより正確に把握してバスの増減便を最適化したり、自社の営業エリア内で需要の多いエリアを分析して新規路線を開発したりと、改善の取り組みを進めました。
目を引く事例としては、住宅街を抜ける「通勤ライナー」が挙げられます。八王子市や日野市では新宿方面に向かう居住者が多い一方、これまではバスで八王子駅まで行った後に電車に乗り換える必要がありお世辞にも利便性が高いとは言えない状況でした。これを解消したのが通勤ライナーです。通勤ライナーは見込客が多い住宅街に停留所を設け、ダイレクトに新宿駅まで向かうことができるバス路線として地域の人々の利便性を大きく向上させ、西東京バスの新たな事業の柱となりました。
西東京バスの事例のように、近年では地域の公共交通に人流データを活用した事例も増えてきており、地域課題の解決に向けて人流データの活用が有効に働くことが分かってきています。
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地域の交通インフラの最適化への人流データの活用事例をもう1つ掲載します。神奈川県の湘南エリアは首都圏から多くの観光客が訪れる人気の観光地ですが、観光客の集中による道路混雑が観光客・地域住民の双方に不満をもたらす課題となっていました。こうした課題を解決するため、湘南モノレールでは混雑状況やお得な情報を発信して観光客の行動変容を促すことを目指しました。
湘南モノレールではカメラやWi-Fi、ビーコン、自動改札機などから人流データを収集し、混雑状況をリアルタイムに把握。Web広告やSNS、乗り換えアプリの広告、雑誌、ポスター、観光協会サイトなどのチャネルをフル活用して出発前・出発後の観光客に情報を届け、行動変容につなげようとしました。
こうした情報提供の有効性を検証するために実施したアンケートでは、回答者の70%以上が「分かりやすい」「役に立つ」と回答しており、約45%が湘南モノレールの1日フリーパスの購入のきっかけとなったと回答しています。また、混雑情報の発信開始以降、平日の朝の混雑時においては乗降客数の平準化の傾向が見られており、観光客の行動変容に対して一定の有効性があることが示されたと言います。
人流データを活用した混雑情報の提供は、湘南モノレールの乗車数を改善するだけでなく、地域課題の解決にも一役買ったと言えます。湘南モノレールでは、今後も継続して情報発信を行いつつ、行動変容の仕組みを鎌倉市にも広げていく見通しとのことです。
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福岡県久留米市では新型コロナウイルス感染症の影響を受けた避難行動の変化を人流データから把握し、実効性の高い防災計画を策定するために役立てています。
久留米市では2019年と2020年に住民の避難が必要な災害が発生しましたが、新型コロナウイルス感染症の影響で避難行動に変化が起こっている可能性があるため、現状に合った適切な防災計画を練り直すため正確な人流データの把握が求められていました。
人流データの分析に当たっては、50mメッシュ(50m四方)の1時間単位の滞在者数やその滞在者の属性(居住地等)が分かる人流データを活用しました。結果、新型コロナウイルス感染症が拡大した2020年には、2019年まで見られなかった「ホテルへの避難行動」が顕著に発生していることが判明しました。ホテルに避難した人達は、新型コロナウイルス感染症への感染を危惧して意図的に従来の避難所を避けてホテルへと避難したと久留米市は分析しています。
こうした災害時における人流データの分析を踏まえ、時代や状況に合わせた防災計画の策定を久留米市では進めていく構えです。
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人流データはマーケティングや商圏分析にも活用されています。埼玉県川口市のかわぐちキャスティが行なっているのは、AI映像監視システムと人流データと解析による店舗のマーケティング戦略の強化です。
近年、かわぐちキャスティのような多種多様な専門店が出店する大型商業施設では、来場者がどのような順路で店舗を回遊するか正確に把握し、店舗配置や商品陳列に反映させる施設が増えてきました。顧客の回遊を向上させる導線設計は顧客の消費を促すため、テナントを貸し出す商業施設の運営企業にとっても出店企業にとっても極めて重要な要素です。大型商業施設内での来場者の導線把握のために人流データが活用されるのは自然な流れだと言えます。
かわぐちキャスティでは、施設内の複数のカメラ映像をAIが処理することで、顔や服装、持ち物などからプライバシーに配慮しつつ個別の来場者を判別して行動を追える画像処理システムを導入しました。結果、来場者の客層や回遊導線、混雑時間帯などを正確に把握することにつながり、新たなテナント誘致や販売促進にも役立っているとのことです。
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人流データを活用して効率的な広告配信を行った事例もご紹介します。大手ビールメーカーのサッポロビールではビアガーデンイベントの集客に向けて、基地局やGPSから得られる位置情報を活用した広告配信を行った結果、集客効果を向上させることに成功しています。
従来のTV CMや電車内広告、Web上のバナー広告などには、実際のイベント集客につながっているか可視化しにくいという課題がありました。そこでサッポロビールは人流データを活用して、会場周辺にいる人に向けてタイムリーに広告を配信する「リアルタイム配信」と、会場周辺で働いていたり居住していたりする人を特定して広告を配信する「ヒストリカル配信」を実施しました。
リアルタイム配信は足を運びやすいエリアに限定して広告配信を行うことで強いアピールができ、ヒストリカル配信はリピート率の向上を狙うことができます。こうした人流データを活用した広告配信キャンペーンにより、サッポロビールでは想定していた半額以下の予算で目標の集客を達成できたと言います。
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人流データは自治体の政策立案にも活用されています。近年、日本でもEBPM (Evidence-based policy making:証拠に基づく政策立案) が重視され始めており、課題を定量的に分析して効果的な施策を見定め、政策に反映させていこうという流れが本格化しおり、人流データは政策に対しても影響力を持つようになってきました。
福島県でもデータに基づく政策検討のモデルを作成しており、2020年にはコロナ禍での人の流れを人流データによって可視化し、政策検討モデルに反映させています。
たとえば須賀川市では、須賀川市民センター「tette」を起点とした中心市街地とすかがわ観光物産館「flatto」の人流データを分析し、政策検討に活用しました。この人流データ分析では、緊急事態宣言時に一時的に来街者が減少したものの半年後には宣言前の水準まで回復したこと、2つの施設の来訪者構成がほとんど同じであること、市内や近隣自治体など近場の利用者が70%以上を占めることなどの事実が客観的に示されました。これらの結果を受けて両施設を恒常的に利用する市民向けに商品を展開したり、市街からの誘客を強化するといった政策を検討し、中心市街地の活性化につなげていく構えです。
福島県では、こうした人流データを用いた政策検討を喜多方市や相馬市でも行なっており、今後さらに多くの成功事例が生まれてくることと思われます。
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人流データから個人の好みを予想してパーソナライズされた広告を表示する技術も実証実験が進められています。株式会社デンソーは、人流データと車流データを組み合わせて個人に最適化したレコメンド広告を表示する実証実験を行いました。
現在、事前の旅先の情報収集と自動車で移動する行為は、体験として断絶しています。しかし、近い未来より自動車が賢くなるにつれ、移動する行為と移動先の消費活動はよりシームレスに行われるようになるとデンソーは考えています。
こうしたシームレスな体験を実現するための実証実験として、デンソーはスマートフォンのGPSやビーコンから収集した人流データと、車載器から収集した運転特性や運転状況などの車流データから運転状況や個人の好みを推測し、車内外を問わずベストなタイミングで個人の興味関心に応じた店舗や施設の情報を提供したと言います。
約3ヵ月間の検証の結果、こうしたパーソナライズされた広告はより精度の高いレコメンドであるほどモニターに評価されたことが示されています。人流データと車流データを組み合わせることで高い付加価値を持った移動体験を提供することが可能であるとデンソーは考えており、将来的にはデータを活用したユーザの行動理解を軸としたコンテンツの提供を強化したい考えです。
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新型コロナウイルス感染症の対策として初期に掲げられた人流の抑制にも、人流データは頻繁に活用されました。世間で「人流」という言葉に注目が集まったのは新型コロナウイルス感染症対策を通してだったと言えるかもしれません。
兵庫県神戸市では、市内の主要エリアである三宮駅や三宮センター街の利用者数や市営地下鉄の乗客数などを、「新型コロナ対策データ解析サイト」を通して市民に公開し、感染拡大時の行動自粛の呼びかけに活用しました。上記サイトでは、三宮エリアにおける15分以上滞在した来街者数を30分単位で集計し、グラフ化することで直感的に分かるよう人流データを掲載しています。
神戸市は市長の記者会見で人流データに基づく感染対策について言及したり、人流増加時と感染状況を視覚的にわかりやすくまとめたPDFを掲載したりと、感染拡大時における人流データの公開に力を入れていた自治体のひとつであると言えます。
2023年3月現在では、日本でも人流を抑制することで新型コロナウイルス感染症に備える動きは下火になり、3月13日からはマスクの着用も任意になるなど感染症対策にも変化が見られていますが、自治体や国が積極的かつ大規模に人流データを活用した実例として、感染症対策への人流データの活用は避けられない事例になったと言えるでしょう。
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滋賀県日野町では原因が分からない慢性的な渋滞に頭を悩ませていましたが、人流データを活用することで原因を把握し、解決に取り組んでいます。
日野町は複数の工場団地があり、朝の通勤時間帯に慢性的な渋滞が発生していることが人流データから把握ができました。そして原因は、工業団地に通勤している3つほどの近隣市町村からの流入であることも分かりました。
町外の近隣市町村からの通勤が原因で渋滞が起きていることが把握できた日野町では、シャトルバスを運行させる実証実験を行っています。シャトルバスは単に駅までの往復のみ行うのではなく、例えば人流データの分析で帰りがけにスーパーに寄っていることが示されれば退社時間帯にスーパー近くに停留所を作るなど、従業員のニーズに応えるような工夫も凝らしています。今後は渋滞解消のみならず、観光や移住促進など幅広い分野での人流データの活用を見据え、住民に豊かな暮らしを届ける施策を継続的に行いたいとしています。
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高松市はスーパーシティ構想を立案していますが、構想の土台となるデータのうち公共交通機関等を用いた人流データは平成24年のものが最新であり、移動データの鮮度がかなり落ちてしまっているのが現状です。
こうした課題を受け、高松市では都市OSへの安定的なデータ供給および汎用性の高いシステム構築を目指し、2021年度に「ビッグデータ活用による旅客流動分析 実証実験事業」を実施しました。
従来の紙ベースでの調査方法では、調査に時間と費用がかかるため鮮度の高い人流データを公開し続けることは困難でしたが、本実証実験ではソフトバンクの「全国うごき統計」で全国の基地局データを活用して、従来では把握できなかった移動経路や交通手段、性別や年齢、移動した時間帯までも把握することができました。
高松市のスーパーシティ構想は、『「移動データ」を鍵として、あらゆるサービスがつながり、偶発的な「出会い」「発見」「交流」の連鎖を引き起こすことで、ヒト・モノ・コトの移動が人と街を豊かにする「フリーアドレスシティたかまつ(FACT)」』を目指す都市像としており、この土台となる人流データの提供にソフトバンクの「全国うごき統計」が活用された形です。
高松市では、今後は本実証実験の結果を受け、市内の交通計画や防災計画、街の開発計画の基礎資料として人流データを活用していくこととしています。
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東京都は、都民の生活向上を目的とした「東京データプラットフォーム ケーススタディ事業」を展開しており、官民データを連携させるプラットフォームを構築し、都民のデータを利活用することで質の高い生活を実現することを目指しています。
多くのプロジェクトを含む上記事業の中でも「駅利用圏ポテンシャルマップ」は人流データを活用した好事例と言えます。「駅利用圏ポテンシャルマップ」は前述の「全国うごき統計」が活用されており、どの属性の人がどの駅を利用しているかまで可視化されています。駅利用圏が可視化されることで駅ごとの需要が把握でき、飲食店や商店の戦略設計や交通の最適化、ひいては都市サービスの向上にも貢献することを目指しています。
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DX with Softbank デジタルで常識が変わる「DX最前線」 Vol.2 「都市計画」ひとの動きから、まちを知る | 日経ビジネス電子版
茨城県境町では、ビッグデータを用いた自治体初の自動運転バスを運行しています。自動運転バスのさらなる利便性向上と路線拡大のために、境町では需要のあるルートの開拓に人流データの活用を進めています。
自動運転バスのルートやダイヤ、運行方法を最適化した結果、従来の定時便と比較して160%以上の利用者を獲得しました。さらに、実験ルート上の施設では訪問者が増えて売上が増加するなど、地域内の消費拡大の波及効果も見られました。また、高速バス「境町-東京線」を利用した来訪者が町内を回遊する仕組みにもなっています。
こうしたルート策定の最適化は、来訪者の数や日別推移、年代、居住地などを把握できるソフトバンクの子会社のAgoopの人流データが活用されました。
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一般社団法人東北観光推進機構では、東北6県と新潟県への観光客誘致を推進するために、人流データを活用して観光スポットの来訪者数や周遊傾向を把握しています。
東北観光推進機構は、2021年度に東北の観光マーケティングデータを一元管理する東北観光DMP(データマネジメントプラットフォーム)を構築しました。このプラットフォームには、動態データや消費購買データ、公的統計データ、アンケート調査データなどが格納されており、東北域内約3,800ある観光スポットへの来訪者を属性別に把握したり、周遊状況を把握したりすることに役立っています。
このプラットフォームにも、前述のソフトバンクの子会社のAgoopの人流データが活用されています。
参考リンク)
全国うごき統計は、ソフトバンクの携帯基地局から得られるデータと、パシフィックコンサルタンツが保有している社会インフラに関する知見やノウハウを組み合わせた「網羅的かつ最新の動態が把握できる」人流の統計データです。
ソフトバンク携帯端末の位置情報から、エリアごとの人の密集度や、観光における来訪客の動向などを把握できます。加えて公共交通機関を利用した際の移動経路や交通手段も把握できるのも特長です。
性別・年代・居住地などの属性情報を取得できるほか、時間帯別のデータも取得可能です。また、特定日の人流データや月間平均データなど、必要なデータを簡単にフィルタリングして得られます。
24時間365日の人の移動から滞在状況までを把握できるため、民間企業の経営戦略やマーケティングへの利用から、都道府県や自治体の都市計画や防災計画への活用まで、さまざまなニーズに対応することが可能です。
マチレポは、店舗や施設、観光地などを指定して、来訪者数や属性データ分析できる人流マーケティングツールです。ユーザは分析したいエリアを日本全国から自由に指定できます。分析は店舗単位でも行え、年代や性別などの属性データもペルソナ別に分析可能です。
分析メニューは18種類用意されており、来訪者数や時間帯別に分析結果が閲覧できます。これらの分析結果は、CSV形式などでダウンロードでき、ローカル環境で加工や分析も行えます。
また、従来の人流マーケティングツールでは、データの鮮度や分析にかかる時間も大きな課題となっていました、マチレポは分析結果をブラウザ上でスピーディーに確認できる点も特長です。
地域課題の解決や防災計画、観光戦略の立案、企業のマーケティングまで、幅広い分野で人流データの活用が進んでいます。人流データを活用した実証実験や成功事例も徐々に増えてきており、これらの事例の中には多くの自治体や企業でも取り入れられる手法も含まれています。
ソフトバンクが提供する「全国うごき統計」や「マチレポ」をはじめ、近年では人流データにアクセスするためのサービスも多数展開されるようになってきました。組織が人流データを活用するための土台は揃ったと言えます。多くの自治体や企業が人流データを活用し、多くの社会課題が解決されることを切に願います。
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