自動運転バスの運行が始まっています【茨城県境町】

2023年5月29日掲載

自動運転バスの運行が始まっています【茨城県境町】

BOLDLY株式会社の星野と言います。ソフトバンクの子会社であるBOLDLYでは、多くの自治体と連携し自動運転バスの実用化に取り組んでいます。私の業務は渉外課長として自治体との連携や関連許認可の取得、規制改革などを担当しています。今回、茨城県境町とともに自動運転バスによる日本で初めての公道での定時運行を始めることになったので、その模様をお伝えします。

目次

BOLDLY株式会社
星野達哉


山梨県甲府市出身。
行政書士事務所(主にドローン法務担当)、不動産鑑定会社を経て現職。現職では、自動運転バスのレベル4認証手続き、茨城県境町におけるデジタル田園都市国家構想推進交付金事業(協調型インフラ実装、ドローン等の複数サービス連携)のプロジェクトマネージャーを担当。

人々の生活を支える公共交通が抱えていた課題

今回、自動運転バスの定時運行をスタートした茨城県境町は、千葉・埼玉・群馬の県境に位置する町で鉄道駅がありません。そのため自動車が地域住民の交通手段を支えている町でしたが、最寄りの鉄道駅まで行くにしても自動車で約40分もかかってしまうところです。また、地域内の公共交通インフラが弱く、地元のバス会社に増便をお願いするも人手不足から手が回らないという実情がありました。そのため、高齢者が運転免許を返納したくても、返納すると生活自体ができなくなってしまうので返納ができないという状況でした。

そこで、人手不足に左右されない交通網を整備するために橋本町長が自動運転バス導入に向けて情報収集を開始。2019年12月にBOLDLY代表取締役社長兼CEOの佐治と初めて面談し、そこで自動運転バスの実用化が可能であることとそれに必要な予算感を確認しました。そのわずか4営業日後には町議会で自動運転バスの導入の決議がなされました。新型コロナによるプロジェクトの一時休止がありながらも、最初の面談からおよそ1年後の2020年11月から定時運行を始めることができました。

BOLDLYの自動運転バス

自動運転バスは大勢の方にご利用いただいています

2020年11月からは自動運転バス3台が茨城県境町のごく普通の一般道を走っています。この自動運転バスは道路や建物を加工する必要がないため、導入に当たってはインフラへの負担を軽く導入することができました。

一方、今回の車両には障害物を回避する機能がないため、住民の方に路上駐車を控えていただくことをお願いし、皆さんのご協力によって現在の走行ルート上の路上駐車は皆無となりました。また時速20kmという低速で走行するため300mごとにバス停を設置し、停車中に追い抜いていただくオペレーションとなっていますが、バス停の設置にあたっては住民の方のご厚意で軒先をお借りすることができたので路肩に寄せて安全に停車できています。ルート上の平均速度も下がり、通学等で使う小学生の安全性も高まったとの声をいただいています。

2023年4月の時点では累計13,980便が走行しており、合計16,261人の方が道の駅や病院、スーパー、銀行、高速バスターミナルへの移動に利用しています。住民の方はもちろん観光客の方にも乗車いただいています。

自動運転バスの運行ルート(走行開始時)
自動運転バスの運行ルート(2023年4月時点)
走行ルートや運行時間も町民のニーズに合わせて3度の変更を実施。
(左:走行開始時 右:2023年4月時点)

地域に愛される自動運転バス 「さかいアルマ」

境町の自動運転バスは「さかいアルマ」と命名され、住民の皆さまから愛されています。地元のいきいき老人クラブ主催の試乗会や、社会福祉協議会主催のサマースクール等のイベントも開催されました。町民の皆さんが主体となり、自動運転バスを理解したり体験する機会を自ら作り出してくれているおかげでマスコミにも多く取り上げられ、おらがまちの自動運転バスとしてシビックプライドの醸成にも一役買っています。

自動運転バスに喜ぶ子供たち
子供たちが描いた自動運転バス
自動運転バスは子どもたちにも人気があります。

町の方と一緒に創り上げたことで「クルマ・社会・パートナーシップ大賞」を受賞

境町は「公共交通機関の空白地域における地域住民の手でなしとげた国内初の自動運転バスの社会実装に向けた諸活動」として、第1回「クルマ・社会・パートナーシップ大賞」において最高賞となる大賞を受賞しました。

自動運転バスの運行開始にあたり、町民の方々の温かい支援と献身的な協力が受賞に繋がっています。

「クルマ・社会・パートナーシップ大賞」を受賞

町民に寄り添い、共存していく自動運転バスの次のアクションは…

自動運転バスは走行開始がゴールではなくスタートラインです。町民の皆さんに支えられてスタートした自動運転バス「さかいアルマ」の次のアクションは有人でのレベル4運行です。地元方々に支えられたこの2年間のオペレーションで分かったことは、車内のオペレータは単に運転業務を行っているのではなく、困りごとや観光案内への対応を通して大きな安心感を提供していたことでした。走行技術的にはレベル4は早期に実現させていくものの、まずは安心・安全な乗り物としての市民権を獲得するべく、有人でのレベル4運行の早期実現を目指します。

 

<そのほかの地域での実用化事例>

北海道上士幌町
北海道の中央部に位置しており、広大な自然が美しくも厳しい自然環境に囲まれた上士幌町では、複数回の実証実験を通して積雪時も安全に自動運転ができることを確認し、2022年度から実用化しています。

愛知県日進市
愛知県の中部に位置する日進市では、鉄道・コミュニティバスの既存の交通手段と自動運転バスを組み合わせてシームレスに移動できる「既存公共交通網と自動運転バスのベストミックスによる新たな公共交通システム」を生み出し、世代や居住地を問わず住民が自由に移動でき、将来にわたり安心して住み続けられる街の実現を目指しています。

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ソフトバンクの自治体ソリューション

自治体DX推進サイト「ぱわふる」

「ぱわふる」は『Power of Furusato(ふるさとにパワーを)』をコンセプトとし、自治体が抱えるさまざまな課題を解決するための自治体ソリューションや自治体導入事例を紹介しています。

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