100年に一度の変革期 〜長崎が取り組む「地域創生」とは〜 SoftBank World 2023 講演レポート

2023年11月10日掲載

100年に一度の変革期 〜長崎が取り組む「地域創生」とは〜 SoftBank World 2023 講演レポート

国際情勢の変化や少子高齢化による社会経済の変化に直面し、100年に一度の転換期を迎える長崎県。自治体が民間企業や大学とともに歩み、課題に対して正面から立ち向かう。その姿は、同じ課題を抱える全国の地方自治体が目指すべき、未来に向けた地域創生の在り方になるのかもしれません。

 

「テクノロジーの新潮流。今、世界が動きだす」をテーマに開催された、ソフトバンクとして最大規模の法人向けイベント「SoftBank World 2023」にて、長崎の地域創生に関わる産学官各界のリーダーが集結し、特別講演を行いました。

本記事は、2023年10月4日に配信されたSoftBank World 2023での特別講演を再編集したものです。

登壇者プロフィール

目次

100年に一度の変革期を迎える長崎の現在(いま)

「100年に一度」。インパクトのあるこのキーワードは、長崎のさまざまな箇所でいま起きている変革を表しています。長崎県知事 大石賢吾氏は冒頭、次のように語りました。

「長崎県では、西九州新幹線の開業やスタジアムシティに始まり、半導体や航空機、海洋エネルギーといった新たな成長産業へのシフトなど、さまざまな変化が一挙に起こっており、それを『100年に一度』と表現しています」

しかしながら、そのような長崎県において、地理的な条件不利や少子・高齢化が進行する中での社会サービスの機能維持・向上という地域課題に直面しており、それらの解決にはデジタル化やDXの推進は必要不可欠であり、「本日ご参加の皆様方がお持ちの技術やソリューションなどについて、ご提案などお力添えいただきたい」と話されました。

100年に一度の変革期を迎える長崎の現在

さらに続けて、長崎市の鈴木史朗氏は市のまちづくりの観点から、次のように語ります。

「街の姿が大きく変化しています。官民挙げての大型プロジェクトが同時並行的に進行しており、その最たるものが西九州新幹線の開業です。この新幹線の開業によりまちづくりが誘発されています」

「100年に一度のまちづくり」として、市中心部で起きている変化の様子を投影し、鈴木市長は続けます。     

「新駅ビルやコンベンション施設の開業に始まり、外資系ホテルの相次ぐ進出、埠頭の2バース化(バース:船舶が入港した後、貨物の積卸等のために着岸する場所)など、市内には次々と新たな舞台装置ができあがりつつあります。しかし、重要なのはその舞台装置を活かす魅力的なコンテンツであり、その中心として期待されるのがジャパネットグループが手掛ける長崎スタジアムシティです」

100年に一度のまちづくり

長崎スタジアムシティ

長崎市のさらなる魅力向上に期待がかかる「長崎スタジアムシティ」。本プロジェクトを主導する株式会社ジャパネットホールディングス代表取締役社長 兼 CEOの髙田氏は次のように語ります。

「長崎スタジアムシティは、スタジアムのほか多機能アリーナ、ホテル、商業施設、オフィスなどが集まり、新しい体験や感動を生み出すことを目指しています。私自身、地域創生は行政の仕事だと一般的に思われていることに違和感を感じていたので、我々が民間企業としてこのプロジェクトをビジネスとして成立させつつ、人口減少などさまざまな課題を行政と連携して解決したいと考えています」

長崎スタジアムシティプロジェクト

髙田社長は、長崎だけの発展に留まらず、これを地域創生のモデルとするビジョンを描いています。

「正直に言うと、労力と収益のバランスとしてはものすごく悪いです。でもこれが成功すれば、長崎で民間企業が中心となってこれだけ投資して収益をあげた事例となり、全国で色々な企業が我々を真似て同じような取り組みを行い、結果、日本全体が元気になるのではないかと思っています。プロジェクトスタートから6年ほどですが、いよいよ来年10月に完成です。ぜひ、足を運んでいただけると嬉しいです」

髙田社長の地域創生への熱い思いを乗せた本プロジェクト。その思いに応える形で、ソフトバンク株式会社もパートナー企業として参画を発表しています。ソフトバンク 代表取締役 社長執行役員兼CEOの宮川は語ります。

「きっかけは、『長崎を何とかしたい』という髙田社長の熱い思いに応えたかったということです。スタジアムの名前は『PEACE STADIUM Connected by SoftBank』と付けさせていただきました。我々の役割としてはあくまで通信会社ですので、ほかのスタジアムでは体験できない通信インフラを提供するという意味をこめて、サブタイトルをつけさせていただきました」

長崎スタジアムシティプロジェクトについて語る登壇者

産学官連携

地域の課題解決の手段としてよく取り上げられる産学官連携。本プロジェクトにおいても、連携による効果が期待されています。
長崎大学 学長 永安武氏は同大学の情報データ科学部がスタジアムシティのオフィス棟に入ることになった経緯を次のように語りました。

「本学部は情報化時代の人材育成に対応するために、2020年に立ち上げました。これまでの4年間の研究を経て、2024年4月から修士の大学院を立ち上げますが、我々もこのスタジアムシティプロジェクトに関わり、若い人たちとここで何か一緒に作り上げていけないかと考えている中で、オフィス棟のお話がありました」

スタジアムシティと連携した学生たちの学びについて、永安学長は次のように期待を寄せます。

「スタジアムシティはスポーツ、文化、商業サービスが揃い、我々アカデミアとしても魅力的だと感じています。また、色々な企業もオフィス棟に入ると聞いているので、そこで学生の人材育成、データの利活用、実装フィールドの活用など、産学連携のハブを作りたいと考えています」

今回のプロジェクトをきっかけに、2023年8月に長崎大学とソフトバンクは連携協定を発表しました。地方の発展には、IT人材の育成が重要だと宮川は語ります。

「将来、地方が発展していくためにはそこに残るIT人材が必要だと感じています。デジタル化が進まないと地方の長期的な発展は難しい。その担い手を何とか育てたいという思いから、連携協定を締結させていただきました」     

地域創生最前線

本プロジェクトをはじめとした産学官連携の強化が進む長崎。一方で、人口減少が著しく進行していることは深刻な課題です。鈴木市長、大石知事はその課題解決、そして地域創生のための今後のアプローチについて、次のように示しました。

鈴木市長
・現状:魅力的な雇用の受け皿がなく、市を出た若者がその後戻らない
・解決方針:「経済の再生」と「子育て世代が暮らしやすい社会づくり」の推進

大石知事
・現状:離島、半島という地理的特徴も医療・交通の面で課題の一因に
・解決方針①:オンライン診療に留まらず、自宅までドローンで薬を届けるなど、一連の医療行為のオンライン化、その仕組みづくりを推進
・解決方針②:交通手段の確保という課題にも向き合い、自動運転やオンデマンドなどを組み合わせて、乗りたい人が使える手段を整備

両者のコメントを受けて、永安学長は「確かに人口減少は進んでいるが、さまざまな医療、そして物流の実証の場になっているという点で、長崎はいま非常に熱い」と強調します。

大石知事が話す「課題を逆手に取り実証フィールドとしての価値を高め、産学官連携やデジタル人材育成などもあわせて積極的に取り組む長崎の姿」は、地域創生の新たなロールモデルになる可能性を秘めています。

講演の最後に、登壇者が「地域創生を進めるために大事なキーワード」を挙げました。

・大石知事「未来大国」

・鈴木市長「オール長崎!」

・髙田社長「ドリームキラーに勝つ」

・永安学長「共創」

・宮川社長「デジタル」

地方創生を進めるために大事なキーワードとは

本講演でモデレーターを務めたソフトバンク 大曲は、これらのキーワードを次のようにまとめました。

「産学官で共創し、オール長崎で地域創生に取り組む。その過程ではドリームキラーが出てくるかもしれないが、そこに打ち勝ち未来大国をつくる。そのためには必要不可欠なキーワードとしてデジタルというものがある」

いずれもこれからの長崎、そして同じような課題を抱える地方において、地域創生を進める上で目指すべき形なのかもしれません。

ソフトバンクの自治体ソリューション

自治体DX推進サイト「ぱわふる」

「ぱわふる」は『Power of Furusato(ふるさとにパワーを)』をコンセプトとし、自治体が抱えるさまざまな課題を解決するための自治体ソリューションや自治体導入事例を紹介しています。

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