在宅コールセンターをさらに高度化するためのコミュニケーションの在り方

2024年3月6日掲載

在宅コールセンターをさらに高度化するためのコミュニケーションの在り方

前々回前回の記事では、在宅コールセンターをはじめるにあたっての3つの課題(壁)のうち「在宅コールセンターをはじめる際のシステム上の課題(導入の壁)」「遠隔地でのオペレータの教育やフォロー、勤怠管理など、運営上必要となる課題(運営の壁)」について解説しました。今回は「在宅コールセンターでの日々の業務運営における課題(高度化の壁)」について、コールセンターの現状に詳しいビーウィズ株式会社の形柳氏に引き続き解説いただきました。

第1回目はこちら:「在宅コールセンター」とは? オペレータの採用率が10倍に? 

第2回目はこちら:在宅オペレータをマネジメントする方法とは?~在宅コールセンターの運営のコツ~

目次

ビーウィズ株式会社 形柳氏

形柳 亜紀 氏

ビーウィズ株式会社
経営企画部 部長

在宅コールセンターの3つの壁

第1回目の記事では、在宅コールセンターのメリットや、はじめるにあたって立ち塞がる3つの壁のうち、「導入の壁」についてお話ししました。第2回目は、遠隔地でのオペレータの教育やフォロー、勤怠管理や紙のマニュアルのデータ化など運営上乗り越えることが必要となる「運営の壁」についてお話ししました。

第3回目となる今回は、「在宅コールセンターを行いながら、日々の業務運営をどう改善していくか」という「高度化の壁」にフォーカスしてお話します。

在宅コールセンターの3つの壁

在宅コールセンターにおける高度化の壁とは

近年のコールセンターは、ルールやマニュアル通りの応対から、お客さまにあわせた柔軟な応対が求められています。例えば、お客さまの状況にあわせ、あえてルールを逸脱して対応することもときには必要です。そのために、テクニカルな指導だけでなく所属するコールセンターのポリシーやお客さま応対に対する会社としての価値観をしっかりとオペレータに理解してもらっておく必要があります。

センター型(出社型)のコールセンターでは、近くに模範となる先輩がいるため、自ずとポリシーの理解を促すことができます。しかし、在宅コールセンターでは、オペレータは上司だけでなく同僚とのつながりも作ることが難しいため、ポリシーや価値観の理解が行えず品質の低下や退職を促すことにつながってしまいます。在宅コールセンターにおける「高度化の壁の突破」は、ポリシーや価値観を理解した上で上手にコミュニケーションできる在宅オペレータを育成できるかにかかっていると言えるでしょう。

本日は在宅オペレータ業務の高度化に欠かせない、初期研修による「職場化」と、朝礼を通じて「チーム」になる、という2つの要素についてお話しします。

初期研修による「職場化」

初期研修はオペレータにとって「職場になじむ」ための重要な期間です。知識習得だけでなく、職場の風土や文化を理解してもらう機会となります。

コロナ禍以降、一般化したオンライン研修ですが、初期研修のオンライン化は非常に難易度が高くなります。なぜなら、初期研修期間はオペレータとスーパーバイザーの間で十分な関係構築がまだできていない時期にあたるからです。そのため、オフライン・オンライン研修それぞれの特徴を理解した上で、カリキュラム設計やトレーニングを実施しなければ大量の退職者を出してしまいます。

以下の図は、弊社のとある完全在宅コールセンター(PJT)での退職率を表しています。開始した直後は、研修方針が定まっておらず職場になじませることに失敗してしまい、多くの退職者を出してしまいました。(以下図:22_Q1)その後さまざまな工夫を行ったことで、退職率を大幅に改善することができました。(以下図:22_Q2以降)ここでどのようなポイントで行ったか解説します。

在宅コールセンターの退職率推移

ポイント① メンバー紹介

センター型(出社型)では、オペレータは「会社の雰囲気」をさまざまな角度で理解することができます。例えば、センターの立地、入っているビル、休憩室、貼ってあるポスターなどです。オペレータは実際の業務だけでなく、さまざまな情報をもとに会社への信頼を醸成し、メンバーの一員としてなじんでいきます。

一方、在宅オペレータにとって「会社の雰囲気」はスーパーバイザーを通して理解することになります。スーパーバイザーの一挙手一投足が「会社のイメージ・信頼」につながってしまうことを理解しておく必要があります。そのため、在宅オペレータに業務にあたるスーパーバイザー全員の紹介をする機会をきちんと作り、職場の雰囲気を多面的に知ってもらうことが必要です。研修を1人の講師だけでなく複数名の講師で行うことも有効です。

ポイント② オンライン研修は雑談の喚起が重要

対面研修では朝の挨拶からはじまり、「昼ごはん何食べた?」といった軽い雑談が自然と生まれ従業員間の絆を育むことができます。これらの雑談は、講師や同僚との関係を築き、職場へなじんでいくことを促進します。

しかし、オンライン研修ではこのような雑談の場を作るのが難しくなります。そのため、講師は雑談を生み出すための工夫が求められます。例えば、Zoomのブレイクアウトルーム機能を活用してディスカッションを行ったり、研修最後の1時間に「分からなかったことを共有する座談会」の時間を設けるなど、研修カリキュラムの工夫が必要です。

加えて、コミュニケーションの取り方にも工夫が必要です。研修講師は早めにオンライン会議に参加しておき、参加者一人一人と軽く話をしたり、休憩時間もすぐにミュートにせず「何か質問あったら、遠慮せずに言ってね」と声をかけるなど、相談や報告の場を意識的に作ります。些細なことのように思えますが、このような細やかな工夫や気遣いが在宅オペレータを職場になじませ、初期研修を乗り越える力を与えてくれます。

ポイント③ 良質なアウトプットの機会を提供する

オンライン研修を受講するときに、ついつい、ほかのことをやってしまった経験はありませんか?

初期研修は、オペレータがお客さまとの対応に必要な知識を学ぶ大切な時間です。集中せずに聞いていると大切なポイントを見逃してしまうリスクがあります。対面研修では堂々とほかのことをやる人はいませんが、オンライン研修ではオペレータが集中して聞き理解しているかを確認するのが難しいです。

そのため、定期的にアウトプットのチャンスを作ることが大切です。例えば、講義(インプット)の後は、ディスカッションやロールプレイ、確認テストなどのアウトプットの時間を設けるとよいでしょう。そうすることでオペレータの理解度をチェックでき、「次の講義はテストがあるからね」と言えば講義にも緊張感が生まれます。

当社においてオンライン初期研修の難関は「システム研修」でした。以前よりZoomなどのオンライン会議システムで研修を行っていましたが、講師が画面共有して画面操作を見せることはできても、オペレータ全員の画面を講師が確認することができません。そこで、当社はオペレータの手元の画面操作を講師が一元的に確認できるシステムを開発し、オンライン研修で活用して対応しています。

オンライン研修システム be-monの画面 オンライン研修システム be-monの画面

朝礼を通じて「チーム」になる

ここまで初期研修について説明しましたが、業務開始後も在宅オペレータの育成と成長を支援する必要があります。指導回数を増やしたり、研修を実施するなどの直接的な取り組みも大切ですが、それだけではなく、センターの文化や価値観を継続的かつ頻度を高めて伝えていかねばなりません。そのためには、「朝礼」のような日常的な活動を通じて、センターの価値観を伝え続けることが重要です。朝礼を効果的に活用することで、在宅オペレータが自分自身を会社の一員と感じ、その文化を形成する担い手となるように手助けしましょう。

ポイント① センターもオンラインも同時に実施

朝礼はセンターの雰囲気を理解する重要な場です。センター型(出社型)と在宅型のハイブリッド運営を行っている場合は、センターと在宅オペレータをオンラインでつなぎ、同時に朝礼を行います。同じスーパーバイザーから同じ話を聞くことで、センターの状況や雰囲気を深く理解できます。人数が多い場合は、朝礼を小グループ(センター型・在宅型混合)ごとに実施することも考えられます。朝礼を小グループに分けて実施することで質問がしやすくなり、理解度を確認することができます。

ポイント② 朝礼は顔出し必須

当社では、朝礼を在宅オペレータとセンターのコミュニケーションの場と捉えているため、朝礼に限らずオンラインでの接続は顔出しを必須としています。顔を出して朝礼に参加してもらうことで「うなづいてくれているから分かってくれたのかな?」「不安そうな顔をしているから分からないのかな、後からフォローしよう」など、オペレータの状況把握に活用しています。

ポイント③ 朝礼は文字にも残す

皆さんのコールセンターでは朝礼の内容を文字に残していますか?

コールセンターでは、オペレータの出勤シフトがバラバラなことも多く、1日に複数回の朝礼を行う必要があります。朝礼の内容を文字に残しておくことで、どの朝礼も漏れなく同じ内容を周知することが可能です。またシフト休を取った在宅オペレータが出勤したときも、休暇中に周知されたことがすぐに分かるので安心して業務に望めます。

当社では、Excelなどさまざまな方法を用いて工夫しながら情報周知をしていましたが、改めて全社共通のオペレータ向けのポータルサイトを構築しました。その他、周知内容を見たかどうかを個人ごとに確認できるようにし、見ていない人はスーパーバイザーから個別のフォローを行うようにしています。

まとめ

今回は在宅コールセンターの運営における「高度化」について、ビーウィズ社の形柳氏から説明いただきました。在宅コールセンターは、採用コストや研修費の削減、離職率の低減による人員補充の必要性の減少など、大きなコスト削減効果を期待できます。しかし、従来のマネジメントや運営手法だけでは十分な効果を得られない場合もあります。今回ご紹介した研修を通じた在宅オペレータの意識改革や朝礼によるチーム形成などご参考にしてみてください。

ソフトバンクでは、在宅コールセンターの環境作りなど、お客さまのニーズにあわせた多様な提案が可能です。このブログを参考に、ぜひ在宅コールセンターの導入をご検討ください。

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