Alibaba Cloud上でGlobal Acceleratorを利用した日中間Live動画配信環境を構築してみました

2022年12月18日掲載

キービジュアル

皆さんこんにちは。クラウドエンジニアのKangです。

この記事は、ソフトバンク Advent Calendar2022の18日目の記事になります。

この記事では、Global Acceleratorネットワーク加速サービスとApsaraVideo Liveサービスを組み合わせて利用することで、安定的な動画配信を実現する方法を紹介します。

 

目次

  • この記事では、Global Acceleratorネットワーク加速サービスとApsaraVideo Liveサービスを組み合わせて利用することで、安定的な動画配信を実現する方法を紹介します
  • ある程度ライブ配信の知識がある事を前提に書いています
  • 国境をまたぐような遠距離のユーザに配信を届けたい場合の技術の選択肢を得ることができます

はじめに

新型コロナウイルス感染症の感染拡大による問題で、長期の外出自粛、テレワークの普及などによって、動画配信サービス、Webセミナー、Onlineコースなどのニーズが高まっています。

これらLive動画配信を行うサービスは世界中のさまざまな企業から提供されていますが、今回はAlibaba Cloudの「ApsaraVideo Live」というサービスを紹介したいと思います。

同一の国・地域内で配信する場合、動画の配信状況が不安定になることはあまりないと思いますが、配信側は日本にあり、視聴側が海外にいるような国を跨いで配信する場合、インターネットのネットワーク状況により、配信が不安定というような報告がたくさんあります。それを解決する為に、今回はGlobal AcceleratorというAlibaba Cloud社が提供しているネットワーク加速サービスとApsaraVideo Liveサービスを組み合わせて利用することで、安定的な動画配信を実現したいと考えております。

<構成図>

今回はAlibabaCloud ApsaraVideo Live Serviceを利用した動画配信環境を構築してみました。更に日中間など国を跨ぐような配信の場合、GA(Global Accelerator)を利用し、安定した動画配信を実現する方法を紹介したいと思います。

日本側で撮影している映像を、クライアントPCにインストールした「OBS」という映像アップロードソフトを使用してApsaraVideo Liveの配信用URLにアップロードします。配信用PCと配信用URLの通信は日中間を跨ぐため、この通信を安定させるため、今回はGAを使用しております。

以下の図は具体的な処理フローを示しています。

1.ApsaraVideo Live側の設定

AlibabaCloud ApsaraVideo Live は大規模な分散型リアルタイム トランスコーディング テクノロジに基づいて開発されたビデオ ライブ ストリーミング プラットフォームであり、低遅延、高解像度、およびスムーズな再生を特徴とする、アクセスしやすいビデオ ライブ ストリーミング サービスです。

動画配信するには、ApsaraVideo Liveのコンソールにて、配信用のドメインと再生用のドメインをそれぞれ登録する必要があります。

今回予め以下のドメイン名を用意しております。

・ビデオ配信用ドメイン名:upload.example.net
・ビデオ再生用ドメイン名:play.example.net

※この記事で紹介するドメインはサンプルです。

1.1 配信用ドメインを登録する

予め用意されたVideo配信用のドメインを登録します。今回のLive Centerは[上海]を選択します。CDNのEdge Groupは[Mainland China]を選択します。

1.2 配信用ドメインのCNAMEレコードを登録する

配信用のドメイン名を追加すると、以下のように配信用ドメインのCNAMEが払いだされます。ApsaraVideo Liveサービスを利用するには、ドメインDNSのレコード管理画面で、こちらのCNAMEを配信用のドメインとバインドする必要があります。

upload.example.net   CNAME      upload.example.net.w.kunlunso.com    
                           ------->

1.3 再生用ドメインを登録する

配信用ドメインと同様に再生用のドメイン名を登録します。Live Centerは[上海]を選択します。CDNのEdge Groupは[Mainland China]を選択します。

注意:

  • 配信用ドメインと再生用ドメインのLiveCenterは同じLiveCenterを使う必要があります。今回、配信用、再生用のLiveCenterとも[上海]を利用します。
  • EdgeGroupに[MainlandChina]と[Global]を選択する場合、そのドメインがICPを取得している必要があります。

1.4 再生用ドメインのCNAMEレコードを登録する

再生用のドメイン名を追加すると、同様に再生用ドメインのCNAMEが払いだされます。

ドメインDNSのレコード管理画面で、CNAMEを再生用のドメインとバインドする必要があります。

play.example.net    CNAME      play.example.net.w.alikunlun.net    
                    ------->

1.5 配信用、再生用ドメインのステータスを確認する

配信用ドメイン、再生用のドメインにそれぞれのCNAMEレコードを登録した後、暫く経つと、ドメインのステータスが[有効]に変更されます。それは、ドメインとApsaraVideo LiveのCNAMEがバインド済みであることを示しています。

1.6 配信用、再生用ドメインのURLを作成します

ApsaraVideo Liveコンソールのメニューで、[URL Generators]をクリックし、Streamingに登録された再生用のドメイン名を選択します。

[Application Name]と[Stream Name]に適切な名前を入れて、[Generate URLs]をクリックします。

1.7 作成された配信用、再生用ドメインのURLを確認します

[Generate URLs]をクリックすると、以下のように配信用と再生用のドメインのURLが自動的に作成されます。上の2つは配信用のURLです。下の4つは再生用のURLです。再生用のURLはRTMT、FLV、M3U8、RTS形式のストリーミングをサポートしています。

これで、ApsaraVideo Live側の設定が完了です。

2. Global Acceleratorの設定

Global Accelerator (GA) は、世界中にアクセスポイントを提供することで、ネットワークトラフィックの伝送を高速化できます。 GA サービスは、高品質の Border Gateway Protocol (BGP) 帯域幅と高いサービス信頼性を保証し、企業がインターネットに公開するサービスへのグローバルな接続を加速します。 GA は Alibaba Cloud の信頼性が高く輻輳のないグローバルネットワークに支えられており、地域全体のユーザーに高速ネットワーキングエクスペリエンスを提供し、超低伝送遅延を実現します。

2.1 GAインスタンスを購入する。

Global Acceleratorコンソールにログインし、[Create Instance]をクリックします。

GAのインスタンス購入ページで、GAのタイプに[Standard]を選択します。

2.2 Basic Bandwidth Planを購入する

GAのインスタンスだけでは、通信ができませんので、通信させるにはGAの帯域幅パッケージの購入が必要です。

今回GAのバックエンドサービス:カスタムドメインを設定する必要があるため、Enhanced以上のBandwidth Planを購入する必要があります。

2.3 Cross-border Acceleration Bandwidth Plan を購入する

今回日本―中国の間で国を跨ぐ地域の配信を加速するため、Cross-Border Acceleration Bandwidth Planの購入も必要です。

2.4 購入したBandwidth Plan をGAインスタンスにバインドする

2.5 GAの加速地域を設定する

[Add Region]をクリックし、RegionにJanan(Tokyo)を選択します。

2.6 GAのListenersを設定する

GAインスタンスIDをクリックし、Listenersのタグで[Add Listener]をクリックします。

  • 今回配信ストリーミングはRTMPプロトコルを利用するため、[Protocol]にTCPを選択します。
  • RTMPのデフォルトポート番号1935を入力します。
  • 同じClinetからのリクエストは同じバックエンドサーバーに転送するように、[Client Affinity]でSource IP Addressを選択します。

2.7 GAのバックエンドサービスを設定する

今回配信用liveCenterは上海であるため、GAのバックエンド地域は上海を選択します。

  • BackendServiceに 「Off Alibaba Cloud」を選択します。
  • BackendServerType に[Custome Domian Name]を選択し、配信用のドメインのCNAMEを入力します。(Step1.5を参照してください。)

2.8 配信用ドメイン名をGAインスタンスにバインドする

操作画面

GAインスタンスの詳細ページでGAのCNAMEを確認できます。

AlibabaCloud DNSコンソールの管理ページで、配信用ドメインのCNAMEレコードをもう1個追加し、上記のGAのCNAMEとバインドします。

upload.example.net   CNAME      GAのCANME
                     ------->

DNS解析Lineは[OutSide mainland China]を選択します。

 

操作画面

日本にあるクライアントからnslookupを実行すると、配信用ドメインはGAとバインドしていることを確認できます。

これでGA側の設定が完了です。

3. 配信環境の準備

環境: 

OBS配信用 PC

region:TOKYO
スペック: 8 core 32 Gb
タイプ: ecs.g7a.2xlarge
帯域幅:25Mbps

配信側

OBSソフト: 28.0.3  64bit
Video データ:FLV形式の 1280 x 720 のVideo
配信Speed : 2.2 Mb ~ 3 Mb
配信用URL:
-RTMP: rtmp://upload.example.net/app/sn?auth_key=1666339636-0-0-bd1c94090256e7c41472d2612829fe7d

・再生側

ソフト: VLC player 64bit
再生用URL:
  RTMP:  rtmp://play.example.net/app/st?auth_key=1666336419-0-0-a1b062343cece8fed39e694fe97bdf0a
  FLV:   http://play.example.net/app/st.flv?auth_key=1666336419-0-0-c884389983609faa82b2b96cc7e079b9
  M3U8:  http://play.example.net/app/st.m3u8?auth_key=1666336419-0-0-34fddd9cc4f160e452089b834c592bf1

 

4. 実際の配信結果

日本から安定した配信が行われ、中国現地各拠点のクライアント(蘇州、杭州、北京)からフリーズすることなく、動画配信を正常に視聴することができました。

Videoのフレームレートは30fpsくらいで、安定的な配信が行われていました。

配信スピードは2.5Mbpsくらいでした。

今回の検証環境では、GAの帯域幅を3Mbpsを購入しているため、ほぼ100%の帯域幅が使用されています。

以下の図はApsaraVideoのCDNノードの配信フレームレートを示しています。

以下の図はGAインスタンスの加速IPのインバウンドとアウトバウンドの帯域幅使用率です。

5. さいごに

今回はリージョン間のインターネット回線の動画配信の通信品質を改善する目的として、GAのバックボーン回線を使用したApsaraVideo配信を安定的に行う方法を纏めさせて頂きました。インターネット回線環境による動画配信不安定に悩んでいる方はぜひお試し頂ければと思います。

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