アリババグループを幅広く支えるCloud Native Multi-Model DatabaseのAlibaba Cloud Lindormについて

2022年12月19日掲載

キービジュアル

こんにちは、大原です。

この記事は、ソフトバンク Advent Calendar2022の19日目の記事になります。

Alibaba ClouudのデータベースにLindormというCloud Native Multi-Model Databaseプロダクトサービスが新たに登場しましたので、本記事ではLindormの概要を紹介します。

目次

はじめに

データベースといえば「Relational Database(RDB)」が真っ先に思い浮かぶでしょう。RDBは整形されたテーブル形式にそれぞれのデータを格納し、データの整合性を保ちながら参照や更新、削除等データの管理をするデータベースです。

しかし、時代の変化に伴い、データモデルは多様化しています。例えば、構造化されたテーブル形式のデータにはRDB、非構造化でJSONオブジェクトのようなデータにはDocumentやWide-columnデータベース、ハッシュテーブルはKey-Valueデータベース、強いリンクを持つ参照系データにはグラフデータベースなどといった具合です。1つのアプリケーションに異なるデータモデルがあるとして、それぞれの異なるデータベースに格納し、運用するのは、コストや開発、運用労力の観点からちょっと骨が折れます。

それを解決するためにMulti-Model Databaseというデータベース技術が注目を集めています。Multi-Model Databaseは複数のデータモデルを1つの統合処理基盤でサポートするように設計されたデータベース管理システムです。

このMulti-Model Databaseで Alibaba Cloudから、ApsaraDB for HBase、そしてLindormというプロダクトサービスをリリースしています。今回はアリババグループ事業を大きく支える Lindorm に焦点を当てつつ紹介します。

1. Multi-Model Databasesが登場した背景

Multi-Model Databaseは複数のデータモデルをサポートするデータベースです。このデータベースを紹介する前に背景を少し説明します。

現在、Web、IoT、産業、金融、製造業、SNS、ゲーム、地図、etc、様々な分野において、Relational Databaseに適さないデータモデルを持つデータ処理基盤が求められるようになっています。例えば、次の図のIoT基盤を例に見てみましょう。

IoT基盤であれば、APM(Application Performance Management:システムの性能を監視、管理)も付帯されています。そこから発生するデータを大きく分類すると「メタデータ」「運用データ」「デバイスの関係」、そこから因数分解すると、メタデータはテーブル形式なのでRelational Database、運用データはトラッキング・ログ・メトリクスの3種類があり、トラッキングは主キーがあるけどデータの流れ、レコードによってはフィールドの長さが異なるためWide-Column、ログはDocument形式かJSON形式、メトリクスは時系列、デバイス関係はkafkaで取得し、kafka内のストリーム処理エンジン(ksqlDB)へ、それぞれ集約し、OLTP(OnLine Transaction Processing)データベースとして参照や更新処理等、データの運用をします。

そのあと、OLAP(Online Analytical Processing)、データ分析のためにApache Hiveやら、Apache Spark、Elasticsearchなどにデータを渡して分析をします。このフローだとそれぞれの目的に応じたデータベースプロダクトサービスを配置するため、「開発範囲の増加」「オペレーティングコストの増加」「アクセス効率の低下」「リソースコストの肥大化」といった大きな4つの問題が発生します。これを解決するものが、Multi-model Databaseです。

Multi-Model Databaseであれば、先述の構成がどのように解決するか説明します。
Multi-Model Databaseは、1つのプラットフォームで、メタデータをRelational Databaseとして格納、運用データのトラッキングやログはWide-column、メトリクスは時系列、デバイスの関係はkafka Consumer(ストリーミングとして取得)しながら、OLTPデータベースとして参照や更新処理等、データの運用ができます。

OLAP、データ分析の面でもメリットがあります。Multi-Model Databaseには検索機能が付帯されてるため検索出来ることや、データ分析基盤へシームレスにExportすることができます。Multi-Model DatabaseはArangoDBOrientDBCouchbaseなどがあり、それぞれのデータベースサービスごとによって色々な解決方法があります。

2. クラウド上のMulti-Model Databasesとは

クラウド上のマルチモデルデータベースとはどんな価値があるのでしょうか。著者の折衷案として次の通りにざっくりまとめてみました。

  • 運用の複雑さからの解放
    異なるデータベースを併用運用することによる、運用の複雑化・煩雑化を排除

  • データの柔軟性
    データモデリング(正規化や設計、RDBに格納するためのクレンジングやETL処理など)の労力から解放

  • データの一貫性
    アプリ側から時系列、Key-Value、ドキュメントなど異なるデータを格納後、このデータを一貫した状態で管理

  • 高可用性
    複数の異種システム全体が正常に動作し続けるよう、地理的高可用性構成やリージョン/Zone単位で分散

  • トランザクション処理
    複数の異種システムにまたがってトランザクション処理は困難だったものを、マルチモデルデータベースで対処

  • Low Cost
    スケーリングユーザーのワークロードに応じて、コンピューティングの処理能力やストレージの拡張等自動スケーリングを提供

  • 開発速度の向上
    ビジネスや開発スタイルの変化に即応し、多様多種なデータモデルにも学習コスト不要で柔軟に対応

Alibaba Cloudからもクラウド上のMulti-Model DatabaseのLindormが登場しています。本記事ではLindormを中心に説明します。

3. Alibaba Cloud Lindormとは

Lindormは、インターネット、モノのインターネット、自動車インターネット、産業用インターネットなどのために設計、最適化された統合処理を持つクラウドベースのMulti-Model データベースです。

ワイドカラム、時系列、テキスト、オブジェクト、ストリーム、空間など様々なデータの統合アクセスと統合処理をサポートし、各種オープンソース標準インタフェースと互換性があり、サードパーティのエコシステムユーティリティのシームレスな統合を実現します。

Lindormは小売、ログ、監視、請求、広告、ゲーム、ソーシャルネットワーク、車両管理、およびその他幅広いシナリオに適したデータベースであり、アリババグループのコアビジネスをサポートする重要なデータベースの1つです。

Alibaba Cloud Lindormは最近国際サイトにリリースしたばかりですが、実はアリババグループの様々な小売等エコシステムと深いかかわりを持ちながら、プロダクトサービスとして10年以上の歴史を持っています。どのような歴史をもつか、説明します。

アリババグループの1つであるTaobaoという巨大ECサイトで、顧客ユーザーの増加や事業の成長に伴い、OracleやMySQLなどのリレーショナルデータベースでは対応しきれない程に大量のデータかつ様々なデータモデルを扱う背景から、Alibabaは2010年からオープンソースのApache HBaseを使い始めるようになりました。

アリババグループが大規模分散データベースとしてApache HBaseを選定した理由は、GoogleでApache HBaseと同じアーキテクチャであるBigTableは、Googleの検索サービス、Chat、Maps、Gmail、Spreadsheets、Youtubeなどで幅広い実績があり、FacebookでもApache HBaseによる豊富な実績があるためです。ちなみにそのBigTableは現在Google Cloud BigTableとして商用利用することができます。

当初AlibabaはApache HBaseをベースとしたアーキテクチャで実装しましたが、TaobaoではPOSや購買履歴のほか、メッセージ機能、トラッキングログ、IoTデータ、検索機能、、などオープンソースのApache HBaseだけでは満たせないシナリオが幾つかあり、パフォーマンスが厳しいなどいくつか困難に遭遇していました。解決策として、AlibabaはオープンソースのApache HBaseコアコミッター9名によって編成されたチームで、Apache HBaseからMulti-Model DatabaseのLindormを独自開発、2011年3月にLindorm 1.0版をTaobaoへリリースしました。以降、TaobaoはLindormをコアアーキテクチャとして2022年現在でも運用しています。

TaobaoにLindorm 1.0 リリース後、Taobaoの事業成長・拡大化につれてAlibabaはLindormの新機能開発や最適化等改修を10年近く重ねていました。その過程で、LindormはApache HBase の7倍以上のパフォーマンスでデータの読み込み/書き込み処理、1,000を超える大規模クラスタ対応化、処理ピーク時は5,000万リクエスト/秒(RPS)を捌けるなど、オリジナルのApache HBaseを上回るMulti-Model Databaseとしてサービス完成度を高めていったのです。Lindormの読み込み処理・書き込み処理はOracle Databaseを上回るレベルに至っています。

2019年8月にAlibaba Cloud 中国サイトでフルマネージドサービスのApsaraDB for HBaseサービスに Lindormのクラウドサービスとして Performance-enhanced Edition バージョン (Lindorm) をリリース。保険、リテール、IoT、製造業、金融、ゲーム、オフィス、広告、オンライン教育、ソーシャルメディアなど50を超える企業利用者を集めつつ、顧客等フィードバック収集や機能拡充・最適化等開発のサイクルを重ねて、今年2022年9月に国際サイトでLindormがリリースされました。

Lindormは現在、アリババグループエコシステムを支えるCloud-Native Multi-Model Databaseとして、幅広い領域で存在感を放っています。

4.Alibaba Cloud Lindormの機能について

Alibaba Cloud Lindormはリリースして10年以上および50を超える様々な企業による利用実績を持つCloud-Native Multi-Model Databaseです。本章では、Alibaba Cloud Lindormを利用するにあたり、押さえておきたい基本事項、サービス特徴を説明します。

4-1. Lindormが実現するマルチデータモデル

Lindormは「ワイドカラム」「Key-Value」「時系列」「検索」のデータモデルを扱うことができるうえ、「分散ファイルシステム」「Apache Sparkら分散コンピューティング」「ストリーミング」の構成を併せて持ちます。これらは、Lindormクラスター生成時に選択されたエンジンの種類によって、どのようなサービス展開ができるかが決まります。

エンジンの種類Lindorm Wide Table EngineLindorm TSDBLindorm SearchLindorm DFSLindorm Compute EngineLindorm streaming engine
データベースの種類ワイドカラムKey-Value時系列検索---
データモデル/構成
各行に対し任意の列を設定
半構造時系列テーブル

フルテキスト インデックス、集計コンピューティング、複雑な多次元クエリ

データ ディレクトリとデータ ファイル

を管理するLindorm専用の分散ファイルシステム

データ分析用のクラスタコンピューティングフレームワーク。Compute NodeはAlibaba Cloud Serverless Kubernetes (ASK) で実行

データをストリーミングでLindormストレー(LindormTable、LindormTSDB)へ書き込み

データ取得方法

SQL、Apache HBase API、Cassandra Query Language (CQL) 、Amazon S3 API、JDBC

SQL、TSDB  HTTP API、TSDB for InfluxDBプロトコル、JDBC

SQL、Apache Solr API、Webベースのクエリ、JDBC

HDFS Shell、HDFS FUSE、HDFS API 、HDFS クライアント

SQL、Apache Spark、Apache Spark API、JDBC

SQL、Apache Kafka API

互換性

Apache HBase、Apache Phoenix (SQL)、Apache Cassandra

Time series database(TSDB)

Apache Solr

HDFS

Apache Spark

Apache Kafka

シナリオ

メタデータ、注文、請求書、プロファイル、ソーシャル ネットワーキング情報、フィード、ログ、JSONなど

計測データ、監視データ、デバイスの稼働データ、IoT、IIoT(Industrial Internet of Things、産業用IoT)、アプリケーションパフォーマンス監視(APM)など

商品に関する情報検索、物流シナリオで注文追跡情報検索、交通監視シナリオで車両に関する情報検索など

動画や画像など非構造体、半構造体ファイルなど

データ生成、対話型分析、機械学習、グラフ コンピューティングなど

IoTデータ処理、アプリケーションログ処理、物流経年分析、旅行データ処理など

4-2. Lindormアーキテクチャ

LindormはCloud-Native Multi-Model Databaseとして、Apache HBase、Cassandra、TSDB、Apache Solr、Apache Spark、Apache Kafkaなどのエンジンを統合した、ハイブリッド構成で搭載しています。

そのため、1つのデータベースでRDB、Key-Value、Wide-column、時系列などの様々なデータモデルに対し、SQLクエリでOLTPデータ運用、インタラクティブ分析、機械学習などのシナリオを満たすことができます。例えば、JSONデータがデータソースだった場合、LindormはCassandoraのCQI APIというコマンドインターフェースを備えているのでCQI APIによりJSONファイルをワイドカラム形式のワイドテーブルへ変換し格納します。

そのあと、JSONに対するテキスト全文検索を行う際にはElasticsearchより高速かつカスタマイズがしやすいApache SolrエンジンによるLindorm Searchindexで全文検索ができます。

Lindormの計算エンジンはオープンソースのApache SparkをLindorm向けに改良したLinSparkを搭載しており、オープンソースのSparkのUI/SDK/API/プログラミングインターフェースを完全にサポートしながら、Lindormストレージエンジンの機能を深く統合しつつ分散コンピューティング処理を効率的に実行します。

Apache Spark(LinSpark)により、入ってきたデータに対しPythonもしくはScala、SQLで大量のデータをメモリ内もしくはバッチで迅速に処理しながら計算処理、ETL、分析、機械学習などが行えます。

ストレージはHDFS(Hadoop Distributed File System、分散ファイルシステム)をAlibabaがLindorm向けに改良したLindorm DFSを実装。これにより、往来のHDFSよりリソース効率が10倍以上向上し、往来のリレーショナルデータベースのストレージスペースに対しLindorm DFSとして80%近く高圧縮されるため、コスト削減ができます。

Lindormの特徴は次の通りです。

LowCost

  • 低コストのCloud-Native Multi-Model Database
  • 最小のストレージコストで、多層ハイブリッドストレージメディアをサポート
  • インテリジェントな機能圧縮アルゴリズムにより、最大1/10以上の データ圧縮
  • 自動的なホット/コールドストレージをサポートし、データストレージの包括的なコストを大幅に削減
  • データライフサイクル管理機能と自動削除機能を提供

Cloud-native

  • プールされたリソース:ストレージとコンピューティングの分離に基づく完全な分散アーキテクチャにより、コンピューティングリソースとストレージリソースのそれぞれ独立したスケーリングをサポート
  • 高い伸縮性:運用中のサービスに影響を与えずに、二段階で拡張
  • 自動スケーリング:手動での容量管理不要で、サーバーレスベースの自動スケーリングを提供

統合管理

  • 最も機能豊富なCloud-Native Multi-Model Database
  • マルチデータモデル、ワイドカラム、時系列、オブジェクト、テキスト、メッセージキュー、空間などをサポート
  • データアクセス、ストレージ、検索/取得、コンピューティング、分析、AIのための融合処理とサービス機能
  • データ変換処理、ETL、同期処理、サブスクリプション機能、機械学習機能が付帯しており、二次開発は不要

互換性

  • SQL、HBase、Cassandra、S3、Solr、HDFS、Kafka、その他多くのオープンソース標準インターフェースとの互換性あり
  • Spark、Flink、Hiveなどのオープンソースのコンピューティングエンジンとシームレスな統合
  • Lindormの変更データをリアルタイムで変更し、コンシューマー(kafkaと同じくメッセージをTopicから読み出すためのクライアントライブラリ)をカスタイマイズ
  • 現在の主流データベースからのスムーズなオンライン移行をサポート

5. Lindormコアアーキテクチャ

Lindormのコアアーキテクチャは次の通りです。

5-1. データの自動階層化

Lindormはタイムラインを使ってデータを格納していきます。その過程にて、Lindorm独自アルゴリズムにより、直ぐに使うデータはHot Dataへ自動的に昇格、使う予定があるかわからないものはWarn Data、使う予定が少ないものはCold Dataへ自動で降格します。自動的なデータの階層化構成により、ユーザーは何も意識することなくCold Dataは80%のコスト削減、Hot Dataは15%のアクセス性能向上といったパフォーマンスを享受できます。

5-2. 高性能・高スループット

LindormはオープンソースのApache HBase コアコミッター9名以上によって開発されたプロダクトサービスなので、その分パフォーマンスはApache HBaseを上回ります。

例えば、LindormとApache HBaseと同じスペックで20億レコードによるスループット比較では、Lindormのほうが読み取り処理が3倍近く早く、書き込み処理は3倍以上高速です。同じく20億レコードでR99(リクエストの99%は10ms以内に帰ってくる)を実現しており、Apache HBaseの数倍のコストパフォーマンスを得られます。

5-3. フルサーバレス

Lindormはサーバレスモードもあり、使った分だけ課金する構成もできます。

5-4. グローバル分散データベース

LindormはCassandraのアーキテクチャも備えており、Cross-Zone展開をサポートしています。複数のZoneにLindormインスタンスをデプロイすることにより、障害等有事の際でもLTS(Lindorm Tunnel Service:データ同期サービス)により、100ms以内の素早い復旧を実現するため、高可用性構成を確保できます。

5-5. 統合データへのアクセス処理

Lindormは、Lindorm SQLによって、計算エンジン、Lindorm ワイドカラムエンジン、検索エンジンそれぞれにクエリ投与しながら、運用データベース(※)およびOLAPデータ分析を実現します。
※Lindormは強い整合性と結果整合性をサポートするため、トランザクションを持つOLTPデータベースよりサービングという表現で運用データベースになります。

5-6. Lindorm MLによる機械学習

Lindorm 時系列エンジンにてSQLでAR、ARMA、ARIMAなどの統計モデルを使った異常検知や変化点検知、トレンド検出、クラスタリングなどの機械学習機能があり、SQLだけで機械学習を実現することができます。

例えば、IoTやAPI、ログ、メトリクスなどのデータをLindormへリアルタイム格納しながら毎秒おきに教師あり機械学習(Deep Learning)でリアルタイム予測といった、シンプルな構成ができます。

<参考>
AZFT次世代データベース技術研究所はAlibaba Cloud Lindorm時系列エンジンによりタイミング予測で成果を得られた事例
https://azft.alibaba.com/newspage/?id=150

6. Lindormユースケース

6-1. IoV(Internet of Vehicles、自動車業界のインターネット化)

Lindormに書き換えることで、大量データの書き込み処理、ETL、分析の大幅短縮化、ストレージコストの大幅削減化により、TCOと運用コストの削減を提供

操作画面

6-2. 車両搭載システム

Lindormは自動車インターネットにおける運転軌跡、車両の状態、位置情報などの重要なデータを毎秒おきに保存し、リアルタイムでETLしながらデータ処理や分析、他アプリケーションへのデータ連携を実現。

Lindormは1つのプラットフォームでデータ運用、データ分析、データ処理、バッチ処理、機械学習、ストレージとしての保存など幅広い領域で活用できるため、非常に低コストながら開発や連携における柔軟性を併せて持つため、開発者の負荷を大きく軽減します。

6-3. 財務数値化とリスク管理

6-4. アリババエコシステム

そのほか、Lindormによる事例はHelpページなど幅広く搭載していますので、よかったらこちらも参考にしてください。

<参考>

・業界事例(中国語ですが、Google翻訳などで参考にいただけますと幸いです)
 https://help.aliyun.com/document_detail/207916.html

・インターネット広告
 https://developer.aliyun.com/article/782172

・リアルタイムマーケティング
 https://developer.aliyun.com/article/791440

・ソリューション
 https://www.alibabacloud.com/help/en/lindorm/latest/solution

7. Lindormとその他プロダクトの比較

7-1. ApsaraDB for HBaseとLindormの違い

Apache HBaseと、ApsaraDB for HBase、Lindormは後者2つがAlibaba Cloudプロダクトサービスという時点でかなり大きく異なります。

先述通り、オープンソースのApache HBaseを、Apache HBaseコアコミッター達によってクラウドサービス向けにフルマネージドサービスとしてリリースしたのがApsaraDB for HBase、そこからアリババグループ向けにMulti-Model Databaseとして機能的にLindormテスト展開したのがApsaraDB for HBase Performance-enhanced Edition、Lindormとしてプロダクトサービスの機が熟し、商用リリースしたのがLindormです。

そのため、ApsaraDB for HBase Performance-enhanced EditionとLindormは機能的にあまり大差ないですが、Lindormだけ時系列エンジンが搭載しており、その影響でLindormのみLindorm MLという機械学習機能が付帯されています。

 Apache HBaseApsaraDB for HBase Performance-enhanced EditionAlibaba Cloud Lindorm

データモデル
(エンジン)

Wide-column
Key-Value

列指向テーブル
Wide-column
Key-Value
search

列指向テーブル
Wide-column
Key-Value
search
時系列
クラスタコンピューティングフレームワーク
ストリーミング

クエリ方法


HBase API。 SQLクエリを使用する場合は、Apache Phoenixをデプロイする必要あり 

Apache Phoenixアーキテクチャをベースとした、SQLクエリを実装。どのモードでもSQLクエリやAPIが投与可能。

Apache Phoenixアーキテクチャをベースとした、SQLクエリを実装。どのモードでもSQLクエリやAPIが投与可能。

データ型

Byte型のみサポート

構造体、半構造体、非構造体を含め様々なデータ型をサポート

構造体、半構造体、非構造体を含め様々なデータ型をサポート

インデックス

グローバル・セカンダリ・インデックス(GSI)をサポートするために外部コンポーネントが必要

任意のフィールドにIndex、およびグローバル・セカンダリ・インデックス(GSI)を付けることが可能

任意のフィールドにIndex、およびグローバル・セカンダリ・インデックス(GSI)を付けることが可能

整合性

強い整合性のみサポート

強い整合性と結果整合性などをサポート

強い整合性と結果整合性などをサポート

コンピューティングの分離

コンピューティングとストレージ一体型

コンピューティングとストレージを完全分離した構成で、個別に自動スケーリングを提供

コンピューティングとストレージを完全分離した構成で、個別に自動スケーリングを提供

Hot dataとCold Data

サポートなし

Hot dataとCold Dataをサポートしており、Apache HBaseの80%高圧縮を提供

Hot dataとCold Dataをサポートしており、Apache HBaseの80%高圧縮を提供

高可用性


フェイルオーバーやマルチリージョン、ゾーンなどはサポートなし

フェイルオーバーやマルチリージョン、ゾーンをサポート

フェイルオーバーやマルチリージョン、ゾーンをサポート

Lindorm ML


×

×(時系列エンジンが無い為)


時系列エンジンにて使用可能


データ同期および増分レプリケーション

サポートなし(サードパーティツールを使用する必要あり)

Lindorm Tunnel Service (LTS) を使って同期および増分レプリケーション

Lindorm Tunnel Service (LTS) を使って同期および増分レプリケーション

7-2. Azure Cosmos DBとLindormの違い

Azure Cosmos DBとLindormはどちらも優れたCloud-Native Multi-Model Databaseですが、文化や考え方も若干異なります。

LindormはHBase、Cassandra、Solr、Spark、Phoenix、HDFS、Kafkaなど様々なエンジンを融合した独自アーキテクチャなので、様々なエンジンを使ったサービスの横串展開ができます。一方、Cosmos DBはデータベース作成後、配下にコンテナが生成され、そこでRedis、HBase、Cassandra、MongoDB、Neo4jなどデータベースの種類を選定することで、コンテナ配下のアイテムで使えるデータベースが利用できます。

Cosmos DBは階層化構造でそれぞれのデータベースを利用する仕組みなので、様々なエンジンを使ったサービスの横串展開する際は、コンテナレイヤーレベルでデータを橋渡しする必要があります。

 Alibaba Cloud LindormAzure Cosmos DB

Type


列指向テーブル
Wide-column
Key-Value
search
時系列
クラスタコンピューティングフレームワーク
ストリーミング

Key-Value
Document
Graph
列指向テーブル


検索


LindormSearchエンジンがあり、構造体、半構造体、非構造体の検索が行える。
※Apache Solr、Apache Phoenixと高い互換性あり

Azure Cognitive Searchとの併用が必要


Index

任意のフィールドにIndex、およびグローバル・セカンダリ・インデックス

(GSI)を付けることが可能。

全てのプロパティにIndexを付けることが可能。
カスタマイズインデックスも可。

整合性


・強い整合性
・結果整合性
https://www.alibabacloud.com/help/en/lindorm/latest/cross-zone-deployment#section-907-68m-1gy

・厳密
・有界整合性制約
・Session
・一貫性のあるプレフィックス
・最終的
https://learn.microsoft.com/ja-jp/azure/cosmos-db/consistency-levels

スケーラビリティ

ロック

楽観的、悲観的なロックが可能

楽観的、悲観的なロックが可能


Backup

OSSやS3などに定期的な自動増分・フルバックアップが可能

定期的なフルバックアップが可能

クエリ

Apache Phoenixアーキテクチャをベースとした、SQLクエリを実装。どのモードでもSQLクエリやAPIが投与可能。

選定したモードに応じて、SQLクエリやAPIが投与可能。

レプリケーション

分散マルチレプリカ アーキテクチャにより、Active-Activeマルチレプリケーション

グローバル マスター マスター レプリケーション


 

8.日本リージョンを含めた、Lindorm展開リージョン

本サービスは2022年11月15日時点でほとんどのリージョンで利用することができます。

  • シングルゾーンによるデプロイは、日本を含めたほとんどのリージョンにてサービス提供しています。

  • マルチゾーンによるデプロイは、シンガポール、インドネシア、深圳、香港、杭州、上海、北京、河北省リージョンにて利用できます。

9.料金

Lindormは要件に応じて「Lindorm」「Lindorm Standalone」「Lindorm Tunnel Service」のいずれかを選定できます。

 LindormLindorm StandardLindorm Tunnel Service
説明メインシリーズスタンドアロン環境トンネルサービス(LTS)

シリーズごとサポート状況

Wide-column

 

時系列


 

検索

 

ファイル

 

計算

 

ストリーミング

  

ストレージの
種類

Standard

  

Capacity

  

Local SSD

  

Local HDD

  

Ultra Disk

 

 

シナリオ

中規模、

大企業向け

小規模向け、
テスト環境

データ移行、
災害復旧、
履歴データの保存

Lindorm(最小スペック:4core CPU 16GB Memory)

SubScription

Single-zone Deployment

$191.33/Month~

 

Multi-zone Deployment

$3229.21/Month~

※最低 Wide Table 4Nodes / Log 4Nodesから

Pay-As-You-Go


Single-zone Deployment

$0.363 /Hour~

 

Multi-zone Deployment

$7.225 /Hour~


※最低 Wide Table 4Nodes / Log 4Nodesから

※エンジンの種類によっては最低限必要とするNode台数があるため、詳しくはヘルプを参照のうえ選定ください。

Lindorm Standalone(最小スペック:2core CPU 8GB Memory)

SubScription

$38.23/Month~

Pay-As-You-Go

$0.079 /Hour~

Lindorm Tunnel Service(最小スペック:4core CPU 16GB Memory)

SubScription

$234.47/Month~

※最低3Nodeから

Pay-As-You-Go

$0.489 /Hour~

※最低3Nodeから

10.Lindorm検証について

LindormはApache HBase/Cassandra/Spark/Solr/HDFSベースの接続インターフェースを持っていることや、Active-Active Multi-zone構成、Lindorm MLという機械学習機能が付帯されています。いくつか検証しましたので、後日別記事にて紹介する予定です。

11.さいごに

Lindormは10年以上もアリババグループを支えたCloud-Native Multi-Model Databaseです。Apache HBase、もしくはCassandra、Apache Solrが初めての人でも、Lindormは非常にシンプルなSDK / APIで操作することもできますし、Apache HBase、もしくはCassandra、Apache SolrにはないSQLベースで操作をすることもできます。

Web三層とデータ分析基盤をこれから考えている人にも、Lindorm1台でデプロイし双方運用、データを定期的にS3へバックアップという構成もできます。

それほどにLindormはMulti-Model Databaseとしても完成度が高いため、気になる方はお試し利用してみるといいでしょう。

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Alibaba Cloud

Alibaba Cloudは中国国内でのクラウド利用はもちろん、日本-中国間のネットワークの不安定さの解消、中国サイバーセキュリティ法への対策など、中国進出に際する課題を解消できるパブリッククラウドサービスです。

MSPサービス

MSP(Managed Service Provider)サービスは、お客さまのパブリッククラウドの導入から運用までをトータルでご提供するマネージドサービスです。

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