CENの従量課金プラン「データ転送」と新しく追加された回線タイプの紹介

2024年3月21日掲載

キービジュアル

ご覧頂き有難うございます。ソフトバンクの西野です。

弊社ではパブリッククラウド「Alibaba Cloud」を取り扱っており、中国での日中NWの改善に向けたご相談を多数頂いております。

これまで、AlibabaCloudのネットワークリソースを結ぶCloud Enterprise Network(以下CEN)に料金体系として帯域幅パッケージを紹介をしていますが、今回はCENの従量課金モデルの料金体系「データ転送」と新たに追加されたSLAの異なる回線タイプを紹介します。
 

CENとは

Alibaba Cloudのグローバルネットワークを利用した、世界中に存在するAlibaba Cloudリージョン間を相互接続する高機能・低遅延・帯域確保型のエンタープライズ向けネットワークサービスです。

詳細な機能、構成面の解説は、以前掲載した「Cloud Enterprise Network(CEN)でつなげるクラウドネットワークについて」を参照してください。

目次

CENの課金の考え方

CENの課金項目は以下の箇所があります。

① クロスリージョン接続時の帯域幅

サブスクリプションプランの「帯域幅プラン」と、従量課金プランの「データ転送」があります。

② CEN-TRインバウンドトラフィック量

VPC、VBRなどの接続からトランジットルーターへのデータ転送量に基づいて料金が発生します。

③ CEN-TRとVPC/VBRの接続時間

トランジット ルーターの VPC、VBRなどの接続合計数に基づいて料金が発生します。
 

※CENの課金項目のみ記載しています。
※SAG、Express Connectm、VPC内のリソース料金は別途発生いたします。
※トランジットルーターはエンタープライズエディションの課金項目を記載しております。
※CCNはTR接続時間の課金対象ではありません。

CEN課金項目の単価

中国、東アジア、東南アジアのエリアに絞り掲載します。(掲載時時点)

① クロスリージョン接続時の帯域幅プラン

申込時に設定した帯域幅で月額料金が決定するプランとなります。
※帯域幅プラン or データ転送どちらかのみ料金発生

エリア間の帯域幅

中国本土 - 中国本土

中国本土 - アジア太平洋

アジア太平洋 - アジア太平洋

2~100Mbps
1Mbpsあたり

$32

$132

$28


① クロスリージョン接続時のデータ転送

リージョン間、最大帯域幅を指定しトラフィック量(GB)で課金が発生する従量課金プランです。
※帯域幅プラン or データ転送どちらかのみ料金発生

エリア間の帯域幅

中国本土 - 中国本土

中国本土 - アジア太平洋

アジア太平洋 - アジア太平洋

ゴールド回線
1GBあたり

$0.09

$0.8

$0.08

プラチナ回線
1GBあたり

$0.135

$1.2

$0.12


② CEN-TRインバウンドトラフィック量

エリア毎

中国本土

アジア太平洋

1GBあたり

$0.02

$0.02

③ CEN-TRとVPC/VBRの接続時間

エリア毎

中国本土

アジア太平洋

1時間あたり

$0.05

$0.06

CEN課金項目の①クロスリージョン帯域幅で選択できる支払いプラン

クロスリージョン帯域幅はサブスクリプションプランの「帯域幅パッケージ」と従量課金プランの「データ転送」から選択することが可能です。

【帯域パッケージ(サブスクリプション)向けのユースケース】

リージョン間、帯域幅を選択し購入する月額サブスクリプションモデル

  • トラフィック使用量、使用期間を見積もることができる。
  • トラフィックが一定で安定している。
  • ネットワークリソースの長期使用を必要としている。

ファイル転送やデータ移行など一定の流量を流し続けるシナリオには、帯域パッケージモデルの方をご選択することをお勧めします。

【データ転送(従量課金)向けのユースケース】

リージョン間、最大帯域幅(1Mbps〜1Gbps)を指定しトラフィック量(GB)で課金が発生する従量課金モデル

  • 一時的なトラフィックの急増、急減が予想されるシナリオ
  • 帯域幅の予測が難しいサービス
  • ネットワークリソースの一時利用

ビデオ会議などのトラフィック流量の増減が多いシナリオにはデータ転送量に応じた課金方式を選択することをお勧めします。

データ転送で提供する新しい回線タイプ

帯域幅プランには有りませんでしたが、データ転送では新たにSLAの異なるプラチナ回線とゴールド回線が選択できるようになりました。

クロスリージョン接続単位で回線タイプを選択できるため、冗長要件に合わせて柔軟に構成することが可能です。

例えば中国本土と日本の区間は業務上重要なトラフィックが流れるためSLAが高いプラチナ回線を選択し、他のリージョン間の通信は高いSLAを必要としないためゴールド回線を選択するなどです。

プラチナ回線:上海リージョン⇔日本リージョン
ゴールド回線:上海リージョン⇔北京リージョン
 

回線

SLA

プラチナ

99.995%

ゴールド

99.95%

プラチナ回線とゴールド回線の速度比較

SLA以外に回線速度に差があるのかAlibabaCloud上海リージョンと東京リージョンにて仮想サーバーを設置して相互に連続Pingを実施しました。

今回の比較結果ではゴールド/プラチナの回線速度に明確な差があると言えるほどの差はありませんでした。

計測期間2023/12/27 ~ 2024/2/29

回線

送信元⇒宛先

実行回数

実施間隔

パケットサイズ

失敗率

min

max

average

プラチナ

上海⇒東京

91,668回

1分間隔

64byte

0%

29ms

39ms

33ms

ゴールド

上海⇒東京

91,791回

1分間隔

64byte

0%

29ms

102ms

32ms

各パブリッククラウドのNetwork TransitサービスのSLAを比較してみた。

CENのプラチナ回線で構成した場合、他社と比較しても高いSLAであることが確認できます。

パブリッククラウド

プロダクト名

SLA

備考

AWS

Transit Gateway

99.99%

マルチAZ TGW SLA

99.9%

単一AZ TGW SLA

Azure

Virtual WAN

99.95%

-

GCP

Network Connectivity Center

99.95%

-

AlibabaCloud

Cloud Enterprise Network

99.995%

プラチナ回線

99.95%

ゴールド回線

CENのクロスリージョン帯域の課金モデル別の料金試算

最後に帯域幅パッケージプランとデータ転送プランの見積もりを試算してみます。

試算モデル
①CENのクロスリージョン接続
 帯域幅パッケージ:10Mbps
 データ転送モデル:200GB(双方向課金のため)
②中国リージョントランジットルーター:インバウンドトラフィック100GB
③中国トランジットルーター接続料金:730時間
②’日本リージョントランジットルーター:インバウンドトラフィック100GB
③’日本トランジットルーター接続料金:730時間

①帯域幅パッケージの試算 

項目

詳細

料金($)

料金(\)
$1=\140

帯域パッケージ(サブスクリプション)

クロスリージョン帯域幅 中国 - アジア太平洋地域 10Mbps

$1,320

\184,800

中国リージョンTR インバウンドトラフィック100GB

$2

\280

´

日本リージョンTR インバウンドトラフィック100GB

$2

\280

中国リージョンTRとVPC(1つ)を730時間接続

$36.5

\5,110

´

中国リージョンTRとVBR(2つ)を730時間接続

$87.6

\12,264

合計

$1,448.1

\202,734

②データ転送モデル プラチナ回線の試算

項目

詳細

料金($)

料金(\)
$1=\140

リージョンを転送する 双方向トラフィック 200GB プラチナ回線

$240

\33,600

中国リージョンTR インバウンドトラフィック 100GB

$2

\280

´

日本リージョンTR インバウンドトラフィック100GB

$2

\280

中国リージョンTRとVPC(1つ)を730時間接続

$36.5

\5,110

③´

中国リージョンTRとVBR(2つ)を730時間接続

$87.6

\12,264

合計

$368.1

\51,534

③データ転送モデル ゴールド回線の試算

項目

詳細

料金($)

料金(\)
$1=\140

リージョンを転送する 双方向トラフィック 200GB ゴールド回線

$160

\22,400

中国リージョンTR インバウンドトラフィック 100GB

$2

\280

②´

日本リージョンTR インバウンドトラフィック100GB

$2

\280

中国リージョンTRとVPC(1つ)を730時間接続

$36.5

\5,110

③´

中国リージョンTRとVBR(2つ)を730時間接続

$87.6

\12,264

合計

$288.1

\40,334

見積もりモデルではトラフィック流量が100GBと少ないためデータ転送の方が安くなるシナリオの見積もりとなります。

では、どのくらいの転送量があると帯域幅パッケージの方が安くなるかというと、ゴールド回線の場合、データ転送より帯域幅パッケージが1,650GB以上のトラフィックを使用する場合は、帯域幅パッケージの方がメリットが安くなる計算です。目安として参考にしてください。

おわりに

今回はCENのデータ転送モデルを紹介しました。

CENは他社パブリッククラウドの類似プロダクトと比較してもリージョン間通信にサブスクリプションプランがある、帯域がベストエフォートではなく帯域保証である点が差異ポイントでした。

データ転送プラン限定にはなりますが、SLAを選択できるという点が新たに加わりミッションクリティカルな要件にも対応できるようになりました。

ご覧いただき、ありがとうございました。

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