東邦ガス情報システム株式会社 「マルチクラウドに適したネットワーク」をどう構築したのか  東邦ガス情報システム株式会社 「マルチクラウドに適したネットワーク」をどう構築したのか
 東邦ガス情報システム株式会社 「マルチクラウドに適したネットワーク」をどう構築したのか
東邦ガス情報システム株式会社

「マルチクラウドに適したネットワーク」をどう構築したのか

課題
クラウドのネットワーク接続

業界
情報通信、サービス

組織の規模
101〜500人

クラウドサービスのコスト削減やシステム開発の効率化、ベンダーロックインの解消などの目的から、複数のクラウドサービスを組み合わせて利用する「マルチクラウド」戦略に積極的に取り組む企業がある。

マルチクラウドを実現するための重要なポイントが、複数のクラウドサービスの接続に適したネットワークインフラの構築だ。マルチクラウドに適したネットワーク構成になっていないと、ネットワークの構築作業に時間やコストが掛かり、クラウドサービスのメリットが損なわれてしまう恐れがある。

東邦ガスは、マルチクラウド戦略を積極的に進める企業の一つだ。同社の事例から、マルチクラウドに適したネットワークを実現するには何が必要なのかを考える。

「AWS」や「Google Cloud」を使ってマルチクラウドを実践する東邦ガス

東邦ガスは、名古屋市に本社を置くガス会社だ。2022年6月に創立100周年を迎えた。ガス灯から始まった都市ガス事業は、厨房(ちゅうぼう)分野や給湯・暖房分野、空調・産業用分野に拡大し、原料は石炭から石油、そして天然ガスへと変化している。現在は愛知県と岐阜県、三重県の約300万戸に、LPG(液化石油ガス)を含むガスや電気などのエネルギーを届ける。次の100年も地域に「なくてはならない企業」として、持続的に成長できる企業を目指している。

事業の多角化を進める東邦ガスのデジタルサービスや情報システムの構築運用を支援するのが、東邦ガス情報システムだ。同社はオンプレミスインフラで稼働する東邦ガスグループの業務システムを、段階的にクラウドサービスに移行する作業を進めている。

東邦ガスは、現状はクラウドサービスに移行できない業務システムもあることから、当面はオンプレミスインフラとクラウドサービスを併用する、ハイブリッドクラウドを活用する方針だ。

クラウド移行計画の開始当初は、Amazon Web Services(AWS)の同名クラウドサービスを採用した。新規開発するシステムや移行する業務システムごとに独立したインフラをAWSに構築し、個々に専用のネットワークを引いていた。「AWSにシステムを構築するたびに、ネットワークインフラの調達や構築が必要でした。ネットワーク回線を引くまでに時間が掛かり、システムの納期に影響するという課題がありました」。東邦ガス情報システムの加藤 健太郎氏(IT 基盤サービス部 技術統括グループ 係長)は、こう話す。2023年6月時点では、同社の6システムがAWSで稼働している。

2020年にGoogle のグループウェア「Google Workspace」を導入したことから、東邦ガスは同サービスとの親和性を考えて、Google のクラウドサービス「Google Cloud」を自社の標準クラウドサービスに追加した。同社は今後、システムの特性や制約に応じて、クラウドサービス「Microsoft Azure」を採用することも想定している。

マルチクラウドに適したネットワークインフラを構築

東邦ガスは従来、AWSのインフラとオンプレミスインフラ間を接続する専用ネットワークとして、システムごとにAWSの専用線サービス「AWS Direct Connect」を利用している。その一方でGoogle Cloud を採用することでマルチクラウドになり、インフラに適したネットワークインフラの構築に掛かる手間や時間が課題となっていた。この課題を解決するために同社が採用したのが、ソフトバンクのクラウド接続サービス「OnePort マルチクラウドアクセス(以下、OnePort)」だ。

東邦ガスのクラウドインフラとオンプレミスインフラを接続する専用ネットワークの構築は、ソフトバンクが支援していた。OnePortを選んだ理由を、加藤氏は次のように話す。「マルチクラウドに合ったネットワークの構築についてソフトバンクに相談したところ、OnePortを提案されました。当社にとってOnePortの大きな利点は、クラウド移行の作業期間が短縮できることにあります。Webコンソールから操作でき、マルチクラウドに適したネットワークインフラを容易に設定できることも評価しました」

ネットワークサービスの選定段階では他社のサービスも候補に挙がっていたが、それらのサービスには不要な機能も含まれており、必要以上にコストが掛かる懸念があったという。東邦ガス情報システムの山口洋行氏(IT 基盤サービス部 技術統括グループマネジャー)はこう説明する。「OnePortは、東邦ガスに必要な機能を搭載しています。ソフトバンクの担当者が当社のネットワークインフラをよく理解しており、的確なサポートを提供してくれる点も採用を後押ししました」

2ヵ月掛かっていたクラウドネットワークの構築を、OnePortの採用で2週間に

AWSインフラで稼働させている東邦ガスの各システムは、専用ネットワークで社内LANと接続している。このようにすることで、AWSのインフラを社内サーバ感覚で利用可能にする狙いがある。OnePortは、オンプレミスインフラとクラウドサービスを接続するつなぎ目の役割を担っている。

東邦ガスはオンプレミスインフラで稼働する基幹システムを再構築している最中だ。この基幹システムとGoogle Cloud の接続にも、OnePortを利用している。「ネットワーク接続にAWS Direct Connectを利用していた頃は、クラウドサービスのシステムが利用可能になるまでに2ヵ月ほど掛かっていました。OnePortを採用したことで、その期間を約2週間まで短縮できるようになりました。今後、OnePortの利用に慣れればさらに短縮できると期待しています」。加藤氏はこう話す。1つの画面で複数のネットワークを管理できるため、ネットワークの管理性も向上したという。

クラウドサービスのシステムとオンプレミスのシステム間の通信が遅延したときは、OnePortのWebコンソールを利用することで、帯域幅をリアルタイムで拡張可能になったこともメリットの一つだ。
「今後、オンプレミスのシステムを順次クラウド移行していくには、ネットワークインフラを計画的に拡張することが必要です。OnePortであれば、状況に合わせてネットワークインフラを容易に拡張できます」と山口氏は言う。

東邦ガスがクラウド移行を進める理由

東邦ガスがクラウド移行を進める最終的な目的は、事業展開のスピード向上だ。「2017年4月のガス自由化を受け、ガス会社はエネルギー消費者の多様化したニーズに対応する必要性が高まっています。そのため東邦ガスでも、ガス事業以外の領域への取り組みが重要になっています」と山口氏は話す。

「すぐに新規事業や新規サービスを立ち上げ、成果が上がらなければ迅速に撤退する」というビジネスモデルに変えるには、クラウドサービスの活用が不可欠だった。「OnePortがあれば新しいシステムを迅速に利用可能にできるため、事業のスピード感をより高められるようになりました」(山口氏)

東邦ガスのオンプレミスインフラでは、約200個のシステムが稼働している。クラウドサービスが適しているシステムは今後、全てクラウド移行を進める計画だという。そのためクラウド移行プロジェクトが同社内で並行して進行することも増えつつある。「OnePortのメリットの一つは、情報システム担当者が少なくても、複数の移行プロジェクトのネットワーク構築をスムーズに実行できることです。ネットワーク運用の効率化も可能になりました」と加藤氏は言う。

クラウドサービスとオンプレミスインフラをつなぐネットワークとして、東邦ガスはソフトバンクの閉域サービス「SmartVPN」を利用している。加藤氏は次のように話す。「SmartVPNはOnePortを経由することで、AWSやGoogle Cloud のインフラと容易に接続できます。OnePortとSmartVPNはどちらも、利用状況をそれぞれのWebコンソールで管理できるので便利です。これらのサービスは、当社のハイブリッドクラウドの基礎になっています」

クラウドプロキシとOnePortの共存によるゼロトラストの実現にも期待

東邦ガスはシステムの全社的なクラウド移行に当たり、ネットワークのゼロトラストセキュリティ対策も進める計画だ。既に、クラウドプロキシのセキュリティ機能を利用して、社外でも従業員がスマートフォンからGoogle Workspace にセキュアにアクセスできるようにしている。「2030年にはクラウドサービスへのリフト(オンプレミスインフラで稼働するシステムの内部構造を変えずにクラウド移行すること)が終わり、クラウドシフト(オンプレミスインフラのシステムをクラウドサービスに適した形に作り替えること)の段階に入っていると思うので、それまでにはクラウドサービスを含めたゼロトラストセキュリティ対策を完了させたいです」山口氏はこう話す。

OnePortに加えてクラウドプロキシの導入や運用においても、東邦ガスはソフトバンクの支援を受けている。山口氏は次のように説明する。「ゼロトラストセキュリティにはさまざまな手法があるため、今後何をどこまで実施するかはまだ検討中です。クラウドネットワークの重要な基盤を提供しているソフトバンクには、今後もクラウド化をより強力に推進するための提案を期待しています」

広帯域回線のオンデマンドプロビジョニングを実現
「OnePort マルチクラウドアクセス」

AWS、Microsoft Azure、Google Cloud 、ASPIREなど複数のクラウドに対応した閉域接続サービスです。クラウドごとの回線は不要、オンデマンドな帯域変更や接続先追加が可能になるため、柔軟なネットワークを構築することができます。

【関連資料】マルチクラウド時代のネットワークサービス選び

  • 掲載内容はTechTarget ジャパンに2023年7月に掲載されたコンテンツを再構成したものです。

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