土地家屋調査士は、主に登記に関係する部分を対象とした土地や建物の調査を行っており、例えば土地であれば、境界はどこか、杭は設置されているか、面積はどれくらいかなどを調査するのが主な業務です。個人や企業など幅広いお客さまの要望や目的に寄り添いながら細かな分析や検証を行い、法務局への申請や調査結果の登記への反映といった緻密な作業が求められます。しかし、経年変化や道路工事などによって杭などの座標基準を探しにくい場合があり、正確な測量の障害になり得ると原光氏は語ります。
「土地の境界や面積に関わる登記を法務局に申請する際、不動産登記法では原則として、測量の基準として公共座標系に準拠した基準点を使用するよう求めています。そして、対象地の近傍に基準点がない場合に限り、やむを得ず任意の座標系で調査することを認めています。国や地方自治体はときどき新たな公共基準点を設置するものの、現存している基準点は20年以上前に設置されたものが多く、舗装工事等の影響でところどころ亡失が見られます。測量の際には、道路等に設置された標識が本当に当該基準点なのかどうかまず点検し、問題なさそうであれば測量を始める、というのが通常の手順ですが、当初連続していたはずの基準点網が亡失により歯抜けになっていると点検が難しく、結果使用を断念することもありました。それでも任意の座標を使用して業務はできますが、公共座標と連動しない境界確定図は将来的な利用価値が低く、やや物足りない成果となってしまいます。加えて、点検が不十分なまま測量し、事務所に帰って測量成果を検証した結果、精度があまりにも悪くて使えず、測量をやり直さなければならないことがありました」(原光氏)
大手企業が行っている土木工事や災害復興などの分野ではICTの活用が進んでいるものの、境界測量は個人の事業者が多いなどの理由から従来の手法での調査が主流になっています。関連法の規定でかなりの精度が求められている測量分野で今後どのようなイノベーションが起きるかに、原光氏は常に注目していたと言います。
「業務の改善進歩を図るため、全国の都道府県それぞれに土地家屋調査士会というものが設立されており、年2回ほど研修会が開催され、指導や情報共有が行われています。あるとき参加したその研修会や、仲間内での情報交換の場でGNSSが話題になることが増え、そうしたことがきっかけで正確な位置情報の把握について真摯に取り組んでいきたいとの気持ちが強まりました。それまでは『ichimill』という位置情報サービスがあることを耳にしたことはありましたが、具体的にどのように活用すればよいかまでは知りませんでした」(原光氏)
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