ECのような体験をスマホアプリに取り入れた火鍋チェーン「海底撈」のDX事例

2021年9月28日掲載

日本にある海底撈の店舗 日本にある海底撈の店舗

中国全土で愛される食事「火鍋(ひなべ。発音はホウゴウ)」。地域によりそのスタイルは異なれど、基本は好きな味の火鍋スープに好きな具材を入れて、友人や知人で鍋を囲んでわいわい箸をつつく定番料理です。

近年、おひとり様向け鍋や回転寿司のような回転火鍋、デリバリー専用火鍋など新しい趣向の火鍋屋が登場し、バリエーションが増えました。中国各地に展開し、さらに日本をはじめ海外にも展開する「海底撈火鍋(ハイディーラオ。略称海底撈。以下同)」も当時としては抜きん出たサービスの良さが特徴でファンを増やしました。

その海底撈が、このたびクラウドを導入しDX化を進めました。報道によると、北京の1店舗について、待合室に巨大モニターを設置してちょっとしたミニゲームが遊べるほか、配膳ロボやロボットアームを活用して未来感ある店舗に仕上げたというもの。それだけではありません。

海底撈の一部店舗に導入された待合室の大型モニター 海底撈の一部店舗に導入された待合室の大型モニター

海底撈の店舗では、もともとタブレットを使ってメニューのオーダーができます。中国の飲食店でも早期に導入されていました。常連客が店に入ってテーブルについたら、慣れた手付きでタブレットを操作し、火鍋のスープと具材をいつものように選び、スープの辛さなど各オーダーした品の細かな設定についても手際よく行い、注文することでしょう。

しかし、「それが面倒ではないのか」という疑問が出てきました。――そこの疑問を解決するために活用されたのが、Alibaba Cloud(アリババクラウド)です。

ECサイトであれば、購入した商品や閲覧した商品が目立つ場所に表示されます。海底撈はリピーターが何度もくる店舗として、リピーターにさらに優しく各人に最適化した注文ページを提供しようというわけです。スマートフォンを誰もが所有する今、店内のタブレットを必ずしも利用する必要はありません。

海底撈のスマートフォンアプリ 海底撈のスマートフォンアプリ

そこで海底撈は新たにスマートフォンアプリを開発しました。スマートフォンアプリから注文しようとすると、過去の注文履歴から表示方法を自動でカスタマイズし、各ユーザーにあわせた提案をします。ECサイトでリピートしてくれるように、海底撈のアプリも単なる注文の機能にとどまらない仕様になったわけです。さらに、海底撈を利用してもらえるよう、注文機能や各店舗への予約機能、デリバリー注文機能に加え、利用者同士の画像投稿系SNSを用意したのです。

アプリ自体は本格的なECサイトのような複雑さですが、Alibaba CloudがECサイトを構築するためのサービスを用意しているため、本来数十人が1年かけて作る規模のサービスを、12人によって3ヵ月間という短期間で完成させました。

海底撈スマートフォンアプリのSNS機能 海底撈スマートフォンアプリのSNS機能

もともと海底撈では、顧客向けのキャンペーンを扱う紅包システムと、食事の注文システムと二つのシステムが運用されていました。この2つのシステムのクラウド版をまず開発した上で、さらにアプリと連動させることに。この改造とデータ移行もまたわずか1ヵ月半で完成したとのこと。新たなスマートサービスシステムは、もともとの顧客サービス向けシステムに比べ18.6倍性能が向上し、もともと1日かけてできる各会員向けのキャンペーンが、1時間で処理できるようになりました。

また新型コロナウイルス感染のリスクから、春節に帰郷を控える動きがありました。中国では春節の時期は親族一同集まって食事をするのですが、それができなくなったわけです。そこで海底撈は帰郷できない人々のために、40都市57店舗の個室にスマートディスプレイを用意し、異なる店舗を繋いでリモートで火鍋パーティーを開けるプランを提供しました。さまざまな場所に店舗を展開しているチェーンだからこそできるソリューションといえます。

新世代のメンバーシップシステムとマーケティングアプリを提供することで、会員の忠誠度を高めました。こうしたアイディアや実装は他の飲食チェーンでも利用できそうです。

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