【保存版】超わかりやすいブロックチェーンの基礎知識

2018年5月17日掲載

ブロックチェーンの基礎知識

最近よく耳にするブロックチェーンという技術は、「インターネット以来の技術革新」と表現されるほどの可能性を秘めているという。ブロックチェーンとは、いったいどんな技術なのだろうか。そう思って調べてみてもビットコインや仮想通貨の文脈で解説されているものが多く、「それで結局、ブロックチェーンって何なの?」という疑問はなかなか解決しない。今回は、ブロックチェーンとはどのようなものか大まかに掴んでもらえるように、ネット上で一番丁寧に、一番わかりやすく解説することを目指して、この記事を作成した。技術的なことをなるべく噛み砕いて説明しているので、最後まで読み終えたときには、非エンジニアの読者もブロックチェーンの概要が掴めていることと思う。

目次

1章 ブロックチェーンとは

ブロックチェーンのポイント

ブロックチェーンの定義

ブロックチェーンとは「参加者の中に不正を働く者や正常に動作しない者がいたとしても正しい取引ができ、改ざんが非常に困難で、停止しない、多数の参加者に同一のデータを分散保持させる仕組み」である。

誤解を恐れずあえて一言でまとめれば、ブロックチェーンとはこんな仕組みだ。ただし、現時点(2018年4月)でもブロックチェーンの定義は定まっておらず、時と場合、人によってさまざまな解釈でこの言葉が使われている。国内では、日本ブロックチェーン協会が2016年10月に公表した以下の定義が頻繁に参照され、上記もこれをわかりやすく言い換えたものだ。

ブロックチェーンの定義

ブロックチェーンの特徴

ブロックチェーンの特徴は、主に以下の4点に絞ることができる。
・ 改ざんが非常に困難
・システムダウンが起きない
・取引の記録を消すことができない
・自律分散システム

ブロックチェーンは、4章「ブロックチェーンの仕組み」で説明する「ハッシュ」や「電子署名」という暗号技術を用いることで、データの改ざんを容易に検出できる仕組みを持っている。 また、ブロックチェーンでは不特定多数の参加者が取引を行うが、多数の参加者(全参加者とは限らない)が全員の取引履歴のコピーを記録しているため、一部のコンピュータがダウンしても、残りの多数の参加者が記録を保持し続けるため、システム全体がダウンすることはない。この取引履歴のコピーは削除もできないため、一度記録された取引の記録は消えずに証拠として残り続ける。このように、多くの参加者でデータを分散して持つシステムを分散システムと呼ぶ。

今までの多くの分散システムにはシステムの中央となる管理者が存在していた。ところがブロックチェーンは、全ての参加者が自律して取引履歴をコピーし続けている。これは自律分散システムと呼ばれ、ブロックチェーンの大きな特徴のひとつと言える。この自律分散システムの、不正や改ざんを許さず、公正な取引の履歴を安定して記録し続ける特性は、仮想通貨を筆頭とした高い信用度を求められる取引には欠かせないものだった。

ノードとは

ブロックチェーンとデータベースの違い

ここまでの説明を読むと、「ブロックチェーンはクラウドのデータベースとそれほど変わらないのでは?」と感じるのではないだろうか。それは半分正しく、半分間違っている。

確かにクラウドのデータベースは、複数のコンピュータに分散されており、バックアップも取られることからエラーや改ざんの修復は可能だ。また、大手のサービスならば安定性も高いと言える。しかし、その仕組みは中央集権的であり、サービスを提供する管理者の存在を必要とする。管理者がサービスを停止させればデータベースの中身は消失するし、管理者の都合によってデータを抹消される可能性もある。また、万一、管理者に悪意があればデータの中身を改ざんできてしまう。

一方で、ブロックチェーンは、たとえサービス提供者であっても記録されたデータの改ざんや消去はできないし、参加者が自身の取引履歴を消すこともできない。この点がブロックチェーンとデータベースの最大の差だ。この特性があるために信用度の低い無名のサービス提供者であっても、通貨などの取引を任せることができると言える。

ブロックチェーンのデータは削除できない

ブロックチェーンと仮想通貨の関係

ブロックチェーンは安心安全だから通貨の取引に使われる、ということは理解できたと思うが、ここで一度、ブロックチェーン誕生の背景を整理しておこう。

そもそもブロックチェーンは、2008年にコンセプトが発表され、2009年に取引が開始されたビットコインを支える技術として世に登場した。ビットコイン、そしてブロックチェーンの生みの親と言われる「サトシ・ナカモト」氏によりもたらされた、既存技術の組み合わせによる技術革新である。

サトシ・ナカモト氏は、政府による度重なる経済への介入を嫌い、誰も介入できず、決してダウンせず、公正に取引を記録する、新たなインフラを作るためにビットコインを生み出したと言われている。そして、その土台となる技術こそがブロックチェーンだった。

サトシ・ナカモトとは

2章 ブロックチェーンが注目される理由

ブロックチェーンが注目される理由

ブロックチェーンでできること

さて、ではブロックチェーンは具体的に何がそこまで凄いのだろうか。「インターネット以来の技術革新」とまで言われているが、いくら何でも煽りすぎだろうと思う方も多いはずだ。その答えを知るために、ブロックチェーンを活用してできることを想像してみよう。

ブロックチェーンができることを端的に表すならば「取引の公明な記録を残すこと」だ。そしてこの「取引」の内容は、何も仮想通貨や金融商品に限らない。証券取引や保険契約、送金に資金調達などの金融に関する取引はもちろん、シェアリングサービス、食品のトレーサビリティ、著作権管理、美術品の所有権、医療サービス、果ては行政手続きや投票まで、公明で透明な記録として残すことができる。記憶に新しい公的な情報の紛失や書き換えなども、一度正しくブロックチェーンに記録してしまえば、書き換えのない公明な記録として残すことができる。

また、5章で説明するパブリックチェーンは管理者を必要としないため個人情報が中央集権的に集まることもないし、改ざんが困難なため見知らぬ個人間の取引であっても、安心して行える。

ブロックチェーンが浸透しきった世界では、利用者はその技術が使われていることを意識することすらなく、書き換えも不正もない透明な取引を行えるようになるだろう。我々にとってのインターネットと同様に、あって当然のインフラとして存在しているはずだ。

ブロックチェーンの市場規模予測

2016年に経済産業省は、ブロックチェーン技術が影響を及ぼす可能性のある市場規模を67兆円と発表した。この数値は、建設64兆円を超えるばかりか、不動産業73兆円や医療福祉68兆円に迫る規模だ。(総務省 情報通信白書)

この数値からもわかるように、ブロックチェーンは「インターネット以来の技術革新」と呼ばれるだけの可能性を秘めている。国内では実用化に向けて法整備も進めており、経済産業省も「あらゆる産業分野における次世代プラットフォームとなる可能性をもつ」として調査を行っている。また、諸外国では金融以外でも実用化されたサービスが徐々に現れつつある。ブロックチェーンは、今、世界が最も注目する技術のひとつだと言えるだろう。

ブロックチェーン技術による社会変革の可能性

3章 ブロックチェーンを活用できるサービスの例

ブロックチェーンを活用できるサービスの例

どうやらブロックチェーンはいろいろなことに使われそうだ、ということはわかった。では具体的に、どのような産業やサービスで活用できるのか。経済産業省は「ブロックチェーン技術を活用したサービスに関する国内外動向調査」報告書概要で、ブロックチェーン技術活⽤のユースケースとして、次のようにまとめている。

ブロックチェーン技術活用のユースケース

ブロックチェーンを行政サービスに活用した具体例

エストニアは「デジタル先進国」と呼ばれている。1991年にソビエト連邦から独立した人口130万人強の北ヨーロッパのこの小国は、「e-Estonia(電子国家)」というスローガンを掲げ、官民を問わずITを積極的に活用している。そんなIT先進国エストニアは、世界で最も早くブロックチェーンを行政サービスに導入した国のひとつとして注目を集めている。

現在、エストニアでは納税や投票、結婚や離婚の手続き、土地や法人の登記、パスポートの発行までもがインターネットで完結する。銀行取引や保険はもちろん、医療情報も電子化されている。驚くべきことに、すべての行政サービスのうち99%がインターネットで完結するという。さらには、エストニアを一度も訪れたことのない外国人でもインターネットで「電子居住者」としての登録申請が可能で、この電子居住者の制度が外国人起業家の誘致の鍵となっている。

エストニアの電子政府は「利便性」と「透明性」をポリシーに掲げ、これらの行政手続きの記録にブロックチェーンを活用しており、国そのものがブロックチェーンスタートアップだと言われるほどに力を入れている。まさに近未来国家と言えるだろう。

ブロックチェーンをマーケットプレイスに活用した具体例

インターネット上のフリーマーケットサイトやオークションサイトで個人同士が売買をする仕組みは、今や巨大な市場となっている。このようなマーケットプレイスでもブロックチェーンの活用が進んでいる。アメリカのOpenBazaar はその代表例だ。ビットコインを使った決済に対応したOpenBazaarは、出品者と購入者がサイト上で直接取引を行うタイプのマーケットプレイスだが、ブロックチェーンを活用することで、匿名性を担保しつつ安全な取引を実現しているだけでなく、サービス利用のための手数料がかからない。こうしたブロックチェーンを利用したマーケットプレイスはユーザーのニーズに合致しているため、今後も増え続けるだろう。

4章 ブロックチェーンの仕組み

これまでは信頼できるサービス提供者の存在を前提としなければ、インターネット上で通貨などの取引を安全に行うことはできなかった。例えば仮想通貨では、「なりすましや改ざんをどう防ぐか」「二重支払いをどう防ぐか」という2つの問題があった。この問題を解決したのがビットコインであり、それを支えるブロックチェーン技術だ。ブロックチェーンは「P2Pネットワーク」「ハッシュ」「電子署名」「コンセンサスアルゴリズム」の4つの技術を応用することで、この問題をクリアした。

P2Pネットワーク

P2P(Peer to Peer)とは、複数の同等なコンピュータが1対1で直接通信を行う接続方式を指す。P2Pでつながったコンピュータが多数集まり相互に通信するネットワークを、P2Pネットワークと呼ぶ。Peerとは「同僚」「仲間」を意味する単語で、P2Pネットワークで接続されたコンピュータは、等しく同等の機能を持つ。つまりシステムが分散されており、一部のコンピュータがダウンしたとしてもシステム全体は動き続ける性質を持つ。この性質がP2Pネットワーク最大の特徴であり、ブロックチェーンはP2Pネットワークによりシステムダウンしない分散システムを実現している。

なお、P2Pネットワークそのものは既存の技術であり、後述のハッシュや電子署名を含め、ブロックチェーンは既存の技術の組み合わせによって生み出された新たな技術だと言える。

P2Pの自立分散システム

ハッシュ

ハッシュとは、データの特定に長けた暗号化技術である。「ハッシュ関数」と呼ばれる計算式を通すことで、入力したデータに固有な値(ハッシュ値)となる。ハッシュ値は入力したデータを特定するIDとして機能するため、データの改ざんや破損があれば瞬時に検出できる。

ハッシュ関数により返されたハッシュ値は、入力されたデータに固有な値であり、どんなデータを入力しても必ず一定の桁数の値となる。そのハッシュ値から元のデータを特定することはできない。また、入力データが同じならば、誰がいつどこでハッシュ関数にかけても、同じハッシュ値が得られる。

ここで、暗号化技術に疎い方のために少し掘り下げて具体例を示そう。ビットコインでは「SHA256」というハッシュアルゴリズムが使われており、以下の表の左の単語をSHA256のアルゴリズムにかけると、右のハッシュ値が出力される。

SHA256のアルゴリズム

この表からわかるように、入力するデータの長さや文字の種類、内容を問わず、返ってくるハッシュ値の桁数は一定で、たった1文字違うだけでも全く別のハッシュ値が返される。したがって、元のデータに少しでも手が加えられていたら全く異なるハッシュ値となるため、正しいハッシュ値と比較することで容易に改ざんを検出することができる。また、どんなに長大なデータを入力しても一定の桁数で返すハッシュ関数は、効率的な通信を実現する。

ブロックチェーンは、ハッシュのこのような特性を生かし、改ざん耐性が高く効率的なデータの管理を実現している。

ブロックチェーンのハッシュによる改ざんや損失の検出イメージ

電子署名

電子署名とは、デジタル文書の作成者を証明する電子的な署名であり、電子署名をすることで、次の2つの妥当性を証明することができる。

・データが署名者により作成されたこと
・データが改ざんされていないこと

電子署名を生成する際には「公開鍵」と「秘密鍵」と呼ばれるペアとなるキーが作成される。署名者は秘密鍵を使ってデータに署名し、電子署名として受信者に送る。受信者は事前に受け取っていた対となる公開鍵を使うことでそのデータが署名者によって作成されたことを確認する。ブロックチェーンは、この電子署名を利用することで、なりすましや改ざんを防いでいる。

コンセンサスアルゴリズム

ブロックチェーンにおけるコンセンサスアルゴリズムとは、不特定多数の参加者の間で正しく合意形成を得るための仕組みである。「合意形成アルゴリズム」や「合意形成」と呼ばれることもある。

コンセンサスアルゴリズムという言葉そのものは、コンセンサス(合意する)とアルゴリズム(計算方法)の意味のままに、合意形成のための計算方法を指す。しかし、不特定多数の参加者から成るブロックチェーンにおいては、ビザンチン障害を引き起こす取引時に不正を働く者や正常に動作しない者が含まれる可能性があるため、これらが含まれていたとしても正しく合意を形成できる仕組みが求められる。

1章「ブロックチェーンとは」でも説明した通り、ブロックチェーンではネットワーク上の全ての参加者に分散して同等の情報を記録していく。この記録する取引情報に食い違いが出ないよう、各リクエストが正しいのか検証するためのルールがコンセンサスアルゴリズムである。

コンセンサスアルゴリズムには、いくつかの種類が存在しており、例えばビットコインではProof of Work(PoW:プルーフオブワーク)と呼ばれるコンセンサスアルゴリズムが採用されている。Proof of Workの最大の特徴は、膨大な計算処理を伴う改ざんや二重取引の検証作業(マイニング)を競争形式で行わせ、競争の勝者にビットコインを新規発行するところにある。この方法が生み出される以前は、不特定多数の参加者に自ら進んで正しい選択をさせることは不可能だった。しかし、Proof of Workでは、検証作業にインセンティブを与えたことで相対的に不正をするメリットがなくなり、この問題は解決された。このProof of Workにより、システムの管理者やネットワークの中心がなくても、正しい合意形成が実現され、ビットコインは世に生み出されることになった。

なお、ここでは詳細な説明は割愛するが、Proof of Work以外にもProof of Stake(PoS)やProof of Importance(PoI)など、いくつものコンセンサスアルゴリズムが存在する。

コンセンサスアルゴリズムのイメージ

5章 ブロックチェーンの種類

ブロックチェーンの種類

ブロックチェーンは大きくわけて「パブリックチェーン」と「プライベートチェーン」の2種類に分類できる。この2つの違いは誰でも参加できるか否かにあるが、その差によってサービスへの向き不向きも異なってくる。ここでは2つの違いを、大まかに説明する。

パブリックチェーン

パブリックチェーンは、オープンで誰でも参加できるブロックチェーンを指す。パブリックチェーンは誰がいつ参加しても脱退しても良いため、サービスの提供者であっても、参加者の総数を把握することはできない。また、パブリックチェーンには不特定多数の参加者がネットワークに参加するため、不正を働く者や正常に動作しない者も含まれる前提でシステムを運用する必要がある。そのためには前章で説明したProof of Workのようなコンセンサスアルゴリズムを必要とするが、例えばビットコインのProof of Workの場合、1回の合意形成に約10分もの時間がかかってしまう。

プライベートチェーン

プライベートチェーンは、参加のために管理者の承認が必要となるような、参加者を限定するブロックチェーンを指す。プライベートチェーンは、参加者の数を常に把握でき、悪意を持つ参加者が含まれるリスクを抑えやすいことから、厳格なコンセンサスアルゴリズムがなくとも機能する。一般的には参加者の多数決による合意形成を採用しているため、Proof of Workのような経済的なインセンティブを与える必要もなく、スピーディな取引が実現できる。

パブリックチェーンとプライベートチェーン

6章 ブロックチェーンのメリット

ブロックチェーンのメリット

ゼロダウンタイム、高い改ざん耐性

1章「ブロックチェーンとは」でも説明した通り、ブロックチェーンはシステムダウンせず、改ざんが非常に困難な仕組みを持つ。従来は、システムダウンや改ざんへの備えとして、中央となる管理者が高いコストをかけてサーバへの投資や管理・運用を行ってきた。しかし、こうした中央集権的な仕組みでは、万が一、管理者に問題が発生した場合、システム全体が影響を受けることになる。システムダウンや改ざんなどの問題を根本から解決できることは、ブロックチェーンの大きなメリットと言える。

公明な記録を残すことができる

サービス提供者でも取引記録の書き換えや消去ができないということは、公的な記録を残したい場合には最適な性質であると言える。例えば会社や不動産の登記や、納税、年金の支払いなどの記録にブロックチェーンを使えば、書き換えや紛失のリスクをなくすことができる。

7章 ブロックチェーンのデメリット

ブロックチェーンのデメリット

データを消せない、隠せない

メリットと矛盾するようだが、この性質は時と場合によってはデメリットとなる。例えば個人情報などは本人の求めに応じて削除する義務が個人情報保護法によって定められているが、ブロックチェーンでこれを運用しようとした場合、一度記録した個人情報は二度と削除できなくなってしまうだけでなく、暗号化された状態ではあるもののネットワーク上の全ての参加者に情報が行き渡ってしまう。

このような場合、ブロックチェーンの性質は逆にデメリットになってしまうため、ブロックチェーン単体ではなく、外部のデータベース等と組み合わせて使うなどの工夫が必要となる。

合意形成に時間がかかる

例えば決済システムをブロックチェーンで運用しようとした場合を想定してみよう。決済にかかる時間は、通常のクレジットカードであれば、毎秒大量の決済処理に対応できるため一瞬で決済が完了するが、ブロックチェーンでは合意形成(決済完了)までに時間を要する。これは5章「ブロックチェーンの種類」の章で説明したようにパブリックチェーンに共通した問題だが、その解決のために作られたプライベートチェーンでも、クレジットカード決済と比べるとまだまだ遅く、世界的な決済手段としては改善が必要だと言える。

合意形成に時間がかかっても問題にならないサービスを提供するならばデメリットとはならないが、速度が求められる分野においては、ブロックチェーンの最大のデメリットともなりえるだろう。

取引データの巨大化

ブロックチェーンの利用が進めば進むほど、ネットワークを飛び交う通信量と取引履歴として保持するデータ量は増えていくため、最終的にその量は膨大なものとなる。現在はコンピュータやネットワークの性能向上で通信量の増大に対応できているが、あらゆる分野でブロックチェーンが利用されるようになったとき、そこで扱われる通信量やデータ量はコンピュータやネットワークの性能向上、ストレージの増大では対応しきれなくなる恐れがある。

8章 ブロックチェーンとスマートコントラクト

ブロックチェーンとスマートコントラクト

スマートコントラクトとは

スマートコントラクトとは、取引における契約を自動で行う仕組みのことである。コントラクト(契約)をスマートに行うという言葉通りの意味だが、人の手を必要としない取引プロセスの自動化がブロックチェーンと相性が良いことから、近年注目を集めている。

スマートコントラクトの概念自体はブロックチェーンよりも古く、1994年に米国の暗号学者であるNick Szaboにより提唱されている。Nick Szaboは、最初のスマートコントラクトとして自動販売機を挙げており、自動販売機では「お金を入れる」「ボタンを押す」という2つの行為により、「飲み物を提供する」という契約が自動で実行される。このことからわかるように、スマートコントラクトにおける契約とは取引のことを指す。したがって、インターネット上の取引の多くはNick Szaboの定義するスマートコントラクトに含まれると考えることもできる。

ブロックチェーンと組み合わせることで生まれる可能性

このような意味を持つスマートコントラクトだが、ブロックチェーンとの組み合わせで考えるならば、狭義には「設定されたルールに従い、ネットワーク上で取引を自動的に実行する仕組み」と言い換えることができよう。ブロックチェーンとスマートコントラクトを掛け合わせれば、ブロックチェーン上に契約の成立条件を設定しておき、その条件が満たされたとき自動的に契約が実行される、という仕組みを実現することができる。当然、この契約は人の手を介さず、改ざんの心配もない。

例えば、レンタカーにこの仕組みを導入したとする。あなたが店舗に行くと、そこには自動車が並んでおり、好きな車に乗り込んでタッチパネルを操作することで、リース契約から保険契約、決済までもが完了する。そこには店員の手を介する必要もなければ、紙の書類に記入する必要もなく、カード情報を渡すことの心配もない。ドライブ中にガソリンスタンドに寄ったなら、契約時に登録した決済情報で車自体がガソリン代の支払いを済ませてくれる。高速道路の支払いにETCカードを持つ必要すらないだろう。また、もしかすると、自動運転が進歩した世界では、スマホで操作するだけで今いる場所に自動でレンタカーが運ばれてくるかもしれない。ブロックチェーンとスマートコントラクトの組み合わせは、未来の世界に一歩近づく可能性を秘めていると言えるだろう。

9章 ブロックチェーンの未来

ブロックチェーンの未来

ブロックチェーンが作る透明で効率的な社会

そう遠くない将来、ブロックチェーンが当たり前のインフラとして浸透している世界では、さまざまな取引や契約、手続きの多くがブロックチェーンやAI、IoTなどの組み合わせで行われるようになり、より安全で効率的な社会が実現されていることだろう。その世界では、不正やシステムダウンへの備えに大きなリソースを割くこともなくなり、人はもっと創造的な仕事に注力できるようになり、誰も否定できない公明正大な記録が社会を透明にする。

PCやスマートフォン、ウェアラブルデバイスなどの電子端末だけでなく、自動車や建物までもがブロックチェーンにつながり、人の行動を止めていた取引行為をスマートコントラクトがシームレスに解決する。人はブロックチェーンが使われている便利なサービスを、それと知ることなく享受するだろう。

国内でもブロックチェーンに関わる複数の協会が普及に取り組んでおり、金融庁は利用者保護に向けた規制の整備を進め、経済産業省や総務省も積極的にブロックチェーンを推進している。海外に目を向けると、「電子政府」と呼ばれる政府の電子化に取り組んでいる事例もある。世界中でブロックチェーンを活用する動きが活発になってきている。「インターネット以来の技術革新」という謳い文句もあながち誇張とは言い切れないのかもしれない。

未来はもう、私たちの目の前までやってきている。

 

監修

TIS株式会社 ペイメントサービス企画部 中村・中川・住田
TISは、ブロックチェーン、AIなど先端技術のノウハウを結集し、企業、産業、社会における新しい価値創造につながるイノベーションを推進します。国内外問わず新たな技術を取り入れたサービスを提供しています。
https://www.tis.jp/

参考文献(最終アクセス2018年4月16日)

日本ブロックチェーン協会
http://jba-web.jp/archives/2011003blockchain_definition

総務省 平成29年度版 情報通信白書
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h29/html/nc261110.html

経済産業省「ブロックチェーン技術を利⽤したサービスに関する国内外動向調査」報告書概要

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