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10代の恋はSNSから始まる!? 専門家に聞く、“ソーシャルネイティブ” の最新ネットライフスタイル

10代の恋はSNSから始まる!? 専門家に聞く、“ソーシャルネイティブ” の最新ネットライフスタイル

大人にとってはもちろん、子どもにとっても生活に欠かせないスマホ。しかし今の10代には「ググる」「写メ」といった言葉が通じない、LINEはあまり使っていない、といったウワサも。実際のところ、今の10代はどのようにSNSを使っているのでしょうか? Z世代に特化した若者研究機関「SHIBUYA109 lab.」の所長を務める長田麻衣さんに、その実態を聞いてみました。

目次

長田 麻衣(おさだ・まい)さん

SHIBUYA109 lab. 所長 長田 麻衣(おさだ・まい)さん

大学卒業後、総合マーケティング会社にて化粧品・食品・玩具メーカーの商品開発やブランディング、PRサポートを経て、SHIBUYA109のマーケティング担当に。2018年5月、Z世代に特化したマーケティングチーム「SHIBUYA109 lab.」を設立。所長として、毎月200人のaround 20(15歳~24 歳の男女)と接する。

今の10代にとって、ネットとリアルは同じもの

α世代やZ世代とさまざまな呼び方がされる「10代」。ネットやSNSが当たり前にある環境で育った彼らと親世代では、考え方や捉え方にいろんな違いがありそうです。

早速ですが、今の「10代」のものの考え方にはどんな特徴がありますか?

長田さん

「生まれた頃からSNSがあるソーシャルネイティブは、コミュニケーションにおける“感じ取る能力”や“表現する能力”がとても高いです。私は毎月200人もの若者と接していますが、彼らは他人との距離の取り方が上手で、そのために必要なツールの使い分けもほぼ無意識にできています。

情報に貪欲なところもあります。SNS上で、自分の好きな世界も見るけれど、周りに自分がどう見られるかも気にしているし、『こう見られたい』というイメージを実現させるために新しい情報や意見を積極的に見にいく。例えばニュースに触れるときも、報道の内容だけでなく、そこにどんなコメントがついているかを見ているんです。今はどんなニュースにも賛否のコメントが混在していますよね。ソーシャルネイティブな彼らは、その様子を小さい頃から見てきているので、ものごとにはいろんな意見があることをバランス良く知っている世代だと思います」

今の10代にとって、ネットとリアルは同じもの

ネットの使い方にも、10代と30代以上の世代間で大きな違いはありますか?

長田さん

「私たち30代以上の人にとっては、ネットとリアルはある程度分けて考えるものですよね。でも、今の10代にとってはどちらもリアルなんです。彼らは、コミュニケーションの場としてSNSを使っていて、リアルで起きたことをSNSに投稿するのが当たり前の世界で生きています。投稿が映えることも大事ですが、それよりも投稿した後にSNS上でどのようなコミュニケーションが生まれるかがより重要。

情報収集をSNSで行っていることもひとつの特徴です。その際、より検索しやすいように新しいハッシュタグを自分たちで生み出します。例えば、Instagramで『渋谷 カフェ』と検索しても、今では投稿が増えすぎて10代が探しているおしゃれなカフェの情報は埋もれてしまっています。そこで最近盛り上がっているのが、韓国語で『カフェ』という意味の『#カペ』というハッシュタグ。これで検索すると、今いちばんおしゃれで10代が好きな感じのカフェの情報が出てきます。このように自分たちでハッシュタグを生み出し、それをみんなで『いいね』と言い合うことで定着していくんですね」

今の10代にとって、ネットとリアルは同じもの

SNSにもたくさん種類がありますが、10代はどのように使い分けているのでしょうか?

長田さん

「メインで使われているのは、断トツでInstagramです。カフェやショップ、美容などあらゆる情報が得られ、かつ友達が今何をしているのかもわかります。最近はLINEを使わず、軽いやり取りはInstagramのDMを使うという10代も増えています。情報収集、発信、交流といった必要な機能がそろっていることが強みですね。

30代以上にも広く親しまれているTwitterは、10代にとってYahoo!ニュースや新聞のような存在で、政治や環境問題、世の中のトピックを知るためのツールです。Instagramとは異なりTwitter上でコミュニケーションが生まれることは少なく、『見る専』の人が多いですね。ただ、Twitterはテキストベースで細かい情報がわかるという特徴があるので『ヲタ活』に使う人も多く、推しの公式アカウントをフォローしたり、ヲタ仲間で情報交換したりするときにも使われています」

Twitterはニュース感覚で見ているんですね。動画系SNSはどうでしょう?

長田さん

「ここ数年で伸びているのは、やっぱりTikTokですね。こちらは自分たちが投稿するというよりも、音楽やダンスなど、今流行っているものをチェックするために見ているようです。

一方でYouTubeは、インフルエンサーのチャンネルやメイク動画を見る場としても相変わらず人気ですが、最近は情報収集の場としても使われ始めています。例えば、『北海道 旅行』と検索して旅行の行き先をチェックしたり、『新横浜駅から横浜アリーナまでの行き方』を調べたり。Googleやマップアプリで調べるよりも、一人称視点で撮られた動画を見た方がわかりやすいんですね。生活の必須ツールとしての側面が大きくなってきています」

10代の各SNSの主な利用目的

  • Instagram……リアルの友人との交流、トレンドの情報収集、自分が行った場所の投稿など
  • Twitter……政治や環境問題などの社会ネタ、芸能系のニュースの情報収集
  • TikTok……音楽やダンスなどエンタメの流行チェック
  • YouTube……人気チャンネルの動画視聴、旅行・おでかけの事前リサーチ

10代のネットリテラシーは、30代以上と比べてどのような特徴があるんでしょうか?

長田さん

「10代のネットリテラシーと大人の持っているそれは、少し種類が違う気がしています。私たちは、『ネット上の知り合い』というだけで警戒してしまいますが、今の10代にとって顔を知らない人と友達になることは普通。相手が危険かどうかは、投稿している画像や動画で判断しているんです。『この写真の加工のテイストは同世代だな』とか『自分とは感覚が違うから、距離を取って接しよう』とか。投稿主が同世代か30代以上かは、今の10代は簡単に見抜いてしまいます。ビジュアルを介したコミュニケーションにすごく長けているんです。

とはいえ、友達になってからすぐ会うのではなく、ある程度SNS上でのコミュニケーションがうまくいったあと。バンドのライブなどイベントに一緒に行き、その過程で相手がどういう人なのかを見極めているようです。そこをクリアする相手であれば、年齢に特別こだわっているわけではありません。大人からするとちょっと心配に思える部分もあるのは確かですが、10代にも自分たちの判断基準がしっかりあるんです」

10代は空間の雰囲気やニュアンスを重視し、顔はあえて写さない、小物を取り入れるなど撮り方に工夫をする

30代以上はメインの被写体が目立つような構図で、彩度が高い加工をして“映え”を作ることが多い

左:10代は空間の雰囲気やニュアンスを重視し、顔はあえて写さない、小物を取り入れるなど撮り方に工夫をする
右:30代以上はメインの被写体が目立つような構図で、彩度が高い加工をして“映え”を作ることが多い

Instagramで恋の駆け引き、LINEは業務連絡? 令和のSNSコミュニケーション

InstagramやTwitterは1人が複数のアカウントを持てますよね。アカウントの使い分けはどのようにしているのでしょうか?

長田さん

「多くの10代が、各SNSで2~3個のアカウントを持っています。リアルの知り合いとつながっている本垢(本アカウント)、特に仲の良い友達とだけつながっている非公開の裏垢(裏アカウント)、そして情報収集のためだけのアカウント。本垢は多くの人が見ているので、映えている自分や楽しそうな写真をしっかりと加工して投稿しています。裏垢は気の知れた友達しか見ていないので、あまり映えを気にせず記録用として投稿することが多いみたいです。『外向けの自分』と『素の自分』という使い分けですね」

Instagramで恋の駆け引き、LINEは業務連絡? 令和のSNSコミュニケーション

投稿する内容とそれを見る人を、自分たちでコントロールしているんですね。

長田さん

「10代のストーリー機能は、恋の駆け引きにも使われています。例えば、そのストーリーを見ることができる『親しい友達』リストに好きな人だけを入れて、『今電話できる人~?』というストーリーを投稿して反応を待ってみたり。他の人には見えないストーリーなので、必然的に好きな人からしか反応は来ません。そこで電話するきっかけを作るんです」

すごい、令和の出会いですね……!

長田さん

「私たちが学生の頃は、電車で気になる他校の生徒を見かけたら勇気を振り絞って話しかける…といったこともありましたが、今の10代はそんなことはめったにしません。Instagramで調べれば、学校名や共通の友達をたどってその人のアカウントにたどり着けるからです。そこでフォローしたり、DMを送ったりして仲良くなるのが普通。

フィードやストーリーを見れば相手の人となりもある程度わかりますし、昔より明らかに恋愛の効率が良いんです。性別関係なくポーズを取って写真を撮り、おしゃれでエモい写真を投稿し、ストーリーで音楽の趣味などを共有する。今の10代がモテるためには、Instagramで盛れていることが条件のひとつと言っても過言ではありません」

Instagramで恋の駆け引き、LINEは業務連絡? 令和のSNSコミュニケーション

では、LINEはどのように使われているのでしょうか?

長田さん

「大人にとってのメールに近く、やり取りをするのはかなり仲の良い友達か家族、あるいはクラスのグループや実務的な連絡などに限られています。新しいコミュニケーションが生まれづらいので、基本的に『用がある時にするもの』という感覚です。

送る文章は短く、1行が基本。でも絵文字の使い方は特徴的です。例えばハートの絵文字でも、赤だけではなく黄、紫、白など色を使い分けるんです。『LOVE』ではなく『感謝』を伝えたいから、この場合は白のハートかな、とか。文章は短くても、そこに含まれる情報の量は増えていると思います」

左:10代は絵文字1個だけでシンプルに使うことが多い。多くても、顔文字+ハートなどの記号の2個 右:30代以上は2個以上続けて使うことも少なくない。感情にリンクした記号も多用する

左:10代は絵文字1個だけでシンプルに使うことが多い。多くても、顔文字+ハートなどの記号の2個
右:30代以上は2個以上続けて使うことも少なくない。感情にリンクした記号も多用する

10代の若者が楽しく安全なネットライフを送るために。周りの大人ができること

10代は、自分たちなりの文化でSNSを利用しているんですね。子どもの楽しみを尊重しつつ、周りの大人はどう子どもたちをサポートしていけたらいいのでしょうか?

長田さん

「昔に比べるとネットの使い方は大きく変化しているので、周りの大人からすると心配に感じることもあるかもしれません。まずは、子どもが『リアルもSNSも同じ現実』という世界に生きているとを理解することから始めてもらいたいですね。そして、そうした世界で危険を察知していける基礎固めをサポートしてあげてください。

ネット上のコミュニケーションでも、『人を傷付けてはいけない』『自分がされて嫌なことは人にしない』といったモラルは変わらないと思うんです。ただ、正解がひとつとは限らない時代でもあるので、俯瞰した目を持ち、目立つ人の意見だけに引っ張られず、自分なりの正解を持つ方法を教えてあげることが必要なんだと思います」

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(掲載日:2021年12月10日)
写真:宇佐美亮
文:山田宗太朗
編集:エクスライト

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