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ネットいじめから子どもを守ろう。最新事例から専門家が紐解く、親の心がけや対策

ネットいじめから子どもを守ろう。最新事例3選から専門家が紐解く、親の心がけや対策

小学生、中学生のスマホ所有率は年々増加しています。その増加とともに近年、問題となっているのが「ネットいじめ」や「SNSいじめ」です。SNSのグループ内での中傷や無視、ときには個人情報の拡散など、被害者は増加傾向にあります。

深刻化するネットいじめやSNSいじめから、子どもたちを守るため私たちができる対策はどのようなものなのでしょうか。今回は、ネットいじめ対策協会理事長、安川雅史さんに事例と対策を教えていただきました。

安川 雅史(やすかわ・まさし)さん

ネットいじめの専門家 安川 雅史(やすかわ・まさし)さん

ネットいじめ、不登校、ひきこもり、少年犯罪問題を専門とし、全国から依頼を受け講演会、研修会を実施している。スマホの機能、そしてネットいじめの実態を調査し、ネットでのトラブルやいじめを撲滅するため、最新の事例とともに適切な対処法のアドバイザーとしてさまざまなメディアで活躍中。著書に『子どものスマホ・トラブル対応ガイド』(株式会社ぎょうせい)など。

目次

加害者は直接の知り合いから第三者にまで。ネットいじめ、SNSいじめの最新事例3選

加害者は直接の知り合いから第三者にまで。ネットいじめ、SNSいじめの最新事例3選

まずはじめに、近年のネットいじめの傾向を教えてください。

安川さん

「コロナ禍で家にいる時間が多くなったせいもあって、最近は、LINEでのやりとりからトラブルにつながるケースが増えています。既読はつくけれど返信がこないとか、グループLINEで1人だけハブかれるとか……。いまは小学生でもスマホを持っているので、それに伴い、ネットいじめも低年齢化していますね」

パソコンや携帯電話などを使ったいじめの認知件数

文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」

出典元:文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」

ネットいじめやSNSいじめはどのように始まって、どのようにエスカレートしていくのか、実際にあった事例を、いくつかのケースに分けて見ていきましょう。

事例① 画像をいたずら加工し、隠し撮り動画を拡散

クラスのリーダー格の女の子が、裏のLINEグループを作ったことがきっかけでいじめが始まったケースです。加害者の子たちは、いじめの対象になった子を隠し撮りし、顔をアプリで変形したり老けさせたりして、どれが一番おもしろいか皆で競い合って楽しんでいたんですね。体育の創作ダンスも隠し撮りをして、それを学校名がわかる形でYouTubeやTikTokにアップするところまで、いじめはエスカレートしていきました。

事例① 画像をいたずら加工し、隠し撮り動画を拡散

事例② 「なりすまし」で著名人への誹謗中傷の濡れ衣を着せられる

自撮り画像や学校名などの個人情報が「なりすまし」のSNSアカウントに使われ、著名人への誹謗中傷からそれが発覚したというケースもあります。著名人側から学校にクレームが入り、先生がその子を問いつめたところ、なりすましをされていることがわかったそうです。

事例② 「なりすまし」で著名人への誹謗中傷の濡れ衣を着せられる

安川さん

「その子にとってみれば、なりすましをされた上に、先生からも疑われるという、二重の苦しみを味わうことになったんですよね。また、著名人側が『こういう書き込みをされた』と晒したことで、見ず知らずの第三者からも批判されることになってしまいました」

事例③ 顔が見えない相手からの誹謗中傷

近年のいじめの現場は、学校だけにとどまりません。例えば、YouTuberのマネをして「歌ってみた」「踊ってみた」といった動画をアップする子どもたちがいます。このような動画のコメント欄に、誹謗中傷を書き込む人が少なからずいるんです。このケースで一番怖いのは、誰から言われているかわからないこと。見ず知らずの他人かもしれないし、親しい友だちが裏アカウントを使って誹謗中傷していることも考えられます。

事例③ 顔が見えない相手からの誹謗中傷

いじめと聞くと、狭いコミュニティーの中で起こるものといったイメージがありましたが、第三者が加害者になるケースもあるんですね。

安川さん

「そうですね。誰からいじめられているのかわからずに、『自分は世間から嫌われているんじゃないか』と不安になって、精神的にどんどん追いつめられていくケースが増えています。また、学校でいじめを受けて転校しても、それが完全には止まないのがネットいじめの恐ろしさです。転校先の学校の子に、前の学校の子たちが『あの子ってこういう子だよ』と吹聴し、いじめがエスカレートしてしまったケースもありますね」

第三者からの被害者にならないために。家庭で教えられる最低限のネットリテラシー

① 自撮り画像や学校名をアップしないこと
制服を着たまま動画を上げたり、学校名が書いてあるカバンが映り込んでいたりすると、それだけで学校が特定されてしまいます

② 安易にハッシュタグを使わないこと
特に「#死にたい」「#消えたい」といったネガティブなハッシュタグは、犯罪者の誘い水になってしまうことも

いじめの当事者になったら… 子どものサインを見逃さないために親が知っておきたいことや対策

いじめの当事者になったら… 子どものサインを見逃さないために親が知っておきたいことや対策

ネットいじめやSNSいじめに対して、当事者の親はどのような対策や心がけをすべきでしょうか?

安川さん

「子どもが話しかけているのに親がスマホを見ながら生返事をしたり、子どもの前でほかの親の悪口を言ってしまったりすると、『親がやっているから同じことをしてもいい』と、人の悪口を平然と言ったり、いじめに加担してしまったりするようになります。また、親が子どもの顔を見ずにスマホばかり見ていたら、子どものサインを見逃してしまいます。いじめに遭っている子どもは、必ず何かしらのサインを出しているんですよ」

いじめに遭っている子どものサイン

よく熱を出す、頭痛や吐き気を訴える 日曜日の夕方あたりから食欲がなくなり、熱を測ると37度台の微熱がある。翌日そのまま学校を休み、昼くらいに熱を測ると平熱に戻っている
朝トイレに入ってなかなか出てこない 1人になれてカギをかけられる安全な空間にこもり、時間がすぎるのを待つ
飲み物をがぶ飲みする、炭酸飲料を飲みたがる 人間は、ストレスが溜まったり追いつめられたりすると、喉がカラカラになり唾液が出てこなくなる。そのため、2リットルくらいの水を一気に飲み干したり、刺激で喉の渇きをごまかせる炭酸飲料を飲みたがったりする
学校や友だちの話をしない 学校や友だちのことを聞くと、話題をすり替えようとしたり、黙ってしまったり、その場から離れていく。あるいは、瞬きが多くなったり、目が泳ぎ始めたりする
不安定さを隠そうとする 「何かあったの?」と聞くと「うん、大丈夫」と返事をする
スマホの画面を隠そうとする、常に持ち歩く LINEで嫌がらせをされていたり、脅しを受けたりしている子どもは、顔がこわばり親と目を合わせようとしない。また、親にロックを解除されないよう、常にスマホを持ち歩く

子どものサインを見逃さないために、親はどうすればいいでしょうか?

安川さん

「LINEやSNSはクローズドな空間ですが、スマホをいじっている子どもをよく見ていれば、表情の変化や手の震えがわかるんですよね。そういったサインを見逃さないためにも、スマホを使う場所はリビングに限定するのがいいと思います。『お父さんやお母さんもリビングで使うから、あなたもリビングで使おうね』と、子どもが納得するようなルールを設けるといいでしょう。実際に、スマホに制限をかけないまま使わせている家庭の子どもは、いじめやトラブル、犯罪に巻き込まれるケースが多いです」

ネットいじめやSNSいじめをなくすために、私たちにできることは?

テクノロジーの進化とともに、いじめが複雑化・巧妙化していく中で、いじめを少しでも減らすために、今後どのような活動をされていく予定でしょうか?

安川さん

「子どもがいじめや犯罪に巻き込まれたときに、『スマホが悪い』と言う人がいますが、スマホはあくまでツールです。思いやりのある人が使えば、人を追いつめるようなことは書かないし、相手を困らせるようなこともしないですよね。

子どもの性格や気質を作り上げるおもな場所は、家庭です。人の気持ちがわかる子どもを育てるためにも、1日3〜5分でいいので、きちんと子どもと目を見て話をしましょうというのは、講演などを通じて伝え続けていきたいですね。そのようなことを実践できる家庭が増えれば、いじめを減らすことにつながると思っています」

子どもたちが、スマホを有効なコミュニケーションツールにしていくためには、どのような心がけが必要でしょうか?

安川さん

「スマホは、親子間や友人間のコミュニケーションツールとして、非常に便利なものです。ただし、スマホでのやりとりがすべてではありません。子どもたちによく言うのは『やりとりが長くなりそうなときは、LINE電話で顔を見合わせて話をするか、楽しみを明日に持ち越そう』ということ。言いたいことをすべてLINEやSNSで伝えるよりも、明日学校で顔を合わせながら話したほうが絶対におもしろいですよね」

子どもたちに一生の傷を残さないために

今回、安川さんには、ネットいじめやSNSいじめについて「被害者の視点」からお話しいただきました。わが子が被害者になり得るということは、裏を返せば、加害者にもなり得るということ。ネットいじめやSNSいじめは、被害者と加害者双方に、大きな傷を残します。子どもとの向き合い方や、ネットリテラシーをいま一度見直し、子どもの些細な変化を見逃さないことが大切です。

お知らせ

10代のネットライフスタイルも参考にしてみてください

(掲載日:2021年12月10日)
文:佐藤由衣
撮影:山野一真
編集:エクスライト

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