6年ぶりの開催となった日本最大級の航空・宇宙の総合展示会「2024国際航空宇宙展」。
国内外の主要企業や政府機関、大使館・業界関係者などが東京ビッグサイトに集結し、10月16〜19日の日程で開催されました。ソフトバンクは「宙をつなぐ。」をテーマに、宇宙や成層圏から通信ネットワークを提供するNTNソリューションを紹介しました。
目次
ソフトバンクのNTNソリューションが一堂に
ソフトバンクは、世界中のいつでもどこでもシームレスにつながる通信ネットワーク「ユビキタスネットワーク」の構築を目指しています。そのために重要となるのは、宇宙空間や成層圏から通信ネットワークを提供する「NTN(Non-Terrestrial Network)」です。
今回、ソフトバンクのブースでは「宙(そら)をつなぐ」をテーマに、成層圏通信プラットフォーム「HAPS」を中心に、衛星通信サービスなどを含むNTNソリューションについて展示。海外からも多くの来場者が訪れ注目を集めていました。
VR映像でHAPSの飛行を体感! HAPS向け大型無人航空機「Sunglider」
ブースでまず目を引くのは、HAPS向け大型無人航空機「Sunglider(サングライダー)」を10分の1にした約8mの模型。1機で直径200kmの通信エリアをカバーでき、地上基地局ではカバーが難しい上空や離島、山岳地帯など、通信ネットワークが整っていない場所や地域で安定したインターネット接続環境を構築できます。
模型の横では、AeroVironmentと米国国防総省が2024年8月に実施した実証実験の動画を上映。機体の準備から離陸、上昇飛行、成層圏到達、そして着陸までの様子を紹介しました。
ソフトバンクのHAPS向け大型機体「Sunglider」が、AeroVironmentと米国国防総省が実施した実証実験で成層圏飛行に成功(2024年10月2日 ソフトバンク株式会社プレスリリース)
Sungliderは成層圏から電波を届けることで、地上基地局と同じ4Gや5Gサービスを提供し、既存のスマートフォンやIoT機器を利用できるのが特長です。翼に備えたソーラーパネルから得られたエネルギーをバッテリーに蓄積することで、一度離陸すると約半年間飛び続けることを目標にしています。
ブースにはVRゴーグルを装着してSungliderの飛行を見て楽しめるコーナーも。目の前で巨大なSungliderが頭上を通り離陸していく姿に圧倒されました。
先端技術研究所 先端HAPS研究部
宮川 雄太郎(みやがわ・ゆうたろう)
Sungliderは2020年9月に初めて成層圏飛行試験を行い、成層圏からのLTE通信試験に成功しました。また2024年8月上旬には、米国国防総省が実証実験を行った米国ニューメキシコ州での成層圏飛行にも成功し、着々とフライト実績を積んでいます。コンセプト検証は完了したので、今後は商用化に向け、翼や成層圏専用のモーター、バッテリー、ソーラーパネルなど、各要素技術の研究開発を進めています。
成層圏から大容量のデータ通信サービスを実現する無線機技術
HAPSから通信を行う上で、必要不可欠となるのが無線機です。ソフトバンクでは、電気を使って通信をトラッキングする「PAA(フェーズドアレイアンテナ)」を進化させることで、半年間以上の継続飛行の実現を目指しています。
ブース内には、実際の試験で用いられたPAAやアンテナ制御・スイッチングを行う機器などが展示されていました。
先端技術研究所 先端無線統括部 6G準備室
馬場 章裕(ばば・あきひろ)
成層圏から大容量データ通信サービスを実現するためには多くの課題があります。その中でも特に重要なものが4つ。①無線機の小型・軽量化。②HAPS向けの周波数への対応。③地上から20キロにある成層圏よりも遠い、実質50キロ程度の通信距離が必要になること。④機体の動きや揺れで通信が途絶えることのないようトラッキングすること。
これらの課題に対応するため、38GHz帯に対応したソフトバンク独自の高利得PAAを開発しました。世界中探しても存在しないというほどの高規格なものです。地上での長距離通信試験に成功し、成層圏での動作確認もできたので、今後は商用化に向けてさらに開発していく予定です。
世界初・世界最速クラスの宇宙用光無線の開発
低軌道衛星や静止衛星での採用が急速に進んでいる光無線通信技術。大容量かつセキュリティ性に優れ、電波免許が不要で周波数の干渉も起こりにくいため、宇宙と地球との間でも逼迫(ひっぱく)している電波への解決策として期待が高まっています。
展示されていたのは、ソフトバンクと国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)が共同で開発している光無線通信装置を搭載した人工衛星。2026年には世界初・世界最速となる低軌道と成層圏間の双方向光無線通信の実証を行う予定です。
先端技術研究所 先端ネットワーク研究室
柳本 教朝(やなぎもと・のりとも)
光無線通信はレーザーを使い、300THz(テラヘルツ)を超えるような通信が可能となります。さまざまな利点がある一方で、レーザーのビーム幅が狭いため、雨や霧などで電波が切れたり、空気を通るだけでも歪みが生じ、高度400〜500キロの人工衛星から狙い続けるのが、かなり困難な技術でもあります。また、既存の装置は高価で大きいなど通信事業への採用が難しい状況です。
そんな中、ソフトバンクは宇宙転用可能なレベルの要素技術を完成させています。相互に接続でき、地上・航空・宇宙で共通の光無線装置を使うことで、コストダウンを図り、よりオープンな仕様となる光無線通信の開発を目指し取り組んでいます。
衛星通信サービス「Starlink Business」「Eutelsat OneWeb」
その他にも、すでに商用化され災害現場などでも活用が進んでいる衛星通信サービス「Starlink Business」や、今年の12月から商用化が予定されている衛星通信サービス「Eutelsat OneWeb」のアンテナも紹介。帯域保証型の通信サービスなどを提供予定の「Eutelsat OneWeb」は、高セキュリティで高速かつ低遅延な通信を実現します。
テクノロジーユニット統括 プロダクト技術本部 NTN戦略部
廣浦 駿人(ひろうら・はやと)
令和6年能登半島地震では初めて「Starlink Business」が活用されました。それに加え、今年の12月から「Eutelsat OneWeb」が商用化される予定です。地上のモバイルネットワークでは電波が届きにくい山間部やへき地などでの建設機械の遠隔操縦や作業の遠隔監視、災害時における高セキュリティな通信回線の確保など、さまざまな場面での活用が期待されます。サービスの提供に先駆けて、防衛省・自衛隊による「Eutelsat OneWeb」の活用の可能性について、共同で検証を実施しています。
企業や政府機関、自治体向けの高品質な衛星通信サービス「Eutelsat OneWeb」を2024年12月に提供開始(2024年9月3日 ソフトバンク株式会社 プレスリリース)
(掲載日:2024年11月13日)
文:ソフトバンクニュース編集部
世界中に通信ネットワークをつなぐソフトバンクのNTN
宇宙空間や成層圏から通信ネットワークを提供する「NTN」。ソフトバンクは「OneWeb」「Starlink Business」「HAPS」の3つの通信サービスによるNTNソリューションを展開します