
2025年6月、ソフトバンクの通信ネットワークを保守・運用管理する部門や協力会社の方、約160人が参加する大規模な総合防災訓練が関東地区で実施されました。大規模災害の発生時には、より安全かつ迅速に通信を復旧させることが重要になります。訓練の様子を取材してきました。
目次
多様化する大規模災害に備えて、訓練を毎年アップデート
能登半島地震や、岩手県大船渡市の山林火災をはじめ、毎年発生する大型台風や線状降水帯による豪雨など、昨今の自然災害は年々激甚化・多様化しています。中でも、近い将来に発生する確率が高いとされる南海トラフ地震などの大規模災害を想定し、通信インフラを迅速に復旧させる体制の強化は急務となっています。

ソフトバンクはこうした事態に備え、全国各地で総合防災訓練や地域別の防災訓練を毎年実施。指定公共機関として、国・地方自治体・自衛隊などとの合同防災演習にも参加し、2024年度に実施した訓練は合計144回に上りました。この日は30度を超える暑さの中、復旧作業に関わる社員および協力会社の社員約160人が参加。新たなソリューションの実演も行われ、通信復旧に向けた対応力の強化に取り組みました。
臨時基地局や衛星通信で人が集まる場所の通信を早期復旧
大規模災害が発生すると、電気や光ケーブルの切断、基地局設備の損傷などにより、通信障害が発生することが多々あります。基地局の早期復旧が難しい場合、移動基地局車や可搬型基地局、ドローンなどを活用し、人が集まる役所や避難所などですぐに通信が使えるよう、優先的にエリア復旧を行います。
新可搬型基地局はより軽量化。短時間で設置できるように
今回の訓練で新しく導入された新可搬型基地局は、従来の262kgから95kgへと大幅に軽量・小型化され、車で1台しか運搬できなかったものが、同時に3台まで運搬可能になりました。また、組み立て時間も120分から60分以内へと短縮され、2人で設置できるように。新可搬型基地局は、設置したエリアから半径数百メートルの範囲に通信を提供します。

新しい設備の組み立て手順や注意点を詳しく確認しながら、設置を進めていきます。組み立て前はコンパクトにまとめられ、人と同じ程度の高さだったものが、徐々に組み立てられあっという間に6メートル程度の高さに。アンテナは空気ポンプで持ち上げるため、誰でも安全に設営できます。

また、その他にも現地では、衛星アンテナを搭載した移動基地局車や避難所に設置する小型無線機など、一時的に通信サービスが使用できなくなったエリアにおける、暫定的なネットワークの復旧手段として活躍するソリューションも展示されていました。
移動基地局車
小型無線機
人が背負って運べる衛星アンテナで、迅速に通信を復旧
災害で光ケーブルが切断されるなど、地上回線によるネットワーク接続が困難な場合には、衛星通信を用いて、インターネットをつなげるための通り道(バックホール)を確保します。
衛星通信を受信する可搬型衛星アンテナは「パラボラアンテナ」に加え、衛星ブロードバンドインターネットサービス「Starlink」を活用。パラボラアンテナは悪天候下でも安定した通信が期待できる設計となっており、Starlinkは軽量で設置がしやすく迅速な運用が可能です。場面やニーズに応じてそれぞれの特徴を生かした使い分けができるようになりました。訓練では実際にStarlinkのアンテナをバックホールに用いた環境下で接続試験を行いました。
パラボラアンテナ
Starlinkのアンテナ
直接たどり着けない場所には空や海から通信を提供
災害時は、道路の寸断などにより、復旧作業をする場所へたどり着けないケースもあります。有線給電ドローンは最大で高さ100メートル程度まで上がり、上空から半径3kmから5kmのエリアに通信を届けることが可能に。また、地上から電力を供給することで、長時間の飛行が可能になります。実際に、能登半島地震や岩手県大船渡市で発生した山林火災では、有線給電ドローンを現地で運用しました。


また、船に設置することで海から通信を届ける船上基地局が展示されました。陸路が寸断され、被災地に到達するのが困難な半島などの沿岸部に、船上から通信を届けることができます。

船上基地局
長期化する復旧現場では、持続的な供給や後方支援が重要
長期化する復旧現場において、持続的に通信を提供するためには、基地局やドローンなどを動かす電力が欠かせません。そのため電力を供給する発電機も、より長時間供給できるように強化されています。従来型の6倍となる21時間稼働する「インテリジェントタンク」や、最大60時間の稼働が可能なガソリンとLPガスのハイブリッド型の発電機を導入し、利用方法や安全確認について、丁寧に確認していました。

災害用の特殊車両で復旧現場に物資を絶えず供給
長期間にわたる復旧作業では、電力の供給だけではなく、燃料などの物資を途絶えさせないことも求められます。災害用のバイクは、通常のバイクと比べ、舗装されていない道でも走行することができ、より多くの物資を搭載することが可能。また、倒木やがれきで車両が進めない道もすり抜けて走行ができるバイクは、被災地での情報収集にも活用されます。
災害用バイクに加え、四輪駆動でより足元が悪い道路も走行ができ、より多くの物資を運べる日本BCP株式会社が提供するバギーも紹介。この車両は、豪雨や積雪などにより現場に向かうのが困難な場所で物資の供給を可能にします。

災害用バイク

バギー
被災地での情報収集や関係機関との連携を可能に
MONETが提供する、用途に合わせてレイアウトを組み替えられる「マルチタスク車両」も展示。この車両は災害時には、車両に搭載されたStarlink Businessのアンテナにより、いつでもどこでも通信ができるようになっています。これにより、通信インフラが損傷した復旧現場でも、会議や情報収集など、関係機関との連携が可能になります。


テクノロジーの活用と日ごろの訓練により防災力を強化
訓練の当日に開催された報道関係者向けの説明会では、ソフトバンクの災害対策の概要や、今後の展望についての説明がありました。大規模な災害に備えて増強された設備やソリューションを紹介。また、今後は人員・物品の配置検討や作業員への対応指示などに、AIを活用していくと述べました。

また、今後想定される大規模災害への備えとして、エリア建設本部 本部長の柴田克彦は「技術が進化しても実際に現地で設置したり、設備を直したりするのは人」と強調。突然災害が起きても迅速な対応ができるよう、日ごろからの訓練で現場の実行力を身につけておくことが非常に重要になると語りました。
(掲載日:2025年7月9日)
文:ソフトバンクニュース編集部

ソフトバンクは、AIやICTを活用し、災害情報の迅速な集約・伝達を行い、災害から身を守る防災対策や、災害発生後の被害を少なくする減災対策に取り組みます。




