中国向けにWebサイトを開設する場合、またオンラインビジネスを展開する時に必ず覚えておかなければいけないことがあります。それは「ICP」という中国独特の制度についてです。
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前回の記事はこちらです。
吉村:では、前回のつづきの前にあらためてICPライセンスの制度そのものについて解説しておきます。
吉村:ICPを管理しているのは、通称「工信部(こうしんぶ)」、日本でいうところの総務省が管理しているものです。「工信部」はMinistry of Industry and Information Technologyの略です。MIITとよく言われます。
「ICP」は、工信部が管理しているWebサイトの登録制度で、外資企業でも登録は可能です。ICPに関する情報は工信部が全てWeb上で公開しています。
吉村:ここからはAlibaba Cloudの中国サイトのドメイン「aliyun.com」のドメインを例にして詳しくみていきましょう。先ほどの工信部のサイトからドメインのICP登録情報について検索できるメニューがあります。
このサイトから「aliyun.com」の登録情報を検索してみます。
吉村:検索結果がこちらです。「詳細」をクリックして登録情報を確認します。
吉村:詳細画面ではICP番号などを確認することができます。
吉村:そして、ICP登録番号を取得したら必ずWebサイトのフッターに番号を表示しなければならないというルールがあります。 Alibaba Cloudの中国サイトのフッターにもICP番号の記載を確認することができますね。
吉村:また、ICP登録は、あくまでもドメイン単位でICP登録をしますので、サブドメインなどのセカンドレベルドメインはICP登録は不要です。
つまり、「aliyun.com」のドメインでICPを持っているので、「cn.aliyun.com」のICP登録は必要がないということです。逆に「aliyun.com」ではなく「aliyun.jp」の場合にはドメインが変わってしまうので、ICP登録が追加で必要になります。
――なるほど、まずは工信部のサイトで色々とチェックしてみることは勉強になりますね。ところで実際の申請についてでですが、どのような手順で行うのでしょうか?
吉村:では、ICPの申請手順について解説していきます。
まずはWebサイトを作ると、クラウド事業者や中国のデータセンター事業者等の通信事業者に申請します。直接、工信部に申し込みはしません。
通信事業者がICP登録を管理しなければならないので、一次審査をすることになります。問題がなければ、それぞれの各省の管理局の工信部に届け出を出します。
どのICP登録事業者も一次審査は2~3営業日ぐらいで行われます。その後の工信部の登録申請は20日ぐらいです。ICP登録は1カ月以上かかるような作業になります。
ここからはAlibaba Cloudの場合の申請ステップについて説明します。
吉村:まずはドメインを取得しWebサイトを作ります。その次にオンラインで申し込みをします。「beian.aliyun.com」というAlibaba CloudのICP登録ポータルがあるので、そこに申請をします。
次に写真認証があります。ICP登録では、必ず責任者の写真も登録しなければなりません。これはAlibaba Cloudに限らず、ICP登録をするなら全員がしなければなりません。これらの手続き後、ICPの番号が付与されます。そして忘れないように、WebサイトのフッターにICP番号を加えます。
ただ、これで終わりではないのです。 ICPが終わると、「PSB」の申し込みをしなければいけません。
――PSBとは一体何ですか?
吉村:簡単にいうと公安ナンバーのようなもので、「公安」への届け出です。 中国の公安部、つまり日本でいう警察のようなところに届け出をしなければならないのです。それが「PSB」と呼ばれる番号です。 ※詳細は各省および公安当局のガイダンスをご参照ください。
――ICPとはまた別ものなのですね?
吉村:管轄が違うのです。ICPを管轄する「工信部」はクラウド事業者等の電気通信事業者をまとめています。
公安部は警察なので法律を管理しています。例えばWebサイトが犯罪に使われたときや、中国国内の社会の秩序を乱すようなWebサイトがあった場合は、「公安」が動きます。この二つの別々のラインに、それぞれの届け出を出さなければなりません。
――初歩的な質問ですが、この申請手続きに料金はかかるのでしょうか?このような手続きを代行してくれる企業などはあるのでしょうか?
吉村:料金は一切かかりません。必要な事務手続きと考えてください。
代行サービスを提供している企業はありますが、最終的には自分で届け出を出さなければならないものです。申請の代行業者だけでなく、ICPの名義貸しをしている会社もありました。
しかし、2017年にサイバーセキュリティ法が施行され、Webサイトが何か悪いことをすると、そこのWebサイトの管理人が罰則を科されます。となるとWebサイトが何か悪いときに、名義貸しをした代行サービス企業が罰を受ける可能性がでてきます。名義貸しがリスキーなビジネスとなってしまったため、現在ではそのような業者は減りつつあります。
――ICP登録は自分自身でしっかりとポイントを押さえて登録業務を行うことが大切なのですね。
吉村:そうですね、次に重要なドメインを申請するレジストラ(登録事業者)について解説しますね。
基本的に中国国内のレジストラで取ったドメインであればICP登録できますが、国外で取ったドメインはICP登録できません。日本のレジストラで取得したドメインを中国で利用する場合は中国国内のレジストラにドメインを移管する必要があります。
――中国でオンラインビジネスをするには必要な知識や手続きがいろいろあるのですね……もっと簡単にやる方法とかないのでしょうか?
吉村:実はICP登録や商用ICPライセンスが無くても中国向けのWebサイトを開設する方法があるのです。その方法は……、次回ご説明します!
――今回はICPライセンスの申請方法ついて解説しました。次回はICP登録不要で中国向けWebサイトを開設する方法を紹介します。
ICPライセンスの基礎知識の解説はこちら
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