鄭州大洪水で企業の支援活動/未成年へのゲーム規制(山谷剛史の中国ITニュースまとめ 2021年7-8月)

2021年10月18日掲載

中国アジアITライター・山谷剛史さんが、中国国内で話題になったITニュースをピックアップする連載企画です。今回は、2021年7月~8月の中国主要インターネットニュースについてまとめました。

目次

鄭州大洪水、大停電でネットインフラが遮断、支援企業の商品が爆売れ

中国中部の河南省鄭州で地域がまるごと大きく浸水する記録的な大雨が降り、無数の人的被害や車や建物の損傷などが発生し、数日間にわたって停電となった。停電となった結果、パソコンが起動せずスマートフォンが充電できないどころか基地局に問題が発生し、一部の2Gを除いてインターネットが利用できなくなった。健康コードやキャッシュレスやデリバリーなど、インターネットとスマートフォンに依存したサービスが一切利用できなくなってしまった。

またキャッシュレス化が進むなかで、現金を持ちあわせていなかった市民も多かった。人々は機転を利かせ、食料品などの購入時に電話番号をノートに書き、電気と電波が入った後にキャッシュレスで送金対応することで難を逃れた。

中国の各企業は河南省の大水害に義援金を送り、支援の立場を表明。スポーツウェアのERKEは5,000万元を支援することを表明した後、それを知ったネットユーザーが同社製品を購入する流れに。その結果、1日で前年同日比で52倍となる1,000万元弱と記録的な売上となり、同社のライブコマースの販売店担当者は嬉しい悲鳴とともに疲労困憊に。この姿もまたネットユーザーの心を捉えた。

未成年へのゲーム規制で未成年に激震

未成年のオンラインゲームが制限された。国家新聞出版署が発表した通知で、「あらゆるオンラインゲームについて、未成年のユーザーには金土日と祝日の20~21時までしか提供しないとする」というもの。発表するや、大手のテンセントやネットイースはそれに従う旨を発表した。ただし、Weibo(微博)などではネットユーザーによる反論する声もみられた。早速多くのゲームで適応されたものの、最初の金曜日は夜8時に待ち焦がれた未成年ユーザーが殺到し、利用できなくなる事態に。

 

ところで通知に先立って中国の国営新聞である経済参考報は、8月3日に「オンラインゲームは精神アヘン」という記事を発表している。その翌日には、テンセントの人気ゲーム「王者栄耀」が22時から8時まで利用禁止、12歳未満は有料課金不可、12歳以上の未成年についても有料課金に制限が設けられた。

7月20日に発表された「2020年全国未成年インターネット利用状況研究報告」によれば、中国の未成年のインターネット普及率は94.9%で1億8300万人が利用しているという。

教育規制でオンライン教育企業が突如逆境に

教育機構への締め付けの予兆は2018年から(出典:前瞻産業研究院) 教育機構への締め付けの予兆は2018年から(出典:前瞻産業研究院)

未成年向けの教育を変える通称「双減」と呼ばれる政策「関于進一歩減軽義務教育階段学生作業負担和校外培訓負担的意見」が7月23日に発表された。この「意見」により、校外学習ができなくなる事態に。街中から学習塾の看板が消え、盛り上がっていたK12と呼ばれる学生向けの教育サービスを提供する企業が苦境にたたされた。

たとえばマンツーマンでの英語レッスンを提供する51Talkは、中国の青少年向けに英語教育サービスを提供できなくなり、成人向けの英語を、中国国外向けのサービスを提供した。同じくマンツーマンの英語サービスを提供するacadsocは大幅にスタッフを削減、もともと3000人いたスタッフの9割を解雇した。

学生向けの勉強サポートを行うK12企業の「猿補導」「作業幇」「好未来」などは、地方の拠点を閉鎖。たとえば作業幇は14拠点のうち、3拠点を閉鎖、4拠点の小学校部門を閉鎖するなど、影響が出ている。また27年未成年向けにサービスを提供していた巨人教育は倒産、大手にも影響が出たとし、たとえばバイトダンスの教育部門は解散したと報じられた。

行きすぎた芸能人ファンコミュ「飯圏」を規制

「飯圏」と呼ばれる芸能人ファンコミュニティにて、「ライバル同士の叩きあいが度が過ぎている」と、権威ある中国中央テレビ(CCTV)が批判され、ネガティブな面で注目を浴びた。これにあわせてWeibo(微博)の一部アカウントや、WeChat(微信)のファン用のミニプログラムの一部を停止する処理を行った。

国際的大会の開催で愛国高まる

選手関連グッズが突然出てきては売れた(出典:新華社) 選手関連グッズが突然出てきては売れた(出典:新華社)

無事に閉幕した、今夏の国際的大会。その影響は中国にも及んだ。具体的には、Weibo(微博)やWeChat(微信)やショートムービーの各プラットフォームで、連日活躍する中国の選手に注目が集まり、さらには中国で注目を浴びた選手関係者がつけていたグッズを大量の人が買うという動きが起こった。一方で、母国推しを越えて日本に対して攻撃的な書き込みが目立った。

また中国の金メダルラッシュの背景には、AIをはじめとした様々なテクノロジーが使われていることが報道された。今中国では、各種競技の運動選手をITで効率よく強化している。

動画サイトのアクティブユーザー数でビリビリがYOUKU超え。第3の動画サイトに

若者に人気の動画サイト「Bilibili(ビリビリ)」のMAUは2億3,700万、DAUが6,500万を突破し、利用者でYOUKU(優酷)と順位が入れ替わり、テンセントビデオ(騰訊視頻)、iQiyi(愛奇藝)に続いて第三の動画サイトの地位に。2021年第2四半期の決算によれば、広告収入が前年同期比で倍増し、初めて10億元を突破するなど上り調子だ。動画サイトの課金ユーザー数は利用者全体の8.8%に相当する2,100万人と伸びている。

とはいえビリビリは2019年5月に、未成年の動画視聴を1日最長40分に制限する青少年モードをアプリに搭載している。今のところ実名登録しなくても利用できるが、実名登録が必須となり未成年への規制が強化されればビリビリは逆境に立つので楽観視できない。

同社は世界初となるDolby Vision対応のオンライン動画プラットフォームを開発。映像画質でも訴えていく。

ゲーム実況2大サービス合併が独占禁止法で取りやめ、ネット企業では初

合併できなかった虎牙と斗魚(出典:新聞聯播) 合併できなかった虎牙と斗魚(出典:新聞聯播)

ゲーム実況プラットフォーム最大手の斗魚と虎牙の合併予定が、市場監管総局により強制的に中止となった。7月上旬に報じられた。この合併は両者の大株主であるテンセントがもちかけたもので2020年10月頃に話題になっていた。これまでインターネット業界最大手の合併は、動画サイトのYOUKU(優酷)と土豆や、配車サービスの滴滴と快的の合併などがあったが、今回は独占禁止法が整備されているという背景の中、インターネット企業の合併で初めての合併禁止に。

中国のゲーム実況は、ライブストリーミングで最も人気のジャンルの一つ。

100万以上のユーザーを抱える企業の国外株式市場の上場にはチェックを

Didi(滴滴)のニューヨーク市場上場を受けて、中国の地理情報やユーザー情報が盗まれるのではないかと危惧した中国政府のインターネット部署である「国家互聯網信息弁公室」は、100万ユーザー以上を抱える企業の海外市場上場では必ず事前のセキュリティ審査が必要とするという通知「網絡安全審査方法」のドラフト版を発表した。近々施行されることになる。

アリババやテンセントなどネット大手、他社サービスを導入へ

アリババ(阿里巴巴)とテンセント(騰訊)が、それぞれ自社のサービスで、相手企業のサービスを利用できる動きが進んだ。たとえばアリババは天猫(Tmall)やタオバオ(淘宝)などのECサイトでWeChatpay(微信支付)が利用できるようになり、逆にテンセントは、WeChatで天猫(Tmall)やタオバオ(淘宝)などのECサイトの情報がシェアできるようになり、またWeChatのミニプログラムでアリババのサービスが利用できるようになるとのこと。

シャオミ(小米)が世界2位に。3年以内に世界一を宣言

小米オフィシャル微博アカウントより 小米オフィシャル微博アカウントより

8月上旬開催の2021年の秋の新製品発表会で、CEOの雷軍氏は小米が世界シェア2位(17%)になり、3年以内に世界一になると発表した。

引用した調査会社のCanalysによれば、2021年第2四半期において、小米は前年同期比83%増と大幅に増えたとし、地域別ではラテンアメリカで300%増、アフリカで150%増、ヨーロッパで50%増となった。メーカー別ではサムスン(19%)に続いて市場シェア17%で2位となり、3位のアップル(14%)を越えた。4位はOPPO、5位はVivoでどちらも10%。

中国のスマートフォン出荷台数が最低に

調査会社のCounterpointによれば、同四半期の中国におけるスマートフォンの出荷台数は前年同期比6%減の7,500万台に。これは調査開始以来スマートフォンとしては最低の数字に。

おすすめの記事

条件に該当するページがございません