BCP対策の事例とは? 事例をもとに企業が取り組むべきことについて解説

2023年6月29日更新

BCP対策の事例とは? 事例をもとに企業が取り組むべきことについて解説

BCPとは「事業継続計画」のことで、自然災害やテロ、火災、感染症の流行といった非常時でも、被害を最小限に抑え、中核事業の早期復旧・継続が見込めるような対策や方法をまとめた計画のことです。自社でBCP対策を考える際、基準となる他社の事例を見つけづらいことから、何に備えてどのようなことを優先してBCP対策を固めるべきなのか分からない、という会社経営者・総務担当者の方も多いと思います。BCP対策を策定する際は、他社とは対策方針が異なることを認識しつつ、他社の取り組み事例から参考となる点を吸収しながら、自社のBCP対策の完成度を高めていくことが大切です。今回の記事では、BCP対策の事例や自社でBCP対策に取り組む方法、BCP対策に最適なサービスをご紹介します。

目次

BCP対策を考えるポイント

BCP対策を考えるポイントは、「BCP対策の目的理解」「復旧の優先順位の明確化」「具体的な状況を想定した対策の検討」「最優先で守るべきは人命」の4つです。

BCP対策の目的理解
BCP対策の目的は「中核事業の継続と早期復旧」であり、自社にとって優先順位の高い中核事業を守ることで、倒産や事業縮小を回避でき、BCP対策を講じている企業として他社からの信頼を得ることができます。

復旧の優先順位の明確化
BCP対策で大切なのは、事業の継続と早期復旧を可能にすることですので、目的達成に向けて最も効果的な優先順位を付けることが重要です。優先順位がないと、結果として事業の復旧が円滑に進まなくなる可能性が考えられます。復旧の優先順位を明確に付けることで、どの従業員が対応することになっても迷いなく行動できる行動指針を設けることが大事です。

具体的な状況を想定した対策の検討
自然災害や新型コロナウイルス感染症の流行など、さまざまな非常時のケースが考えられますが、想定する非常時の内容によって、自社が被害を受ける箇所は異なります。そのため、多くの企業では、具体的な状況を想定してBCP対策の内容を検討しています。地震の多い地域か、河川決壊の可能性があるか、台風で電力供給が停止しやすい地域なのかなど、自社を取り巻くリスクをなるべく具体的に想定し、各々の問題・課題を解消できるBCP対策を検討していきましょう。

最優先で守るべきは人命
BCP対策の具体化を進める中で忘れがちなのは、最優先で守るべきは人命だということです。人命がなければ自社の早期復旧や事業継続は困難であり、いくらBCP対策のマニュアルを作成しても、その内容を遂行できる人材がいなければ意味がありません。人命を守ることが最優先であることを念頭に置き、BCP対策の事例から自社で考えられるBCP対策を推進しましょう。

国土交通省が公表しているBCP対策の事例

他社が実際に行っているBCP対策として、国土交通省が公表している事例を紹介します。国土交通省は、省独自のBCP対策を公表しています。中核事業を継続するために必要となる対策事例が記載されていますので、民間企業がBCP対策を検討する際にも参考になります。公表資料の中で具体的な取り組み内容が整理されている「想定被害と業務継続への影響」「計画の策定」について紹介します。

想定被害と業務継続への影響

BCP対策の検討では、実際に起こり得る災害を想定して、業務継続への影響を見通すことが大切です。国土交通省の資料では、首都直下地震(東京湾北部地震M7.3)を想定し、4つの被害想定を列挙しています。

1,鉄道被害

「鉄道は3日間断絶し、以降30日で徐々に回復」すると設定しています。これに対応する業務継続への影響には以下の2通りを考えています。
・勤務時間内発災:帰宅できるまで全職員や来訪者に対する食料備蓄が必要。
・勤務時間外発災:発災直後の出社は徒歩のみ

2,建物被害
「庁舎周辺では震度6強の地震動」が生じると想定しています。国土交通省は霞が関の中央省庁のため、有事に備えて耐震化しており、大きな影響はないようです。

3,通信障害
「一般電話は輻輳(ふくそう)時の通信規制により1週間以上はつながりにくい、携帯メールは遅延があるが使用可」と想定しています。これを踏まえ、通信は災害時優先電話を活用し、専用の情報通信ネットワークと携帯メールのみ使用できると見通しています。

4,ライフラインの停止
「電気2日、水道3日の停止」と想定しています。復旧作業が完了するまでは、電気は非常用電源でまかない、水道は貯水タンクなどの利用で対応します。

 

計画の策定

災害・被害を想定したら、次は業務が停止した場合の影響レベルを見通し、継続すべき優先業務を抽出します。

(1)継続すべき優先業務の抽出

まず、国民生活・社会経済活動に与えると想定される影響レベルを5段階で設定します。さらに、発災からの経過時間ごとに、どの程度のレベルの影響が想定されるかを評価することで、継続すべき優先業務を抽出します。
国土交通省では、1ヵ月以内にレベル3(影響度は中度、国民生活の不便等の社会的影響が発生)以上の影響が生じる業務を継続すべき業務としました。

評価レベル 社会的影響状況
レベル1軽微その時点で復旧していなくても目立った支障や不便はない
レベル2小さい復旧準備を始める必要が生じる
レベル3中度国民生活上の不便、法定手続の遅延、契約履行の遅延など真剣に復旧対応を行うべき
レベル4大きい法令違反、重要な法定手続の遅延等、相当の社会的影響が起こることが予想される
レベル5極めて大きい人命に関わること、深刻な安全・治安の問題、大多数の被災者困窮等甚大な社会的影響が発生する

 

(2)参集可能な人員数の把握

次に、被災時に中核事業を継続するに当たり、仮に勤務時間外に発災し、徒歩による出社を想定して、出社可能な人数を把握します。

国土交通省の場合、職員の居住地データをもとに出社可能な人数を課室単位で算出します。出社可能な人数の考え方としては、発災後3日間で本省から20km圏内の居住者が徒歩で出社できると想定しています。もし、課室単位で職員確保が困難なときは局単位で調整します。各部局各課室であらかじめ参集要員を指定し、勤務時間内外での具体的な活動内容も決めておきます。
例えば、勤務時間外の場合は、出社時に可能な限り食料・飲料水を持参し、安全に留意するといった具合です。また、被災時でもつながりやすい携帯メールを活用した安否確認も日頃から練習して、業務継続のための執務体制作りに努めています。

▶関連記事 安否確認については、こちらでもご紹介しています。

自社のBCP対策の推進

BCP対策の目的を理解し、自社の中核事業を見定め、想定し得るリスクに対する具体的な対策を検討する段階で、他社のBCP対策事例を参考にすることは大変有効です。企業が考えるBCP対策はさまざまですが、内閣府の「事業継続ガイドライン」には、一般的に民間企業が取り組むべき対策案が列挙されています。

・対応拠点の決定、代替拠点などでの執務環境の整備・備蓄物の準備

・通信、電源、水をはじめライフラインの代替対策(自家発電、回線多重化など)

・建物・設備などの防御対策(耐震補強、防火対策、洪水対策、テロ対策など)

・情報システムのバックアップ対象データ、手順、復帰方法の決定

・重要な情報・文書(バイタルレコード)のバックアップ実施

・調達先(原材料、部品、運輸その他のサービス)や販売先の複数化

・提携先選定と協定などの締結(OEM、支援協定の締結など)

・在庫の増強や分散化

・代替人材の確保・トレーニング

・資金確保対策

非常時に強い情報共有ツールの活用がBCP対策の鍵になる

BCP対策の策定では、最優先で早期復旧・継続したい中核事業を定め、自社を取り巻くリスクを具体的に想定し、リスクを低減するために効果的な手段・ツールを選定していくことが大切です。自社のBCP対策の目的を明確にしたうえで、官公庁や他社のBCP対策事例を参考に対策を推進していきましょう。
企業によってさまざまなBCP対策がありますが、共通するのは、情報・通信面の対策です。非常時でも従業員と円滑に連絡を取り合える体制作りは、人命の安全確保と事業の早期復旧の両観点で不可欠でしょう。

ソフトバンクでは、非常時に用意しておきたい通信手段として、下記のサービスをご提案しています。

スカイトランシーバー プラス

スカイトランシーバー プラス」は、手持ちのスマートフォンにインストールするだけで簡単に使えるトランシーバーアプリです。免許や登録が不要で従来のトランシーバー・無線機・インカムと同等以上の使い方ができ、従業員どうしの円滑な情報共有を実現できます。各携帯キャリアの通信網を利用するので、距離や区画を気にすることなく利用が可能です。非常時にもスムーズに連絡を取り合えるので、BCP対策にも大きな効果を発揮するサービスです。
サービスの詳細はこちら

衛星電話 Thuraya(スラーヤ)

衛星電話Thuraya(スラーヤ)」はネットワーク設備が被災している地域、あるいは非常時にアクセスが集中してつながりにくい地域においても影響を受けずに荷電ができるので、各拠点からの情報を確実に集約できます。大規模災害によって携帯電話の基地局が被災し、携帯電話やスマートフォンなどのモバイルネットワークが使えなくなった場合の対策になります。
サービスの詳細はこちら

WowTalk(ワウトーク)

安否確認機能と社内コミュニケーションツールがセットになった「WowTalk(ワウトーク)」は、通話やチャット、掲示板など複数の連絡手段を利用できる社内コミュニケーション機能に加え、非常時に利用する安否確認機能も一つのサービスで利用できます。社内連絡として日常的に利用できるため、緊急時にも使い方に困ることなく確実に安否確認を実施できます。また、インターネットにつながっていればスマートフォンやPCを利用してどこからでも情報共有、安否確認が可能です。
サービスの詳細はこちら

 

非常時は、携帯電話や固定電話からの連絡がつながりづらくなるので、普段利用している方法以外にも、社内で連絡を取り合える手段を複数用意しておくことが大切です。自社でBCP対策を策定する際には、これらのサービスの利用も視野に入れて検討しましょう。

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