衛星電話とは? メリットや活用方法を詳しくご紹介

2023年9月20日掲載

衛星電話とは?メリットや活用方法を詳しくご紹介

日常生活に欠かせないスマートフォンや携帯電話は、電話回線や基地局など地上の通信インフラが何かしらのダメージを受けてしまった場合、通話や通信ができなくなる可能性があります。一方、衛星電話は地上にある基地局やネットワークに依存せず、宇宙にある人工衛星によって通信を行うことで通話や通信が可能です。近年頻発している自然災害の発生時にも使える衛星電話は、緊急時の連絡手段として最適なツールです。今回はこの衛星電話についてご紹介します。

▶関連サービス:ソフトバンクの衛星電話サービス
災害時に強い!いつでもつながる安心 衛星電話 Thuraya(スラーヤ)

目次

衛星電話とは

「通信用の人工衛星を経由して音声通話やデータ通信を行う携帯電話機またはその通信サービス」のことをいいます。一般の固定電話や携帯電話のように、地上の電話基地局を経由せずに宇宙空間の通信衛星と電波を送受信して通信を行うため、山岳地帯や海洋、砂漠などの携帯電話の電波が届かない場所やサービスエリア外でも使用できます。また、緊急時や災害時において、地上の通信網がダウンしている場合でも通信が可能なため、被災地などでの救援活動や情報共有に役立ちます。昨今多発している自然災害などの緊急時における企業の事業継続・早期復旧のためには「通信手段の確保」が非常に重要となります。どの通信会社でも、大災害時には基地局などの通信設備に物理的被害が及ぶ可能性がありますが、衛星電話は地上設備を直接使わず、地上から遠く離れた衛星が電波を中継するため、災害などの影響を受けにくく緊急時の非常用連絡手段として広く利用されています。

また、衛星電話は自動車や船舶、航空機で利用されることも多く、これらの場合それぞれ専用の車載用アンテナや船舶アンテナ、航空機用アンテナが使用されます。

衛星電話の使用時は、アンテナと通信衛星の見通しを確保する必要があるため、電話機と通信衛星との間に建物などの障害物がある場合やビルの中などの閉ざされた空間では通話できません。
※屋内で利用する場合には、別途専用の屋内アンテナを設置することで通話が可能となります。

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衛星電話の仕組み

衛星電話は、衛星と直接通信を行うため、通常の携帯電話などで利用する基地局を利用しません。代わりに地上局が衛星通信を管理し、衛星との通信中継を行います。衛星電話で通話発信をすると、携帯端末から宇宙にある通信用人工衛星に無線電波が発信され、これを受け取った人工衛星と地上局が通信を行います。
また、地上局を介さずに直接携帯端末と人工衛星が通信を行う衛星電話システムもあります。この場合は、衛星電話が人工衛星と通信を行い、地上局は通信衛星のコントロールや課金情報などの管理のみを行います。また、複数の衛星同士が通信をしてメッシュネットワークをつくる衛星間通信を利用するものもあります。例えばイリジウムは、複数の低軌道衛星から構成されており、衛星同士の通信も含めて、個々の衛星が直接地上に通信を中継することによって通信が実現されます。

固定電話・携帯電話の仕組み
衛星電話の仕組み

「地上局」と「基地局」の違い

・地上局とは?
地上局(Ground Station)は、地上で衛星からの電波を受け取り、解析して今の衛星の状態を把握したり、地上から衛星に向けて電波を発信するなど、衛星通信システムの運営を行う地上施設のことです。大気圏内に設置されたパラボラアンテナやデータ送受信装置等を合わせた地上システム全体のことを指し、衛星通信会社や通信事業者が運営しています。また、地上局は通信する人工衛星に合わせてそれぞれ特徴を持っており、周波数帯、アンテナの大きさや設置場所、役割・運用方法はさまざまです。

・基地局とは?
基地局(Base Station)は、通常の携帯電話や移動体通信システムにおいて利用される施設です。基地局は携帯電話ネットワークに接続されており、携帯電話やスマートフォンなどのモバイル端末と直接電波のやりとりをして通信を行います。携帯電話端末と電話網の間の通信を中継するので、通話エリアは携帯電話端末と基地局が電波でやりとりできる範囲になり、範囲外では圏外となり通話できません。

※地球局とは 
衛星を「宇宙局」と呼び、その対語として地球局と呼ぶ。単に陸上、海上や大気圏内の上空にある無線局ではなく、広義にはその内の宇宙無線通信の業務に携わる無線局全般をいう。

人工衛星の種類

・静止衛星
赤道上空の高度約36,000キロメートルの円軌道を速度約3キロメートル/秒で周回している人工衛星。地上から見ると衛星がいつも同じ位置に止まって見える。1つの衛星が地球の1/3をカバーし、衛星3~4機で北極や南極を除く地球全体をほぼカバーしている。

・周回衛星
静止軌道以外の軌道を周回するもので、一般に静止軌道よりも近い距離を周回している。 大きく長楕円、中高度、低高度の3つの軌道で地球全体をカバーしており実用化が進んでいる低高度軌道では音声などの円滑な通信が可能。しかし、1つの衛星のカバー範囲が狭く、上空を通過する衛星を次々に切り替えることが必要。静止衛星とは異なり、地上から見ると常に上空を移動しているように見える。
現在日本で利用することができる衛星電話サービスは主に4種類(インマルサット/ワイドスター/スラーヤ/イリジウム)あります。通信衛星を利用した音声通話およびデータ通信を提供するという点は共通していますが、人工衛星の特性や対応端末の違いにより、利用エリアや機能がそれぞれ異なるので目的によって選ぶ必要があります。

 人工衛星の種類
 静止衛星周回衛星
 

地球の自転速度と同じ速度で地球を回っているため、地上から見ると常に同じ位置に静止しているように見える。

静止衛星よりも地球に近い軌道を周回する人工衛星。
静止衛星に比べて伝送遅延が小さく、衛星までの距離が近いため、端末も出力を小さくすることができ、小型化や携帯化が可能。主に移動通信に用いられている。
衛星高度地上36,000km約500~数千km
サービスインマルサット/ワイドスター/スラーヤイリジウム
通話安定
一度電波をキャッチすれば安定
不安定
街中・山間部で通話中断発生
特徴・衛星との見通しが確保できる場所であれば、通信は常に安定する。
・アンテナを衛星方向へ向ける必要がある。
・高い建物に遮断されやすい。
・衛星が動くことで途切れやすい。
・空がかなり開けた郊外に最適。

静止衛星

静止衛星

周回衛星

周回衛星

関連サービス


衛星ネットワークを活用したもうひとつのデータ通信手段
法人のお客さま向け衛星ブロードバンドインターネットサービス「Starlink Business
※リンク先より具体的な特徴や利点をご紹介した資料をダウンロードできます。

衛星電話の特徴 - メリット・デメリット -

メリット

1.地球上のどこからでも通話可能
軌道上の人工衛星からは、世界中の広い地域をカバーエリアとして電波を送ることができます。ほぼ全世界全てをカバーしているため、衛星電話は通信インフラがあまり発達していない国や地域で重要な通信手段として活用されています。

2.通信エリアを柔軟に変更可能
地上に設置する持ち運びができる地球局設備や車載型地球局を移動することによって、通信拠点の追加や撤去、移動が容易にできます。通信困難な場所からでも短時間で回線を設定できたり、一般の固定電話や携帯電話との通信やインターネット接続も可能です。小型で可搬性が高く内蔵バッテリーで使用可能というメリットもあります。柔軟な動きがとれることで大災害時にとても有用です。

3.災害時に影響を受けにくい
衛星そのものが宇宙空間にあり地上の影響を受けないこと、衛星を管制する地上局は複数あり、相互にバックアップ体制にあること、そして地上の通信インフラを利用しないので災害時に地上の通信設備が破壊されている場合でも通信しやすいなどが災害に強い理由です。

デメリット

1.屋内では電波がつながりにくい
衛星電話と人工衛星の間に遮るものがあると、電波を発信できないため通話はできません。衛星電話の電波は直進性電波といい、端末から人工衛星まで電波が一直線に飛ぶようになっています。そのため、端末と人工衛星の間にビルや山などがあると電波が遮られてしまい発信できず、通話するにはいったん屋外へ出る必要があります。また、屋内でも窓越しに通信ができる場合はありますが、天候によっては通話が難しくなることがあるので注意が必要です。なお、屋内で利用する場合には、別途専用の屋内アンテナを設置することで通話が可能となります。

2.都市部はつながりにくい
都市部は高層ビルが多いところが多いため、電波を遮られてしまうためつながりにくくなります。

3.料金が高い
衛星電話は、技術面において人工衛星打ち上げのコストが高いことや、一度打ち上げた人工衛星は修理ができないため高度な設計と複数の冗長構成を持つことで料金が高いというデメリットがあります。また、災害が起きたときや訓練時にしか使わないので使用頻度がとても少ない割に料金が高額です。平時用ではなく緊急時の備えとしての対策費用として捉えるのがいいかもしれません。

衛星電話の活用方法

衛星電話は、地球上のほぼどこでも通信が可能、そして災害の被害を受けにくいという2つの特長から、災害時・緊急時の通信手段として多く活用されています。

大規模災害発生時には、停電・断線・輻輳などで有線ネットワークや携帯電話の基地局に障害が発生し、固定電話や携帯電話が繋がりにくくなります。社員の安否確認、被害状況の把握、事業継続・復旧活動への対応には、いずれも通信手段の確保が重要となります。地上の通信インフラの被害状況に左右されない衛星電話は、非常事態における有効な通信手段の1つとなります。
例えば、社員への重要な指示命令系統の伝達をスムーズに行うことを目的として経営層に衛星携帯電話を配備したり、または被災地と遠隔地(非被災地)との確実・迅速な情報交換を目的として衛星電話が活用されているなど衛星電話をBCP対策に活用している企業が多くなっています。

▶関連記事:BCP対策とは?非常時に実行できる計画の策定方法もご紹介

衛星電話は有事の際には非常に有効な通信手段です。場所や天候などに影響を受けることを理解しつつ、災害時に強い衛星電話を自社に配備し、緊急時への対策をしてみてはいかがでしょうか。

関連サービス

ソフトバンクの衛星電話サービス

衛星電話 Thuraya(スラーヤ)は、地上から約 36,000km上空にある人工衛星を使って通信を行う「衛星電話」です。地上のインフラに依存せず、いつでもどこでも繋がるのが衛星電話の最大の強みです。

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