ソフトバンクの最先端技術を紹介~SoftBank World 2023 展示ブースレポート~

2023年10月19日掲載

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ソフトバンク最大規模の法人向けイベント「SoftBank World 2023」が10月3日から6日(臨場は4日、5日)に開催されました。今年は4年ぶりに臨場での開催が復活し、オンラインとのハイブリッド形式で賑わいを見せました。

このブログでは、ソフトバンクの先端技術研究所による展示ブース「ギジュツノチカラ in SoftBank World 2023」の様子をご紹介します。

目次

自動運転の社会実装に向けた取り組み

ソフトバンクでは、自動運転技術の社会実装に向けた研究・開発の一環として「自動運転運用プラットフォーム」を構築しています。

現場レポート

自動運転の実装には、遠隔監視による人件費等の運用コストの高さが課題となっています。自動運転にはレベル0~5という指標があり、高くなるほど自動化のレベルが上がります。しかし、レベルが高いからといってドライバーレスで走行できるわけではなく、人間による遠隔監視が必要です。

将来、自動運転車が普及した際には、1人が一台ずつ監視することは現実的に不可能となり、少人数でいかに多くの自動運転車を遠隔で監視し、車内外で発生する問題に対応できるようにするかが実装に向けた鍵になるとのこと。会場では、そんな課題を解決する「遠隔監視システム」のデモが行われていました。

デモ画面では、ドライバーの視点で監視システムが稼働していることが分かりました。遠隔監視する側での操作としては、ブレーキなどの遠隔操作はせず(危険を察知した際に停止するのはあくまで走行している車側のセンサーによる)車内外で発生する問題を認識し、それに対する次のアクションを判断する役割を果たすそうです。

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また、こうした遠隔監視の業務を自動化するAIの研究開発も進んでいるようです。これは車内外で発生する問題を即座に認識・判断し、監視者の判断に必要な情報を生成してサポートする技術です。常に人が見て判断するのでは、見落としてしまうリスクが考えられますが、多くのカメラやさまざまなセンサーを利用することで、より安全な監視システムの実現につながる技術であると感じました。

今後の展望として、常に変化する交通状況にも対応していくために、生成AIを用いたAIの研究開発に取り組んでおり、そのAIを自動運転運用プラットフォームに実装していきたいと語りました。ソフトバンク本社のある竹芝エリアでは、自動運転の走行経路の設計や遠隔監視の運行業務などをAIで完全無人化する実証実験を開始しています。

自動運転社会における遠隔監視の未来について、詳しくはこちらからご覧ください。

6G時代の新たな周波数~テラヘルツの研究~

ソフトバンクは6Gの時代における新しい周波数として、「テラヘルツ」波を使った通信の研究開発にも取り組んでいます。

現場レポート

通信需要が高まる中、6Gではより高速な通信環境を実現するために、5Gで利用されているミリ波数よりさらに高い、100GHz以上の「テラヘルツ」と呼ばれる周波数帯が利用されるとのこと。

周波数が高く幅広い帯域を用いることができるので、高速で大容量の通信が可能であるという「テラヘルツ」ですが、周波数帯が高くなると空気中で減衰しやすいという課題があることから、ビル上の基地局から地上のスマートフォンに電波が届かなくなったり、雨などの悪天候の影響を強く受けてしまうそうです。そのため「テラヘルツ」を効率よく使うための技術や実際のサービスを想定した研究や実験が行われています。

デモ体験では、テラヘルツの電波は直進するパワーが強いため、手でさえぎると「圏外」と表示され遮断されてしまうことが分かりました。

softbank,ソフトバンク,6G,6G,テラヘルツ,研究 テラヘルツを受信している様子。右の画像では手でさえぎると圏外となるのが分かる。

これほどまでに直進性の強いテラヘルツですが、回り込んで電波を発する研究にも取り組んでいるそうです。担当者は、「スマートフォン向けの小型のアンテナを開発したり、基地局に複数のアンテナを配置し、飛ばす方向を絞るかわりに遠くまで飛ばす技術の研究も続けている」と話してくれました。

6Gの持つ高速で大容量の通信ポテンシャルに期待が高まります。

HAPSについて

「HAPS(High Altitude Platform Station)」とは、大型の無人航空機(ドローン)に携帯電話の基地局を搭載したもので、高度約20kmの成層圏をソーラーエネルギーで長期飛行する、空飛ぶ通信基地局です。

こちらのブースでは、実際のHAPS機体の縮小版模型が展示されていました。すでに検証実験中のHAPSの模型というだけあって、多くの人が興味深そうに足を止めて眺めていました。

softbank,ソフトバンク,HAPS,ハップス 実際のHAPSは横幅約78mにもなるため、縮小模型が展示されていました。

現場レポート

なぜ成層圏で飛ばすのかと担当者に聞いたところ、「成層圏は1年を通して気候が安定しており、ジェット気流などの強風が吹かず、また、雲の上なので台風の影響などもなく比較的安定した運行を継続できる空域。地上から近い高度20kmという距離はメリットが多く、衛星電話のような専用電話機やレシーバーがなくても通常のスマートフォンなどで電波を受け取れる」と説明してくれました。「しかし、現時点で成層圏は、商用活動を行なうプレイヤーは殆ど存在せず未開拓のマーケット。マーケットがないということは同時に開発のハードルが高いということであり、あらゆるルール作りもしなければならない」とも語っていました。そのため、現在いくつもの企業とのアライアンスを通じて世界的に共通する航空上のルール、ネットワーク周波数のルール作りといった土台作りを行っているそうです。機体はさらなる研究開発を続け、半年間またはそれ以上長く飛び続けられる機体を作ることを目指していくそうです。

また、2020年に成功した成層圏からのLTE通信試験で培ったノウハウを生かして、HAPS無線基地局の機能を向上するべくさらなる技術開発を進めているそうです。HAPS無線基地局は、将来的には大規模な成層圏通信を実現するために必要不可欠な通信技術であるとみており、車両、船舶、ドローンなど、地上や海上でのあらゆるプラットフォームでの活用を視野に入れていると展望を語ってくれました。

HAPSを支える電池の変化

HAPSに搭載するための電池開発も行っており、こちらのブースでは、これまでの電池開発がどのように変化してきたかが展示されていました。

現場レポート

電池開発を始めたのはHAPSに搭載するためであり、とにかく軽い電池を作ることを目指しているそうです。今のリチウムイオン電池は重量あたりのエネルギー密度(Wh/kg)がほぼ限界に達しているため、それに代わる軽量な電池としてリチウム金属電池を開発しているとのこと。しかしリチウム金属電池は充電中にデンドライト(棘状に析出したリチウム)が出てきて電池がショートしてしまうという課題があるのだそうです。これを抑えるために、様々な試行錯誤を繰り返した結果、電池外部から拘束圧力を加える必要があるということが分かり、最適な拘束圧を実現するためのパック機構の開発に取り組んでいるそうです。

例えば、圧力を加えるために、一般的に使われているバネを試してみると、その器具分が重くなってしまいます。圧力を高めながら軽くしたい→バネで圧力をかける→重くなる→軽くすると圧力が低下する、という連鎖に悩みながら試行錯誤を繰り返し、バネ以外のさまざまな圧力のかけ方を工夫したという電池模型が展示されていました。

実際に成層圏で動作確認をした電池パックの模型を持ってみたところ、驚くほど軽く、工夫を重ねた結果を実感することができました。軽量化に関してだけでなく、成層圏のマイナス90℃という過酷な状況下においても動作できるように、断熱材で覆って温度を一定に保つという工夫もしているそうです。

今後はさらなる軽量化を目指して、集電体の大部分を樹脂に置き換えた次世代樹脂箔をはじめとした材料の開発も多数進めているそうで、これらの開発が進めば今と比較にならないほどの軽量化が実現できると担当者は言います。

softbank,ソフトバンク,HAPS,ハップス,電池 実際に成層圏で動作確認した電池パックの模型。一番右がクッションで軽くしたもの。中央がバネを使って圧力をかけたもの。
softbank,ソフトバンク,HAPS,ハップス,電池 クッションを使って圧力をかける方はとても軽量。
softbank,ソフトバンク,HAPS,ハップス,電池 さらなる軽量化を目指して研究中の次世代樹脂箔。

AI-RANとは。AI×次世代モバイルネットワーク

AI-RANとは、AIとRAN(無線基地局)を共存させ、AIによりRAN性能を最大限に引き出すのと同時に、 さまざまなAIアプリケーション用の超低遅延・高セキュリティな計算機基盤も同時に提供可能とする技術です。

現場レポート

ソフトバンクのAI-RAN構想は、地域ごとのデータセンターに大規模なサーバ群を構築し、その潤沢な計算機リソース上でvRAN(virtual Radio Access Network=仮想無線アクセスネットワーク)とMEC(マルチアクセス エッジ コンピューティングの略)やAIアプリケーションを同時に動作させ、連携させることを可能とするものです。

AI活用により、これまで難しかった緻密で動的な基地局の制御が可能になり、通信速度や通信品質の向上などが可能になるそうです。また、vRAN用のリソースやAIアプリケーション用のリソースをトラフィックなどに応じて柔軟に使い分け、リソースの有効活用を実現し、さらに地域毎に分散された計算機リソース上で様々なAIアプリケーションを動作させることで、地域に特化した超低遅延・高セキュリティなサービス提供も可能となるそうです。

ソフトバンクは、AI-RANの実現に向けてNVIDIAとの協業を発表しました。NVIDIAが開発した最新のGrace Hopper Superchipを活用した次世代プラットフォームの構築を目指して両者の取り組みは続いており、今後の展望としては3年後の2026年の商用化を目指しているとのことです。

まとめ

以上、先端技術研究室の取り組みをご紹介しました。臨場開催2日目の正午には「AI社会と真のデジタル社会」と題して先端技術研究所長の湧川と対談を行った、筑波大学の准教授で研究者、メディアアーティストとしても活躍している落合 陽一氏も展示ブースに立ち寄ってくださり、ソフトバンクの研究内容に熱心に耳を傾けていました。(落合 陽一氏のインタビューブログはこちらからご覧頂けます)

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落合 陽一氏が先端技術研究所による展示ブースで説明を聞く様子。

 

先端技術で描く日本の未来、よりよい未来の社会を創るため、ソフトバンクの技術者たちの挑戦はこれからも続きます。

関連リンク

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