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間違いなく近づいているAIを中心とした新時代。生成AIなどに見られるAI技術の驚異的な進化によって、社会や産業が大きく様変わりしています。
ソフトバンク株式会社 代表取締役 社長執行役員 兼 CEO 宮川 潤一は、ソフトバンク最大規模の法人向けイベントSoftBank World 2023の中で、「AI共存社会に必要なインフラ」をテーマに、第4次産業革命のさなかにある日本企業の在り方やソフトバンクが取り組む次世代社会インフラの構築について講演しました。
本記事は、2023年10月4日に配信されたSoftBank World 2023での講演を再編集したものです。
冒頭、第1次産業革命からはじまる、各時代における新しいテクノロジーの「発明」「実用化」「社会実装」の歴史を語りながら、今まさに到来している第4次産業革命の中心であるAI技術について、これから「社会実装」の段階を迎えると宮川は語りました。
「キーとなるテクノロジーの発明から社会実装までのサイクルはどんどん短くなっています。それは第4次産業革命のテクノロジーであるAIでも同様で、実用化されてその実力が理解されると爆発的に社会実装が始まります。AIが提唱されてすでに60年経っているので、AIの社会実装がいつ起きても不思議ではありません。
ここにはシンギュラリティ※の到来が大きく関わってきます。コンピュータの世界においてはCPUからGPUが主流になってきたことで、元々2045年に来ると言われていたシンギュラリティが、あとたった2年後の2025年に訪れる可能性が出てきた、という計算になります。このシンギュラリティに到達したハードウェアがたくさん学習をしていくことで、AGI※の世界に向かっていくのだ思います。
これからのキーテクノロジーであるAIがもたらすものは自律化・最適化です。AI自らが判断し、社会全体を最適化する時代がやってきます。これが第4次産業革命であり、ここに対してAIとともに生きることを、我々は真剣に考えなければいけません」
※シンギュラリティ=進化したAI(人工知能)が人間の知能を超える時代の到来。技術的特異点。
※AGI=Artificial General Intelligenceの略称。自ら学習し、応用処理なども行う人間に近しい知能を持つ人工知能。
急速にAIが社会に浸透していく中で、企業は何を成すべきなのか。AIとともに生きる社会に向けた準備について宮川は続けて語ります。
「非常に便利な道具であるAIですが、その裏側では膨大なデータを処理するためにたくさんのエネルギーが必要になります。生成AIが登場したことで時期が早まってしまったのですが、2030年にはスーパーコンピュータ『富岳』3,800システム相当の計算能力と、大型火力発電所580基分の消費電力がデータ処理を行うために必要になります。それくらいAIというのは、たくさんの計算能力を用意しないと動かないものなのです。
しかし、国土が狭く、資源の少ない日本では到底その規模の火力発電所は用意できません。そのため国を挙げて、計算基盤である『エネルギー効率の実現』『自然エネルギーの新規開発』をやっていく必要があるわけです」
日本の未来には高度な計算基盤が必要不可欠であり、AIの社会実装を支える構造をいかに作るべきかを考えなければならないと強調しました。
こうしたAIの社会実装に向けた取り組みは世界各地で本格化しています。中国では国家戦略として「東数西算(とうすうせいさん)」を掲げており、中国東部に集中するエネルギー需要に対し、西部でのエネルギー開発や計算基盤の整備に莫大な費用をかけて取り組んでいると宮川は説明しました。
「2022年における中国のデータ処理量の合計は日本の20倍になります。それだけ中国はAI活用などのデジタル化が進んでおり、日本は遅れているということを示しています。東部で生成されたデータを西部のグリーンデータセンターで処理するという、データ処理のための構造づくりを国を挙げて取り組んでいます。データセンターの建設は着工済みで約60ヵ所、2021年から2025年の5年間での投資額は約60兆円と言われており、桁違いの規模で進んでいます。この数値を見ても、『本当に日本このままでいいのか?』と言いたくなってしまいます」
では日本がAIを社会実装して世界と戦っていくためには何をすべきなのか、宮川は続けます。
「日本においてもデータセンターは東京と大阪に集中しています。当社もデータセンターを保有していますが、ひょっとしたら東京で電力をブラックアウトさせてしまう引き金を引くことにもなりかねません。
それではまずいので、日本の都市部に集中するデータの処理や電力消費を地方に分散させています。そこには色々な仕掛けをしていますが、データセンターを階層構造にし、分散処理を効率的に行い、データを統合・並列処理することで一つのサーバのように見せる『超分散コンピューティング基盤』が必要ではないかと考えています」
膨大なデータ・電力を日本全国で分散処理できる構造と再生可能なエネルギーの開発が必要であり、この構造なくして日本のAIとの共存社会は語れないと重ねて強調しました。
最後に、これまで起こった産業革命を振り返り、革命を牽引してきた企業を例に挙げながら今後日本の企業がAIに対しどう向き合うべきかを以下のように語りました。
「キーとなるテクノロジーがあって、そのテクノロジーがブレイクスルーした瞬間に革命が起こり、時代ごとに社会実装され人々の生活を変革していきます。時代を牽引したテクノロジーというものは、いつかは役目を終えてコモディティ化されるのを繰り返してきました。そして次の第4次産業革命のカギとなるのは間違いなくAIです。
特に生成AIの登場で、今までとは比較にならないスピードと規模で社会は変わっていきます。第4次産業革命がもたらす経済効果というのは、今までの第1,2,3次産業革命とは比較にならないくらいの規模となり、時価総額100兆円規模の会社も、これからどんどん登場していくと思います」
「人間の頭脳を超えるAIとの共存社会に向けて、世界の企業はもうすでに動き出しています。秒単位で成長するAIと向き合わなくてはならない社会で、企業として牽引する側に回るのか、傍観するという側に回るのか。これからの企業の道筋は分かれ道だと思います。
そしてこの今を生きている我々の『想像力』こそが、未来の常識を作っていきます。この想いを描けた企業だけがこの時代の牽引役になりうるのだと私は考えています。日本の中でも、AIによって変動する社会を原動力とするような企業が誕生することを願っています」
ソフトバンクもAIとの共存社会に向けた取り組みを加速し、皆さまの「想い」を掻き立てられるよう貢献していくという熱いメッセージとともに、講演を締めくくりました。
AIや機械学習を活用することによって自然言語処理や映像解析、精度の高い予測シミュレーションができるようになります。
生成AI(ジェネレーティブAI)は、コンピュータが学習したデータを元に、新しいデータや情報をアウトプットする技術です。これまで人間が実施していた「考える」や「計画する」をAIが実行し、アイディアやコンテンツを生み出します。
Azure OpenAI serviceは、OpenAIのAIモデルをMicrosoft Azure上のセキュアな環境で利用できるサービスで、機械学習や自然言語処理などの高度な機能を提供します。簡単にAIを組み込み、スケーラブルなソリューションを構築し、効率的にビジネス価値を生み出すことができます。
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