プレスリリース 2021年

Beyond 5G/6Gのコンセプトおよび
実現に向けた挑戦を公開

〜さまざまな最先端技術を体感できる「ギジュツノチカラ Beyond 5G/6G編」を開催〜

2021年7月14日
ソフトバンク株式会社

ソフトバンク株式会社(以下「ソフトバンク」)は、さまざまな最先端技術を体感できる技術展「ギジュツノチカラ」の第3弾となる「ギジュツノチカラ Beyond 5G/6G編」を本日開催して、5G(第5世代移動通信システム)の次のシステムであるBeyond 5G/6G(以下「6G」)のコンセプトおよび実現に向けた挑戦を公開しました。

6Gは、5Gの特長(超高速、超低遅延、多数同時接続)のさらなる高度化に加えて、高信頼性やエネルギー効率の向上など新たな技術革新が期待されています。ソフトバンクは6G時代の社会ネットワークインフラの実現に向けて、通信用途にとどまらない無線技術の活用領域の拡大、AI(人工知能)が機能するようなネットワークアーキテクチャーの進化、あらゆる産業が安心して利用できる高い耐障害性、カーボンフリーな社会の実現など、さまざまな分野における挑戦を進めていきます。

ソフトバンクの先端技術開発本部 本部長の湧川 隆次(わきかわ・りゅうじ)は、次のように述べています。
「モバイルネットワークは、4Gまではスマートフォン向けのネットワークでしたが、5Gを皮切りに、6Gでは全ての産業のデジタル化を支える社会基盤としてのネットワークに生まれ変わります。インターネットがグローバルで唯一の共通基盤インフラとなったように、6Gではあらゆる日本の産業がモバイルネットワークの上に構築されていきます。インターネットがデジタル仮想空間を築いて、モバイルネットワークが基地局と端末をつなぐ役割を担うことで、仮想空間と現実空間をリアルタイムに結びつけます。AIにより仮想空間で予測し判断したことが、6Gにより現実空間に超低遅延でフィードバックされます。また、6Gはもはやネットワークとしての役割だけでなく、AI社会を支えるコンピューターとしても発展していきます。日本のあらゆる場所にエッジコンピューターが配備されて、そこにAIなどのサーバー処理が可能な計算機が分散されます。これらはネットワークと高度に連携して、高品質なエンドツーエンドの環境を構築します。AIが次の産業革命を起こすとすれば、6Gはそれを実現する通信インフラとなります。ソフトバンクは、2017年に6Gの要素技術の開発・検討を開始しました。成層圏に基地局を飛行させて、直径200kmの広いエリアと上空の空間にも電波を届けるHAPSは、エリア拡張の技術として重要になります。すでに成層圏での通信試験を成功させて、HAPS向けの周波数の標準化活動やグローバルなアライアンスの設立など、多くの実績を残しています。また、周波数の拡張として、ミリ波の先のテラヘルツ波を通信に応用することを目指した取り組みも進めています。通信速度が数百Gbpsを超えて、光ファイバーより高速な通信を実現すると、ラックやサーバー間の通信などデータセンターでの利用も視野に入ってきます。モバイルの用途も検討して、さまざまな研究開発を進めています。このたび、これらの技術の一部を初めて公開します。6Gは、ソフトバンクのデジタルプラットフォーム戦略において、重要な役割を担います。共通基盤インフラとしてさまざまな産業を支え、デジタルツインによってAI技術を開花させ、そして自由にカスタマイズできる通信ネットワークと計算機資源を実現します。ソフトバンクは、6Gに向けた挑戦を実現することで、日本における完全デジタル化を推進して、『情報革命で人々を幸せに』することを目指します」

2030年 Beyond 5G/6Gの世界観

Beyond 5G/6Gに向けた12の挑戦

(1)ベストエフォートからの脱却

これまでのモバイルネットワークでは、スマートフォンをインターネットに接続するベストエフォートなサービスを提供してきました。例えば、ネットショッピングや動画のストリーミング視聴といった、多少の遅延やパケットロスが発生しても生活に支障が生じにくいアプリケーションを提供してきました。6Gのモバイルネットワークでは、さまざまな産業を支える社会インフラの実装が期待されており、各産業が要求するサービスレベルに見合った、品質の高いモバイルネットワークを提供する必要があります。ソフトバンクは、日本全国を網羅するモバイルネットワークに、MEC(Mobile Edge Computing)やネットワークスライシングなどの機能を実装して、産業を支える社会インフラを実現していきます。

(2)モバイルのウェブ化

インターネットは、これまで多くのIT企業によってシステムやプロトコルの改善がなされ、進化を続けてきました。一方、モバイルネットワークは、クローズドなネットワークであるため、世界的に標準化される以上に進化を遂げることはありません。今後、モバイルネットワークのサービスの幅を広げるために、より柔軟なアーキテクチャーに生まれ変わることが期待されます。6Gでは、ウェブサービスのアーキテクチャーを取り込むことで、さらにお客さまに便利なサービスを提供できると考えて、研究開発を進めていきます。

(3)AIのネットワーク

AI技術は、画像認識による物体の検知や、音声認識・翻訳だけではなく、ネットワークの最適化や運用の自動化など、幅広く適用されるようなりました。同時に、無線基地局を含むモバイル通信を支えるネットワーク装置では、汎用コンピューターによる仮想化も進んできました。AI技術と、ネットワーク装置の仮想化は、いずれもGPU(Graphic Processing Unit)によって効率的に処理できるソフトウエアです。モバイルネットワーク上にGPUを搭載したコンピューターを分散配置することで、低コストで高品質なネットワークとサービスの提供が可能になります。ソフトバンクは、2019年からGPUを活用した仮想基地局の技術検証に取り組んでおり、AI技術とネットワークが融合したMEC環境を実現していきます。

(4)エリア100%

6Gでは、居住エリアで圏外をなくすことや、地球すべてをエリア化することが求められます。ソフトバンクは、HAPSやLEO(低軌道)衛星、GEO(静止軌道)衛星を活用した非地上系ネットワークソリューションを提供することで、この問題を解決します。これにより、世界中で30億を超えるインターネットに接続できない人々に、インターネットを提供することが可能になります。また、これまで基地局を設置できなかった海上や山間部、さらには上空を含むエリアにモバイルネットワークを提供することが可能になり、自動運転や空飛ぶタクシー、ドローンなど新しい産業を支えるインフラとなります。

(5)エリアの拡張

ソフトバンクの子会社であるHAPSモバイル株式会社は、2017年から成層圏プラットフォームと通信システムの開発に取り組んでいます。2020年にはソーラーパネルを搭載した成層圏通信プラットフォーム向け無人航空機「Sunglider(サングライダー)」が、ニューメキシコで成層圏フライトおよび成層圏からのLTE通信に成功し、HAPSが実現可能であることを証明しました。このフライトテストで得た膨大なデータを基に、商用化に向けて機体や無線機の開発、レギュレーションの整備などを進めていきます。

(6)周波数の拡張

5Gでは、これまで移動体通信で利用されることがなかったミリ波が利用できるようにしました。6Gでは、5Gの10倍の通信速度を実現するため、ミリ波よりも高い周波数のテラヘルツ波の活用が期待されています。一般的に、100GHzから10THzまでがテラヘルツ帯とされ、2019年に開催された世界無線通信会議(WRC-19)では、これまで割り当てられたことがなかった275GHz以上の周波数の中で、合計137GHzが通信用途として特定されました。この広大な周波数を移動通信で活用することで、さらなる超高速・大容量の通信の実現を目指します。

(7)電波によるセンシング

ソフトバンクは、これまで電波を主に通信用途で活用してきましたが、6G時代では通信以外の用途でも活用することが可能になります。例えば、Wi-Fiの電波を使用して、屋内で人の位置を特定する技術はすでに実用化されている他、Bluetooth®を位置情報のトラッキングに利用するケースもあります。6G時代では、電波を活用して、通信と同時にセンシングやトラッキングなどを行うサービスの提供を目指します。

(8)電波による充電・給電

スマートフォンなどのデバイスは、Qi規格による無接点充電技術が多く使用されていますが、距離が離れてしまうと充電・給電ができないという欠点があります。6G時代には、電池交換や日々の充電から解放される未来がやってくると期待しており、距離が離れても電波を活用した充電・給電を行える技術の研究開発を進めていきます。

(9)周波数

周波数は、これまで各事業者が占有して利用することを前提に割り当てられてきましたが、IP技術を無線区間に応用することで、時間的・空間的に空いている帯域を複数事業者で共有することも可能になると考えます。Massive MIMOやDSS(Dynamic Spectrum Sharing)などの多重化技術がすでに確立されていますが、これらを含めた技術をさらに発展させて周波数の有効活用を進めていきます。

(10)超安全

2030年には、量子コンピューターの実用化まで開発が進むと言われています。量子コンピューターが実用化されると、現在インターネットの暗号化に使われているRSA暗号※1の解読ができるようになり、通信の中身を盗まれる可能性があります。将来、通信インフラの上に成り立つ産業全体を守るために、耐量子計算機暗号(PQC)や量子暗号通信(QKD)などの技術検証に取り組み、発展させることで、超安全なネットワークの実現を目指します。

(11)耐障害性

モバイルネットワークは、5G以降により一層社会インフラとしての役割が強くなってくると考えており、通信障害が発生した場合でも社会インフラとして維持し続ける必要があります。そこで、従来のネットワークアーキテクチャーを見直すことで、障害が起こりにくいネットワークを構築するとともに、万が一、障害が発生した場合でもサービスを維持できるようなネットワークの技術の研究開発を進めていきます。

(12)ネットゼロ

大量のセンサーやデバイスからのデータ、あらゆる計算機によるデータ処理によって、CO2排出量を常時監視・観察ができるようになると、温室効果ガスの排出を実質ゼロにするネットゼロの達成に大きく寄与できると考えられます。しかし、常にセンサーなどで監視されることになるため、プライバシー情報の取り扱いや情報セキュリティーといった課題を解決することも必要になります。また、基地局自体もカーボンニュートラルな運用を目指しています。現在、災害時でもネットワークを稼働させるため、基地局の予備電源の設置が義務付けられていますが、電源を普段から活用することや、日中に充電した電気を夜間に使うことで、温室効果ガスの排出量を抑えることができます。さらに、通信量に応じてリアルタイムな基地局の稼働制御を行うことで、消費電力を最小化することも可能になります。カーボンフリーな基地局の実現に向けて研究開発を進めていきます。

Beyond 5G/6Gに向けた12の挑戦

また、「ギジュツノチカラ Beyond 5G/6G編」では、6Gに向けた挑戦の具体的な事例として、二つの取り組みを公開します。

一つ目は、周波数領域の拡大に向けた取り組みとして、テラヘルツ帯を移動体通信システムとしてサービス提供することを目標に、スマートフォン向けの“「動く」テラヘルツ”の研究開発を行っています。“「動く」テラヘルツ”のコンセプトとなるシステムのデモンストレーションの他、移動体通信システムで使用されているOFDM※2によるリアルタイム動画伝送のデモンストレーションを公開します。

二つ目は、HAPS技術の確立に向けた取り組みとして、成層圏フライトで使用した通信機器(ペイロード)の実機を公開します。また、HAPSが安定した通信サービスを提供するために必要となる、通信エリアを制御するフットプリント固定技術の実現に向けて、研究開発を進めているシリンダーアンテナの展示や回転コネクター技術のデモンストレーションを公開します。

[注]
  1. ※1
    RSA暗号とは、解読が困難な素因数分解問題に基づいた公開鍵暗号のことで、現在インターネットで広く使用されています。
  2. ※2
    Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数分割多重方式。地上デジタル放送などで用いられている変調方式。
  • Bluetoothは、米国Bluetooth SIG, Inc.の登録商標です。
  • Wi-Fiは、Wi-Fi Allianceの登録商標です。
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