皆さんは、私たちの暮らしに欠かせない「水」についてどのぐらい知っていますか?
今回は、硬水と軟水の違いや世界の水事情などについてアクアソムリエの山中亜希さんに解説してもらいました。また、LOHACOの人気商品「LOHACO Water」の商品開発担当・谷口将太さんには、開発の裏話や環境に対する取り組みなどについて話を伺いました。
目次
意外と知らない? 「軟水」と「硬水」の違いや水の種類について
水はミネラルの含有量によって、大きく「軟水」と「硬水」の2種類に分けることができます。さらに原水や処理方法で、ナチュラルミネラルウォーターやミネラルウォーターに分類されるなど、実はさまざまな種類があるのです。まずは意外と知らない水の種類について山中さんに解説していただきました。
「軟水」と「硬水」の違いとは
日本の水は軟水が多いと聞きました。硬水とはどのような違いがあるのでしょうか?
山中さん 「軟水と硬水の違いはズバリ、カルシウムとマグネシウムの含有量です。カルシウムとマグネシウムイオンを炭酸カルシウムに置き換えたものを『硬度』と言い、硬度で軟水か硬水かを判断します。
WHOの基準では、『中程度の硬水』や『非常な硬水』といくつか種類があります。ただし、これはどちらかと言えば生活用水として見たときの基準。また、日本における硬度の基準は、もともと生活用水や工業用水に向く水かを判断するために設定されたものでした。硬度が高いとせっけんが泡立ちにくく洗浄に適さなかったり、工業製品を作る上で支障があったりするからです。
飲む水としての側面が大きくなった現在、日本の硬度の基準は明確には定められていません。一般社団法人日本アクアソムリエ協会では、理化学辞典の基準をもとに以下の3種類に分けています」
種類 | 軟水 | 中硬水 | 硬水 |
---|---|---|---|
硬度 | 0~178mg/L以下 | 179~356mg/L以下 | 357mg/L以上 |
厳密に決まっているわけではないのですね。硬度によって水の味わいは異なるのでしょうか?
山中さん 「はい、主にミネラルの量で味わいも変わります。硬度が低いほどすっきりと淡白で、硬度が高いほど個性的な味わいになります。例えば硬度が1400mg/L以上あるフランス産のミネラルウォーターは、まるで薄い牛乳のような味です。
味のない水を飲むのが苦手な人は、硬水の方が飲みやすい場合があります。軟水に比べ、マグネシウムなどのミネラルが多く含まれるため、便秘解消にも効果的です。
やわらかい味わいの軟水は、食材の風味を邪魔しないので料理に適していますね。日本で処方される飲み薬は軟水で飲まれることを想定して作られているなど、日本人にとってはやはり軟水がなじみ深いのではないでしょうか」
日本に軟水が多い理由
そもそも日本はなぜ軟水が多いのでしょう?
山中さん 「地形と地質が関係していると考えられています。日本は西欧に比べて山が急勾配なため、水にミネラルがしみ込む年数が少ない傾向にあります。また、火山が多いことから地層中に火成岩が豊富で、その中でも代表的な花こう岩にはカルシウムやマグネシウムがあまり多く含まれていません。このような理由から、日本では硬度の低い軟水が生まれやすいんです。
ヨーロッパの場合は、海から盛り上がった地形が多く、サンゴ礁などの化石を含む石灰岩が豊富な地質のため、カルシウムやマグネシウムを多分に含んだ硬水がよく採れます。でも『日本の水は軟水で、ヨーロッパの水は硬水』と決まっているわけではなく、イタリアやフランスでは、硬度100mg/L以下の軟水から1500mg/Lを超える硬水まで採れる水の種類が幅広く、アメリカや中国も同様にさまざまな硬度の水が採れるんです。ちなみに日本でも沖縄県の中南部や三重県松阪市などで比較的硬度の高い水が採れますよ」
4つに分類される水の種類
採水地によって、採れる水もさまざまなんですね。ミネラルウォーターやナチュラルウォーターなどについても違いを教えてください。
山中さん 「日本で販売される水は原水の規定や処理方法によって、以下のように大きく4つのカテゴリに分けられます。
種類 | 原水の規定 | 処理方法 |
---|---|---|
ナチュラルウォーター | 特定の水源から採れた地下水のみ | ろ過・沈殿・加熱殺菌のみ |
ナチュラルミネラルウォーター | 特定の水源から採れた地下水で、ミネラルが含まれるもの | ろ過・沈殿・加熱殺菌のみ |
ミネラルウォーター | ナチュラルミネラルウォーターを原水としたもの | 上記以外にオゾン殺菌や紫外線殺菌、人工的なミネラルの調整、原水のブレンドが可能 |
ボトルドウォーター | 上記以外の水(地表水や水道水を原水としたものを含む) | 食品衛生法にのっとれば、処理方法には規定なし |
日本でボトルに入れて販売されている水は、ほとんどがナチュラルミネラルウォーターです。またヨーロッパでは、採水地の環境への配慮や非加熱で処理されているかなど、日本よりもさらに厳しい基準があります」
ミネラルウォーターの最新事情。水を購入する際のポイントは?
水の種類について理解したら、水の選び方も知りたいところです。世界で飲まれている水や、日本のトレンドなどについて触れながら、自分に合う水を選ぶ方法を教えてもらいました。
日本のミネラルウォーターのトレンドについて教えていただけますか?
山中さん 「かつては『水道があるのにわざわざ飲み水を買うのはもったいない』と考える人が少なくありませんでしたが、今は若い世代を中心に、水を買うことが消費行動として定着しつつある印象です。なかには健康を意識し、細かい成分にまで目を向ける人も。毎日使うものだからこそ、安価であることを重視する層と、質にとことんこだわる層とに二極化しているように感じますね」
海外ではどんな風に買われているのでしょう?
山中さん 「水の先進国と呼ばれるイタリアやフランスでは、ペットボトルの水の消費量が多い傾向にあります。私がイタリアに行ったときも、ペットボトルの水が非常に安価で、多くの人が当たり前のように買っていました。
また、ヨーロッパは環境に対する意識も高いですね。日本企業も近年、環境負荷の低い容器やラベルレスのボトルを使い始めました。例えば大手飲料メーカーでは、アメリカのバイオ化学ベンチャー企業と協力し、リサイクルできる植物性ボトルの開発を進めています」
環境に配慮した製品を選んで購入することも、地球の未来のために必要な視点ですね。その他に、ペットボトルの水を購入する際のポイントはありますか?
山中さん 「まずは、成分表示で採水地や成分の含有量などを確認してみましょう。商品ホームページを見れば、詳しく記載されているはずです。また、体調や体質に合わせて水を選ぶのもひとつの手ですよ。例えば、疲れているときはマグネシウム含有量が多い水、便秘気味な人はミネラルの多い硬水がおススメです。
作る料理によって使う水を選んでもいいですね。硬水は、牛肉の煮込みでアクが取りやすくなったり、フランスパンのようなバケット作りに適していたりなど、さまざまな利点があります。日本の水道水は軟水なので、そうした料理を作るときには硬水を購入し、水道水とブレンドして使ってみるのも面白いですよ」
水の選び方にもいろんな視点があることが分かりました。では実際に、環境に配慮されたミネラルウォーターはどのようにして作られているのでしょう? 次のページでは、ナチュラルミネラルウォーター「LOHACO water」の担当者に話を聞きます。
おしゃれさにプラスアルファを。エシカルな日本生まれの天然水「LOHACO Water」
軟水のまろやかな口当たりとおいしさで、LOHACOの総合人気ランキングでは常に上位に入る「LOHACO Water」。お客さまに支持される理由や、味わいやパッケージにもこだわった開発の裏側を聞いてみました。
アスクル株式会社 マーチャンダイジング本部 フード&ビバレッジ 飲料・酒類 飲料
谷口 将太さん
2020年からLOHACOの飲料食品部門に携わり製品開発などを担当。趣味はサーフィン。子どもと遊べる休日を心待ちにしている。
嬬恋村、日本百名山である四阿山の麓で育まれた天然水
「LOHACO Water」はどんな水なのでしょうか?
谷口さん 「『LOHACO Water』(ペットボトル)は、硬度22mg/Lの軟水なので、日本人になじみのあるまろやかな口当たりが特長となっています。
その源となるのは、群馬県と長野県との県境に位置する日本百名山のひとつ・四阿山(あずまやさん)なんです。冬は日本海からの季節風によって数メートルの雪に覆われ、その雪解け水が伏流水となって地中深く浸透。数十年かけて安山岩質の溶岩や火山噴出物という天然のフィルターを通ることで、ミネラルをほど良く含んだ良質の湧き水が生まれています」
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「LOHACO Water 1L」(紙パック)は、北アルプス常念岳の麓、自然環境に恵まれた工場で採水から充填(じゅうてん)まで一括して製造しています。

飲み水という以外にもおススメの利用方法はありますか?
谷口さん 「そのまま飲むと爽やかな飲み口を味わえますが、お茶やコーヒーを淹れても、お米を炊いたり、だし汁を取ったりと料理用にもおススメです。また、カルシウムの含有量が極めて少ないので、赤ちゃんの調乳用や離乳食用としても最適なんですよ」
愛飲するお客さまに寄り添った “仕掛け”
LOHACOのオリジナル商品といえば、他にはないおしゃれなデザインが印象的です。
谷口さん 「『LOHACO Water』シリーズでも、スウェーデンのデザインチーム『ストックホルム・デザイン・ラボ』がデザインに携わっています。北欧風のデザインで、『ボトル自体がオシャレなのがいい』『デザインが気に入った』といったお声をいただいています。
ただ、単におしゃれというデザイン面だけではなく、今よく耳にする物流クライシスや環境問題など、世の中を取り巻く状況が変わる中、お客さまの声や要望を背景に、何がベストなのかを考えながら商品を開発しています。
例えば、2018年に登場したスリムな410mlのボトルサイズは、水ができる自然のサイクルをイメージし、水が生まれるまでの過程に存在する滝・雫・霧・雪など水のモチーフがエンボスされた透き通った透明のボトルに黒いキャップ。

金型から自社で製造したオリジナルボトルなんです。このサイズ感は、500mlだと飲みきれないという声を反映して開発されたもので、女性の手にもなじみ、バッグに入れてもかさばりにくい絶妙なサイズ感になっています。ペットボトルの高さを変えずに角型ボトルにしているので、冷蔵庫に入れたときの収納性やバランスも考えて設計されているんですよ。

また、2022年にはシリーズ初となる『LOHACO Water 1L』の紙パック容器が発売されました。滑らかな波で落ち着きと爽快感を表現したスタイリッシュなパッケージは、そのままテーブルに出しても暮らしになじむデザインだと思います。2Lボトルは両手で支えないと注げないという声を受け、角度のある注ぎ口の付いた1Lサイズにしたことで、高齢者や女性でも片手で注ぎやすいようになっています。
実は、LOHACOのお客さまが最初に購入するアイテムの一つで、カートに投入される順番でもトップなのが水なんですよ」
水は生活の必需品ですが、まとめて購入すると重くて「もっぱらネットで」という人が多いんでしょうね。
谷口さん 「実はそこがスタートになっています。LOHACOには、日中仕事で忙しくて買い物に行く時間の無い人や、子育て中でたくさんの荷物や重い荷物を運ぶのが難しい人など、買い物の手間を少しでも楽にしたいという思いがあります。そのため、一度に注文した複数の商品を同じ段ボール箱に同梱(どうこん)することで、受け取りの手間を減らすよう工夫しています。
『どうすれば同じ段ボールで一緒にお届けできるか』を考えた結果、2Lを5本セットにした商品を初めて開発したんです」
通常は6本セットだと思うのですが、あえて5本にした理由は?
谷口さん 「確かに、開発当時のメーカー品は6本入りがスタンダードでしたね。また、LOHACOでは2Lの5本セットが出る前は、3本のバラ売り商品が人気だったんです。しかし、物流担当者からは、3本のバラ売りを梱包(こんぽう)すると箱の中で動いてしまうと指摘が。そこで、段ボールの底にピッタリ収まる5本一列のスリムなケースを開発しました。他社にはないLOHACOオリジナルの商品です。

無駄のないジャストサイズのケースは、インテリアになじむデザインなので箱のまま収納できるだけでなく、お家のちょっとした隙間にフィットし場所を取りません。後続の『LOHACO Water』シリーズでも、この考えを元に同梱できるよう設計されています。

また、複数の段ボールで配送すれば、それだけ物流に負荷をかけることに。できる限り一つの段ボールに同梱することが、現在問題になっている物流への負荷軽減だけでなく、環境への配慮にもつながると考えています」
環境に配慮した製品でエシカルに!
ボトルやパッケージのデザイン自体も環境に配慮しているそうですね。
谷口さん 「ペットボトルを捨てる際、ラベルを剥がすのは手間が掛かりますよね。『LOHACO Water』(ペットボトル)はいずれもラベルレスを採用しており、プラスチックごみを削減し環境配慮にもこだわっています。

さらに、『LOHACO Water 1L』の紙パック容器は、2Lの容器と比べて1Lあたり約42%のプラスチック量を削減しているだけではなく、物流の負荷の軽減にもつながっています。1箱に2Lを5本で10Lしか一度にお届けできなかったところ、紙パックにすることで1箱に6本入りを2箱 計12Lを同梱できるようになりました。
2022年にはペットボトルよりも炭酸を維持できるアルミ缶ボトルの発売を開始しました。飲み切るには量が多いというお客さまの声をヒントに、持ち運びにも便利な飲み切りサイズで、リキャップ可能なオリジナル炭酸水となっています。アルミ素材を使用することでリサイクルがしやすく、密閉性に優れるため、ペットボトルに比べて賞味期間が長くなりフードロスの削減にもつなげています」
「LOHACO Water」シリーズはスタイリッシュさだけでなく、環境や社会にわずかながらでも貢献できるということになりますね。
谷口さん 「そう思ってもらえるとうれしいですね。デザインのおしゃれさやスタイリッシュさはLOHACOの付加価値であり、お客さまに選んでいただける一つの理由として大切にしていきたいと思います。その一方でエシカル消費が重要な昨今、安ければいいというだけではない、LOHACOらしさを提案できるような商品をこれからも提供できればと思っています」
日本は軟水が多いと言われますが、そのなかにも細かい種類や適した用途があります。「LOHACO water」は、飲み水としてはもちろん、繊細な味わいの和食を作る際にも活躍してくれそうです。何を買うかが自分らしさにつながる現代、ミネラルウォーターを買うときにも、その商品が作られた環境や過程に目を向けてみてはいかがでしょうか?
(掲載日:2024年7月23日)
文:大瀧亜友美(前半)、ソフトバンクニュース編集部(後半)
編集:エクスライト
LOHACO water シリーズ
日本国内の厳選された採水地からくみ上げた、ミネラルをほど良く含んだまろやかで清涼な飲み口の天然水。洗練されたデザインやパッケージで多くのお客さまから支持されています。