SNSボタン
記事分割(js記載用)

地震、火災、豪雨……「都市型災害」で知っておきたいリスクと対策とは ―防災行動ガイド

地震、火災、豪雨……「都市型災害」で知っておきたいリスクと対策とは ―防災行動ガイド

「都市型災害」とは、森林や田畑がなくアスファルトやコンクリートに覆われている都市部で起こる災害のこと。地震、火災、水害が起きたときに、被害が連鎖して広域化・長期化することがあります。「都市型」という言葉から、首都圏だけに起こる災害と誤解しがちですが、地方都市でも注意が必要です。都市型災害の特徴と対策を踏まえ、自分の住んでいる地域の防災を見直してみましょう。

この災害テーマのポイント

  1. 都市型災害は、人的被害や経済的被害の規模も大きい
  2. 都市部での災害は、被害が連鎖し二次被害に発展するケースがある
  3. 被害を最小限にするためのカギは「共助・近助・自助」

この災害テーマのポイント

  1. 都市型災害は、人的被害や経済的被害の規模も大きい
  2. 都市部での災害は、被害が連鎖し二次被害に発展するケースがある
  3. 被害を最小限にするためのカギは「共助・近助・自助」

都市型災害は人ごとじゃない! 自分の住む地域は大丈夫?

森林や田畑がなくアスファルトやコンクリートに覆われている都市部では、地震や火災、水害などが起きたときに被害が連鎖しやすく、広域化・長期化しやすい傾向に。このような災害を「都市型災害」といい、首都圏だけでなく地方都市も当てはまります。

人口密度が高く、住宅や企業といった建物をはじめ、電気・ガス・水道・通信・道路などのインフラも密集している場所で起きる都市型災害では、経済への影響や人的被害の規模が大きくなる傾向があります。

都市型災害の例

阪神・淡路大震災(1995年1月17日)
淡路島北部を震源に発生したマグニチュード7.3の大地震。地震発生に伴う木造住宅やビルの倒壊、道路や橋などの損壊という一次災害に加え、市街地の住宅密集地域で発生した大規模火災(二次災害)が被害を拡大させました。

東海豪雨(2000年9月11~12日)
愛知県名古屋市とその周辺で起こった豪雨災害。愛知県西部を流れる一級河川の新川で堤防が決壊したほか、県内45カ所の河川が破堤しました。東海地方には世界を代表する製造業が集積しているため、経済的被害は2,700億円を超え、その影響は他地域まで波及しました。

都市型災害に気をつけるべき土地の特徴

都市型災害の被害に特に注意すべき土地には、下記の特徴があります。

人口密度が高い 狭い範囲に多くの人が住み、経済的な価値の高い事業所が密集しているため、人的被害も経済的被害も甚大になる。
建物が密集している 建物と建物の間にすき間がなく、倒壊や火災など被害が連鎖しやすい。特に木造住宅が密集している土地は注意が必要。
埋立地がある 地盤沈下や液状化を起こしやすい土地。特に、埋立地周辺の道路が影響を受けやすく、機能低下を招いたり、アクセスが難しくなったりする。
細い河川が近い 地下水位が高いため、地震の揺れによって液状化しやすい。また、集中豪雨による逆流や内水氾濫にも注意。
盛土造成地 谷状になった土地に土砂を積み上げ、新しい土地にした場所。土砂災害危険区域として発表されている土地も多く、自治体が公表しているマップなどでチェックできる。

都市型災害に気をつけるべき土地の特徴

都市型災害で怖いのは「被害の連鎖」。災害別、都市部ならではのリスク

都市型「震災」の危険

都市型「震災」の危険

都市部には、建築基準法が改訂される前の建物と、改定後の新しい建物が混在しています。特に耐震の建物は高層階ほど揺れが大きくなるため、家具が倒れたり物が落ちたりしてケガをする恐れがあります。また、震災後に街中を移動するときは、古いビルの倒壊や落下物に巻き込まれないように。土地が液状化すると、泥や水が噴き出す、マンホールが浮く、電柱や建物が傾くなどの被害が出るため注意しましょう。

都市型「火災」の危険

都市型「火災」の危険

地震が起きたとき、セットで気をつけたいのが火災です。木造住宅が密集している地域は延焼しやすく、高層・超高層ビルでの火災は消火や避難に時間がかかります。建物が密集している都市部では、小さな火災が同時多発したときに強い風が吹くことで燃え広がると、火災旋風が発生する可能性もあります。

都市型「水害」の危険

都市型「水害」の危険

都市部の気温が周辺の郊外部に比べて高温を示す現象を、ヒートアイランド現象といいます。

大都市で発生する局地的集中豪雨(ゲリラ豪雨)は、このヒートアイランド現象が原因の一つと考えられており、中小河川の急激な増水や地下道路浸水、地下街への浸水、下水事故などによる人的被害につながる恐れがあります。

まわりより低くなっている場所にある道路が冠水すると、車の通行が困難に。エンジンが停止して車内に閉じ込められるリスクも高くなります。また、地下街や地下駐車場などで排水がうまく機能しないと、浸水した地下空間に閉じ込められてしまう危険性もあります。このほか、都市部の水害では、マンホール内の空気が圧縮され、水が一気に噴き出すといった現象も起きやすくなります。

アフターコロナにおける都市型災害の危険

コロナ禍の後は、以前に比べて、避難所の定員問題や、在宅避難の推奨がクローズアップされるようになりました。避難所などで密にならないよう対策がとられていない場合、居住環境が悪くなるだけでなく、感染症が広がる恐れもあります。できるだけ密集しないように間隔を空けたり、手洗い・うがいをこまめに行ったりするなど、一人一人の行動がリスクの低減につながります。

被害を最小限にするために、心がけたい3つの「助」

被害を最小限にするために、心がけたい3つの「助」

共助・近助

「共助」とは、“お互いさま” の精神で人々が共に助け合うこと、その中でも特に近隣住民同士で助け合うことを「近助」といいます。日頃から「共助」「近助」を意識することで、事前対策で被害を防いだり、被害を拡大しないようにしたりしよう、という考えから生まれた概念です。

もちろん事後対策においても「共助」「近助」は重要です。例えば、土地勘のないエリアにとどまることを余儀なくされたときは周囲の人と協力し合う、避難所では運営者と協力し、密集しない方法やトラブルに発展しないやり方を考えるなど、困ったときお互いに助け合えるかどうかが避難先での良好な環境を保ったり、感染症をまん延させないことや関連死を防いだりするためのカギになります。

自助

コロナ禍以降は、避難所が混まないよう、落ち着くまで自宅で待機する「在宅避難」が強く推奨され始めました。災害時は食料品や日用品を手に入れることが難しくなるため、停電や断水などの事態を想定して日頃から備えておくことが、自分を助けることにつながります。特にトイレは「1日5回×1週間×家族の人数分」を目安に、十分に備えておきたいところです。また、重い家具を固定するといった日頃の備えも「自助」に含まれます。自分が被害に遭わないための対策をきちんとしておきましょう。

家族と連絡をとったり情報収集をしたりするためにも、スマホのモバイルバッテリーは必須。乾電池式や手回し発電式のテレビやラジオも用意しておくと役に立ちます。

都市型災害が起きたときに役立つサービス・ウェブサイト

  1. Yahoo!防災速報

    ゲリラ豪雨などの大雨情報の他に地震に関する情報や避難勧告などをプッシュ通知でいち早く知らせてくれるアプリ。現在地とあらかじめ設定した3つの地域の速報をチェックできます。

  2. 緊急速報メール

    気象庁が配信する気象に関する特別警報、国や地方公共団体が配信する災害・避難情報を対象エリアに知らせるサービス。大雪による危険性をいち早くキャッチすることができます。

  3. 災害用伝言板

    災害などで音声発信が集中してつながりにくくなった際に、テキストで安否確認ができるサービス。無料で使えて事前の登録も必要ないため、緊急時でも迅速な安否確認が可能です。

  4. 災害用伝言ダイヤル

    被災地の方の電話番号宛に、安否情報などの伝言を音声で登録・確認できるサービス。「171」をダイヤルし、利用ガイダンスに従って使用します。スマホや携帯電話の操作が不安という高齢者の方などは、こちらが使いやすいかもしれません。

高橋 洋(たかはし・ひろし)さん

監修者プロフィール

防災講師・防災コンサルタント

高橋 洋(たかはし・ひろし)さん

1953年、新潟県長岡市生まれ。1976年、練馬区に就職し、図書館、文化財、建築、福祉、防災、都市整備等に従事。1997年より防災課係長として、地域防災計画、大規模訓練、協定等に携わる。現在は、防災講師・コンサルタントとして、自治体等で講演、ワークショップ指導などを行う傍ら、復興ボランティア、終活ガイド・エンディングノート認定講師としても幅広く活動。防災関係著書・論文、防災関係パンフレット類監修多数。

(掲載日:2024年9月30日)
監修者:高橋洋
文:佐藤由衣
編集:エクスライト
イラスト:高山千草