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災害で自宅のトイレが使えなくなった…。あなたが取るべき行動は? -防災行動ガイド

災害で自宅のトイレが使えなくなった…。災害時の対策と事前の備え -防災行動ガイド

災害が発生してインフラがストップ。断水によって、自宅のトイレも流れなくなってしまったようです…。もしあなたが同じような状況に置かれたら、一体どうすればいいのでしょうか?

正しい知識とすぐにできる小さな行動が防災意識を高め、あなたとあなたの大切な人を救います。

今回は、災害時のトイレの正しい使い方や事前の備えをご紹介。

この災害テーマのポイント

災害で自宅のトイレが使えなくなった…。災害時の対策と事前の備え -防災行動ガイド

  1. 災害時のトイレ問題は、命を落とす危険もあるほど深刻
  2. 使用前に排水管をチェックし、異常がある/不明な場合は、簡易トイレを使う
  3. 簡易トイレは「1日5回×1週間×家族の人数分」を準備する

災害で自宅のトイレが使えなくなった…。災害時の対策と事前の備え -防災行動ガイド

この災害テーマのポイント

  1. 災害時のトイレ問題は、命を落とす危険もあるほど深刻
  2. 使用前に排水管をチェックし、異常がある/不明な場合は、簡易トイレを使う
  3. 簡易トイレは「1日5回×1週間×家族の人数分」を準備する

目次

リスク:避けられないトイレ問題。水分摂取を控えることでエコノミークラス症候群などになり、命を落とす危険も

大災害が発生した後はさまざまなインフラがストップ。停電、断水、排水管や下水管、浄化槽の損傷などで、自宅の水洗トイレが使えなくなるリスクも高まります。

また、避難所の仮設トイレは、多くの人が利用するため、汚物が溜まって臭い、足元や便器が汚いなど、衛生状態が劣悪になりがちに…。下痢やおう吐といった消化器疾患、ノロウイルスなどの集団感染を引き起こす原因になることもあります。

仮設トイレで起きやすい問題

  • トイレ内に段差があるため、足腰の弱った高齢者や車いすの方が利用しづらい
  • トイレまでの距離が遠い。また、屋外に設置されている場合、夜は暗く、雨や雪の日なども不便
  • 順番待ちの列ができていると、すぐに利用できない。落ち着いて用が足せない
  • 男女別でないことが多く、安全面に不安を感じやすい。過去の災害時には、トイレでの性犯罪の報告も

このような問題があると、できるだけトイレに行く回数を減らそうと、水分や食事を控える傾向に。その結果、脱水症状のほか、エコノミークラス症候群や脳梗塞、心筋梗塞など、命を落とすリスクも高まります。

対処法:使用前に排水管の損傷をチェック。異常がある場合・よくわからない場合は、簡易トイレを使おう

災害で自宅のトイレが使えなくなった…。災害時の対策と事前の備え -防災行動ガイド

災害発生後にトイレを使う場合は、次のステップを踏みましょう。

① 利用前に、排水管に損傷がないかをチェック

  • 便器の下部や配管から水が漏れているか
  • 床下や天井裏から水が垂れる音がするか
  • 汚水の臭いがするか

特にマンションなどの集合住宅の場合、排水管の破損を確かめず、溜めておいた水などをバケツで流すと、1階のトイレから汚水があふれてしまうことがあるので要注意です。

② 排水管に異常がない場合は、トイレに水を流して使う

停電や断水をしていても、排水管に損傷がなく、問題なく排水できる場合は、トイレを使うことができます。

  • 洋式トイレ:バケツ1杯の水で排泄物を流す。小便はまとめて流す
  • 和式トイレ:排水レバーを押しながら、バケツ1杯の水を勢いよく流す

いずれもトイレットペーパーなどは流さず、ゴミとして処理しましょう。また、普段からお風呂の残り湯をすぐに流さず、溜めておくことを習慣にしておけば、このようなときに利用できます。

災害時に役立つ「防災井戸」

断水対策などのために、井戸を所有する家の協力によって「防災井戸」を指定している地域もあります。指定された井戸には「防災井戸協力の家」などのプレートが掲示してあり、災害時は無償で井戸水を提供してくれます。自宅近隣に「防災井戸」があるかどうか、市区町村のウェブサイトなどで事前にチェックをしてみましょう。

③ 排水管に異常がある場合・よくわからない場合は、「簡易トイレ」を使う

排水管に少しでも異常がある場合や、状態がよくわからない場合は、水を流さないことが鉄則。こんなときは市販の「簡易トイレ」を使います。もし、簡易トイレが自宅にない場合は、水が流せなくなった既存トイレを活用して簡易トイレを作りましょう。他にも、例えばポリ袋と猫砂など、“吸わせる・固める・密封する”ことができるものならば、十分トイレの代わりになるため、なるべく自宅でトイレを使えるように工夫することをオススメします。

簡易トイレの作り方
  1. 既存トイレの便座を上げて、ポリ袋をすっぽりかぶせる
  2. 便座を下げ、上からもう1枚、ポリ袋をかぶせる
  3. 便器の中に細かく破った新聞紙などを入れる

④ 汚物の処理は自治体の指示に従う

使用した簡易トイレは、自治体の指示に従って処理を行ってください。災害時に限り、汚物も含めて燃えるゴミに出しても良いという指示が出る場合もあるので、各地区のホームページなどで確認をしましょう。

事前の備え:災害に向けて、トイレは「1日5回×1週間×家族の人数分」の備えを。ポリ袋、フタ付きゴミ箱などの準備も忘れずに

災害で自宅のトイレが使えなくなった…。災害時の対策と事前の備え -防災行動ガイド

災害時のトイレ用品は「1日5回×1週間×家族の人数分」の備えが理想です。例えば、4人家族の場合の簡易トイレだと、1人1日5回×7日分×4人=約140枚。もし、市販の簡易トイレを1週間分用意するのが難しい場合は、第2ブロックで紹介した新聞紙(猫砂)、ポリ袋といった簡易的な代用品をうまく使い、無理のない範囲から備蓄を始めてみましょう。

また、トイレ用品も食料品と同様にローリングストックで、普段から必要な量を確保しておくことをオススメします。

備えておきたい備品

  • トイレットペーパー
  • 水を運搬するバケツ
  • 中身の見えない黒いポリ袋・ゴミ袋
  • 使用済みトイレのゴミなどを保管する密閉袋や、フタ付きのゴミ箱・ボックス(ゴミ収集が滞る可能性があるため)
  • ウェットティッシュやアルコール消毒液(断水で手が洗えないことがあるため)

災害時に使用するトイレには、簡易トイレの他にも、仮設トイレ、マンホールトイレなどがあります。それぞれの特徴や使い方を知って備えておきましょう。マンションの場合は、管理組合などで、災害時のトイレの使用に関するルールをあらかじめ決めておくことも大切です。

「マンホールトイレ」

下水道管路にあるマンホールの上に、簡易な便座と囲いパネルを設けた災害用のトイレ。段差がなく、し尿は下流の下水道に流されるため衛生的です。災害時に設置されるマンホールトイレの場所や使用方法を事前に知っておけば、慌てずに済みますよ。

災害時のトイレ利用に役立つサービス・ウェブサイト

① 国土交通省「災害時のトイレ、どうする?」

国土交通省「災害時のトイレ、どうする?」

国土交通省による、災害時のトイレ対策について学べる漫画。「自分でできる排水管チェック」などのコラムも。同じく国土交通省による動画コンテンツも観ることができます。

② Yahoo!ショッピング

Yahoo!ショッピング

Yahoo!JAPANが運営する日本最大級のオンラインショッピングモール。日用品はもちろん、簡易トイレなどの防災グッズも幅広く取りそろえています。

監修者:防災講師・防災コンサルタント 高橋 洋(たかはし・ひろし)

高橋洋先生

1953年、新潟県長岡市生まれ。1976年、練馬区に就職し、図書館、文化財、建築、福祉、防災、都市整備等に従事。1997年より防災課係長として、地域防災計画、大規模訓練、協定等に携わる。現在は、防災講師・コンサルタントとして、自治体等で講演、ワークショップ指導などを行う傍ら、復興ボランティアの一員として、福島県南相馬市小高区等で活動。防災関係著書・論文、防災関係パンフレット類監修多数。

(掲載日:2020年6月17日)
監修:高橋洋
文:内藤マスミ
編集:エクスライト
イラスト:高山千草