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大阪・関西万博でも快適な通信を。3年がかりで挑む万博会場のネットワーク対策

大阪・関西万博でも快適な通信を。3年がかりで挑む万博会場のネットワーク対策

現在開催中の2025年日本国際博覧会「大阪・関西万博(以下、万博)」は、2005年に開催された愛・地球博(愛知県)から、20年ぶりに日本で開催される国際博覧会です。
日本国内はもとより世界からも多くの来場者が訪れる万博会場は、入場チケットの購入やショップでの支払いなどがキャッシュレス中心のため、スマホの利用が欠かせません。快適な通信環境を提供するため、ソフトバンクは、数年前から大規模なチームを編成し、準備に当たってきました。ビッグイベントのネットワーク対策はどのように進められたのでしょうか。

話を聞いた人

  • 所属は全員ソフトバンク株式会社 エリア建設本部

畔柳 響兵(くろやなぎ・きょうへい)

関西ネットワーク技術部 エリア技術1課

畔柳 響兵(くろやなぎ・きょうへい)

張 啓新(ちょう・けいしん)

関西ネットワークソリューション部 ネットワーク品質課

張 啓新(ちょう・けいしん)

西谷 信哉(にしたに・しんや)

関西ネットワークソリューション部 ネットワーク設計課

西谷 信哉(にしたに・しんや)

岡崎 教之(おかざき・のりゆき)

関西ネットワークソリューション部 ネットワーク保全課

岡崎 教之(おかざき・のりゆき)

開幕初日の「つながりにくい」状況にスペシャルチームで緊急対応

開幕初日の「つながりにくい」状況にスペシャルチームで緊急対応

万博の開幕初日、一部エリアでスマホの通信が不安定になる事象が発生。会場の入場口の東ゲート前に長蛇の列ができ、スマホを使うシーンが多く見られました。特定の場所で大勢の人が一度にスマホで動画視聴などを始め、短時間に通信量が急増したことで、基地局自体は正常に稼働していたものの、利用者からすると「つながりにくい状態」に…。特に東ゲート付近でつながりにくさが発生し、緊急のネットワーク対策が行われました。

どのような対策を実施したのですか?

岡崎 「迅速に事象を解消するため、早い段階で移動基地局車の設置を決めました。会場内は、ヘルメットや工具の持ち込みルールなどさまざまな制約がある中、4月13日の開幕日当日中に移動基地局車を速やかに会場内に搬入して設置することができました。

通常、移動基地局車を使う場合には、稼働時間に応じた燃料補給のタイミングを予測し、必要な電源車も併せて手配するのですが、今回は、撤収のタイミングが未定のまま、稼働を開始することになりました。燃料補給をどうするかなど、一つずつ課題を手探りで解消し、他の通信事業者も移動基地局車の搬入を始めている緊張感の中で、ソフトバンクも無事電波を発射できたときの達成感は大きかったです」

開幕初日の「つながりにくい」状況にスペシャルチームで緊急対応

緊急時だからこそ、機動力や現場での対応力が必要とされたんですね。

 「万博会場のネットワーク対策には、準備段階から関西地区の多くのメンバーが尽力してきました。開幕初日は、十分な監視体制を整えていたため、緊急事態が発生したタイミングで迅速に特別チームを編成して、対策に取りかかることができました。各分野を代表するメンバーが招集され、チームとして全員が協力して対策にあたりました。

4月13日の移動基地局車の搬入から、翌14日には設置準備を行い、15日から1.7GHz、900MHzなどの複数帯域で電波を発射できることを確認しました。開幕後、初めて迎える週末の4月18、19日には、さらに多くの人が来場すると見込み、入り口付近に元々設置していた基地局から発射する電波を、より長距離をカバーできて障害物に強い特性を持つ『Sub6』に変更する工事など、急ピッチで恒久的な対策を終えました。

開幕初日以降、つながりにくい状況は発生していませんが、恒久的な対策をしておくことで、お盆休みなどで予想を大きく上回る人が来場したときの備えになっています」

屋内の天井近くにもレピーターを設置

屋内の天井近くにもレピーターを設置

ゲストから運営、工事会社まですべての関係者に通信環境を届ける責務

万博会場のネットワーク対策はいつ頃から開始したのでしょうか?

畔柳 「2022年から設計などに着手し、2024年5月から本格的な基地局の工事が始まりました。いざ始まってみると、パビリオンなどの建設事業者が工事を行う中での基地局工事という背景もあり、日によって作業車が通れるルートが変わるなど、現場の作業に制約があることが後から分かりましたが、工事会社と調整を重ね、進捗を管理していき、基地局の工事を開幕に間に合わせることができました。

一方、現在、建設業界はかなりDXが進んでいて、工事現場で図面や作業工程を確認するのにスマホの利用が欠かせません。開幕前の夢洲エリアには元々、ソフトバンクの基地局が1局しかなかったので、工事関係者の方から通信環境を改善してほしいとの需要があり、仮設の基地局をスピード感を持って設置する対応もしました。対応は大変でしたが、現場でユーザーの課題に応えられたという達成感のある出来事だったと思います。

複数の携帯電話事業者がアンテナや柱を共有する基地局を活用して、屋外22局、屋内6局を開幕直前までに設置し、事前のフィールド測定ではほぼシミュレーション通りに電波が行き届いていることを確認しました」

ゲストから運営、工事会社まですべての関係者に通信環境を届ける責務
ゲストから運営、工事会社まですべての関係者に通信環境を届ける責務

 「別の工事関係者から『現場でビデオ会議が利用できなくて困っている』という声を頂いたことが印象に残っています。特に海外パビリオンを担当する建設会社は、事務所で海外とのビデオ会議を頻繁に行っていました。事務所とソフトバンクの基地局がかなり離れていたため、現地調査を行い、Starlink BusinessによるWi-Fiの対策、現地での工事設置、不具合解消までをわずか3日間で行うなど、来場者だけではない会場全体のネットワーク対策にも重点を置いてきました」

万博会場のネットワーク対策を進める上で何か苦労はありましたか?

西谷 「今回、1番苦労したのは普段使用しているシステムで現地の電波状況をシミュレーションできなかったことです。基地局を設置するエリア周辺の建物情報も、高さや材質といった詳細なデータがそろっておらず、おおまかな地図情報と簡易的な建物情報を基にエリア設計を行う場面も多くありました」

ゲストから運営、工事会社まですべての関係者に通信環境を届ける責務

畔柳 「屋内工事は建物が完成した後からの工事となり、実際に工事ができるのはかなり短い中でしたが、しっかり準備をして納めることができました。もちろん、開幕前に、快適な通信環境を提供できているかどうかを、実際に歩いて計測して確認しました」

ゲストから運営、工事会社まですべての関係者に通信環境を届ける責務

万博閉幕までどのような体制で臨むのでしょうか?

西谷 「閉幕まで現地の状況を細かく把握しながら、継続的に通信品質の維持に取り組む必要があるため、リモートでの監視はもちろんのこと、来場者が増えると予想されるタイミングでは現地で測定するなど、およそ半年間の体制を組んでいます。

事前準備は徹底していたものの、一部の屋内エリアでは通信が不安定になる事象も発生しました。屋内の電波が弱い箇所を徹底的に洗い出し、電波を増幅・中継するレピーターを増やしたりするなど、追加の対策も講じています。また、夢洲駅周辺の屋外対策として、複数の携帯電話事業者が設備を共有する基地局シェアリングによる対策を6月に予定しています。

また、閉幕すれば通信事業者としての役割が終わりになるのではなく、閉幕後に発生するパビリオンの工事など、開幕前と同様、関係者への通信環境の維持にも引き続き対応していきます」

ゲストから運営、工事会社まですべての関係者に通信環境を届ける責務

ソフトバンクの電波対策に関する記事はこちら

(掲載日:2025年6月13日)
文:ソフトバンクニュース編集部