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「空が見えたら、圏外でも、日本中つながる。」普段使いのスマホで衛星通信ができる仕組みを解説

「空が見えたら、圏外でも、日本中つながる。」普段使いのスマホで衛星通信ができる仕組みを解説

ソフトバンクが2026年4月10日より開始した「SoftBank Starlink Direct」。SpaceX社のStarlinkを活用し、普段使っているスマホで衛星通信を直接利用できるサービスです。最大の特長は、「空が見えたら、圏外でも、日本中つながる。」こと。これまでの衛星通信には不可欠だった専用アンテナや特殊な端末も必要ありません。

なぜスマホがそのまま衛星通信できるようになったのか。その裏側には、距離や速さ、電波の制約といったハードルを乗り越えるための技術が積み重なっています。ソフトバンクのエンジニアに、仕組みを解説してもらいました。

  • 国内における屋外のソフトバンク圏外エリアで。
  • 対象機種あり。
  • SMS、S!メール(MMS)、RCS及び国際SMSを利用可能。
  • データ通信の利用は、一部の対象アプリのみ。
  • 通話及び緊急通報は利用不可。
  • 最新のOS(iPhone:iOS26.4以上、Android:Android15以上)にアップデートしておく必要あり。

スマホが衛星とつながるカギは「宇宙の基地局」

衛星電話といえば、地上の基地局からの電波が届かない山間部や海上など、特別なシチュエーションでの通信が必要な方向けのサービスという印象が強く、衛星通信を利用するにも専用のアンテナや端末が必要だと思っている方が多くいます。なぜ今回開始された「SoftBank Starlink Direct」では、普段使用しているスマホで直接衛星通信ができるようになったのでしょうか。

冨岡 大河(とみおか・たいが)

ソフトバンク株式会社 技術統括 衛星技術部

冨岡 大河(とみおか・たいが)

スマホと衛星が直接通信できる仕組みの大きな特徴は、地上のモバイルネットワークと同じ周波数帯をそのまま使っている点です。一般的な衛星通信では専用の周波数を使っていますが、今回は “普通のスマホで送受信できる電波” を宇宙から飛ばしているんです。

つまり、従来のモバイルネットワークで使用する基地局は基本的に地上に設置されていますが、宇宙に基地局を置いているような構成になっているんですね。スマホ側から見れば、通信の相手先である基地局の設置場所が地上から衛星に変わっただけ、ということです。衛星から発射する周波数が同じであることで、地上と同じ仕組みで通信ができるので専用のアンテナや機器を用意しなくても使えるようになったんです。

スマホが衛星とつながるカギは「宇宙の基地局」に

高度約340kmを周回する「Starlink」の衛星がスマホとの直接通信を可能に

衛星というと、地球の自転と同じ周期で移動することで止まっているように見える「静止軌道(GEO)衛星」と、「Starlink」のように高度2,000km以下を周回する「低軌道(LEO)衛星」があります。このサービスで利用する衛星は高度約340kmの軌道上にあります。GEO衛星よりも格段に地上との距離が近いので、スマホとの直接通信が現実的なものになりました。

それでも距離は地上の基地局に比べると圧倒的に遠い。さらに、「Starlink」の衛星は特定エリアの上空に静止しているのではなく、時速約2.8万km(秒速約7.8km)のスピードで地球をぐるぐる周回しています。衛星1機でカバーできるエリアも限られているので、衛星をたくさん打ち上げることで広範囲をカバーしています。複数の衛星がバトンをつなぐように通信を引き継いでいくわけです。

ただこれも、常に連続して接続できるわけではなく、間欠的につながるという、地上のモバイルネットワークとは異なる特徴があります。現在、本サービス向けの衛星は約650機が打ち上げられていますが、さらに性能を向上させた衛星通信を提供するために将来はさらに多くの衛星を打ち上げるという計画もSpaceXから発表されています。

高度約340kmを周回する「Starlink衛星」がスマホとの直接通信を可能に

衛星との遠距離通信を実現する数々の技術

スマホと衛星が直接通信できるようにはなったものの、時速約2.8万kmの猛スピードで地球をぐるぐる周回している衛星との通信を実現するには、さまざまな技術的な課題があったそうです。

地上に比べ、はるかに遠い衛星との通信。電波の減衰を補う工夫

約340km離れた宇宙から電波を発射するので、地上に届く頃には減衰してかなり弱くなってしまいます。なのでその分、強い電波を発射しています。イメージとしては「声」に近いですね。「普通の声」で近くの人と話しているのを地上の基地局との通信に例えるとしたら、衛星通信は「非常に大きな声」で叫ぶようなイメージです。端末にもよりますが、アンテナ表示が1、2本立つのと同じくらいの強さになってスマホに届くように、衛星から電波を発射しています。

一方で、スマホから衛星に向けて電波を発射する場合は、出力をその分強くして送ろうとします。ただ、スマホの送信電力は人体への影響などを考慮して最大値が決まっているんですね。衛星から届く電波に比べると微弱な電波になってしまいます。そのため、衛星にはフェーズドアレイアンテナという特殊なアンテナが取り付けられていて、衛星からビーム状の強い電波を送信できるだけでなく、地上からの電波を高感度で受信することができるんです。

フェーズドアレイアンテナ

フェーズドアレイアンテナ

衛星の高速移動により生じるドップラー効果への対策

超高速で移動する衛星との通信における課題の一つは、衛星からスマホへ、スマホから衛星へ送信した電波の周波数が、受信したときにズレてしまう「ドップラー効果」です。救急車両が近づいてくると段々音の高さが高くなり、遠ざかると音の高さが低くなるのを想像してもらうと分かりやすいかもしれません。電波も音と同じように「波」ですので、波の発生源が移動することで、近づく時は波が圧縮されて周波数が高く(音なら高く)なり、遠ざかる時は波が引き伸ばされて周波数が低く(音なら低く)聞こえる現象が発生します。受信する周波数が変わってしまうのは非常に問題で、信号が復調できずに通信エラーとなってしまいます。そのため、スマホと衛星の直接通信を実現するには、ドップラー効果による周波数のズレを補正する必要があります。

市場に出回っているスマホ側でこれに対処するのは技術的に難しいため、衛星側で周波数をズラす補正を行って、ドップラー効果による課題を解決しています。

屋外の圏外エリアでも通信が可能に

本サービスを使用する際は、ユーザー側で特別な操作は必要ありません。スマホが圏外になると、一定の間隔で接続可能なネットワークを探します。その中に衛星からの電波も含まれるようになり、電波を見つけると自動的に「衛星モード」に切り替わって、衛星通信ができるようになります。

接続された様子

皆さんが普段移動する範囲では、屋外ではなかなか圏外を経験することはなくなっているかもしれませんが、山間部や海上といった地上のモバイルネットワークの電波が届かない場所はまだあります。また、災害によって基地局がダウンしてしまった場合は、そのエリアが圏外になってしまうこともあります。そのような場合でも、「SoftBank Starlink Direct」が利用可能になったことで、つながり続けることができる。今後、スマホだけでなく自動運転車など、あらゆるデバイスが圏外を気にせずに動ける環境が必要となります。ソフトバンクが目指す、いつでもどこでもつながり続けるユビキタスネットワークの実現に向けた第一歩だと思っています。

(掲載日:2026年4月10日)
文:ソフトバンクニュース編集部

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