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Oh! B2Bマーケティングでは、年末年始休暇中の課題図書を設定していました。今回はその課題図書の内容を踏まえて、実際にソフトバンクのマーケターが気になったポイントをお話していきます。
早川 真理奈
BtoBマーケティング経験は3年目。現在はソフトバンクで主にマーケティングオートメーション(Marketo)を使ったメールマーケティング活動を行う。
竹之内 彩歌
2021年に、全く違う職業からBtoBマーケターに転身。日々BtoBマーケティングを学習中。現在は、早川さんと同じくソフトバンクでメールマーケティングを主たる業務として行う。
今回の課題図書に設定したのは、『BtoBマーケティングの定石 なぜ営業とマーケは衝突するのか?』(著:垣内 勇威)です。2022年11月に出版されたばかりの本ですが、気になっている方も多いのではないでしょうか。
全体的な印象や感想を教えてください
竹之内さん: なぜ営業とマーケは衝突するのか、と表紙にあるので、マーケティング部隊と営業部隊がうまくいくための秘訣を教えてくれる本なのかなと思って読み始めました。でも、実際に読んでみるとそれだけではなくて、BtoBマーケティング組織を社内で立ち上げるところから、どんなコンテンツをどんなフェーズのお客さまにお届けするべきなのかというところまで載っている、参考書のような本でした。
早川さん:この本は、全体を通して自分のバイブルにしたいと思うくらいとても参考になりました。組織の作り方から戦略戦術の立て方、そして、個々の施策を行う際の作戦までわかりやすく書かれていて、とても読みやすかったです。
早川さん:本の表紙に書かれている、「なぜ営業とマーケは衝突するのか」というところが一番気になったポイントですね。自分自身もなかなか営業と分かり合えなかったり、他社のマーケティング担当の方とお話しをする中でも、なんか営業とうまくできないんです、といういう声も聞くことが多いです。
今回の課題図書の中では、まずマーケティング組織が誕生するタイミングに要因がある、と指摘されていました。特にBtoB領域において、マーケティング組織が存在しない企業はあっても営業組織が存在しない企業はほぼありません。特に日本においては地理的な好条件から「足で稼ぐ営業」が主流となっており、マーケティングに頼らずとも売上が見込める状態が長く続いていました。しかし、ビジネスを取り巻く環境の変化とともにマーケティング組織の必要性が謳われ、マーケティング組織が後から新規に立ち上がるパターンが多いのです。そうした場合、営業組織は「今まで自分たちが積み上げてきたものが侵食されてしまうのではないか」「新しい余計な仕事が増えて自分たちの負担が増えるのではないか」といった不安を覚え、マーケティング組織への抵抗を示すことがよくあります。
竹之内さん:「営業さんから『余計なことをするな!』って言われてしまいました、という話もたまに聞きますね。」
これを解決するには、マーケティング担当の態度が非常に重要なカギとなってきます。組織の立ち上げに際して、まずはマーケティング組織の存在を社内で認めてもらわなければなりません。そのため、マーケティング組織は営業から独立した存在ではなく営業組織の延長線上にあり、営業の強力なサポーターである、という姿勢を体現していく必要があります。
では、具体的にどのようなステップで進めていけば良いのでしょうか。
1つの作戦として、クイックに小さな実績を積み上げていく方法があります。新設のマーケティング組織が社内で存在感を発揮するには、具体的な実績を作ることが一番の近道です。しかし、いきなり社内全体を巻き込んで成功事例を作り上げるには多大な労力が必要となり、道半ばで挫折してしまう可能性も高くなります。そこで有効な作戦が、マーケティングだけではなく、営業や製品担当など、お客さまの購買活動の中で関係する担当者を1人ずつ集めた小さなチームを作り、リード獲得から受注獲得までの一連の動きをワンチームで取り組んでいく、というやり方です。各担当が得意な分野はあれど、あくまでチーム全体で受注までの動きに関わることで、マーケティング担当者も売上に貢献してくれる、という認識を社内に浸透させることにつながります。
また別の方法としては、お客さまが本当に求めていることの共通理解を深めるために、マーケターだけではなく営業や製品担当など社内の関係者を集めて、実際にお客さまの「行動観察」に参画してもらうというやり方もあります。お客さまが購買行動をする中で、実際に感じたことをお客さま自身の言葉で指摘してもらうことで、その後全員が同じ目線でディスカッションを重ねる土俵を作ることができます。
竹之内さん:ソフトバンクのマーケティング組織でも、普段からお客さまと直接お話しすることを大事にしているのですが、1つのチームとしてお客さまの声を聞く場を設けるということはやったことがなかったので、今後やってみたいですね。
また、マーケティング組織だけで頑張ろうとしすぎてしまう点についても気づきがありました。
早川さん:マーケティング活動は営業活動の延長線上にある、というポイントは刺さったポイントでした。この本で言われているのは、メールやWebは営業活動になぞらえると初回訪問と同じような立ち位置であって、最後の受注獲得までメールやWebだけで狙うのはかなりナンセンスなんだなとわかりました。
本の中では、「(マーケティング組織は)トップ営業の振る舞いを再現できる仕組みを作る」という項目がありました。いわゆるトップ営業は、顧客が本当に欲しい情報を損得を顧みず提供して信頼関係を構築した上で、最適なタイミングで商談につなげて大きな成果を得るような人と言えるでしょう。この観点で考えると、初回訪問でいきなり自社の商品を売りつけるようなマーケティングを行っていては顧客の信頼は得られません。だからこそ、マーケティング活動においては顧客が本当に欲しい情報を提供し続けなければいけないし、その後のフェーズできちんと商談につなげるために、営業組織とも密接に関わるマーケティング組織を作ることも重要なのです。
実際にマーケターの皆さんがどのような課題感を持っているのか、営業組織との関係性について視聴者の皆さんにお聞きしてみました。
「営業からメールを送りたいからMAの中にあるリストだけ欲しいと言われます。」
「まずは仲のいい営業部署とうまく連携することが大事だなと自社でも実感しています。」
コメントをいただいた方の組織でも、それぞれに課題を持っていらっしゃる印象を受けました。営業とうまくコミュニケーションが取れない、というのはマーケターあるあるのお悩みでもあります。営業側に「マーケティング部門に手伝ってもらった方が良い結果につながりそうだ」という認識を組織内に浸透させるために、まず前章で述べたようなスモールスタート&クイックウィンの作戦で攻めてみるのはいかがでしょうか。また、本の中では「タッグを組むべき事業部の選び方」という項で連携するべき営業部隊の特徴が詳しく解説されています。
「当社のマーケティングには元営業が多いので、良くも悪くも営業との関係は良いです。ただ、企業としてしなければならないネガティブな判断をする際に、営業現場に気を使って二の足を踏んでしまうことがあります。」
反対に、営業と密な関係性を築けているが故のお悩みもありました。本の中では、マーケティング組織の立ち上げ時にアサインするべき人材の特徴が述べられていました。「営業経験がある」というのはその特徴の1つでもあります。理想的なマーケター像としては、マーケティング視点だけではなく常に営業視点にも配慮したコミュニケーションができるような人と書かれています。確かに組織内で忖度が発生してしまうことはネガティブな側面もありますが、まずは営業視点で話ができる人がマーケティング組織にたくさんいる状態は良いことだと言えるのではないでしょうか。
「KPIが違うのでよく衝突している気がします。」
互いの組織のKPIが同じ方向を向いていないために衝突してしまう、という課題を抱えている方もいらっしゃいました。
まず、そもそもマーケティング組織がどのようなKPIを持つべきか、というポイントについては、大きく分けて2種類の目標を持つべきと述べられています。①短期的な売上目標 ②自ずと顧客視点になる中長期的な指標 の2つです。これを踏まえて、営業と同じ目線でKPIを定めるのであれば①の方になると思います。営業と全く同じでなくとも、同じ延長線上で各部門に重なりのあるKPI設定を行うのが良いでしょう。ソフトバンクでも、マーケティング部門も売上目標を持ってマーケティング活動を行っています。第17回でのチーム連携のお悩み相談でも同様のお悩みがありましたが、KPIを定めるのと同時に、マーケティング組織内の会話にも売上数字についての話題が積極的に出てくる文化作りを進めるのも有効かもしれません。
マーケティング組織で成果を上げるには、全く新しいことをやらなければならない、という意識が働いてしまうこともあるかもしれません。しかし、マーケティング組織も売上につながる活動を行っている、という点では営業組織と最終目標は同じです。この本の中でも、マーケティング活動は営業活動の延長線上にあるということが強調されていました。理想としては、マーケティング組織がトップ営業の振る舞いを誰でも体現できる仕組み作りをできることですが、そのためには、自組織内でマーケティング組織の存在価値をアピールできる状態にすることが必須条件です。
今後もOh! B2Bマーケティングでは、定期的にBtoBマーケティングに関連する本を取り上げていく予定です。皆さんも、ぜひ一緒にBtoBマーケティングの学びを深めていきませんか。
BtoBマーケティングを実践的に深く取り組みたい人が集まり、BtoBマーケティングを探求する仲間が増えることを目指したオンライン番組。
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