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皆さん、オーディエンスセントリック(Audience Centeric)、という言葉を覚えていますか?日本語に訳すと「顧客中心」という意味の言葉で、顧客を中心にしたマーケティングコミュニケーションが重要だという話を、Oh! BtoBマーケティングでも何度かしてきました。しかし、少しでも油断するとオーディエンスセントリックではない行動やコミュニケーションになってしまいがちです。今回は、メンバーの竹之内さんが普段担当しているメールを例に、オーディエンスセントリックの実践について探求していきます。
山田 泰志
長年BtoBマーケティングを専門とし、ソフトバンクのBtoBマーケティングの戦略から実行まで広く行う役割を担う。世界レベルのBtoBマーケティングの仕組みや実践を知る専門家。
竹之内 彩歌
2021年に、全く違う職業からBtoBマーケターに転身。日々BtoBマーケティングを学習中。現在は、早川さんと同じくソフトバンクでメールマーケティングを主たる業務として行う。
今回、例題として2つのメールを用意しました。2つを見比べて、何が違うか、どちらの方が読みやすく、開かれるメールになっているかを考えてみましょう。2つとも、社内データの持ち出しや内部不正に関する内容で、件名、本文、ボタンの要素から構成されています。
山田さん:この2つは両方竹之内さんが書いたんですか?
竹之内さん:いえ、左側のメールは別の人に書いてもらいました。
山田さん:ちなみに誰にお願いしたんですか?
竹之内さん:今話題のChatGPTに。(笑)
山田さん:ChatGPT!(笑)
では、ChatGPTとメール担当として2年間勉強をしてきた竹之内さんでは、どちらのほうが開かれやすく、読みやすいメールになっているでしょうか。ライブ中に視聴者の方からいただいたコメントを一部ご紹介します。
「右の方が左より内容がぱっと目に入ってくるような感じがします」
「右の方が読者に自分ごとになりやすいですね。1行の文字数も少ない右の方が読みやすいです。ボタンを押した先に、資料がダウンロードできることがわかってわかりやすいです。」
竹之内さんが書いた右側のメールに圧倒的に票が集まりました。では、具体的に何を意識すれば開かれる・読まれる”良い”メールになるのでしょうか。竹之内さんにポイントを聞いてみました。
竹之内さん:そもそも、今は皆さんにこのメールを読んでくださいと言ったので、皆さんは読もうという意識を持って、文章を細かく読んで判断しようと思っていただいたと思います。ただ、普段私たちがメールを出す先のお客さまはメールを読もうと待ち構えていらっしゃるわけではありません。なので、まず件名だけでご自身に関係がある、気になる、という状態に持っていく必要があります。
普段、私たちは膨大な量のメールを受信しています。メールの海の中から見つけてもらうためには、いかに自分事として感じていただける件名にできるか、というポイントが重要です。今回、社員が社内の機密情報を持ち出してしまうインシデントである「内部不正」がテーマになっていますが、実際に内部不正対策を考えている組織の担当者に自分事と感じるのはどちらでしょうか。まず意識して見ておきたいのは、新聞やニュースで表現されているワードです。2022年に大きな話題となったインシデントは、「元社員」「データ持ち出し」というワードでニュースに取り上げられていました。ニュースのキーワードを使うことで、そのインシデントやニュースについてお客さまがもっている記憶を紐づけた件名にしています。普段お客さまがどのような情報源に触れているのか、アンテナを貼っておくことが重要です。
メールを開いたあとも、お客さまの意識を変えるためのポイントがいくつかあります。続いては、本文中の見出しと、メール本文について解説していきます。
竹之内さん:よくある見出しとして、○○を解決、○○を実現といった表現がありますが、それではお客さまの意識を変えることはできません。実際のお客さまの中にある具体的な課題を持ってくることでこのメールがもたらす価値を示しています。
左側の見出しに使われている「セキュリティ対策」という言葉は、かなり広範囲を指す言葉であるため、お客さまが具体的に内容をイメージすることは困難です。見出しは、具体的な話のイメージを読者に示すための重要な手がかりであるため、具体性に欠けたキーワードを使うことは避けるべきです。また、メール件名から見出しへの繋ぎのスムーズさもお客さまが「続きを読みたい」と思う重要な要素です。件名と見出しの繋ぎがずれてしまうと、違和感を感じたお客さまは多くの場合メールを読まずに通り過ぎてしまいます。
山田さん:本文の長さに注目すると、だいぶ長さに違いがありますね。竹之内さんは本文の長さについては意識していますか?
竹之内さん:はい、とても気を付けています。左側は対策方法が詳細に書かれていて情報量は多いのですが、実際には資料で対策を詳しく説明しているので必要ありません。代わりに右側では、短い文章で期待を高めることを意識して書いています。
山田さん:長い文章は読むのにエネルギーを使いますから、読み手の負担を考えるのは大事ですね。
そもそもこのメールの目的は、メールを読んでもらうことではなく、その先にある資料をダウンロードしてもらうことです。そのため、メールの役割は資料ダウンロードにつながるボタンをクリックすることであり、そのために必要十分な中身であれば良いわけです。メールは読み流すコンテンツでもあるため、その点を意識して文面や文章の長さを考えましょう。
ただ、竹之内さんが書いたサンプルにもまだまだ改善の余地があるようです。
竹之内さん:「この資料では○○が学べます」というボタンをクリックするモチベーションアップにつながるような1文足りなかったな、とこの配信が始まる3分前ぐらいに読み直して思いました。
お客さまにアクションを起こしていただく動機を高めることも、見出しや本文の役割です。読み手にとって価値のある情報がその先にあることを示すことで、より適切な情報発信となります。
マイクロコピーとは、Web上のボタンやフォームなどで使われる非常に短いコピー(文言)のことで、ユーザの行動を促す重要な役割を担っています。このメール文中には青いボタンが設置されており、左側のメールと右側のメールではボタンに書かれている文言が異なっています。この2つは、お客さまの行動を促す点においてどのような違いがあるのでしょうか。
山田さん:ボタンに載せるマイクロコピーの大原則は、動詞を使う、ということです。海外でも、Click、Play、Getという動詞を使ったマイクロコピーが多く見られます。具体的な行動を示すことで、お客さまの行動につなげられるのです。
今回の場合、左の「詳細はこちら」というコピーは、動詞でお客さまの行動を示していない一方、右の「資料をダウンロードする」というコピーは動詞で具体的な行動が示されています。マイクロコピーの最適化については実際に多くの検証がなされており、動詞を使ったマイクロコピーのほうがパフォーマンスが高い、という成果が報告されています。お客さまのクリックを促すには、具体的な行動を提供価値と共に示したコピーが最適です。まずは明日から、マイクロコピーを動詞に変えてみましょう。
竹之内さん:初めてメール担当としてメールを書くと、会社としてこの商品を売りたい、という動機でメールを書いてしまいがちです。ただ、本当の目的はお客さまの気持ちを変えてもらうことです。そのためにはメールをクリックしてもらうことが大事、クリックしてもらうには、お客さまに役立つ内容を送らないといけないというように遡って考えられるようになったのがこの2年間の成果ですね。
今回は、メールを例にオーディエンスセントリックの実践について語りました。お客さまに提供できる価値を考えることを主軸に、具体的なメールに落とし込むためにはさまざまな技術が必要になります。適切な文章を書くには、勉強が必須ですので、ぜひ皆さんも技術を押さえてお客さまに伝わるメールを書いていきましょう。
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