AIは「AGI」へと進化し、今後10年で全人類の叡智の10倍を超える。孫正義 特別講演レポート

2023年10月12日更新
2023年10月4日掲載

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ソフトバンク最大規模の法人向けイベント「SoftBank World 2023」が、10月3日~6日の4日間、臨場&オンラインのハイブリッド形式(臨場は4日、5日のみ)で開催されました。今年のテーマは、「テクノロジーの新潮流。今、世界が動きだす。」です。10月4日、ソフトバンクグループ株式会社 代表取締役 会長兼社長執行役員およびソフトバンク株式会社 創業者 取締役 の孫正義が、会場で特別講演を行いました。

本記事は、2023年10月4日に配信されたSoftBank World 2023での特別講演を再編集したものです。

ソフトバンクグループ株式会社 代表取締役 会長兼社長執行役員およびソフトバンク株式会社 創業者 取締役 孫正義

目次

「金魚」のスライドが意味するものとは?

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孫は最初に金魚のページを投影し、「金魚にabcという単語を教えようとしても、金魚はabcが何かを理解できるでしょうか」と会場に問いかけました。

「金魚にとってabcを覚えることは難しいことです。知能の強さには2つの要因があります。1つはハードウェア、これはニューロンの数にあたります。もう1つはソフトウェア、つまり学習です。学習によって知能は鍛えられます。AIも同じくニューラルエンジンやチップなどのハードウェアの強さと、トレーニング(学習)、インファレンス(推論)でAIの強さが決まります」

今後10年以内に「AGI」の時代がくる

さらに孫は「AGIが何か知っていますか」と会場に問いかけました。ほとんど手が上がらない状況を見た孫は「まず、ヤバイということを知ってください」と続けました。

「AGIとはArtificial General Intelligenceの略称です。AGIは、人類叡智総和の10倍です。例えば将棋やチェスでは人間よりもAIが強くなるなど、特定のテーマではすでにAIが人間の知能を超えています。しかし、今はまだ全てのテーマでAIが人間を超える状況にはなっていない。AIがほぼすべての分野で人間の叡智を追い抜いてしまう、これがAGIのコンセプトです。このAGIの世界が今後10年以内にやってきます。そして、AGIの世界では全ての産業が変わります。教育も変わる、人生観も変わる、生きざまも変わる、社会のあり方、人間関係も変わるんです」

AGIの世界が今後、10年以内にやってくる

AIの現在、生成AIの活用

プレゼンの中で、ChatGPTが画像を認識し、自転車修理の仕方を教えてくれるデモが投影されました。

「こういった生成AIは、文章の作成だけでなく、映像や音楽、コード(プログラミング)、プレゼン資料作成など、さまざまに利用されています。『AIが人間より賢くなるわけがない、なぜなら人間がプログラミングしているんだから』という人がいますが、生成AIはプログラムではない。AIは自ら学習している。AIは公開されたコモディティデータと企業が保有するプライベートデータをそれぞれリアルタイムに学習し、その上で推論をしていく」と孫は語りました。

AGIの世界

「以前は世界の時価総額のトップ10に多くの日本企業が入っていましたが、インターネットが立ち上がった結果、今ではGAFAMに代表される正面からインターネットに取り組んだ企業が世界をリードしています。そのくらいインターネットが世界を変えてきたわけですが、現在はまだGDPの一部を占めている広告や小売の世界の話でしかありません。しかし、AGIは人類の叡智の総和の10倍、ありとあらゆる産業に影響を与えることになります」

孫は「ソフトバンクグループを世界で最もAIを活用するグループにしたい」と語り、「今ではソフトバンク、LINEやYahoo!、PayPayと、日本で一番多くのユーザとのタッチポイントを持っていると言えるかもしれません。すでにソフトバンクでは多くの業務においてAIを導入しており、業務効率化によって数値的にも大きな成果がでていますし、社内のAI活用コンテストでは提案件数が10万件を突破しました」と、ソフトバンクグループの国内での事例を紹介しました。

AIを利用したソフトバンクでの業務効率化例

続いて孫はAGIが活用された世界についての例をプレゼンの中で示しました。

・自動車などの、モビリティの完全自動化
・小売りや飲食店での、あらゆるデータを活用した完全な需給マッチング
・コールセンターでの、顧客の感情を理解し顧客ごとに最適な回答の案内
・投資では、数兆通りのシミュレーションから最適な戦略や投資の実行
・医療分野での、個人ごとの遺伝子解析によるパーソナライズ医療

AGIを中心とした新たな世界へ

20年後に向けて「日本よ、目覚めよ。」

そんなAGIを中心とした世界が、今後10年以内に訪れるという孫は、さらにその10年後には「ASI」の世界になると言います。ASIとは Artificial Super Intelligenceの略で、人類叡智総和の1万倍になると続けます。

「10倍ということではなく1万倍ということになると、人間対サルではなくて、人間対金魚なんです。金魚のニューロンは人間の約1万分の1ですから、今後20年で人類の知能は、今の金魚と変わらないくらいAIと差ができるということです。

では、我々はどうすればいいのか、我が社はどうすれば、私はどうすればいいのかと考えるときが来た。地球に生命体が生まれて40数億年のこの歴史の中で、今後10年間でシンギュラリティが来る。このクロスオーバーの10年で自分がどう思うか、自分の会社がどう思うか、自分の国がどう思うかで変わる。

小さな議論をしている場合ではなく、もっとでかく全体を見ろと言いたい。今すぐ行動すべきでしょう。人類の進化の源泉は願望にある。強い願望が人類の未来をAGIとともに作る。敵ではなく味方としてあらゆる進化を遂げる。活用するのか、取り残される金魚になりたいのか。日本よ、目覚めよ。」と熱く語りました。

講演の後半ではArm CEOのRene Haas 氏がオンラインで登場してプレゼンテーションを行ったのち、Rene氏と孫の対談も行われました。以下の動画よりご確認ください。

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