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こんにちは。ソフトバンク株式会社の王文礼です。
本記事では、クラウドサービスの中で高いシェアと知名度を誇る Alibaba Cloud、Amazon Web Services、 Microsoft Azure と Google Cloud の仮想マシンサービスを対象に、それぞれの料金体系についてご紹介いたします。ご参考になりましたら幸いです。
内容が多いので、前編と後編に分けて解説していきたいと思います。今回は前編となります。
尚、本記事は 2022 年 6 月時点の情報をもとにしております。実際のご利用にあたっては、必ず各社の最新情報をご確認ください。
パブリッククラウドサービスを導入するにあたり、利用料金の検討やコスト削減効果が非常に重要視されます。各クラウドプロバイダーが提供しているさまざまな料金モデルの中から、自社のビジネスに適したものを選出するために、クラウドの課金の仕組みを正しく理解する必要があります。
クラウドプロバイダーは仮想マシン、ストレージ、データベース、データ転送などのサービスに対して、多種多様な料金モデルを提供していますが、本記事は仮想マシンサービスに焦点を当てて、Alibaba Cloud(以降 Alibaba と表記)、Amazon Web Services(以降 AWS と表記)、Microsoft Azure(以降 Azure と表記)と Google Cloud(以降 Google と表記)4 社の料金モデルを全面的に解説します。
※各クラウドはアルファベット順で記載します。
Alibaba では Elastic Compute Service(ECS)、AWS では Elastic Compute Cloud(EC2)、Azure では Virtual Machines(VM)、Google では Google Compute Engine(GCE)といったように、各社は名称が違いますが、IaaS 型の仮想マシンサービスを提供しています。
仮想マシンサービスにおいて、どのような料金モデルがあるでしょうか。まず、4 社の料金モデルをご覧いただき、全体像を把握しましょう。
ご覧のように、4 社は共通概念を持つ料金体系がある一方、それぞれ特有のものもあります。今回の前編では、4 社共通の料金モデルである「従量課金」、「インスタンス予約購入割引」と「余剰インスタンス割引」について解説します。
従量課金は最も一般的な仮想マシンサービスの料金モデルです。長期契約なしで、利用されたリソースのコンピューティング性能と使用時間に応じて利用料が請求されます。
従量課金は利用期間を約束しないため、最も柔軟性がありますが、コストも最も高くなります。短期的な利用、開発環境、テスト環境、リソース使用量の予測が難しいワークロードに適した料金モデルです。
従量課金は具体的にどのように計算されるのか、ネット上の公開情報が少なくて、多くの利用者にとって分かりそうで分からないのではないかと思います。ここで従量課金の計算方法を少し丁寧に解説します。
Alibaba ECS インスタンスの課金サイクルは、vCPU の数によって異なります。
そして、インスタンスのライフサイクルで利用料が 0.01 USD 未満の場合、0.01 USD が請求されます。
AWS EC2 インスタンスは秒単位での課金と時間単位での課金があります。秒単位の課金対象には Linux、Windows、SQL Enterprise/SQL Standard を使用する Windows、SQL Web Instances を使用する Windows のインスタンスが含まれます。その他のインスタンスは時間単位で課金されます。
秒単位課金の場合、1 分未満の利用分は 1 分課金されます。最初の 1 分が経過したら、1 秒ごとに課金されます。時間単位課金の場合、1 時間未満の利用分は 1 時間として請求されます。
Azure VM インスタンスは分単位で課金されます。インスタンスが実行状態になってから課金がスタートし、最低 1 分が課金されます。その後、1 分未満の利用分は切り捨てられます。例えば、インスタンスを 10 分 59 秒利用した場合、10 分のみ課金されます。
Google GCE インスタンスは、最低 1 分課金されます。1 分経過後、1 秒ごとに課金されます。例えば、インスタンスを 10 秒稼働した場合、1 分課金されます。
従量課金は、インスタンスが起動されてから終了または停止されるまでというサイクルで計算されるため、特に時間単位課金の場合、頻繁にインスタンスの起動と終了・停止を繰り返すと、料金が高くなることにご注意ください。例えば、10 時 00 分から 10 時 59 分までの間、AWS EC2 インスタンスを 5 回起動/停止を繰り返すと、5 時間課金されます。
もう一つの注意点としては、インスタンスを終了しても、インスタンスにアタッチされたリソースをリリースしないと、アタッチされたリソースに対して引き続き課金されることです。例えば、AWS EC2 インスタンスを終了すると、EC2 への課金は直ちに停止されますが、EC2 にアタッチされた EBS ボリュームや EIP を解放しない限り、引き続き課金されます。
インスタンス予約購入割引は、一定期間での継続利用を前提に、従量課金に比べて割引価格でインスタンスを購入できる料金モデルです。割引が提供される反面、約束期間中にインスタンスの属性などの変更が制約されます。
インスタンス予約購入割引は、例えて言うと、クラウド上で利用できるメンバーシップカードのようなものです。メンバーシップカードは、スポーツジムや映画館、ホテルなどの利用料を割り引きしてもらえるものですが、インスタンス予約購入割引は、契約内容が稼働しているインスタンスと合致すれば、そのインスタンスの料金について、割引が自動的に適用されます。
インスタンス予約購入割引は、ワークロードが安定している本番環境や長期稼働システムに適します。
先に、インスタンス予約購入割引の予約、解約などについて、横並びで比較してみましょう。
Alibaba リザーブドインスタンス(Alibaba RI)や AWS リザーブドインスタンス(AWS RI)、Azure 予約 VM インスタンス(Azure RI)という物理的なインスタンスが存在しているわけではありません。
予約期間ですが、1 年より 3 年のコミットメントでは、より大きな割引がもらえます。予約の取消ができない場合、利用しなくても料金を支払わなければならないことにご注意ください。ただし、1 年または 3 年の予約期間を全部使用しなくても、コストメリットが得られることがあります。例えば、割引率 50% の 1 年の リザーブドインスタンスを購入した場合、6 か月以上利用すると、コストメリットが得られます。
支払いオプションについて、Alibaba と AWS は前払いなし、一部前払い(全額の50%)、全額前払いの順で割引率が高くなります(全額前払いの割引率が一番高い)。Azure は前払いの有無にかかわらず、割引率が変わりません。
最大割引は、従量課金との比較となります。実際に節約できる金額は、リージョン、インスタンスタイプ、使用方法などによって変わります。
Alibaba RI と AWS RI は近いコンセプトを持っているので、両者を一緒に確認してみましょう。
Alibaba RI と AWS RI を購入する時、予約期間は 1 年または 3 年を選択できます。前払いを利用すると、更なる割引が得られます。
Alibaba では、リージョン RI とゾーン RI の 2 つの料金モデルが提供されています。AWS では、スタンダード RI とコンバーティブル RI の2つの料金モデルが提供されています。
購入したリザーブドインスタンスは、利用中のインスタンスの属性と一致する場合のみ、割引が自動的に適用されます。インスタンスの属性を正しく理解しないと、割引の適用ができるかどうかを判別できないため、属性について説明しておきたいと思います。
属性は、インスタンスタイプ、スコープ、テナンシー及び OS が含まれます。
キャパシティー予約とは、任意の期間で対象のインスタンスのキャパシティーを確保することです。キャパシティーを予約しておくと、必要な時にインスタンスの作成ができるという安心感を持つことができます。 アベイラビリティゾーン(AZ)を指定して、リザーブドインスタンスを購入する場合に限って、キャパシティーを予約できます。
Alibaba リージョン RI をゾーン RI に変更したり、ゾーン RI をリージョン RI に変更したりすることができます。
AWS スタンダード RI はコンバーティブル RI より大きな割引率を提供していますが、契約内容の変更について、コンバーティブル RI のほうが柔軟性があります。スタンダード RI のスコープはリージョンから AZ へもしくは AZ からリージョンへ変更できます。
Alibaba と AWS に比べると、Azure RI の料金モデルは非常にシンプルです。Azure RI を購入する時、リージョン、VM タイプと予約期間 (1 年または 3 年) を指定するだけで完了します。前払いの有無に関わらず、予約の総額は同じです。前払いなしを選択すると、対象期間の月数で予約の総額が均等に分割されます。そしてインスタンスサイズの柔軟性を加えることで、Windows Server、Linux、RHEL などの OS に関係なく、Azure RI の割引が得られます。
Azure では、比率という概念があります。Azure RI の購入は、比率を購入することだと考えたらいいです。比率の点数は、VM によって決められています。
DSv3 シリーズを例として挙げます。表には、DSv3 グループに属する VM の比率が示されている一方、VM が消費する比率とも言えます。
比率は、インスタンスサイズ柔軟性グループ内でのみ有効です。同じリージョンにある同じグループ内の VM に割引を適用することができて、インスタンスサイズの柔軟性を実現します。
例えば、1 つの Standard_D16s_v3 RI(比率 8)を購入した場合、2 つの Standard_D8s_v3(比率 4)をカバーできます。 Standard_D32s_v3(比率 16) に適用した時、Standard_D32s_v3 の利用料の内 50% が RI よりカバーされ、残りの 50% は従量課金となります。
Azure RI 購入後、交換もしくは取消・再購入を通じて、インスタンスサイズ、インスタンスファミリー、リージョン、予約期間などを変更することができます。
交換では、コミットメントの未使用分が日割りで計算され、日割りの払い戻しを受けて新しいインスタンスを購入できます。交換回数に制限がなく、交換手数料もかかりませんが、新しい購入金額が払い戻し額より大きくなる必要があります。
一方、取消では、残りのコミットメントの月数を Microsoft に返却することとなります。現在、解約手数料はかかりませんが、 将来、手数料は発生する可能性があります。VM 以外のサービスも含めて、全てのコミットメントの取消額の合計は 12 か月間で 5 万 USD 以内に制限されています。
Azure RI もキャパシティー予約をサポートします。VM に適用される場合と同じように、使用可能な RI はキャパシティー予約に自動的に適用され、割引を受けることができます。
Google GCE 確約利用割引を購入する時、インスタンスのスペックを決める必要があります。インスタンスのスペックを決めるには二つの方法があります。一つは、他社のようにあらかじめ定義されているマシンタイプから、ニーズに近いものを選びます。もう一つは、Google の特徴ともなりますが、カスタムタイプマシンと呼ばれるものが用意されています。カスタムタイプマシンはニーズにあわせて、コア数とメモリを自由に設定することができ、オーバースペックになって無駄が出てしまうことを回避できます。
カスタムタイプマシンの購入画面です。
Google 確約利用割引において、メモリ最適化マシンタイプの最大割引率は 70% で、その他のマシンタイプと全ての GPU の最大割引率は 57% となります。コミットメントを超過した利用分は従量課金で請求されますが、継続利用割引(後編で解説)の計算対象ともなります。
余剰インスタンス割引とは、プロバイダーの未使用のコンピューティングリソースを入札制で大幅な割引価格で購入できる料金モデルです。料金は需要と供給のバランスに影響されるため、需給に基づいて随時調整されます。
購入したインスタンスの市場価格が入札価格を上回った場合、若しくはインスタンスの在庫が不足した場合、クラウドプロバイダーはいつでもインスタンスを回収できます。これはインスタンスを中断することと呼ばれます。
インスタンスが利用中でも中断される可能性があるため、余剰インスタンス割引はバッチ処理、開発環境、テスト環境、大規模なコンピューティングなど、中断に対応できるワークロードに最適です。
保証継続利用期間というのは、インスタンスが中断されることがなく、選択した期間にわたって継続して実行できる期間のことです。AWS スポットインスタンスは、以前スポットブロックという機能を利用して、1 〜 6 時間の継続利用期間を設定することができましたが、2021 年 7 月 1 日からスポットブロックの新規利用ができなくなりました。
Google は以前からプリエンプティブル VM というサービスを提供しています。プリエンプティブル VM は一度に最大 24 時間の実行制限があります。スポット VM は、プリエンプティブル VM の最新版で、実行時間の制限がありません。
中断後インスタンスの動きは、終了、停止または休止となります。終了というのはインスタンスが削除されることです。休止または停止の場合、キャパシティーが再び使えるようになると、インスタンスが再開されます。
前編はここまでにしておきます。今回は 4 社の「従量課金」、「インスタンス予約購入割引」、「余剰インスタンス割引」について、それぞれの特徴や相違点を比較しながら解説いたしました。
次回の後編では、「Alibaba セービングプラン」、「AWS セービングプラン」、「Alibaba サブスクリプション」、「Azure ハイブリッド特典」と「 Google 継続利用割引」をご紹介いたします。
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