クラウド利用料の削減方法とツールを紹介 (Alibaba/AWS/Azure/Google)

2022年8月31日掲載

キービジュアル

こんにちは。ソフトバンク株式会社の王文礼です。

本記事では、Alibaba Cloud、Amazon Web Services、 Microsoft Azure と Google Cloud 4社のクラウドサービスを利用する際、利用料の削減方法とツールを紹介いたします。ご参考になりましたら幸いです。

※各クラウドはアルファベット順で記載します。

目次

コスト削減が各組織の共通課題

2022 年 3 月に、Flexera 社は 2022 State of the Cloud Report を発表しました。2022 State of the Cloud Report は、世界中の 753 人のクラウド利用者(意思決定者および一般ユーザ)のパブリッククラウド、プライベートクラウドおよびマルチクラウドに関する経験とインサイトを調査・分析し、クラウド利用の傾向をまとめました。

このレポートによると、あらゆる規模の組織にとって、クラウド利用の最適化(コスト削減)が最大の課題となっています。

ソース:Flexera 2022 State of the Cloud Report、31 ページ目 (N=753)

円安の影響

AWS をはじめとする海外クラウドサービスは、米ドルで単価が設定されています。国内ユーザは直近の為替レートにもとづき、利用料を円に換算して支払うのが一般的です。そのため、円安に振れると、円安分だけクラウドの利用料が上昇します。

2022 年 3 月上旬まで、円ドルの為替レートは 115 円/ドルでしたが、2022 年 8 月現在 137 円/ドルへと急速に円安が進んできました。単純に計算すると、円安の影響で 20% ほどクラウドの利用料が高くなっています。

この円安の状況を加味すると、国内ユーザにとっては、コスト削減がより一層の急務になっているのではないかと思います。

本記事では Alibaba Cloud(以降 Alibaba と表記)、Amazon Web Services(以降 AWS と表記)、Microsoft Azure(以降 Azure と表記)と Google Cloud(以降 Google と表記)4 社を対象に、コスト削減の方法および各社が提供しているツールを紹介します。

利用料の内訳の把握

コスト削減の第一歩は、各クラウドサービスの利用状況を把握することです。利用料トップのサービスに対して、コスト削減策を打つのは効率的によいでしょう。

Alibaba、AWS、Azure と Google はサービスの利用料と使用状況を表示および分析するためのツールを提供しています。各社のツールはだいたい以下のような機能を備えています。

  • 現在利用しているサービスごとの利用料金や使用量などをグラフで表示
  • フィルタリングを使って、さまざまな角度からサービスの利用料を確認
  • 予算を設定し、予算が消費された分に応じてアラームで通知
  • 割引プランやンスタンスタイプ/サイズに関する推奨事項
  • 将来の利用量の予測
 ツールWebサイト/ドキュメント
AlibabaUser Center    ユーザガイド
AWSAWS Cost Explorer

製品詳細ページ

ユーザガイド

AzureMicrosoft Cost Management

製品詳細ページ 

Cost Management / Billing のドキュメント

Google

Cost Management

製品詳細ページ

Cloud Billing のドキュメント

今回は、各クラウドでよく利用されているサービスの中、コンピューティングとストレージについての効果的なコスト削減方法を紹介します。

コンピューティングコストの削減

コンピューティングコストを削減するための 5 つの方法を見ていきましょう。

1) 不要なインスタンスの削除、インスタンスタイプ/サイズの最適化

コスト削減の最も簡単な方法は、使われていないリソースの削除とオーバースペックなインスタンスの見直しです。基本的に最新世代のインスタンスタイプの方が性能がよくて料金も安いため、最新世代のインスタンスの使用をお勧めします。

日々のワークロードを分析し、アイドル状態のインスタンスが存在していないか、利用中のインスタンスのタイプやサイズが適切かどうかを判断してくれるツールが各社から提供されています。

 

ツールWebサイト/ドキュメント

Alibaba

ECS コンソール

ECS コンソールの「リソース概要」にインスタンスに関する推奨事項あり

AWS

AWS Cost Explorer

サイズの適正化に関する推奨事項

AWS Compute Optimizer

EC2 インスタンスの推奨事項を表示

AWS Trusted Advisor

低稼働率の Amazon EC2 インスタンス

Azure

Azure Advisor

シャットダウンに関する推奨事項

SKU のサイズ変更に関する推奨事項

Google

Recommender

アイドル状態の VM の推奨の表示と適用

VM インスタンスに対する推奨マシンタイプの適用

2) インスタンスの停止/再開の自動化

夜間や休日での停止が可能であれば、インスタンスの停止を検討しましょう。仮に土日と休日は終日停止、平日夜間は 12 時間停止が可能であれば、終日稼働と比べると 70% 以上のコスト削減となります。

自動化ツールを使って、インスタンスの停止/再開スケジュールを設定できます。

 

インスタンスの停止/再開自動化ツール

Webサイト/ドキュメント

Alibaba

Function Compute を使って、好きなプログラミング言語でインスタンスの停止/再開自動化ツールを作成可能

製品詳細ページ

Function Compute のドキュメント

AWS

AWS Instance Scheduler

製品詳細ページ

ユーザガイド

Azure

Azure Automation

製品詳細ページ

ユーザガイド

Google

Cloud Scheduler

製品詳細ページ

ユーザガイド

3) 余剰インスタンスの利用

各クラウドプロバイダーは、余剰のコンピューティングリソースを入札制で大幅な割引価格で提供しています。ビッグデータ解析、高性能計算、メディアトランスコード、バッチ処理ジョブ、開発環境などの中断に対応できるワークロードの場合、余剰インスタンスを使用すると、大幅なコスト削減を実現できます。

 

料金プラン

最大割引

Alibaba

Preemptible Instances (プリエンプティブルインスタンス)*

90%

AWS

Spot Instances (スポットインスタンス)

90%

Azure

Spot Virtual Machines (スポット VM)

90%

Google

Spot VMs (スポット VM)

91%

* 契約によっては、購入できない場合があります。

4) 割引プランの購入

ここまで検討して残っているインスタンスは、常時稼働のものになるのではないかと思います。安定して長期で稼働するインスタンスに対して、リザーブドインスタンス (RI) やセービングプラン (SP) などの割引プランを適用することで、大幅なコスト削減ができます。

 

割引プラン

Alibaba

Reserved Instances (リザーブドインスタンス)

Savings Plans (セービングプラン)

Subscription (サブスクリプション)

AWS

Reserved Instances (リザーブドインスタンス)

Savings Plans (セービングプラン)

Azure

Reserved VM Instances (予約 VM インスタンス)

Google

Committed Use Discounts (確約利用割引)

5) オートスケーリングの使用

クラウドのメリットの一つは、必要なときに必要なキャパシティだけを実行できることです。オートスケーリングを使用して、トラフィックの増加に対応するために適切にスケールアップし、トラフィックが低下したときに自動的にスケールダウンすることで、アプリケーションのパフォーマンスを可能な限り低コストで維持できます。

オートスケーリングを使えば、週末や夜間にはインスタンスをスケールダウンし、平日仕事が始まるときには自動的にスケールアップするような設定もできます。

 

ツールドキュメント

Alibaba

自動スケーリング

ユーザガイド

AWS

EC2 自動スケーリング

ユーザガイド

Azure

自動スケーリング

ユーザガイド

Google

インスタンスグループの自動スケーリング

ユーザガイド

ストレージコストの削減

次は、オブジェクトストレージとブロックストレージのコスト削減方法を解説します。

1) 適切なオブジェクトストレージクラスの使用

多種多様なストレージサービスの中で、オブジェクトストレージが最も使われています。Alibaba の Object Storage Service (OSS)、AWS の Simple Storage Service (S3)、Azure の Blob Storage、と Google の Cloud Storage は、4 社が提供しているオブジェクトストレージです。

オブジェクトストレージは、データの用途やアクセス頻度、保存期間に応じて、さまざまなストレージクラスが設計されています。各ストレージクラスの料金はかなり違うので、最も費用対効果の高いストレージクラスにデータを格納することは、ストレージのコスト管理において非常に重要です。

アクセス頻度の低いオブジェクトを自動で低コストのストレージクラスに移行させるライフサイクルポリシーを設定することで、コストを削減することができます。

AWS S3 には Intelligent-Tiering という特殊なストレージクラスがあります。ライフサイクルポリシーを設定するためのストレージ使用状況を分析する時間がない場合、S3 Intelligent-Tiering にデータを移行すれば、アクセスパターンの変化に応じて、S3 Intelligent-Tiering は最もコスト効率の高いストレージクラスにデータを自動的に移行してくれます。

Azure では、ストレージの予約も提供しています。Azure Storage Reserved Capacity を使用すると、1 年間または 3 年間の Azure Storage を契約することにより、ストレージコストを減らすことができます。

 

ツールウェブサイト/ドキュメント

Alibaba

OSS ライフサイクルルールの管理

ユーザガイド


AWS

S3 Storage ライフサイクルの管理

ユーザガイド

S3 Intelligent-Tiering

ユーザガイド

S3 Storage Class Analysis 

ユーザガイド

S3 Storage Lens

ユーザガイド


Azure

Blob Storage ライフサイクル管理ポリシー

ユーザガイド

Azure Storage Reserved Capacity

Blob Storage の価格

Google

Cloud Storage ライフサイクルの管理

ユーザガイド

2) アイドル状態のブロックストレージボリュームの削除

Alibaba の Block Storage、AWS の Elastic Block Store (EBS)、Azure の Managed Disks (Disk Storage)、と Google の Persistent Disk / Local SSD は、4 社が提供しているブロックストレージです。

Azure Disk Storage 予約を利用すると、1 年間の Premium SSD 容量がコミットされ、ストレージのコストを節約することができます。現在は、一部の Azure Premium SSD の SKU にのみにストレージ予約が使用できます。

インスタンスを削除しましたが、インスタンスにアタッチされたブロックストレージボリュームの削除を忘れて、知らないうちにずっと料金を払っていることがよくあります。各社が提供しているツールを使って、アタッチされていない/使用頻度の低いブロックストレージボリュームを確認できます。

 

ツールドキュメント

Alibaba

-

-

AWS

AWS Cost Explorer

「EC2 その他」でアイドル状態の EBS ボリュームを確認するには:
Cost Explorer を開く > フィルタの「サービス」>「EC2 その他」>「グループ化の条件」の「使用タイプ」を選択

AWS Compute Optimizer

EBS ボリュームの推奨事項

AWS Trusted Advisor

Amazon EBS の過剰プロビジョニングボリューム

利用頻度の低い Amazon EBS ボリューム

Amazon EBS Snapshot Archive

Amazon EBS スナップショットのアーカイブ

Azure

Azure Disk Storage 予約

Azure Disk Storage 予約によるコスト削減

Managed Disks の価格

Managed Disks の増分スナップショット

マネージドディスクの増分スナップショットの作成

Google

Recommender

アイドルリソースに関する推奨事項の表示と適用

まとめ

今回は、コンピューティングとストレージについてのコスト削減方法および利用できるツールを紹介しました。

AWS は、コンピューティングとストレージのみならず、データベースやネットワーキングに対しても多数の料金分析/最適化ツールを提供しています。最初はどのツールを使うべきか迷うこともあると思いますが、各ツールの用途を理解できたら、気軽にコスト管理を徹底することもできます。

Azure がストレージに対しても、長期利用に優しい割引プランを提供しているのはありがたいです。

コスト削減は、一時的なアクションではなく、その意識を組織全体に浸透させ、定期的に実施することが大事です。今回紹介した方法は着手しやすいところもありますので、皆さまのクラウドコスト削減の参考としていただければ幸いです。

関連サービス

Alibaba Cloud

Alibaba Cloudは中国国内でのクラウド利用はもちろん、日本-中国間のネットワークの不安定さの解消、中国サイバーセキュリティ法への対策など、中国進出に際する課題を解消できるパブリッククラウドサービスです。

Amazon Web Services (AWS)

ソフトバンクはAWS アドバンストティアサービスパートナーです

「はじめてのAWS導入」から大規模なサービス基盤や基幹システムの構築まで、お客さまのご要望にあわせて最適なAWS環境の導入を支援します。

Microsoft Azure

Microsoft Azureは、Microsoftが提供するパブリッククラウドプラットフォームです。コンピューティングからデータ保存、アプリケーションなどのリソースを、必要な時に必要な量だけ従量課金で利用することができます。

Google Cloud

Google サービスを支える、信頼性に富んだクラウドサービスです。お客さまのニーズにあわせて利用可能なコンピューティングサービスに始まり、データから価値を導き出す情報分析や、最先端の機械学習技術が搭載されています。

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