マルチクラウドとは？メリット、課題、ハイブリッドクラウドとの違いを解説

ハイブリッドクラウドとマルチクラウドの違い

マルチクラウドと混同されるキーワードとして、ハイブリッドクラウドがあります。どちらも二つ以上のクラウドを組み合わせる点は共通していますが、以下のような違いがあります。

ハイブリッドクラウドは、自社専用のプライベートクラウドや物理サーバ（オンプレミス）とパブリッククラウドを組み合わせている点がマルチクラウドとの大きな違いです。異なるサーバを組み合わせることで、それぞれメリットを生かしつつデメリットをカバーすることができる、いわば「いいとこどり」のクラウドサービスです。

ハイブリッドクラウドの特長

ハイブリッドクラウドの特長は、以下の通りです。

• セキュリティ面で優れたプライベートクラウドと低価格のパブリッククラウドを組み合わせることで、低価格＆高度なセキュリティ体制の構築が可能
• 複数のサーバ利用で負荷分散ができ、パフォーマンスの高速化が実現
• 複数のクラウドを組み合わせるので、システム設計や構築、運用が複雑

ハイブリッドクラウドもマルチクラウドと同様に各クラウドのメリットを組み合わせてデメリットを補うことができます。その反面、システムの管理が複雑になる、運用方法が難しいなどのデメリットもあります。ハイブリッドクラウドの構成要素としてプライベートクラウドが加わる点が、マルチクラウドとの大きな違いです。

マルチクラウド環境の注意点

マルチクラウド環境の注意点として２点解説します。

マルチクラウドのセキュリティ課題

マルチクラウドには、セキュリティ面で課題が残ります。

従来のオンプレミスでは、ネットワーク境界にファイアウォールを設置し外部からの攻撃を防いでいました。しかし、クラウド環境ではファイアウォールを使用できる明確なネットワーク境界がないため、別途設定が必要です。また、クラウドを複数使用すると誤設定が起こりやすく、外部の脅威から自社システムを防ぎきれない状態になってしまいます。

マルチクラウド運用・管理・監視の課題

マルチクラウドは、運用や管理、監視が複雑化するという課題があります。

パブリッククラウドごとに異なる機能があり、どの部署が何の機能を使用しているか管理統制することは容易ではありません。また、各ベンダが提供するAPIやサービスレベル契約、請求書の管理が複雑になる傾向にあります。さらに、複数のサービスを使用するとアカウント管理が煩雑になります。マルチクラウドを効果的に運用するには、管理統制する社内体制を組むか、外部パートナーに依頼する必要があるでしょう。

マルチクラウド戦略の進め方

各部署がクラウドを勝手に契約するシャドーITにより、マルチクラウド環境が社内で偶発的に起こるケースは少なくありません。そこで、企業としてクラウドの運用方針を定めた「マルチクラウド戦略」を立てることが重要です。ここでは、マルチクラウド戦略の進め方を解説します。

１.利用目的、目標を決める

まずはマルチクラウドの利用目的や目標を定めることが大切です。以下のような例が挙げられます。

• メガクラウドへの依存を避ける
  
• バックアップ環境を別のパブリッククラウドに作る
• AIやIoTをクラウド上で活用した新規事業を立ち上げる

利用目的が明確になると、必要な機能を持つベンダを選びやすくなります。目標なしにマルチクラウド化を進めてはコストや運用の手間が増えるだけです。まずは利用目的を定めることからはじめましょう。

２.ベンダの選定を行う

マルチクラウドの利用目的に応じてベンダを選定します。必要な機能を備えているのはもちろん、費用やサポート体制も検討してそれぞれの特徴を比較しましょう。

３.移行計画を立てる

ベンダの選定後、クラウドへデータ移行するための計画を立てます。その際、マルチクラウドを構築するための社内体制を整備することが大切です。しかし、開発が複雑なマルチクラウドを社内で構築や運用ができない場合は、外部パートナーに依頼すると社内負担が軽減します。

４.導入後にマルチクラウドを見直す

マルチクラウドの導入後、円滑に運用できているかを確かめて必要に応じて見直します。既存アプリケーションの稼働やセキュリティなどの現況を把握して、改善策を打ち出します。マルチクラウドは、ハイブリッドクラウドのように自社で機器を準備する必要がないので、改善しやすいのがメリットです。継続的に課題を抽出し、最適化されたマルチクラウド環境の構築を実現させましょう。

まとめ

マルチクラウド環境の構築は、自社システムの方向性を整理してから取り組むことが大切です。また、担当者の負担やコストも考慮しながら、導入後も最適な環境を維持できているか見直しを続ける必要があります。特にマルチクラウド環境ではネットワークの見直しや構成が重要になります。クラウドごとにネットワークの調達や管理を行うと煩雑になり、時間と労力がかかるためです。クラウドとネットワークの関係については「クラウド実装で見落とされがちな、ネットワーク課題の解決法」をご覧ください。

マルチクラウドの構築や管理、運用は複雑で手間がかかるため、社内で全て完結するのは現実的ではありません。最適なクラウドサーバの選定や設計、構築、運用、マルチクラウドの導入をご検討の際は、ソフトバンクまでご相談ください。クラウドに長けたエンジニアがサポートいたします。

関連事例

関連資料

関連サービス

関連セミナー・イベント