M365 / GWSのメールで、メルマガを配信してもよいか?

2025年2月4日掲載

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皆さんこんにちは、ソフトバンクの浅沼です。

今日は、Microsoft 365(M365) / Google WorkSpaces (GWS) などのグループウェアサービスに付随している標準のメールサービスやSMTPサーバ(送信メールサーバ)でメールマガジン(メルマガ)やシステムからの配信メールを送ってもよいか?について、考察していこうと思います。

なお、最初に述べておきますが私の個人としての考えに基づくものであり、全てのお客様に当てはまる事ではない点ご了承ください。

  • グループウェアサービスについて
  • メールマガジンについて
  • この記事は企業のIT管理者向けとなります
  • メールマガジンや不特定多数へのシステムからのメール配信を行っている企業の方で、グループウェアサービスのSMTPサーバを利用するか検討しているへ向けた資料

目次

はじめに

近年、企業や組織は効率的なコミュニケーションのためにGoogle WorkspaceMicrosoft 365といったグループウェアを導入しています。

これらのツールは、メール、カレンダー、ドキュメント共有など多岐にわたる機能を安価に提供し、業務の効率化に貢献しています。そして、グループウェアには組織のメンバーが利用するWebメールやシステムとの連携を対象にしたSMTPサーバの機能も提供されています。このグループウェアが提供するメールサービスからメールマガジンなどの送信をしてもよいでしょうか?

私が調査した結果、いくつかの課題があることが判明したので一つずつ紹介します。

グループウェアの送信制限に抵触する可能性がある

Google WorkspaceやMicrosoft365などのグループウェアは、スパム行為を防ぐためにメールの送信制限を設けています

具体的には、一日に送信できるメールの数に上限があり、多量のメールを一度に送信することができません。これは、メルマガの配信を行う際に大きなハードルとなります。

具体的には、サービスごとに以下のような制限があります:

このような制限により、大規模なメールリストを持つ企業では一度に全ての購読者にメールを送信することができず、複数日にわたって分割して送信するなどの工夫をする必要が生じます。

これらのメールの制限はかなり細かく分刻みで制御されていますし、実はサポートやヘルプには記載の無い裏仕様的なものも存在しています。

なぜ裏仕様があるの?

「なぜ公式にすべての仕様を表に出さないのか?」と疑問に思うかと思いますが、悪意を持ったユーザーは必ずシステムの穴を見つけて悪いことをするものです。公式にすべてを発表してしまうと仕様が丸裸になりシステムの穴を付くのが容易になってしまいます。なので、公式には発表してない裏仕様を変更する事で常に悪意を持ったユーザーからシステムを保護しています。

ドメインレピュテーションの低下を招く可能性がある

もう一つの重要な問題は、ドメインレピュテーションの低下です。

グループウェアのメールを頻繁に大量送信に利用すると、受信側のメールサーバーでドメインレピュテーションが低下し、スパムとして認識される可能性が高まります

これにより、将来的に正当なメールがスパムフォルダに振り分けられたり、最悪の場合は受信拒否されるリスクがあります。

※「レピュテーション」とは「評判、風評」といった意味合いになり、ドメインと合わせることで、ドメインの信頼性がインターネット上で上がったり下がったりすることを指します。

レピュテーションの管理が難しい

大量のメール配信において、ドメインレピュテーションを維持するためには、送信メールの内容や送信頻度、受信者の反応などを適切に管理する必要があります。特に、以下のポイントに注意が必要です:

  • 購読者の同意を得た上でメールを送信する
  • 定期的にメールリストを更新し、不要なアドレスを削除する
  • メールの内容を高品質で有益な情報にする
  • 送信頻度を適切に設定し、過剰なメール送信を避ける

しかし、これらの管理をグループウェア上で行うことは容易ではありません

ドメイン全体でどの様に配信しているか?特に人数の多い企業などは数百という部門があり個々の申請などを受け付けて対応したり、配送の制御を行うことは現実的ではないでしょう。

ドメイン全体に影響がある可能性がある

このドメインでメルマガを配信するとレピュテーションの問題で通常業務を行ってるすべての社員のメールが全部止まってしまうというリスクに直面する可能性があります。メールを送信した1名のみへの影響だけではないということを認識するのが重要です。

せっかくグループウェアのメールサービスがあり、安価にSMTPサーバを利用してメールの配信が出来ると思われるかと思いますが、想像してみてください・・・ある日、突然、全社員のメールが送れない(受け取られない)状態になることを。それも数日〜数か月続く事もありますので仕事どころではなく損失も多大になります。

では、回避策はあるのか?ですが、メインで社員が利用するドメインを仮に「@example.com」とします。コスト影響が低くて、簡単なものとして、普段社員が利用するドメインとメルマガなどに使用するドメインを分ける方法があります。

 [社員用ドメイン]= @example.com

 [メルマガ用ドメイン]=@example1.jp

こうする事で、仮にメルマガ用のドメインのレピュテーションが下がったとしても社員が利用するドメインには影響が及びません。ドメインの取得は.comであれば年額数千円ですし、.jpなどの日本で法人しか購入できないドメインであっても一桁万円内に収まる金額です。

サブドメインを作成したら、そもそもドメインの使用料も抑えられますが私個人の経験からはあまりお勧めできません。複数のメールマガジン内でサブドメインを作成し分けるのは良いですが、社員用とメルマガ用でサブドメインで分けてもレピュテーションはルートドメインやファーストドメインにも影響を及ぼすことがあるので確実に安全とは言えません

専用ツールの利用を推奨

万が一レピュテーションが低下した際に影響を最小化するための対策について触れましたが、そもそもレピュテーションを下げずにメルマガを配信したいというのがIT管理者の考えることだと思います。

安全なメルマガの配信には、専用のメールマーケティングツール(メール配信ツール)を利用することをおすすめします。大量のメール送信に最適化されており、以下のような利点があります:

  • 大量送信に対応したインフラストラクチャ
  • 詳細な分析機能による効果測定
  • 高度なレピュテーション管理機能
  • スパムフィルタリング機能の強化

色々な会社が専用ツールをリリースしており、これにより、メールマガジンの効果を最大化しつつ、ドメインレピュテーションの低下を防ぐことが可能となります。

結論

Google WorkspaceやMicrosoft365などのグループウェアのメールサービスを利用してメールマガジンを配信することは、送信制限やドメインレピュテーションの低下といった問題点があるため推奨されません。

安価で手軽にできる対策として、ドメイン自体も分けてしまうことでリスクを低減することができるでしょう。さらに、専用のメールマーケティングツールを利用をすることで、今回紹介したような問題を回避し、効果的なメールマガジン配信を行うことが可能です。

本記事では具体的なサービスの紹介はしませんが、企業や組織に合わせた適切なツールを選択して、メールマーケティング戦略を成功に導くことが重要かと思います。ぜひ調べてみてください。

また、社員には大量のメール配信をしないことを周知することもトラブルを未然に防ぐために大切なことになるでしょう。

リスクを取るか?それとも費用を取るか?経営としての判断も求められるかと思いますが、本記事を参考に未来のトラブルを回避できれば幸いです

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