ECS Insightで実現する、ECSリソースの最適化と運用改善

2025年5月23日掲載

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Alibaba Cloudが提供するElastic Compute Service(ECS)は、クラウドインフラの中核を担う重要なサービスです。その運用において、リソースの無駄を省き、可用性やセキュリティを向上させることは、常に求められる課題です。こうしたニーズに応えるためにリリースされたのが「ECS Insight」という新機能です。

本記事では、ECS Insightの機能概要、想定される活用シナリオ、実際の使い方、さらには効果検証の進め方について詳しく紹介します。

目次

1. ECS Insightとは何か?

ECS Insightは、Alibaba CloudにおけるECSインスタンスとその関連リソースの使用状況を多角的に分析し、最適化に向けた改善提案を行うサービスです。具体的には、インスタンス設定の妥当性、コスト効率、運用自動化の状況、リソースの信頼性、弾力性、そしてセキュリティリスクに至るまで、6つの観点から総合的にスコアリングを行います。それぞれの観点について、固定の点数が設定されており、基準を満たさない場合は減点される仕組みです。スコアに応じて、どのポイントに改善の余地があるかがひと目で把握できるようになっています。

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このような総合評価の結果は、単なるスコア提示に留まらず、具体的な推奨アクション(たとえばインスタンスタイプの見直しや、セキュリティグループ設定の最適化)まで提供されるため、日々の運用改善に直結させることが可能です。

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2. どのような場面で活用できるか?

ECS Insightは、クラウドリソースの最適化に悩むあらゆる現場で役立ちます。たとえば、リソースコストの見直しが求められるタイミングでは、ECS Insightが提供するコストインサイトをもとに、ワークロードに適したインスタンススペックへの切り替えが検討できます。また、可用性向上を目的としたインフラ見直しにおいても、信頼性スコアを参照することで、シングルポイント・オブ・フェイラー(SPOF)の存在を早期に発見できるでしょう。

加えて、運用自動化の成熟度を定期的に評価することで、手作業によるオペレーションが依然として多い領域を特定し、自動化による効率化を推進する指針を得ることも可能です。セキュリティ面についても、リソースのアクセス管理が適切に設計されているかを定量的に把握できるため、セキュリティ監査前のセルフチェックツールとしても有効です。

3. ECS Insightの使い方

ECS Insightを利用するには、まずAlibaba Cloudのコンソールから該当サービスを有効化する必要があります。現在、この機能はプレビュー版として提供されており、利用には事前申請が必要です。申請が承認されると、アカウント内に存在するすべてのECSリソースが自動的に評価対象となり、1日後(T+1日)に初回の分析レポートが生成されます。

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レポートでは、各観点のスコアがグラフィカルに表示され、改善が必要なポイントとその具体的な改善策が提示されます。例えば、「コスト最適化」のスコアが低い場合には、現在利用しているインスタンスがオーバースペックである可能性が示され、それに応じた推奨アクションが提示される形です。これらの提案に基づき、適切なインスタンスのスペック変更や課金方式の見直しを行っていきます。

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操作自体は非常にシンプルで、特別なエージェントのインストールや複雑な設定変更は必要ありません。コンソール上で状況を確認し、必要に応じて個別リソースのチューニングを行うだけで、運用の質を向上させることが可能です。

4. 最適化効果の検証方法

ECS Insightを単なる分析ツールに留めず、実際に運用改善へとつなげるためには、改善施策の効果をきちんと検証することが重要です。検証の基本的な流れはシンプルで、まず最初に、Insightによる初回の評価結果を記録します。どの観点でスコアが低かったかを明確にし、次に、推奨されたアクションを段階的に適用していきます。

たとえばコスト最適化の提案に従って、リザーブドインスタンスへの切り替えを行った場合、翌日のレポートでコストインサイトのスコアがどの程度改善したかを確認します。この作業を繰り返すことで、施策ごとの効果を定量的に把握し、改善の優先度を柔軟に見直していくことができます。

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注:図の中の[分]は中国語の表記で、日本語の[点数]の意味です。

5. System Eventとの連携について

ECS Insightで得られた分析結果は、Alibaba Cloudの「System Event」機能と組み合わせることで、さらに運用の強化が図れます。System Eventは、インスタンスの障害予兆やメンテナンス情報をリアルタイムで通知する仕組みです。Insightで発見された信頼性リスクに対して、System Eventによる予防的なアクションを組み合わせることで、未然に障害を防ぐ体制を構築できます。これにより、計画停止や予期しないトラブルへの対応力が大きく向上します。

6. まとめ

ECS Insightは、単なるモニタリング機能にとどまらず、ECSリソースの最適な設計と運用を促すための実践的なツールです。コストの削減、運用自動化の推進、システムの可用性向上、セキュリティレベルの引き上げといった幅広い領域で、明確な改善アクションを提示してくれる点が大きな特長と言えるでしょう。これまで運用管理が属人的になっていた組織にとっても、ECS Insightは強力な助けとなるはずです。継続的な活用によって、クラウドインフラの質と効率性を一段高いレベルへと引き上げていきましょう。

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