AIエージェント元年である2025年を振り返ってみよう!ー自律的に思考し行動するAI時代の幕開けー

 

2025年12月12日掲載

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この記事は、ソフトバンク アドベントカレンダー 2025、6日目の記事でしたが、諸事情により遅れてしまいました。

2025年も年の瀬で、残すところ1ヶ月を切りました。
みなさま、いかがお過ごしでしょうか。

今年は「AIエージェント元年」とも呼ばれるほど、自律的に考え動くAIの概念が社会に浸透し、実装フェーズへと大きく進展した1年だったように思います。生成AIの進化は、単なる会話や情報生成を超え、タスクの実行や意思決定支援といった高度な知的行動へと拡張されました。

この記事では、AIエージェントとは何かを出発点とし、2025年における技術と産業の動向、国内外の事例、そしてこれからの展望を振り返ります。2026年をより前向きに迎えるためのヒントとして、ぜひお役立ていただければ幸いです!

目次

AIエージェントとは

AIエージェントとは、ユーザーから与えられた目的に応じて、自ら情報を収集し、最適な手順を判断・実行する自律型のAIです。従来の生成AIやチャットボットが単一応答にとどまっていたのに対し、エージェントは動くAIとして業務全体の遂行を担います。

その中核には大規模言語モデル(LLM)があり、外部ツール連携・記憶機構・マルチステップ推論といった機能が統合されています。これにより議事録の作成支援や提案資料のたたき台作成、日常的なデータ整理といった業務が、対話ベースで実行可能となりつつあります。

AIエージェントの動向|2025年の振り返り

2025年は、AIエージェントが世界中で一気に実用段階へ進んだ年でした。その広がりは特定の企業に限らず、産業や研究、政策、社会のあらゆる場面で確かな存在感を帯びています。日本でも金融・製造・行政などで導入が進み、「AIエージェント元年」と呼ぶのにふさわしい変化が見られました。

ここでは2025年に何が起きたのかを整理するために、4つの視点からざっくり振り返っていこうと思います。

1、技術の進化:AIエージェントを支えた基盤の飛躍

2025年は、大規模言語モデルの進化が一段と加速した年でもありました。Metaの Llama 4、Googleの Gemini 3 シリーズ、OpenAIの GPT-5.1 といった新世代モデルが次々と登場し、長文処理、マルチモーダル理解、論理推論の面で大きく前進。これまで難しかった複雑なタスクでも、より安定してこなせるようになってきました。

さらにOpenAIの Agent API をはじめ、各社がエージェント向けの基盤機能を充実させたことで、「ツールを組み合わせて自律的にタスクを進めるAI」が一気に扱いやすくなりました。タスク分解、状態管理、外部サービスとの連携など、エージェントに必要な要素が標準化され、開発者でなくても利用できる範囲が広がったのは大きな変化です。

Apple Intelligence による Siri のエージェント化、Microsoft の Copilot が Windows に統合される動きなど、OSレベルでのエージェント実装も進みました。これは「エージェントを使うぞ」と意識しなくても、日常的にAIにタスクを任せられる環境が整い始めたことを意味しています。

技術そのものが成熟したというより、エージェントが当たり前に使える存在へ近づいた1年だったと感じます。

2、企業・製品・エコシステムの動向

Googleは Workspace Studio を公開し、業務エージェントの開発をノーコードで行える環境を提供。Microsoftは WindowsにCopilotを深く統合し、誰でも自然にエージェントを使える流れをつくり始めています。AWSも Amazon Agent Framework を打ち出すなど、主要クラウドがそろってエージェント基盤の整備に動いたのは大きなポイントです。

日本でもその動きは顕著であり、SoftBank × OpenAI の提携や AIデータセンター構想、NEC、TIS、IBM、PwC Japan など大手企業がエージェント開発・導入に力を入れています。金融・製造・通信・ECなど、多様な業種でエージェントを前提とした業務設計が始まりつつあり、従来の効率化の延長ではなく、業務そのものを再構築する動きが見えてきました。

SaaSの領域では Notion、Figma、Slack など、日常的に使われるツールがエージェント機能を標準で搭載し始め、UI/UXデザイン領域においても「Agent-first」へとシフト。アプリを操作するのではなく、目的を伝えるだけで業務が進む体験が徐々に広がりはじめました。

企業の取り組みの幅が広がったことで、AIエージェントは実験的な技術から業務に組み込まれる前提の存在へと位置づけが変わった1年だったといえます。

3、 研究・科学応用・ロボティクス

Google DeepMind の Gemini Robotics の発表は象徴的で、物理推論と行動計画を統合したモデルにより、ロボットが環境を理解しながら自律的にタスクを進める未来が現実味を帯びてきました。

科学分野でも動きは活発で、物理学オリンピックレベルの問題を解いた研究や、材料探索・創薬に特化したエージェントが登場。論文探索から仮説生成、実験計画の提案まで、これまで研究者が行ってきた高度な知的タスクをサポートする取り組みが大きく進みました。

こうした分野での進化は、エージェントが単に作業を代替する存在ではなく、人間とともに知識をつくり出すパートナーになりつつあることを示しているように感じます。研究者・技術者だけでなく、一般のビジネスパーソンにとってもAIがどこまで思考や行動に踏み込めるのかを考えるヒントになる領域でした。

4、政策動向・市場動向・社会的インパクト

日本では、政府が自律AIの責任分界や運用ルールを整理した「AIエージェント安全運用ガイドライン」の草案を提示し、公共分野でもRAGを使った文書作成や業務支援が徐々に広がりつつあります。EUや米国でも規制や評価フレームワークが整備され、世界的にエージェントを前提にした制度設計が動き始めました。

市場では、多くの企業がAIエージェントを「業務改善のための便利ツール」から、「プロセスを再構築する中核技術」へと捉え直しつつあります。日本でも金融・製造・行政など幅広い領域で導入が進み、カスタマーサポートや営業支援、企画など、これまで属人的だった業務にも浸透し始めています。一方で、導入した企業の一部ではROIの見えにくさや役割分担の難しさから停滞も起きており、技術の成熟と実運用のギャップが浮き彫りになった年でもありました。

法政策の観点においては、2025年6月に公布された「AI新法(人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律)」が、日本で初めてAIを包括的に対象とした法律として位置付けられました。リスクに備えつつもイノベーションを促すバランスを重視しており、AI戦略本部の設置や基本計画の策定が進められています。
事業者への情報提供要請や指導が法律に基づいて可能となり、重大事案時には社名公表を含む強い措置も想定されています。将来的には命令や罰則など、法的拘束力のある規制へと拡張される可能性も示唆されています。


結果として、2025年はAIエージェントが「実験的な技術」から脱し、技術基盤の成熟、企業での実運用、研究分野での応用、そして社会制度の整備がそろって進んだことで、「実務を変える現実的な選択肢」として位置づけが明確になった1年でした。企業や行政の意思決定や業務設計にもエージェント前提の発想が入り始め、AIが組織の仕組みに本格的に影響を与え始めた転換点だったと考えられると思います。

なぜ今、AIエージェントが注目されているのか

2025年というタイミングで、AIエージェントがここまで注目を集めた背景には、技術の進化、社会構造の変化、そして企業を取り巻くビジネス環境の要請という、いくつかの要因が重なり合っています。

技術的な側面

大規模言語モデル(LLM)の飛躍的な進化により、AIは単なる情報処理のツールではなく、人間と同じように状況を読み取り、それに応じた判断を下すことができるようになりました。2023〜2025年にかけて登場した最新のLLMは、従来の会話の相手という役割を超えて、業務プロセスの一部を担う実行者として機能し始めています。特にマルチモーダル対応や長期的記憶、ツールの柔軟な連携といった技術要素の実装により、実務での活用が現実的なものとなりました。

こうした技術的な進展は、社会的なニーズと密接に結びついています。日本国内では、少子高齢化に伴う深刻な労働力不足や、属人化した業務体制の見直しが喫緊の課題となっています。特に中堅・中小企業を中心に、限られた人材で多様な業務をこなす必要性が高まるなかで、一部業務をAIに任せるという考え方は、単なる効率化を超えた持続可能な経営戦略として位置づけられるようになってきました。

ビジネス的な側面

コロナ禍以降において、非接触・非対面の業務遂行が求められる中で、リモートワークや業務のデジタル化が一気に進行しました。こうした中、エージェント型AIは「場所や時間に縛られず、安定して業務を遂行できる存在」として高く評価されています。また社内外の情報を横断的に活用し、提案・判断まで担える点において、従来のRPAや単機能の自動化ツールとは一線を画します。

興味深いのは、企業のAI導入に対するマインドセットの変化です。かつては「試験的に導入してみる」という姿勢が主流でしたが、今では「戦略的に導入し、既存業務を刷新する」という本格活用のフェーズに移行しつつあります。特に経営層や部門マネージャーが、AIエージェントを人材補完の選択肢と見なすようになったことで、導入決定のスピードが一気に加速した印象を受けます。


このようにAIエージェントは技術的な進歩によって「できること」が増えただけでなく、社会の課題やビジネスのニーズと合致することによって「使うべきもの」としての存在感を急速に高めてきました。まさに2025年は、その臨界点が訪れた転機の年だったと言えるでしょう。

AIエージェント時代の到来が与える影響|社会と働き方を変える新たなパラダイム

2025年を通じて、AIエージェントは社会やビジネスの構造を揺るがす変革の担い手へと進化しました。今後は「汎用性」と「安全性」の両立が重要となり、エージェントが自律的に判断し外部とやり取りする時代には、透明性・制御性・倫理的配慮・誤動作への対処といったガバナンスが不可欠になります。またAIが共に働く存在となることで、私たち自身の役割も変化し、創造性や判断力、関係構築といった人間ならではの価値がより重視されるようになるでしょう。

こうした変化に向き合うためには、エンジニアはエージェント設計や安全運用の理解が求められ、営業や企画など非技術職でもAI前提の業務設計・チーム運営・顧客提案が標準になっていく可能性があります。つまり、AIエージェントとの共存はすべてのビジネスパーソンに関わるテーマです。変化を恐れず、「任せるべきことはAIに任せ、自分は価値ある領域に集中する」という働き方を受け入れることが重要であり、その第一歩はAIエージェントに何ができるのかを理解し、自身の仕事への取り入れ方を考えることにあります。

まとめ

2025年はAIエージェントが大きく前進し、私たちの働き方にも少しずつ影響が見え始めた1年でした。この記事を通して改めて今年の動きを振り返ることで、自分の業務ではどこまで活用できたのか、逆にうまく使いこなせなかった部分は何だったのかを見つめ直すきっかけになると思います。

技術が急速に進む中で、焦る必要はありませんが、自分なりの距離感で向き合いながら、来年どう活かしていくか考えてみるきっかけになれば嬉しいです!

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