東北6県の中で最も広大な面積を有する岩手県は、平泉をはじめとした3つの世界遺産を有しており、歴史や文化の厚さと豊かさを感じるために国内外から多くの観光客が訪れます。そんな岩手県では新型コロナウイルス感染症の流行を機に、ソフトバンクのセキュアモバイルアクセス(以下、SMA)を導入。どこからでも安全に業務環境へアクセスできる環境を整えることで、職員の多様なワークスタイルに合わせた業務環境の構築をはじめとしたさまざまな改革を実現しています。
「SMAの導入により在宅勤務が可能となり、多様化する働き方への環境が整いました。在宅勤務や外出時の業務効率化、ネットワーク敷設のコスト削減、BCP※にもつながっています」
岩手県 ふるさと振興部 科学・情報政策室 行政情報化担当 主任 佐々木 氏
※BCP(Business Continuity Planning)とは、災害などの緊急事態において企業や団体が事業を継続するための計画を指す
岩手県の魅力について、佐々木氏にうかがいました。
「北海道に次ぐ県土面積を生かした農産業、畜産業が盛んで、三陸沖漁場やリアス式海岸での昆布やワカメ、ホタテやアワビといった海産物にも恵まれており、県内だけでなく日本の食を支えている県であることが特長の一つです。スポーツの分野においては、大谷選手をはじめとする世界で活躍する複数のスポーツ選手を輩出していることでも知られています。
そんな岩手県で私が所属する科学・情報政策室は、いわゆる情報システム部門で庁内システムやネットワークの管理、新規システムの導入検討といったIT関連のサポートを行っています。今回のサービス導入に関しては、SMAの導入から保守・運用までを包括的に実施しています」(佐々木氏)
これまでの働き方はどのようなスタイルだったのでしょうか。
「県ではかねてよりデスクトップPCを使用し、庁舎内で業務することが一般的でした。このためリモートワークやサテライトオフィスでの勤務といった柔軟な働き方が難しく、特に出張中の職員とのコミュニケーションや意思決定の遅れが課題となっていました」(佐々木氏)
コロナ禍がきっかけで、環境の整備が始まったと佐々木氏は話します。
「新型コロナウイルス感染症の流行を受け、リモートワークの必要性が急速に高まる中、県においても科学・情報政策室が中心となって対応策が検討されました。世の中のテレワークの潮流もあり、職員へのノートPC導入と併せて、安全に庁内ネットワークへアクセスできる環境を整備する検討を始めました」(佐々木氏)
ノートPCから安全に庁内ネットワークへアクセスできる環境を整備する必要性から、その手段としてSMAの導入を検討したとのこと。同時期にはBYOD型テレワークシステム※も並行して導入を検討したそうですが、BYODを利用するための事前申請手続きの煩雑さや使い勝手、セキュリティ面から、SMAでの検討を進めたと言います。
※BYOD(Bring Your Own Device)によるテレワークとは、従業員が私的端末(スマートフォンやタブレットなど)を業務に使用する仕組みを指し、慣れ親しんだデバイスで仕事ができるため、テレワーク等において生産性の改善が期待できる一方、セキュリティポリシーに準拠していない場合が多いため、BYODを導入する際には適切なセキュリティ対策やポリシーの策定が必要不可欠とされている
SMAは、ソフトバンクのモバイルネットワークを経由し、お客さまの企業ネットワークへセキュアなアクセスを実現するモバイルアクセスサービスです。導入時の状況を教えていただきました。
「令和2年度の1年間で情報収集から方針決定までを行い、コロナ禍の急激な変化に対応しました。令和3年度からは実際の調達と環境構築を進め、同年下期には正規職員へ順次ノートPCとSMAの環境を提供しました。導入を決定した理由として、行政業務においては県民の情報資産を取り扱うため、情報セキュリティが最も重要なポイントであると考えました。その中で、セキュアな環境を実現できコスト面でも最も安価なサービスがSMAであったため採用を決めました」(佐々木氏)
導入過程で大変だった点はありますか?
「庁内ネットワークへの接続時の認証処理について、設定と実際の挙動をテストしながら確認を繰り返し、セキュアな環境を構築するために試行錯誤しました。また、組織内での合意形成を図る際には、総務部門と協力して『働き方改革ロードマップ』を策定し、SMAの導入を働き方改革推進の施策の一つとして位置づけました。これにより、迅速な導入を実現することができました」(佐々木氏)
ソフトバンクの営業のサポート面について感想をうかがいました。
「業務で使用することになったノートPCには全台にSIMカードを実装しているものの、職員の担当業務によっては利用量に偏りがありました。それを相談したところ、より費用対効果のあるプランをご提案いただき、予算と利便性を両立することができました」(佐々木氏)
SMAの導入により、多岐にわたる効果が得られたと佐々木氏は語ります。
「導入の主な効果として、『業務効率化の実現』『ネットワークコストの削減』『業務継続性の強化』という3つの効果を実現することができました。まずは在宅勤務や外出・出張中、リモートワークの職員がいつでも庁内ネットワークにセキュアにアクセスできるようになり、決裁や情報共有が滞ることなく進められるようになりました。これにより、職場に不在の職員だけでなく、出勤している職員の業務効率化にもつながりました。
また、広大な県土を特徴とする岩手県において、多数の出先機関や出張事務所にネットワーク回線を設置する必要がありましたが、SMAの導入により、小規模拠点への回線敷設が不要となり、”働く場所とPC”さえあれば問題なく業務を行える環境が整い、コスト削減に貢献することができました。例えば岩手県の北上エリアは、工業地帯として企業誘致が盛んに行われており、県においても支援を行っていますが、支援のために新しく拠点を作ることとなった際にも場所さえ準備すればよく、これまでのような回線を整備するコストと手間や時間を削減することが可能になりました」(佐々木氏)
SMAの導入後は、必要に応じてノートPCのSIMカードを用いて庁内ネットワークに接続していると言います。
「出張の多い職員、企業誘致に関わる業務の職員間ではWEB会議がよく使われています。モバイルアクセスを利用する場合は、PC画面の右下のアイコン部分でSIMのオン・オフを容易に切替できるので利便性も高いと感じています」(佐々木氏)
(PC画面のSIM オン/オフ選択方法のイメージ)
BCPの側面からもその効果について佐々木氏はこう語ります。
「庁舎の停電や保守作業時でも、SMAは庁内ネットワークとは別の通信経路でデータセンターにアクセスするため業務継続が可能となるので、有事の際のBCP対策にも効果を発揮すると考えています」(佐々木氏)
コミュニケーションの円滑化についてはいかがでしょうか?
「従来のデスクトップPCを利用していた際は、紙に印刷した資料を会議室に持ち込み、会議中に出された修正、追加点等について資料等にメモをし、会議後に自席に戻って電子資料ファイルを再度編集していましたが、職員がノートPCを会議室に持ち込むことで、会議中にその場で電子資料の修正や意思決定が行えるようになり、紙資料の削減や業務プロセスの迅速化にもつながっています。また、子育て世代の職員や、介護をしながらはたらく職員にも、庁舎に出勤しなくても、在宅にて業務を行える環境を整えることができています」(佐々木氏)
多様化するワークスタイルに柔軟に対応すべく取り組む岩手県。将来の展望についてこう語ります。
「今後も時代にあった最適な環境を整えるため、職員の働き方を効率化していきたいと考えています。例えばノートPCの更新時には物理的なSIMカードの差し替え作業が負担となっているため、eSIM対応のサービス等も検討し、よりスムーズな端末の更新・管理を図りたいと考えています。また、現在はメールが主なコミュニケーション手段ですが、庁内のコミュニケーションをより円滑にするために、チャットサービスを利用してリアルタイムの情報共有や、外出時や在宅勤務時のコミュニケーション課題の解消を実現していきたいと思います」(佐々木氏)
人手不足が深刻な社会課題。県で働く全ての世代の職員が、よりよい環境で”ワーク×ライフバランス”を保てるよう、佐々木氏の庁内におけるITインフラ環境整備の取り組みは、これからも続きます。
お話を伺った方
岩手県 ふるさと振興部 科学・情報政策室
行政情報化担当 主任
佐々木 氏
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