2025.6
iPhone とsXGP／公衆回線の安定した電波で
院内コミュニケーションと業務効率を改善

秋田病院が抱えていた課題

　秋田病院は、最新の医療機器と高度な専門スタッフを備え、多彩な専門分野をカバーして患者さんへ最適な治療を提供している総合病院です。地域社会の健康をサポートする同院では、主なコミュニケーションとしてPCを使ったメールでのやりとりとPHSでの内線通話を行っていましたが、情報共有が遅延したり正しく伝わらないといったことが常態化しており、働きやすい環境とはいえない状況だったと言います。

「メールでのコミュニケーションでは、院内で使用できるPCの台数が限られていたために職員がその場にいないと迅速な連絡が取れず、緊急時の対応に利用できませんでした。日常業務においても情報共有が遅れることが頻繁にあったため、業務効率の低下や情報伝達の遅れが発生し、医療サービスの質にも影響を及ぼすことがありました」（土井氏）

　また、PHSは院内の通信環境が不安定で特定の場所では電波が届きにくかったため、重要な連絡が滞ることがあったそうです。

「電波状況が悪いため、例えば診療中や患者対応中に通信が途絶えることで、治療計画の共有や緊急時の対応が遅れるケースがありました。ほかにも、音声の途切れや切断が発生することがあり、情報の正確な伝達が困難なときもありました」（土井氏）

　PHSはあくまでも院内の通話通信手段であって、それ以上活用の幅を広げられないことも問題だったそうです。

非効率な職場環境から新たな課題が発生

　さらに、以前から離職率の高さが認識されており、職員の定着化も課題の1つとなっていました。

「職員は連絡手段を確保するために時間や労力を費やしてしまうといった、非常に効率の悪い環境下で業務をする必要がありました。その結果、こうした非効率な状況に不満を抱き、他施設へ転職する職員が増加し、新たな職員の育成や定着の必要性といった課題を生む悪循環に陥っていました。職員はもともと資格を有しており、どこでも勤務できると考える傾向が強いため、『無理をしてまでここで働く必要はない』という意識が離職率の上昇につながっていました」（土井氏）

　職員が働きやすい環境を整えるためには、効率的な連絡手段と業務のデジタル化が不可欠でした。従来のPHS内線電話やPCメールでのコミュニケーションでは、多様な業務ニーズに対応しきれず、職員の業務負担が増大していたため効果的な解決策が求められていました。

「業務非効率とPHSの経年劣化などを考慮して、院内の通信手段や連絡手段、コミュニケーションツールの見直しが喫緊の問題となり、そのタイミングでソフトバンクさんが提供するiPhone およびsXGPのご紹介をいただき、検討が進みました」（山田氏）

　導入が決まるまでに時間はかからなかったそうです。

「iPhone の多機能性を活用することで、従来の連絡手段に加え、業務プロセスのデジタル化と効率化を同時に実現できると判断し、導入することに決めました。職員間のコミュニケーションが円滑になれば、業務の迅速化とミスの減少が期待できると考えました。
　さらに、IT技術の進展に伴い医療業務のデジタル化が求められる中で、iPhone の多機能性を最大限に活用することで、既存のコミュニケーションツールでは対応しきれない多様な業務ニーズに対応できるのではないかと考えました」（山田氏）

導入時のサポートについて

　サービス導入はとてもスムーズに実施されたとのことです。

「技術的なサポートが充実しており、特に工事や設定において問題なく予定通り導入することができました。導入初期段階ではテキストを用いた職員への説明やトレーニングが円滑に実施されました。職員は新しいデバイスの使用方法を迅速に習得し、導入後すぐに業務改善に向けた取り組みを開始することができました。例えば、メールアプリのセットアップやグループチャットの活用方法についての研修が実施されたことで、職員は実際の業務に即した形で新システムを活用できるようになりました」（山田氏）

　また、導入当初から職員からのフィードバックを受け取りながら必要な調整やサポートが行われたことで、問題なく移行ができたと言う山田氏。導入後も継続的なサポートがあったと続けます。

「操作方法に関する質問にも迅速かつ的確に対応していただけました。メールアプリの設定やグループチャットの利用方法についてのサポートも充実しており、職員が新しいシステムを円滑に活用できるよう支援してくれました。手厚いサポート体制のおかげで、導入プロセス全体が計画通りに進み、短期間での業務改善が実現しました」（山田氏）

　導入の提案に関しては、医療機器商社によって同院にとって最適なコストや今後のDX化が考慮され、そして双葉電気通信株式会社の強力な技術的サポートのおかげでさまざまな懸念点の払拭ができたとのことです。

iPhone sXGPの導入による業務改善

　iPhone の導入により同院では業務プロセスが大きく効率化され、利便性を実感されているとのことです。

　まず、ソフトバンク公衆回線導入の効果をお聞きしました。

「以前に比べて、メールをグループで送受信できて情報共有できるのが特に便利です。以前は毎朝の申し送りや伝達業務をホワイトボードに書いて物理的に共有していたのですが、それも必要なくなりましたし、残業申請や休暇届出といった業務も、アプリを活用してデジタル化され、紙ベースの手続きを減少させることができました。申請や届出の処理が迅速化されたので、手続きのミスや漏れも減りました。
　また、共有カレンダーやLINEなどのアプリを導入することで、職員間の情報共有がスムーズに連携できるようになり、コミュニケーションが活発化しました。iPhoneでアプリを活用することによって、できることが格段と増えました」（山田氏）

iPhone でスタッフと連絡を取り合う様子

　ほかにもiPhone のさまざまな機能が活用されているとのことです。

「iPhone のクラウド機能や検索機能も活用しています。必要な情報を即座に検索・共有できるため、放射線科では検査オーダーの難しい病名を迅速に調べることで、適切な撮影方法を素早く判断できるようになりました。　
　また、検査で重要な画像の特定も容易になり、検査精度の向上や職員の負担軽減につながっています。ほかにも、患者さんの状態に応じて素早い対応ができ、医療サービスの質が各段に向上しました。例えば他の部署ではカメラ機能を活用して患者さんの褥瘡（床ずれ）の写真を撮影し、医師と共有するなどの活用例もあります」（土井氏）

患者さんの状況を撮影する様子

　また、院内の通信網をsXGPにしたことで変わったことや感じたことをお聞きしました。

「以前のPHSは電波が不安定で、場所によっては全く聞こえなかったりもしたので、sXGPになったことで院内全体の通信環境が良くなったと実感しています。また、以前は周波数の問題なのか、外線と内線の切り替えがうまくいかずにミスコミュニケーションが発生してしまうこともありましたが、切り替え後はそういったこともありませんし、とにかく外線が普通にすぐ使えるようになったことは利便性しかありません。電話の取り次ぎの業務が効率化できたのもとても便利です」（山田氏）

　ナースコールとの連携も大幅に改善されたそうです。

「院内全体の通信環境が整備されたことで、以前に比べてナースコールに迅速に対応できるようになり、患者さんへのケアがよりスムーズに行えるようになりました」（土井氏）

ナースコール（左）をiPhone で着信している様子（右）

　これらのデジタル化により、職員はより重要な業務に集中できる環境が整い、全体的な業務効率が大幅に向上したとのことです。

今後の展望

　こうしてデジタル化の基盤を整えた秋田病院では、今後もさらなる業務効率化を目指すと言います。

「院内でのDXをさらに進めていき、カルテや患者さんの情報をiPhone と連携してリアルタイム共有ができるようにしていきたいです。検査結果などを簡単に閲覧できるようになると業務が効率化でき、そこから質の良い安全な医療の提供やスタッフの職場環境の改善につながっていくと考えているので、ぜひ実現していきたいです」（山田氏）

　さらに、テレヘルス * の導入も視野に入れていると続けます。

「オンラインカウンセリングの導入により、患者さんが自宅からでも医師の診察を受けられる環境を整備する予定です。これにより、通院が困難な患者さんや高齢者でも安心して医療サービスを利用できるようになり、地域医療の幅が広がります。また、スマートフォンを活用した健康管理アプリの導入により、患者さん自身が健康状態をモニタリングし、予防医療の推進にも寄与できると考えています」（山田氏）

　iPhone とsXGP、そしてアプリを活用して地域医療の充実、さらにはデータ分析やAI技術の導入にも取り組んで、医療現場での意思決定を支援し、患者ケアの質をさらに向上させていくことを視野にいれている秋田病院。今後もさらなる業務改善と医療サービスの向上にますます期待が高まります。

*テレヘルス：遠隔診療。コンピューターやスマートフォンなどの端末を用いて、医療従事者とビデオ通話や電話で診察を受けるサービス。